6)「かいじゅうドドンガ」 ゴゴゴゴ〜ッ! 「きゃーっ!」子リスたちがあわててフロムのすむあなに飛び込んできました。 「なんだ、せっかく良い夢をみていたところなのに!」 「だって怖いんだもの」 「ものすごく揺れたんだよ!」 「どうせ、またドドンガが目を覚ましたんだろうが…」 「ドドンガってなに?」 「山のように大きなかいじゅうだよ」そういって、フロムはかいじゅうドドンガの話をはじめました。 むかしむかし神様がこの世をおつくりになったとき、大地をこねていた神様のひたいから、ひとしずく汗がおちました。大地におちた汗は土とまざって、そこからドドンガがうまれました。 ドドンガは巨大なヘビで、ふだんは大地をとりかこむように、とぐろをまいてねています。何百年もねているあいだに、その体は土におおわれ、その上に草木がはえているので、だれもドドンガだとは気づきません。フロムの森をかこむように連なる山々も、じつはドドンガの背中なのです。 「だれだ?おれさまの眠りをじゃまするやつは?」ドドンガが、ふきげんそうに大きな首をもたげました。そして、あたりを見下ろすと、米粒のように小さな生き物がいるではありませんか。 「なんだ、おまえは?小さすぎてよくわからないが、おれさまを起こしたのはおまえか?」 「め、め、めっそうもございません」リスがふるえながらいいました。 「はははっ、たしかに、おまえのような小さいヤツであるわけがないな」 「いや?、びっくりしたの、なんのって!いきなり山が動きだしたかと思ったら、あんな大きなかいじゅうが出てくるとは。おいら、腰がぬけちまっただよ」リスがつぶやきました。 しかし、なにがおこるやらわかりません。1年後、ふたたびリスがおなじ木に登ってクルミに手をかけたとたん、またしても手をすべらせて、木の実を落としてしまったのです。そして、それがまたしてもドドンガの急所に当たったから、さあたいへんです。 「ギャオオオオ〜ッ!」 「だれだ?だれがやった?今度という今度はゆるさんぞ!」カミナリのような声でどなりちらしながら、あたりを見下ろしましたが、やはり米粒のような生き物しか見あたりません。 「お、おまえがやったのか?」 「い、いえ、めっそうもございません」リスがしきりに首をふります。 「た、たしかに、おまえのような小さいヤツに、できるわけがないな」 そういうと、ドドンガはしぶしぶ眠りにつきました。 しかし、なにがおこるやらわかりません。その1年後、またまたリスが同じ木に登ってクルミをとろうとしたら、今度も手がすべって、木の実を落としてしまいました。そして、やはりドドンガの急所に当たってしまったのです。 「グアアアア〜ッ!」 「もうゆるさん!ゆるさんぞ!」ドドンガがいきり立って、わめきちらしました。「だれだろうが、今度こそ見つけて、丸飲みにしてやる!」 「めっそうもございません。わたしのような小さなものに、なにができましょうか?」そういって、リスが木から飛び降りると、そこがちょうど急所の上だったから、もうたいへんです。 「もうがまんがならん!おまえをひと飲みにしてくれる!」 「そうか、これがおまえの急所だな!さあ、いたいめにあいたくなかったら、おいらのいうことを聞くんだ!」 「いまいましい生きものめ!」とドドンガがおそいかかろうとすると、すかさずリスが急所に歯を立てました。これでは、さすがのドドンガもどうすることもできず、しぶしぶリスのいいなりになるしかありません。 「あんたの急所はおさえたけれど心配するなって、守ってやるから!」リスが笑いながらいいました。「そのかわり、おいらの願いをかなえてくれないか?」 こうしてそれからは、リスがドドンガの急所を守るかわりに、ドドンガは時々体をふるわせて、木の実を木から落としてやることになったのでした。だから、時々大きな地震がおこるのは,じつはリスのためにドドンガが体をふるわせているからなのです。 「もしかして、あの山も、あの山もそうなの?」子リスが遠くの山々を指さしました。 「じつは、そうなんだな」フロムがまゆをひそめました。 「うそだ〜い!そんなことあるもんか!」子リスがあきれて、木の上から地上に飛び降りました。 ところが、なにがおこるやらわからないもので、降りたところがドドンガの急所だったから、さあたいへん! ゴゴゴゴ〜ッ! 【フロムの豆知識】 ドドンガほどではないにしても、おどろくほど大きな大蛇の記録があります。紀元前255年に、チェニジアの北部でローマの兵士たちが全長35メートルの大蛇と戦ったという記録があります。また、1907年、イギリスの探検家フォーセット少佐の乗った船が、アマゾン川で19メートルのアナコンダにおそわれたそうです。現在でも、ボルネオのバーレー川には」30メートル以上もあるナブーという大蛇が目撃されています。 しかし大きさでいったら、大海蛇にはかないません。なにしろ、1848年イギリスの汽船ネストール号がマラカット海峡で出会った大海蛇は体長65メートルもあったという話です。記録に残る最大のシロナガスクジラは全長34メートルですから、にわかには信じられない数字です。ホントでしょうか? |