NOVEMBER 2005
Diary

11月3日 「反骨の雄」
 
 先日映画を観に行ったばかりだというのに、今日も観に行ってしまいました。予定が遅れに遅れまくっているのに、こんな事していていいのか、自分?それはさておき、本日のお題は「ブラザーズ・グリム」です。テリー・ギリアム久々のファンタジー作品です。個人的には大変期待しているんですが、どうも前評判が芳しくないのが気がかり。う〜ん、大丈夫かなあ?と期待半分心配半分で観てみました。結果は…微妙だけど、ちゃんとギリアム・ファンを裏切らない作品でした。ということは、興行的には当たらないという事ですね。でも応援するぞ!
 
「ブラザーズ・グリム」
 グリム兄弟が民間伝承を元に有名な童話集を書き上げる以前に何があったかという物語です。劇中に数々の有名な童話のネタが、現実のものとして登場します。でも、ここで展開されるのは、所謂ほんわかムードの子供向け「グリム童話」の世界ではなく、ハードでグロテスクな「本当は恐いグリム童話」の世界です。まさにテリー・ギリアムの世界そのもの。(以下ネタバレっぽいので自主規制)
 
 しかもグリム兄弟と来たら、妖怪退治を請け負って金を騙し取る詐欺師なんだから呆れます。それが訳あって本物の妖怪退治に出かけるハメになるのですが、普通なら胸躍る冒険物語になるところを、一辺倒にそうならないところが曲者ギリアム。森の魔物と戦っているようで、実はグリム兄弟の真の敵は戦争や宗教なんですね。戦争が森を焼き払い、宗教が土着の文化習慣や信仰を滅ぼしたという批判が、ここには込められているのです。
 
 こういった文明批評を辛辣なギャグで表現するところがギリアムの真骨頂なのですが、表面的には下劣なおふざけにしか映らないでしょう。そこがギリアム作品が一般受けしない理由でもあるし、根強いファンを生む要因でもあるワケです。それにしても、キリスト教を名指しで批判したり、正面切ってフランス人をバカにしたり(悪役は皆フランス人だ!)と、留まるところを知らないギリアムの反骨精神には本当に恐れ入ります。
 
 こういう作品に大金を払う映画会社も勇気あるなと思いますが、出演している役者もなかなか骨があるなと感心します。さすがに主演のマット・デイモンは、以前「ドグマ」というトンデモ映画に出ていたので納得ですが、それにしても役者生命に差し障りがあるんじゃないかと、いらぬ心配をしてしまいます。
 
 で、肝心のお話ですが、グリム童話のエピソードを巧みに絡めるシナリオはなかなか見事ですが、終盤どうも納得しづらい点があって、いかにも画竜点睛を欠くという感じがしてなりません。まあ、ギリアムファンにとっては、それも些細なことですが。久しぶりにギリアム節を見せてもらって、私は充分楽しませてもらいました。(でも、一般の観客はどうなのかなぁ?)
 
 ただ、やっぱりキャスティングが惜しい!例えばジェイコブ・グリムはベン・アフレック(コンビといったら彼でしょう)、カヴァルディをジャン・レノ(フランス人だけど)、ウルフをショーン・コネリー(バンデットQの夢よ再び )に演ってもらいたかった。無いものねだりですが、想像しただけでも傑作でしょ?
 
 ☆☆☆☆★★★
(☆は個人的好き度、★はお奨め度。ただし赤はマイナス!)