JUNE 2007
Diary

6月1日 「伝説の狙撃手とイナゴ少女」
 
 もう6月です。今年は何かありそうなのですが、未だに予測不能の状態が続いています。そろそろ何か目標が見えてきても良さそうなものですが、もうしばらく暗中模索が続きそうです。う〜ん、どうなっているんでしょうか…?
 
 とはいえ、今日は映画の日です。折角ですので、気になる作品を観ておきましょう。帰りの時間も考えて、今日はワーナー・マイカル・シネマズ・港北ニュータウンへ行きました。そう、あの「伝説の狙撃手とイナゴ少女」を観ておきましょう。
 
 「シューター 極大射程」
 
 原作は、宝島社が選ぶその年の海外ミステリー№1に輝いた非常に面白い作品です。たしか文庫本の帯には、キアヌ・リーブスで映画化決定!なんて書いてありました。原作ではベトナム戦争を戦った初老(中年か?)の元海兵隊員で、イメージはクリント・イーストウッドなんですが、映画ではそのあたりの設定が現代にゴソッと変えられて、よりスピーディーな展開になっています。主役のマーク・ウォールバーグの風貌もマット・デイモン似で、ジェイソン・ボーンをちょっとマッチョにしたイメージです。
 
 元海兵隊特殊部隊の射撃の名手ボブ・リー・スワガーは、今は山奥でひっそりと愛犬のサムと隠遁生活をしていました。そこにアイザック・ジョンソン大佐が部下を引き連れてやって来ます。そして、ボブの狙撃の腕を見込んで、大統領暗殺計画を阻止するために協力して欲しいと依頼します。半径800メートルの警備網の外から大統領を狙撃するなら、一体どこから狙うか推測して欲しいというのです。ボブは、持ち前の愛国心と義務感からこの任務を受けるのですが、そこには恐ろしい罠と陰謀が隠されていたのでした…。
  
 さて、主人公は伝説のスナイパーと言われるだけあって、その神懸かり的な射撃の腕には惚れ惚れしてしまいます。標的との距離が遠くなればなるほど弾丸の軌道には多くの要素が影響しますが、その一番大きな要素はもちろん天候や風です。しかし極大射程ともなると、空気中の塵や地球の自転までも影響し、弾着するまでに6秒もかかるのです。映画の中でもスコープから覗いた画が映し出されますが、撃つタイミングも、狙う位置も、標的から大分ずれているところがリアルでゾクゾクします。
 
 こういう事細かな描写が素晴らしいので、スナイパーを扱った作品としてはまさに一級の出来と言っても良いでしょう。しかし話が進むに連れて、次第に雲行きが怪しくなっていきます。派手さを求めたのでしょうか、何故か爆破シーンばかりが目立つようになり、狙撃シーンの影が薄くなっていくのです。これはいかにももったいない。この映画最大の魅力を自ら放棄するなんて、製作者は一体どういう神経をしているのでしょうか?特に最後のクライマックスなんか、殆ど至近距離から撃ったりして、折角のタイトルが泣きます。どうせ見せるなら、派手な狙撃シーンで閉めてもらいたかったと思います。う〜ん、もったいない!
 
 劇中、銃に撃たれた時の応急処置とか、日用品での手術とか、爆弾の作り方とか、結構実用的なサバイバル術が紹介されていて、これも興味深かったです。それにしても、悪代官(悪徳政治家)と悪徳商人が笑いながら集まっているところに仕置き人がやって来るという、まるでTV時代劇のようなシーンには、思わず失笑してしまいました。
 
 ☆☆☆★★★(もったいない、もったいない!)
 
 
 「リーピング」
 
 もと聖職者で、今は「奇蹟」の真相を科学的に暴くことに心血を注いでいるキャサリンの所に、ヘイブンという町からひとりの教師がやって来ました。町で起こっている怪奇現象を調査して欲しいというのです。しかも町の人々は皆、その原因はひとりの少女にあると思っているらしいのです…。
 
 旧約聖書の「十の災い」を題材にした久々のオカルト・ホラー映画です。主役のキャサリンを演じるのが二度のアカデミー賞に輝くヒラリー・スワンクですから、ただのB級ホラーとは一線を画す作品に違いありません。確かに人物描写や意外などんでん返しなど、脚本は結構手が込んでいます。
 
 でもこれってどこかで観たようなネタだなあ。なんか「呪い村」だったり、「エクソシスト」だったり、「オーメン」だったり、「炎の少女チャーリー」だったり、「ローズマリーの赤ちゃん」だったり…で、少しも新鮮味がありません。
 
 もう世紀末は過ぎたことだし、この21世紀にオカルト・ホラーも無いでしょうが(2012年の黙示録というのがあるそうですけど…)、敢えてこのジャンルに挑戦したスタッフの熱意というか信心深さには敬意を表したくなります。だけど、散々使い古されたネタを、それ程の捻りもなく見せられるのは、少々辛い物があります。それも、信心のまったくない部外者ともなれば、全くの蚊帳の外。これで恐がれと言われても、そりゃ無理があるように思います。
 
 とはいえ、さすがにヒラリー・スワンクの演技は鬼気迫るものがあって、B級で片づけるには惜し過ぎます。VFXも素晴らしく、特にイナゴのシーンなんか凄いです。真っ赤に染まった川というか湿地帯も規模が大きく、思わず環境汚染を心配したくなるほどです。それに、よく見るとイナゴ少女が凄く可愛いじゃないか!でも、その魅力を引き出す詰めが甘いなあ。う〜ん、納得できないけど、斬り捨てるワケにはいかない…。そんなもどかしさの残る作品でした。
 
 ☆☆☆★★(イナゴ少女に☆ひとつオマケ。ヒラリー・スワンプなんちゃって…)