第六章 かいじゅうドドンガ

ゴゴゴゴ~ッ!
 とつぜん地面がおおきくゆれました。

「きゃーっ!」子リスたちがあわててフロムのすむあなに飛び込んできました。

「なんだ、せっかく良い夢をみていたところなのに!」

「だって怖いんだもの」

「ものすごく揺れたんだよ!」
 子リスたちがくちぐちにうったえます。
 すると、フロムがわらいながらいいました。

「どうせ、またドドンガが目を覚ましたんだろうが…」

「ドドンガってなに?」

「山のように大きなかいじゅうだよ」そういって、フロムはかいじゅうドドンガの話をはじめました。

 むかしむかし神様がこの世をおつくりになったとき、大地をこねていた神様のひたいから、ひとしずく汗がおちました。大地におちた汗は土とまざって、そこからドドンガがうまれました。

ドドンガは巨大なヘビで、ふだんは大地をとりかこむように、とぐろをまいてねています。何百年もねているあいだに、その体は土におおわれ、その上に草木がはえているので、だれもドドンガだとは気づきません。フロムの森をかこむように連なる山々も、じつはドドンガの背中なのです。
 ある日のこと、山のうえのクルミの木に一匹のリスがのぼって、クルミの実をとろうとしました。ところが手がすべって、クルミを地面に落としてしまったのです。これがどういうわけか、下でねていたドドンガの急所にあたり、ドドンガを何百年ものねむりから目ざめさせてしまいました。
 人間には大きなダメージをうけてしまう「急所」が190カ所くらいあるといわれていますが、ドドンガにもそれぐらいの急所があります。たとえ小さな木の実であっても、そこに当たったら、さすがのドドンガでも飛び上がってしまう、そんなとびきりの急所も一つはあるものです。地面からモッコリとお椀をふせたように小さく盛り上がっているものがあって、それがドドンガの急所でした。

「だれだ?おれさまの眠りをじゃまするやつは?」ドドンガが、ふきげんそうに大きな首をもたげました。そして、あたりを見下ろすと、米粒のように小さな生き物がいるではありませんか。

「なんだ、おまえは?小さすぎてよくわからないが、おれさまを起こしたのはおまえか?」

「め、め、めっそうもございません」リスがふるえながらいいました。

「はははっ、たしかに、おまえのような小さいヤツであるわけがないな」
そういうと、ドドンガはひとりでうなずき、ふたたび目をとじました。

「いや?、びっくりしたの、なんのって!いきなり山が動きだしたかと思ったら、あんな大きなかいじゅうが出てくるとは。おいら、腰がぬけちまっただよ」リスがつぶやきました。

しかし、なにがおこるやらわかりません。1年後、ふたたびリスがおなじ木に登ってクルミに手をかけたとたん、またしても手をすべらせて、木の実を落としてしまったのです。そして、それがまたしてもドドンガの急所に当たったから、さあたいへんです。

「ギャオオオオ~ッ!」
 ものすごい悲鳴をあげて、ドドンガが目を覚ましました。

「だれだ?だれがやった?今度という今度はゆるさんぞ!」カミナリのような声でどなりちらしながら、あたりを見下ろしましたが、やはり米粒のような生き物しか見あたりません。

「お、おまえがやったのか?」

「い、いえ、めっそうもございません」リスがしきりに首をふります。

「た、たしかに、おまえのような小さいヤツに、できるわけがないな」  そういうと、ドドンガはしぶしぶ眠りにつきました。

しかし、なにがおこるやらわかりません。その1年後、またまたリスが同じ木に登ってクルミをとろうとしたら、今度も手がすべって、木の実を落としてしまいました。そして、やはりドドンガの急所に当たってしまったのです。

「グアアアア~ッ!」
 大地もゆるがす悲鳴をあげて、ドドンガが目覚めました。

「もうゆるさん!ゆるさんぞ!」ドドンガがいきり立って、わめきちらしました。「だれだろうが、今度こそ見つけて、丸飲みにしてやる!」
  そしてあたりを見下ろしましたが、今度もやはり米粒のようないきものがいるだけでした。これには、さすがのドドンガもとまどわずにはいられません。
「またしても、おまえか!今度は見逃すわけにはいかないぞ」

「めっそうもございません。わたしのような小さなものに、なにができましょうか?」そういって、リスが木から飛び降りると、そこがちょうど急所の上だったから、もうたいへんです。
「グギャァァ~ッ!」
 天地をゆるがす悲鳴とともに大きな地震がおきて、山はくずれるわ、木は倒れるわで、森じゅうおおさわぎです。
 ようやくさわぎが収まると、いかりにシューシュー湯気を立てながら、ドドンガがいいました。

「もうがまんがならん!おまえをひと飲みにしてくれる!」
 すると、さきほどまでブルブルふるえていたリスが「そうは、させないぞ!」とさけびながら、いきなり急所のところにかけよって、思い切りガブリとかみつきました。
「グギャギャァア~~ッ!」
  またもや、天地がひっくりかえるかと思えるほどの悲鳴とともに、大きな地震がおきました。すると、木の上からクルミが雨あられと降ってきて、リスはクルミの山にすっかり埋まってしまいました。そして、山からはいでてきたリスがいいました。

「そうか、これがおまえの急所だな!さあ、いたいめにあいたくなかったら、おいらのいうことを聞くんだ!」

「いまいましい生きものめ!」とドドンガがおそいかかろうとすると、すかさずリスが急所に歯を立てました。これでは、さすがのドドンガもどうすることもできず、しぶしぶリスのいいなりになるしかありません。

「あんたの急所はおさえたけれど心配するなって、守ってやるから!」リスが笑いながらいいました。「そのかわり、おいらの願いをかなえてくれないか?」

こうしてそれからは、リスがドドンガの急所を守るかわりに、ドドンガは時々体をふるわせて、木の実を木から落としてやることになったのでした。だから、時々大きな地震がおこるのは,じつはリスのためにドドンガが体をふるわせているからなのです。

「え~っ?あの山がドドンガだなんて信じられないわ」

「もしかして、あの山も、あの山もそうなの?」子リスが遠くの山々を指さしました。

「じつは、そうなんだな」フロムがまゆをひそめました。

「うそだ~い!そんなことあるもんか!」子リスがあきれて、木の上から地上に飛び降りました。

ところが、なにがおこるやらわからないもので、降りたところがドドンガの急所だったから、さあたいへん!

ゴゴゴゴ~ッ!

【フロムの豆知識】

ドドンガほどではないにしても、おどろくほど大きな大蛇の記録があります。紀元前255年に、チェニジアの北部でローマの兵士たちが全長35メートルの大蛇と戦ったという記録があります。また、1907年、イギリスの探検家フォーセット少佐の乗った船が、アマゾン川で19メートルのアナコンダにおそわれたそうです。現在でも、ボルネオのバーレー川には」30メートル以上もあるナブーという大蛇が目撃されています。

しかし大きさでいったら、大海蛇にはかないません。なにしろ、1848年イギリスの汽船ネストール号がマラカット海峡で出会った大海蛇は体長65メートルもあったという話です。記録に残る最大のシロナガスクジラは全長34メートルですから、にわかには信じられない数字です。ホントでしょうか?