NOVEMBER 2006
Diary

 11月1日 「父親たちの星条旗」
 本日は映画の日なので、南町田の109シネマズ・グランベリーモールへ行きました。109シネマズの会員になると、2500円のエグゼクティブシートが通常料金で買えるばかりか、映画の日のスペシャルプライスも適用になります。ということで、今日はエグゼクティブシートで鑑賞だ!エグゼクティブシートは席も広く、リクライニングになっていて、シンプルな構造ながら、身体全体を包み込んでくれるような設計になっています。これならお尻が痛くなるなんてことは絶対に有り得ません。あんまり座り心地が良いので、眠くならないかが心配なくらいです。さらにエグゼクティブシートには、サイドテーブルや荷物入れまで揃っていて、身の回りの物を一切気にしなくて済みます。しかも、今回はど真ん中の最上の席が獲れたので、音響もバッチリ。これで1000円とは申し訳ないですね、ホント。
 
 というわけで、最高の環境で「父親たちの星条旗」を観ました。いや、久々に映画館で観たかいがありました。

 第二次世界大戦中、唯一日本軍より米国軍の死傷者が多かった(真珠湾攻撃は例外)硫黄島の戦いで、島の象徴とも言える摺鉢山の頂上に星条旗を揚げた6人の兵士の写真にまつわる物語です。あの写真に写っている星条旗は最初に揚げた星条旗ではないし、写っている兵士も別の兵士だったことは後で公にされ物議を醸しました。ようするに多額の国債発行キャンペーンのために利用されたヤラセだったわけです。そのような情報操作は戦時中いくらでもあったでしょうが、アメリカ人にとって最も有名な写真だけに、その影響も凄まじく、それに利用され、偽りの勇者としてもてはやされた当の兵士の心境を考えると複雑なものがあります。
 
 この星条旗を揚げる写真は、ハリウッド映画の中でもアメリカの栄光を象徴するシーンには必ずと言っていい程登場する(世界の危機にアメリカが立ちあがる様なシーンには特に使われます)有名な写真で、言わば、アメリカ人の心の支えでもあるわけです。このアメリカの栄光に影をさすような作品を、巨費を投じてスピルバーグが製作し、イーストウッドが監督するのですから、アメリカという国はホントに懐が広いものだと感心させられます。しかも更に、今まで日本映画界ですら手を付けなかった、日本側から硫黄島の戦いを描く「硫黄島からの手紙」まで作ってしまうのですから、もうこれは偉いというほかありません。ホントに偉いぜ、イーストウッド!
 
 さて映画を観た素直な印象は、さすがイースト・ウッドは凄い監督になったものだということです。こんな凄い大作でも、ひたすらマイペースを貫けるなんて、ホントに恐れ入ります。私がまず驚いたのは、硫黄島に向かう艦隊から兵士が一人海に落ちるシーンです。船は落ちた兵士を救出するでもなく進み続け、海に漂う兵士はどんどん遠ざかっていきます。もちろん、軍が兵士を使い捨てにするという事を表す大事なシーンですが、こんなショットを延々撮るなんて、並の監督では到底できません。製作にゆとりがあるというか、よっぽど演出に自信があるのでしょう。こんな凄いシーンが次々と展開されるのですが、それを妙な音楽や演出で盛り上げるでもなく、いつものイーストウッド節でただ淡々と流していくのですから、もう驚くほかありません。
 
 戦闘シーンは凄いです。「プライベート・ライアン」からまた数段と技術が進歩して、臨場感あふれる戦闘シーンを再現しています。特に、機銃から発射された弾丸の軌跡と着弾の模様なんかは凄いね!摺鉢山と海岸との攻防風景なんか素晴らしいです…って、あんまり感心しちゃいけないですけど、見事です。多分アカデミー賞にノミネートされるのではないでしょうか。素晴らしいシーンや印象的なシーンは他にも沢山あって、いちいち上げたらキリがないですけど、日本映画だったらたっぷり時間を掛けて見せるだろう、そんな珠玉のシーンもサラリと数秒で流しちゃうんだから、イーストウッドはやっぱり凄いね。そして、いつも見事な最後のシーンですが、今回は最後の最後に用意してありました。こう来たか、イーストウッド!このショットで終わるのは実に正しいじゃないか。やっぱりあなたは偉かった!
 
 因みに作曲も手掛けているイーストウッドですが、次回作「硫黄島からの手紙」の曲は東洋的な旋律もちょっと入って、これが実に良くて泣けます。本国アメリカで今年中に限定公開されたら、アカデミー作曲賞の候補になるかも知れません。日本では年内に公開されますが、内容も内容ですし、曲を聴いただけで泣けてしまうので、今から観るのが怖いです。
 
 ☆☆☆☆★★★★(とにかく偉い!)