11月21日 「ハウル再考」
 
 「ハウルの動く城」について色々考えてみましたが、結局未だに何がなんだか分からないままです。分からないのでこれ以上何も言うことはないのですが、一応気休めに総括をしておきたいと思います。(以下、まだ観ていない人のために自主規制)
 
 とにかくシナリオと構成を除いて部分だけを見れば、本当に素晴らしい作品です。今年は「イノセント」や「アップルシード」のようにCGを駆使した凄い作品が目白押しでしたが、従来のセル感覚アニメでもこれだけ凄い描写が出来るんだという意気込みを感じます。まさに宮崎アニメの集大成と言っても差し支えないでしょう。その意味で、各パートのスタッフは本当に良い仕事をしたと思います。
 
 でも作品全体としてみれば、それはあたかも「ハウルの城」そのもののように、色々な面白い部品を寄せ集めてはいても、各パーツの間には何の脈絡もないという、実にとりとめのない存在になってしまっています。物語の終盤直前まであんなに丁寧に描写していたのに、最後でいきなり一切の説明を放棄するなんて、置き去りにされた観客は「あれはどうなったの?」「なんでそうなるの?」と路頭に迷ってしまいます。
 
 ファンタジーの世界は不思議であって当たり前ですから、説明の付かない存在や理由の分からない世界観をあえて明らかにする必要はありません。しかし、だからと言って物語自体まで意味不明なのは、作品として如何なものでしょうか?むしろファンタジーだからこそ、より骨子のハッキリした物語性が求められると思うのですが…。優しい絵柄と同様に、観客にも優しく接して欲しいものです。
 
 恐らく諸般の事情でやむなくこのような結果になったのではないかと思われるのですが、もしそうでないとしたら、それはあまりに悲しい事です。