APRIL 2009
Diary

4月18日「ばあちゃん走る!」
 向ヶ丘のヤマダ電機へ寄った帰り、自転車で歩道を走っていると、前方にばあちゃんが走っていた。年の頃なら70〜80代、いかにも普段着という服装だからジョギングというわけではなさそうだ。というか、あまりにゆっくりなので、無理矢理走っている感じだ。ハッキリ言って自転車走行の邪魔だ。こちらに気付く気配もないので、どうしたものかと、しばらく後についてゆっくり走行する。
 するとばあちゃん、前方の交差点で信号待ちしている子連れの主婦を見かけて、やおら枯れた声で叫んだ。
「さおり!さおり!」
件の主婦が気付いてこちらを振り向く。すると、ばあちゃんが懐から何かをを取り出して、頭上に掲げた。キーホルダーだった。
「あっ、ごめん」主婦が応えた。
 どうやらばあちゃん、家のカギを忘れて外出した娘を追いかけていたようだ。それにしても余程慌てていたのだろう。見れば、サンダル履きだった。息も切れ切れで、ようやく娘に追いつくと、娘の体にもたれかかってゼーゼーしている。こんな老人を走らせて、罪な娘だ。
「ごめん」もう一度主婦が言った。
 すると、ばあちゃんはなにも言わずニッコリ微笑んだ。
 この光景が脳裏に焼き付いて、わたしは帰るすがら考えた。ばあちゃんを走らせたのは何だろうか?やはり、娘に対する「愛」だろうか。そう考えると、何だか嬉しくなって、思わず顔がほころんだ。