FEBRUARY 2009
Diary

2月19日「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」

 109シネマズに「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」を観に行きました。本年度アカデミー賞最多ノミネートされた作品です。噂に違わず良〜い作品でしたね。

 1918年、ニューオリンズの老人ホームに捨てられ、ベンジャミンと名付けられた男の子は確かに赤児でしたが、その体は80歳の老人そのものでした。目は白内障に侵され、耳も遠く、腰は曲がり、手足も不自由で、医者からは余命幾ばくもないと診断されました。でも、彼は老人の体で生まれ、歳をとるごとに若返るという運命を背負っていたのです。まるで時計の針が逆回転しているかのように…。
 
 そして、ベンジャミンが12歳の時、6歳のデイジーと運命的な出逢いをします。ふたりの見せかけの時間は互いに逆行しているので、ふたりの人生はどうしてもすれ違ってしまいます。そんなふたりも人生の中間点でようやく交差するのですが、それも片時の幸せでしかありません。やがて訪れる皮肉な運命を前に苦渋の選択を迫られるのでした。
 
 奇妙な話ではありますが、何故かすんなり受け入れられるのは、やはり古くからの街並みが今でも残っているニューオリンズという土地柄なのでしょうか?デンゼル・ワシントン主演の「デ・ジャブ」の舞台でもありますし、どうしても時間との深い関わりを感じてしまいます。
 
 物語はベンジャミン(ブラッド・ピット)とデイジー(ケイト・ブランシェット)の関係を軸に、ベンジャミンの辿った数奇な人生について語られています。それはまるで「フォレスト・ガンプ/一期一会」のようでもあり、彼の旅を綴ったロード・ムービーのようでもあります。ただこの映画のユニークなところは、通常と全く逆の成長をする主人公の特殊性にあります。老人ホームに育ったベンジャミンは、周囲の人達が次々と亡くなっていく現実に遭遇し、否が応でも人との出逢いや関わりが如何に大事かを思い知らされるのです。そして、決して逆らうことのできない時の残酷性と人生の孤独を際立たせています。
 
 ともかく、こんな映画を可能にしたのはなんと言っても視覚効果技術の進歩のおかげでしょう。ベンジャミンの幼年期の顔はまさしくブラッド・ピットなのに体は子供という不思議。成長と共に若返っていくと、シワがどんどん無くなり、ついには眩いばかりの青年ブラッド・ピットが登場するという驚き。メイキャップやCG技術によって描き出された映像には、ただただ驚嘆するばかりです。今年のアカデミー賞にノミネートされたのも頷けます。
 
 脚本も演出も巧妙で、167分という長尺にも関わらず、決してだれることもなく一気に見せてくれます。ひとつにはベンジャミンが出逢う人々のユニークさにもよるのですが、何よりブラッド・ピットとケイト・ブランシェットの変貌と、それにあわせた熱演によるところが大きいと思います。そして、決して無理強いしないデビッド・フィンチャー監督の人生に対する真摯な態度が、観る者に深い感銘と余韻を残します。
 
 ☆☆☆☆★★★★

所詮人生は孤独なもの。だが、添い遂げる相手がいることの、なんと幸せなことか!
是非、カップルでご覧になることをお奨めします。