4月1日「「ウォッチメン」」
今日は映画の日なので、109シネマズに「ウォッチメン」を観に行きました。
「300」のザック・スナイダーの最新作がアメコミ(グラフィック・ノベルと言うべきか?)最高傑作の誉れ高い「ウォッチメン」と聞いて、どんな作りになるか気になっていました。なにしろ原作はSF文学の最高峰に与えられるヒューゴー賞を唯一受賞したグラフィック・ノベルなのです。というわけで早速観てみましたが、予想に違わず大変な出来でした。
舞台はニクソン大統領が3期めを務めるパラレルワールドな1985年の米国。10月12日の夜、元「ウォッチメン」のメンバーのひとりが何者かに惨殺されます。事件現場を訪れた、同じく元メンバーのロールシャッハは、この事件の裏には何かあると察知し、事件の謎を探り始めます。想像を絶する巨大な陰謀の渦に巻き込まれていくとも知らずに…。
「ウォッチメン」というのは、並はずれた体力や頭脳や瞬発力を持ったメンバーが集まったコスプレ自警団「ミニッツメン」を前身としたスーパーヒーロー集団です。でも、超能力という点では全身青白く輝くDr.マンハッタンがただひとり突出していて、その他はバットマンタイプの生身の人間なのです。この作品では、その人間的な面をリアルに描いていますから、スーパーヒーロー物を期待した観客は肩すかしを受けてしまうでしょう。過去のトラウマに怯え、精神も病んでしまうという、心の闇の部分を抱えたヒーローの姿を嫌と言うほど見せられて、辟易してしまう人もいるかも知れません。でも、ここがこの作品の面白いところなのです。映画では各ヒーローの人間描写にかなりの時間を費やしていますが、このことがかえって映画のテンポを停滞させる結果を招いています。でもこれは、この世界に長く浸れる幸せを味あわせてくれる至福の時間でもあるのです。このあたり、評価が大きく分かれるところでしょう。
さてザック・スナイダーの手腕ですが、これはかなり冴え渡っていると思います。まずオープニングロールにボブ・ディランの「The Times They Are A-Changin’」が流れるくだりからグイと胸を鷲づかみされます。この選曲と、「ウォッチメン」の変遷を綴って見せる演出は真に見事と言うほかありません。ここで一気にこの世界に引き込まれたならば、163分という長丁場も決して長いと感じないでしょう。逆に言えば、ここが観客の評価の分岐点となっています。
「ウォッチメン」とは「見張る者たち」という意味ですが、前身の「ミニッツメン」でも分かる通り、「時計」という二重の意味を持ちます。このことは、スマイルバッジについた血痕が終末時計の12時5分前を指しているとか、Dr.マンハッタンの額に描かれた水素記号が時計の12時を指しているという具合に、画面の様々なところで暗示されていて、作品の奥深さを感じさせます。
また、過去の映画、特に「未来世紀ブラジル」や「博士の異常な愛情」といったSF映画へのオマージュを捧げたシーンも数多く見受けられ、SF映画マニアには堪らないことでしょう。ことに「宇宙水爆戦」や「アウターリミッツ」といったマニア好みの選定が心憎いです。
ということで、「ウォッチメン」は非常にマニアックな作りながら、奥の深い、大人の鑑賞に堪える良質な作品に仕上がっています。映画化不可能と言われた原作をよくぞここまで作り上げてくれたものだと、個人的に感慨深いものがありました。やったね、ザック・スナイダー♪
☆☆☆☆☆★★★
(個人的には大満足ですが、なかなか人に奨めにくい作品です)
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