1月24日「ルパン三世登場!」アングレーム
 
 勝川克志さん(通称「克坊」)は日本でやり残した仕事があって、原稿を旅行に持ってきている。とにかく旅行の最中に下書きだけでも仕上げるのだと息巻いているが、出来るんだろうかね?
 
 そんなわけでお仕事中の勝川さんを残し、今日は一人で会場に向かう。取り敢えず友達のいそうな出版社のブースを覗いてみよう。さすがに金曜日ともなると朝から会場はもの凄い人混だ。あちこちのブースで漫画家のサイン会をやっていて、それを目当てのファンがどっと押し寄せている。うおぉ、トッド・マクファーレンが来ているぞ。ほほっ、私の好きなロワゼルもサイン会をしている。よく判らないけれど、面白そうな作家が沢山いるなぁ。
トッド・マクファーレン ロワゼル
 
 また会場では、この見本市に合わせて様々なコミックの新刊も発売されている。しかもこの期間だけの限定版やら特別企画本なんかがあって油断がならない。今回も色々物色している内にとんでもない本やポートフォリオを見つけてしまった。もちろんゲットするけれど、限定版だけあってやたら重かったり非常識な大判だったりするから大変だ。一つのテントを廻るだけで背中の鞄がズッシリ肩に食い込む。ううむ、しまった。買うのをもっとセーブしないとこの先身が持たないぞ。
 
 それはそうと実行委員会本部のあるメルクール・ホテルへ行かなければ。谷口ジローさん達はそこにいるらしい。実は昨夜、今年のアングレーム国際漫画フェスティバルの授賞式があった。谷口ジローさんは「遙かな街へ・上」で「優秀シナリオ賞」「批評家賞」「優秀書店賞」の3部門にノミネートされていたけれど、我々は会場には入れなかったので結果を知らない。果たして谷口さんは受賞したのだろうか?結果が気になるので、会いに行こう。
 
 メルクールに行くと、ホテルのロビーで谷口さんがTVの取材を受けていた。おおっ、なんと谷口ジローさんの「遙かな街へ・上」がアングレーム国際漫画フェスティバルで(ALPH-ART)「優秀シナリオ賞」「優秀書店賞」の2部門で受賞したそうだ!これは凄い!日本人で初めての快挙だ。谷口さんおめでとう!
 
 アシスタントの廣木クンに今朝の新聞を見せてもらうと、新聞の一面にデカデカと谷口さんの写真が載っていた。2001年にもノミネートされて惜しくも受賞を逃した経験があるので、今回の受賞は喜びもひとしおだろう。インタビューを受ける谷口さんの傍で奥さん達と祝っていると、向こうから背の高い男がやって来た。
 
 あひょっ、ベルギーの漫画家シュイッテンだ!昨年のグランプリ受賞者で、今年の実行委員長だ。谷口さんにお祝いの握手をしてきたので、私もどさくさに紛れて握手する。そういえばシュイッテンの展覧会も開かれているんだけれど、昨日はベルギーの王室が来訪したので会場には入れなかったのだ。展覧会を観る前に本人に会ってしまったね。
 
 このホテルのロビーにいると色々な漫画家があちこち行き交ってなかなか忙しい。しばらくするとチェリー・ロビンも現れたので再会を祝う。チェリーから夕食を一緒にしないかと誘われるが、勝川さんに聞いてからと保留にする。そうこうしている内に谷口さん達はこれから出版社の昼食会やら何やら予定が詰まっているようなので、私は勝川さんと待ち合わせの場所に向かうことにした。
 
 市街のマクドナルドの近くで勝川さんと合流。昼食もまだなのでマクドナルドにでも入ろうと思ったが大混雑なので諦める。仕方ないのでその前にある韓国会場に入る。アングレームでは毎年海外の漫画も招待しているが、今年は韓国が招待された。韓国の漫画は一昔前までは日本の亜流と言われてきたけれど、国が漫画やアニメに力を入れて、随分と漫画のレベルも向上して来ている。
 
 特にB.D.の研究には熱心で、日本の漫画と言うよりは欧米の漫画に近づこうとする動きさえある。何てったって、各美術大学には必ず「漫画科」がある位だから凄い熱の入れようだ。そんなわけで、今回の韓国会場の展示には韓国政府から1億円も助成金が出ているらしい。日本が招待された時なんか、日本政府はほとんど援助していないというのに。まぁ、国が援助すれば優れた文化が生まれるというワケでもないけれど、少しは文化庁も考えて欲しいものだ。
 
 韓国の会場に入ると、成る程凄い熱気だ。韓国の漫画のレベルもかなり向上しているものだと感心していると、ふと会場内に見覚えのある顔が!まさかねぇ…。こんな所に来ているわけが無いでしょ?いや、あれは…やっぱり…、モンキー・パンチさんだ!さすがルパン三世は神出鬼没だ。妙に納得していると、げげげっ!他にも漫画家が…!
 
 何と驚いたことにモンキー・パンチさんの他に三浦みつるさんや関口シュンさんやホラーの女王:犬木加奈子さんもいる。何だか知らないけれど、フランスの片田舎の韓国のテントで日本の漫画家が集まるなんて、不思議な光景だねぇ。早速挨拶して聞いてみると、みんなでヨーロッパの漫画視察の旅をしているらしい。ここで会ったも何かの縁。今夜はイタリアの出版社の夕食会があるので一緒に参加しないかと誘われてしまう。こりゃラッキー!取り敢えずここは別れて、後で携帯に連絡してくれるという事になった。
 
 ところが、その後どういうワケか連絡が取れず、結局夕食を食べ損なってしまった。一体どうしたことか?実は携帯電話の操作に問題があったことを、我々はその時知る由もなかった(なにしろ不慣れな外国の機種なもんで、操作に若干ミスがあったのですね…)。しかも、この騒動はまだ続く。