AUGUST 2008
Diary

8月1日「映画の日の感想」
 今日は映画の日なので109シネマズ・グランベリーモールへ映画を観に行ってきました。当然、全席エクゼクティブ・シートですよ!3本観たのですが、さすがに3本目は疲れて、少々睡魔に襲われてしまいました。3本目の評価が低いのは、そのせいもあるかも知れません。多分…。

 「カンフー・パンダ」
 まず、冒頭の2Dアニメからして素晴らしいんですね。このまま2Dで続けてくれても良いんじゃないかと思ってしまう程です。3Dアニメなのに、この様に2Dもちゃんと大事に描いてくれるところに、スタッフの技術的な底力とアニメに対する熱意を感じます。
 
 そして何より、シナリオが素晴らしいです。劇中の様々なエピソードが伏線となって最後のクライマックスにしっかり結実し、ラストに昇華される構成が見事です。こういうシナリオを見せられると、どうしても日本アニメにおけるシナリオの脆弱さが気になって仕方ありません。今はジャパニメーションともてはやされていても、肝心のシナリオを疎かにしているようでは、いずれは衰退の一途を辿るような気がしてなりません。
 
 それに、キャラクターの配分がこれまた見事です。メタボのパンダに龍の戦士をやらせるところもニクイですが、最も勇猛果敢なマスター・タイガーの声にアンジョリーナ・ジョリーのセクシー・ボイスを配するとか、小さな蟷螂に重い荷を持たせるとか、キャラの対比を実に上手く生かしていると思います。
 
 それと…、カンフーを扱った作品だけに、カンフーをアニメでどう描写するかが気になるところですが、これが実に本格的なもので驚かされました。特に鶴・蛇・猿・蟷螂・虎のマスター・ファイブは、それぞれの特徴を上手く反映した拳法を披露してくれますし、色々な訓練具や経絡秘孔突きなど、カンフー映画を良く研究しているなと感心させられます。聞けば、カンフーアクションについては、声でも出演しているジャッキー・チェンのお墨付きをもらったそうです。
 
 ギャグ満載の中に教訓も交え、大人も子供も楽しめる、誰にでも安心して勧められる作品と言えるでしょう。
 ☆☆☆☆☆★★★★
 
 「インクレディブル・ハルク」
 前作アン・リー版の情け無い「ハルク」は無かったことにして、本来の「ハルク」をアクション中心に描いた新版「ハルク」の誕生です。緑の大男ハルクを3DCGで大いに暴れさせるため、人間ブルース・バナーの葛藤部分を演技派のエドワード・ノートンに任せたのは正解で、作品をよりシリアスで深みのあるものにしています。
 
 また、アクションに定評のあるルイ・レテリエ監督の手腕には確かなものがあり、CG技術の向上も相まって、驚くようなアクションシーンを作り上げています。これなら原作ファンも納得の出来でしょう。
 
 今回キャストが一新されましたが、TV版ハルクを演じていたルー・フェリグノだけが、前作と同じ大学の守衛役で出ています。もちろん、原作者のスタン・リーはブルースの血液の入ったジュースを飲んで倒れるおじさん役でカメオ出演しています。また、ヒクソン・グレーシーがブルースに柔術の呼吸法を伝授する役で登場します。そして最後には驚くような人物が登場して、驚くような発言をします。彼らがレストラン「スタンリー」で一堂に会する日がやって来るのかと思うと、どうしても胸が高まります。
 ☆☆☆☆★★★
 
 「崖の上のポニョ」
 この作品は恐らく、三鷹の森ジブリ美術館で随時公開されている短編アニメ「くじらとり」の延長にあるのでしょう。「くじらとり」は幼稚園の園児が積み木の船に乗ってくじら獲りに出かける童話で、実験的な手描きアニメの秀作です。短編アニメとしては素晴らしいのですが、同じ手法で劇場用長編アニメを作るとなると、そこには大変なギャップが生じます。果たして、宮崎駿監督はその溝を埋めることが出来たのでしょうか?(因みに、「…ポニョ」のスタッフ・ロールの表記方法は「くじらとり」と同じです)
 
 結論として、様々な要素を取り込んだために、何とも収まりの悪いものになってしまったように思います。本来なら終始子供の視点で進めるべきところが、時々大人の視点に移るために、観客が拠とする視点を掴むことを阻害しているように思います。また、5才の子供の視点と大人の視点では物事の解釈に大きな開きがありますが、この作品ではその差が曖昧になっているのです。それを象徴するかのように、主人公の少年は両親を名前で呼び捨てにしますし、ポニョもデボン紀の生物を学名で呼んだりします。その結果、観客に大きな戸惑いと混乱を招くことになりました。いつものことですが…。
 
 ともあれ、単純にアニメとしては、海の描写や子供の細かい表情など、大変素晴らしいシーンも多々あります。継ぎ接ぎだらけのシナリオや穴だらけのストーリーを気にしなければ、観るべき所も多い作品だと言えるでしょう。 
 ☆☆☆★★★