FEBRUARY 2011
Diary

2月20日「ヒア アフター」
 ワーナー・マイカル新百合ヶ丘で「ヒアアフター」を観ました。クリント・イーストウッド監督の最新作ですが、珍しくアカデミー賞の視覚効果賞にノミネートされています。果たして、如何な出来だったでしょうか?

 死者の声を聞くことが出来るジョージは、かつては霊能者として働いていましたが、その呪われた能力を嫌い、今はサンフランシスコの工場で働く一労働者として、ひっそりと静かな生活を送っていました。一方、パリの花形ニュースキャスターのマリーは、旅先の東南アジアで災害に巻き込まれ、死後の世界に目覚め始めます。そして、ロンドンに住む双子の弟マーカスは、事故で兄を失い、どうしようもない喪失感にさいなまれていました…。
 
 とうとう死後の世界を語り始めたのか、イーストウッド?と、少々心配になったのですが、考えてみれば、「荒野のストレンジャー」や「ペイルライダー」といったゴースト西部劇を撮っていたので、それほど不思議なことでもないようです。それに、これは来世について語っているようで、実は逆説的に現世に生きる者たちを励ます物語なのですね。ここに登場する3人は、それぞれがあるものを喪失します。それは仕事や名誉であり、愛であり、肉親の命ですが、3人の運命が複雑に絡み合うことによって、やがて希望の灯を見出していくのです。
 
 米国での評価は芳しくなく、興行成績も振るわなかったのですが、死後の世界というとどうしても宗教観が絡んでくるので、米国の評価や成績は全くあてになりません。むしろ、このテーマを宗教観抜きで、堂々と撮ってしまうイーストウッドの心意気というか、恐れを知らないところが、さすがだと感心させられてしまいます。

 相変わらず決して奇をてらわず、淡々と自然に演出しているのも、まさにイーストウッド流。特に冒頭の災害シーンなんか、今まで観たどんなディザスター・ムービーよりも臨場感があり、とても驚かされます。アカデミー視覚効果賞にノミネートされたのもうなずけますが、これもイーストウッドの自然な演出が功を奏しているように思います。そしてなにより、この作品には生きている人々に対する暖かい優しさが溢れているので、観ていて非常に心が癒されます。今の世情を考えると、もっとも求められている要素なので、日本なら受けるかもね。
 
 ☆☆☆☆☆★★★★