月曜の夜、池田憲章クンから電話があって、何かと思ったらいきなり「トランスフォーマーの試写会があるんですけど、田森さん行きますか?」と聞かれました。もちろん二つ返事で答えましたとも。
そんなわけで、今日は東銀座のUIPに行ってきました。まあ、配給会社の試写室ですから狭いし、どうせそんなに人が来ていないだろうと高を括っていたら、見事に超満員でした。おかげで私は最前列の端っこでパイプ椅子に座って観るハメになりました。でも、前の人の頭を気にしなくて良いし、足も伸ばせるので、逆に良かったかも知れません。
「トランスフォーマー」は、1980年に日本のタカラから発売された変身型玩具「ダイアクロン」の権利を米国のハズブロー社が買って、米国で再開発して売り出した変身型ロボットシリーズです。80年代にはTVアニメシリーズにもなり、マーヴェル・コミックスからはコミック・シリーズも発刊されました。85年には日本でも玩具が発売されるようになり、TVアニメも放映されました。この際、オートボット達の名前も日本向けに変更され、「オプティマス・プライム」は「コンボイ」、「バンブルビー」は「バンブル」という具合にそれぞれ変名しました。その後劇場版アニメも製作され、レオナード・ニモイやエリック・アイドル、ジャド・ネルソン、オーソン・ウェルズなんていう超豪華メンバーが声優を務めました。
さて映画の方ですが…、独立記念日の前日(正確には前々日の夜中から)に公開された途端、全米歴代火曜日興行収入第一位なんていう何だかマイナーな記録を樹立し、「スパイダーマン」「パイレーツ・オブ・カリビアン」「シュレック」「ハリーポッター」といったシリーズ物の大作がひしめく夏の激戦期にあって、驚異的な興行収入をあげている作品です。公開3週を過ぎても興行ベスト10の上位にあって、いまだに根強い人気を誇っていますから、かなりのリピーターを生んでいるのでしょう。興行収入3億ドルも目前ですから。このまま行くと「パイレーツ・オブ・カリビアン ワールドエンド」も抜くかも知れません。
なにしろピーターパン・シンドロームのスピルバーグと派手なアクションが売りのマイケル・ベイが組んで、日本製玩具のアニメを元にした映画を撮るというのですから、製作が発表された当初からどんな作品になるのだろうと興味津々でした。米国国内の映画評を見ても、熱狂的な大絶賛と辛辣な酷評の両極端に分かれていて、益々その内容と出来が気になっていました。さて、その実体は如何に?
なるほど、酷評する人の気持ちもよく分かります。確かにシナリオは未消化なところもありますし、オートボット達のデザインも複雑でキャラの見分けが付きにくく、何かと分かりにくいところもあります。それに、SF的な設定と突拍子もない展開に全くついて行けない人も少なからずいることでしょう。特にメカに少しも興味や愛着のない人々は、金属生命体達に嫌悪感さえ抱くかも知れません。夢や浪漫に縁遠い人は、この手の映画を観てもただの絵空事とハナから馬鹿にすることでしょう。正直、これはそういった人達のための映画ではありません。
でも十代の男の子達、その想い出を共有するすべての人々にとって、これはまさに夢の映画です。ごく普通のサエない高校生が、ふとした切っ掛けから憧れの女の子と共に、人類の存亡を賭けたエイリアンたちの戦いに巻き込まれていくという、胸熱く心躍る冒険物語なのです。ともかくたたみ掛けるように続く派手なアクションと驚愕の映像を思う存分楽しみ、正義を貫くオートボット達の献身と自己犠牲の精神、それに格好いいキメ台詞に涙しましょう。
映画の出来としてみれば、確かにシナリオで少々納得しがたい点もあります。恐らく上映時間を切りつめるために、シーンを大幅カットした為でしょう。前半の綿密なシナリオ描写に比べ、後半はちょっと乱暴な展開になり、所々で説明不足が目立ちます。
しかし、そんな欠点も些細な問題と思えるほど、この映画が成し得た映像革命は偉大です。CG技術が生まれ、これまで多くの作品にその技術が活用されてきましたが、「質感」とか「重量感」といった存在感において、実写との間にどうしても拭えない違和感がありました。それは数値化された物理法則では到底越えられない壁だったのです。ところが、そんな壁をこの映画は、物理法則の呪縛から逃れることで簡単に越えてしまったのです。「実際には有り得ないデフォルメされた動きの方が実はホントらしく見える」という大胆なアニメ手法と「CGで出来ないことは極力実写でやる」という発想の転換で、CGと実写の垣根を見事に取り去っています。これこそまさに、映画のトランスフォームと言えるのではないでしょうか。
さあ、興味のある方は是非とも劇場に足を運んで、新しい映画の夜明けを目撃しましょう。キャラの見分けがつきにくい程画面の情報量が濃密ですので、日本語吹き替え版でご覧になることをお奨めします。因みにオートボット達の声はアニメと同じ声優陣が吹き替えています。こりゃ燃えるぜ!
★★★★★☆☆☆☆(戦闘シーンが、まるでブラックホーク・ダウンのようにリアルで凄いです)
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