AUGUST2010
Diary

8月20日「魔法使いの弟子」と「ヒックとドラゴン」
 20日は神奈川県内のシネコンが、1000円で観られる日です。というわけで、新百合ヶ丘のワーナー・マイカル・シネマズに「魔法使いの弟子」と「ヒックとドラゴン」を観にいきました。

「魔法使いの弟子」

 少年デイブはひょんなことから、ニューヨークのとある骨董屋に迷い込みます。そこに現れたのが魔法使いのバルサザールで、彼は1000年ものあいだ偉大なる魔法使いマーリンの後継者を捜し続けていたのでした…。

 どうもブラッカイマー印の映画は観客に対するサービス精神が旺盛すぎていけません。面白いと思われるアイデアを惜しげもなく投入するのは良いのですが、あれこれ投入しすぎて、結局収集がつかなくなり、空中分解してしまうパターンが多いようです。
  この作品でも、物理オタクの駄目青年が魔法使いの弟子になるというアイデアは面白いのですが、なにぶん登場人物が多すぎて主人公に思い入れする余裕もなく、ただ物語の流れに身を任すだけになってしまいます。敵キャラも無駄に多く、それぞれ面白そうなんですが、知らないうちに次々と消えていき、気がついたら最終ボスが現れて、なんだか知らないうちにやっつけたというのが正直な感想です。後に残るのは、「あいつはどうなった?」「彼はどこに消えた?」という疑問ばかりです。
  もっとアイデアを整理して、エピソードやキャラにメリハリをつけるべきなんですが、それをしないのがブラッカイマー印ということなのでしょう。でも、やはり資金とアイデアと技術と人材の無駄使いと思えて仕方ありません。
 
 ☆☆☆★★★
 (けっして満足のいく出来ではありませんが、それでも大金がかけられている分、映画を観たという気にはさせてくれます)

「ヒックとドラゴン」

 昔々、海の彼方のバーク島では、バイキングとドラゴンの戦いが続いていました。この島の頭の息子ヒックは生まれたときからひ弱で、仲間からも馬鹿にされ、父親のストイックには悩みの種でした。そんなヒックがある時、傷ついた一匹のドラゴンと出会ったのですが、それはナイト・ヒューリーと呼ばれる、幻のドラゴンでした…。

 まず言っておきたいことは、この作品の吹き替え版には重大な「誤訳」があるのではないかということです。いや「誤訳」と言うよりは、誤った解釈と配慮による「意訳(異訳)」というべきでしょうか。それは作品の意図からすれば、絶対に言うべきでない単語が使われているということで、その単語によって★2つ分くらい評価が分かれてしまうのですが、残念なことにほとんどの劇場では日本語吹き替え版しか公開されていないようなので、確かめようがありません。というわけで、DVDが発売された時に原語版で検証し、改めて評価したいと思います。

 とはいえ、この3DCGアニメの出来映えは非常に素晴らしく、デフォルメされた人物の繊細で豊かな表情といい、その適度な質感といい、「トイストーリー3」を凌ぐ程の完成度を見せています。

 更に特筆すべきは3D演出で、飛翔シーンにおける画面のカット割りや構図の取り方など、従来の2D演出からは思いもよらない斬新な切り口で、観る者を驚かせてくれます。この迫力はあの「アバター」さえも超えていて、3D映画の凄さを改めて見せつけられた思いがします。この作品こそ是非ともIMAXの大画面で観るべきでしょう。(残念ながらIMAXでは公開していませんが…)

 そして、更に更に素晴らしいのが、ディズニーやピクサーでは絶対にあり得ないラストで、 ここにこそ、制作陣のこの作品に賭ける心意気とあふれる愛情が見て取れるのです。ですからこそ、あの致命的とも言える「誤訳」が残念でならないのです。

☆☆☆☆☆☆★★★★★
(史上初の☆6つ!ただし「誤訳」により☆★各2つ減点?是非ともIMAXで公開し直して欲しい作品です!)
 
追記)字幕版を検証した結果、「大誤訳」と認定します。その理由は以下の通りです。
(観ていない人のために自主規制します)
冒頭のシーンと最後のシーンは対になっていて、
冒頭のシーンで「pest」と言っているところが
最後のシーンでは「pet」となっているのです。
これは明らかに韻を踏んだ使い方なので
「pest」=やっかい物
「pet」=すばらしい物
という対照的な意味で使っていると解釈するのが正しい。
ところが、日本語吹き替え版では
「pest」=害虫
「pet」=ペット
と訳していて、意味がちぐはぐになってしまっているのです。
ですから、観客のことを考えるのなら、
「乱暴(者)」と「相棒」とか、
「外敵」と「快適」といった韻を踏んだ超訳をするか、
無理に韻を踏まなくとももっと適切な言葉を使って欲しかったところです。
というわけで、「大誤訳」がなければ、★6つの評価をつけたいと思います。