AUGUST 2006
Diary

8月18日 「セレニティー」
 アメリカでカルト的人気を博しながら、たった11回で打ち切りになったSFTVシリーズ「FIREFLY」が、監督の執念で映画化されたというニュースを知ったのは去年のことです。全米での興行収入を見ると、二週連続ベスト10入りはしてもその後はパッとせず、日本公開も危ぶまれていましたが、案の定日本では公開されることもありませんでした。その映画「セレニティー」がようやくDVDで発売されました。早速借りようとTSUTAYAに行ってみたら、なんと1枚しか置いてありません。日本ではほとんど認知されていないので仕方ないですが、極低予算C級映画の「アクアノイド」が3枚も置いてあるのに、「セレニティー」が1枚だなんて、そりゃあんまりだ!哀し過ぎるぞ。
 
 さて宇宙西部劇という趣向のこの映画ですが、「セレニティー」というのは主人公たちが乗っているオンボロ貨物船の名前です。もうオンボロすぎて、航行中にあっちこっちの部品が剥がれ落ちる始末。船の修理や乗員の給料のために、船長のマルコム・レイノルズは、いつもいかがわしい仕事を請け負って危ない橋を渡り続けています。
 
 ところが、旅先で逃亡中の兄妹を拾ったことから、セレニティーは宇宙を統治するアライアンス(同盟)が放った恐ろしい工作員につけ狙われるハメになります。どうやら、妹のリバーに何か重大な秘密が隠されているようですが、その謎を解くには辺境宇宙の蛮族リーヴァーズの領空を越え、その先にある未知の惑星に行かなければなりません。そして、セレニティーの乗員が未知の惑星に降り立った時、彼らはそこでアライアンスがゆらぐ程の重大な秘密を目の当たりにするのです。
 
 こうして、アライアンスの強大な軍隊やリーヴァーズと三つ巴の戦いを繰り広げながら、さらにオペラティブ(工作員)とマルコム船長の対決、人間兵器リバーの覚醒といった要素も絡んで、物語は怒濤のクライマックスへとなだれ込みます。
 
 出演者はTVシリーズと同じ役者が出ていますが、日本にはあまり馴染みがない人ばかりで、どうにも華がないのは寂しいところ。「イーオン・フラックス」や「ウルトラ・ヴァイオレット」といった作品が公開されたのに、なぜこれが日本未公開なのかというと、やはり有名スターが登場しないというのが大きな要因でしょう。
 
 主人公たちも、西部のならず者という連中ばかりで、感情移入しづらいところはありますが、とにかく圧倒的に不利な状況をいかに切り抜けるかという点で、観る者を引っ張っていきます。まるでジェシー・ジェームスの西部劇を観ているようです。
 
 でもやっぱり、主人公のキャラが今一つなのが如何にも惜しい。貨物船であるところや、ならず者であるところなど、共通点のあるハン・ソロと比べれば、一目瞭然です。人間兵器リバーはとても魅力的なキャラですが、何故かあともう一歩抜けきれないのが、これまた惜しい。
 
 しかし、この映画のビジュアル・エフェクトは凄い!スターウォーズに引けを取らないシーンもあります。製作費の都合でそれ程VFXにお金を掛けられなかったとは思いますが、スタッフの創意工夫で、低予算ながら臨場感あるシーンを創り出すことに成功しています。これはさすがに見事で、単なるB級SF映画と呼ぶには惜しい気がします。
 
 特典映像に、この映画が製作されるまでを綴った映像がありますが、ここでもサンディエゴ・コミック・コンベンションがSFファンタジー映画の製作に大きな役割を果たしていることが分かります。そもそも、スターウォーズだって、この大会での試写がなければ成功しなかったかも知れないのですから。