SEPTEMBER 2006
Diary

9月9日 「X-MEN:ファイナル・ディシジョン」
 毎月1日の映画の日に映画鑑賞というルールが崩れたし、どうせ崩れるなら初日に行こうということで、109シネマズ・グランベリーモールへ行きました。作品は「X-MEN:ファイナル・ディシジョン」です。どうでもいいけど、このタイトルどうかと思うんですね。だって原題は「X-MEN:THE LAST STAND」ですよ。「ファイナル・ディシジョン」より「ラスト・スタンド」の方が日本人には呼びやすいと思うのですが、宣伝部はどうしても映画をヒットさせたくないんでしょうかね?タイトルの意味としてはこれでも悪くはないのですが、映画の最後まで観れば絶対に「ラスト・スタンド」の方が良いですよ。携帯電話をかけながら観る試写会を企画したり、この宣伝部は一体何を考えているんでしょうかね?
 
 まあ、そんな宣伝の拙さは置いといて、作品の出来は大変良いですよ。いやホント、久々に映画の構成力について考えさせられました。最近の日本アニメを観て、一番欠けていると感じた重要な要素のひとつです。…なんて、ちょっと言い過ぎかも知れませんけど。
 
 「X-MEN」シリーズ第一作を観たのは、サンディエゴのシネコンでした。丁度コミコンが開かれていた時期に初日を迎えたとあって、映画館の前はコミック・ファンの長蛇の列が出来ていました。しかもこの行列、次の次の回だっていうんだから驚きです。ホントにアメリカ人は、行列するのを楽しんでいるみたいです。まあ、その時のファンの反応ですが、やっぱり黒のコスチュームが不評でしたね。また、原作を大きく変えているところが問題になりましたが、まあマーベルが製作しているし、原作者スタン・リーもOKだって言うんだから、文句は付けられません。それより、映画として上手くまとまっていることを評価する意見も多かったように思います。
 
 それはさておき、このシリーズが始まった当初から、これを三部作でまとめる企画だったかは分かりません。でも、今回の「X-MEN:ファイナル・ディシジョン」を観ると、三部作として実に上手くまとまっていることに驚かされます。「1」のあのシーンがちゃんと伏線になっているとか、「1」や「2」の様々なシーンが「3」で上手く活かされているのが分かって、思わずニヤリとさせられます。それでいて、単独の作品としても、きちんと構成がなされているところが見事ですね。
その上、今回が最後(?)とあって、「X-MEN」の人気キャラが大挙して登場するという大盤振る舞いまでするんですから、呆れます。
 
 もっとも、登場人物が増えた分、個々のキャラクターを掘り下げる余裕はありませんので、物語の本筋に絡まない人物は次々と排除されてゆき、この辺がちょっと寂しいです。特にサイクロップスなんか、「X-MEN」の中心人物なのに、とっても可哀想な扱いを受けていますし、わたしが密かに最強と思っていたローグなんか、「一体おまえはどこをほっつき歩いていたんだ?」と言いたくなるくらいに影が薄いです。
 
 また「X-MEN」シリーズでは、実に細かいところに伏線やファンサービスが仕掛けられていて、これがファンには堪らないようですが、一般の観客には殆ど分かりません。例えば「2」に出てきたナイトクロウラーなんか、本当はミスティークの息子ですからね。このふたりがニアミスして、ファンは感涙にむせったことでしょう。今回の「3」でも、初期の「X-MEN」メンバーが全員登場するという大サービスばかりか、プロフェッサーの元婚約者モイラ・マクダガートまで、もの凄く重要なシーンで登場しています。
 
 そんなわけで「X-MEN:ファイナル・ディシジョン」は、「X-MEN」の事を知れば知る程面白い作品ですが、そんなことを知らない一般客でも「1」と「2」をちゃんと観ていれば、充分楽しめるようには作られています。逆に言うと、「1」と「2」を観ていなければ、何のことだかサッパリ分からないでしょう。まあ、これがシリーズ物の宿命ですから、仕方ありませんが…。
 
 それはともかく、この映画に登場するVFXはとてつもなく凄いです。もう、今はこんな事も出来ちゃうんですね。凄いなあ!これなら「幻魔大戦」なんか軽い軽い。楽勝で出来ちゃいますよ。だって、もっと凄いことやっているんですからね。これにはホント、開いた口が塞がりませんよ。こんな作品こそ、DVDでなく是非とも大画面大音響で観てもらいたいものです。
 
 さて、「X-MEN」の一作目が公開されてから早6年、この映画に出演していた役者も、それぞれアカデミー賞獲ったり、主役を張ったりで、有名になりました。こうして改めて全員揃ったところを見ると壮観です。ギャラも鰻登りで大変でしょう。そんなわけで、どうしたって今回でシリーズをお終いにしないわけにはいかなくなったであろうと、容易に推察されます。もちろん今回は多少ギャラを抑えてもらって、その代わりスピンオフのシリーズを立ち上げるという駆け引きも行われたのではないかと思います。
 
 今回の作品を観て思うのは、やはり6年という歳月の重みでしょうか。みんなあの頃は初々しかったよな、なんて昔を懐かく思いますし、今回も画面一杯に頑張りまくる老人コンビの健在ぶりがこれまた微笑ましくて、とても嬉しく思いました。
 
 ☆☆☆☆☆★★★(最低「1」「2」は観ておきましょう。そして、映画はスタッフ・ロールが終わるまで、ちゃんと観るべきです。)