SEPTEMBER 2006
Diary

9月2日 「グエムル-漢江の怪物-」
 毎月続けていた映画の日の映画鑑賞を今月は取りやめて、わざわざ2日に怪物映画を観に行きました。噂の「グエムル-漢江の怪物-」です。カンヌでマスコミに一番評判だったという話は本当ですが、どこが気に入られたかのかが気になっていました。
 
 今日が初日でしたが、109シネマズグランベリーモールの「シアター4」は座席数がたったの102席で、それでもガラガラでした。う〜ん、ゆったり座れるのは良いけれど、何だか雲行きが怪しいなあ。やっぱりモンスター映画は受けないのかなあと、とても心配になってしまいます。
 
 ソウル市内を南北に分けて流れる漢江という幅の広い河があります。この河に注ぐ下水構に駐韓米軍が大量のホルムアルデヒドを流したという事件が実際にありましたが、この映画はそれをヒントに作られています。それが原因なのかは分かりませんが、とにかく突然巨大な怪物が真っ昼間に漢江の岸辺に現れ、そこにいた人々をパクパクと食べ始めます。そしてその最中、岸辺で飲食店を営んでいたパク・カンドゥの娘も怪物に掠われてしまいます。悲しみに暮れるパク一家ですが、とあることで娘の生存を確信した家族は、一致団結して娘の救出に向かい、この怪物と戦うことになります。
 
 これは紛れもない怪物映画ですが、単なる怪物退治というよりも、主眼は怪物に家族を引き裂かれたパク一家の悲哀というかドタバタ奮闘ぶりにあります。ですから、ハリウッド風のB級モンスター映画のノリを期待すると、思う存分肩すかしをくらってしまいます。この辺が「殺人の追憶」のポン・ジュノ監督らしさというか、面目躍如ということでしょう。特にラストは好みによって賛否が大きく分かれるところだと思います。私はこういうのもなかなか好きですけどね。(以下ネタバレにつき自主規制:文字を反転させると読めます)
 
 それにしても、この映画には奇妙な点がたくさんあります。娘が何故生きていたかという点は、動物の習性の例からみても有り得ないことではありません。それより不思議なのは、警察も軍隊も保健機構も科学者も、何故この怪物を捕獲しようとしないのかがさっぱり分かりません。なにしろこの怪物は謎のウィルスの宿主(HOST)とされているのですから、当然これを確保して、そこからワクチンを作るというのが本筋というものです。「アウトブレイク」だって、あれだけ宿主の猿を探すのに躍起になっていたのにね…。
 
 そうでなくとも、パク一家以外の人々の行動が全く理解できません。怪物に殺された他の遺族が怪物に懸賞を掛けることもなく、それ目当てのハンターが集まることもなく、怪物に興味を持つ科学者が現れるでもなく、怪物を商品化しようと企む企業もなく、怪物退治に燃える熱血刑事も登場せず、政府も全くの無策というのですから…もう、みんな何を考えているのやらさっぱり分かりません。

 
 まあ、それはともかく、この映画のVFXはさすがに素晴らしいです。ジ・オーファネージ、ケヴィン・ラファティ、WETAワークショップ、ジョン・コックス・クリーチャー・ワークショップといった、世界一流のスタッフが作り出した怪物は、とにかく見事の一言です。モンスターのサイズが10メートルというのも妙にリアルで、功を奏しています。特に真っ昼間に人々を襲うシーンなんかは、悪夢のようなインパクトがあって、怪獣映画史に残るほどの名シーンです。もしかしたら、アカデミー賞にノミネートされるかも知れませんね。
 
 とはいえ、ただのB級に徹していないところが、逆にカタルシスを無くしていることも事実で、それが日本の観客動員にどう響くかが気がかりです(韓国では大ヒットだそうですが、これも文化の違いでしょうか?現在の韓国が丁度日本における安保闘争の時期にあると考えれば、駐韓米軍を悪役視して、頼れるのが自らの力しかないという考え方が受ける理由もよく分かるような気がします)。正直なところ、手放しで人に奨められるワケでもなく、興行的にはかなり厳しい気がします。これが当たらないと、モンスター映画の灯が消えてしまいそうで、それが心配でなりません。…と言う意味では当たって欲しいけど。
 
 ☆☆☆☆★★(人に奨めるには、やっぱり微妙だなあ〜)