OCTOBER 2005
Diary

10月1日「とんでもない映画!」

 今日は映画の日なので、ワーナー・マイカル新百合ヶ丘へ行きました。今年はずっと映画の日の映画鑑賞を続けて来たのですが、必ずしも観たい映画があるというわけではありません。特に観たい映画が揃わない時は結構悩みます。今日も、本当なら「銀河ヒッチハイク・ガイド」と「シン・シティ」という組み合わせを考えていたのですが、「銀河…」は東宝系、「シン…」は東急・ワーナー系の映画館でしか公開していないので困りました。シネコンと言えども、両方観ることは出来ないのですね、これが。この配給会社の系列ってどうにかならないものでしょうかね?

 というわけで、今日選んだ作品は「シン・シティ」と「ステルス」になりました。「セブンソード」や「蝉しぐれ」も捨てがたいのですが、予告の映像に今一つ乗り切れなかったので、一応パスしました。さて、この選択は正しかったのでしょうか?
 
 「シン・シティ」はフランク・ミラー原作コミックの映画化ですが、原作者自ら共同監督を務めていることもあって、これ以上ない完璧な映画化に成功しています。ハイコントラストの白黒パートカラーで描く映像は、まさに原作コミックそのもの。しかもカット割りや構図までコミックとソックリ同じなんですから、もう天晴れと言うしかありません。これはもはや「コミックの映画化」と言うよりは、「映画のコミック化」ですね。この徹底した画作りが実にスタイリッシュで格好良く、「新世紀フィルム・ノワール」(フィルムじゃないけど…)と呼ぶべき画期的な作品になっています。
 
 しかも驚くことに、数多くの有名スターが出演していながら、殆どの男優は誰が誰だか判らない扱いをされています。主演クラスのミッキー・ロークもそうですが、ルトガー・ハウアーなんか全然気が付きませんでした。ベニ・チオ・デルトロも散々な扱いをされていますし、イライジャ・ウッドに至っては指輪の影響もあってか、とんでもないキャラに変貌しています。いや、このキャスティングは凄い!
 
 キャスティングも特異ですが、監督が3人というのも異例です。なんでもロバート・ロドリゲスは、フランク・ミラーと共同監督したいがために監督組合を脱退したそうです。監督組合の規定では、一つの映画に一人の監督名しか載せられないんですね。「007カジノロワイヤル」なんか監督が5人もいたのに、今はそんなこと出来ないんでしょうか?監督競作のオムニバス映画はどうするんだろう?
 
 とにかく、ロバート・ロドリゲスはこの作品を映画化することが長年の夢だったようで、その入れ込みようは相当なものです。何しろ製作・監督・脚本・撮影・編集それに音楽までやっているんですから(…と思ったら、いつもやっていたんだっけ)。ついでに言えば、ゲスト監督のクェンティン・タランティーノはもちろんのこと、フランク・ミラーも、やっぱりカメオ出演しています。例によって簡単に殺されていますけど。みんな仲良く楽しそうに映画を作っているようで、なんだか微笑ましいです。
 
 さて、実現不可能と言われた「シン・シティ」がこうして見事に映画化されたことによって、他のフランク・ミラー作品の映画化にも俄然拍車が掛かりました。「シン・シティ」の続編はもとより、壮大な「300」も映画化が決まり、ジョフ・ダロウ君との共作「ハードボイルド」の製作も再び動き始めることでしょう。私の希望としては、同じくダロウ君との共作である「ビッグ・ガイ」を是非とも映画化して欲しいのですが。なんてったって「ビッグ・ガイ」には私も登場しますからね。
 
 
 「ステルス」はトレーラーを観た段階で内容が知れてしまい、「またあのネタかい」などと高を括っていたのですが、実際の内容は予想を上回るトンデモ映画でした。まあ色々な意味で、予想を裏切る展開にはかなり驚かされてしまいます。そう、この感じは「踊る…シリーズ」に通じるモノがあると思います。(色々な映画のパク…とか、脳天気とか…)
 
 湯水のように大金を使いながら、結局盛り沢山で散漫な内容になってしまうという事は、この業界によくあるパターンです。プロデューサーと映画会社の重役との間には、こんなやりとりが繰り広げられているんでしょうね、きっと。
 
 「いったいいつになったら完成するんだね?製作費がかさむ一方だぞ」
 「はい、デジタル処理に時間が掛かりまして。でも、仕上がりを観て頂ければ判りますが、スター・ウォーズも真っ青の素晴らしい出来になりますよ。まさに御社の技術力の高さを世界に知らしめる作品です」
 「そんなことは判っている。それより、既に予算が大幅に超過しているんだ。本当にこの莫大な製作費を回収出来る見込みはあるのかね?」
 「もちろんですとも。映像は凄いし、アカデミー賞受賞俳優は出ているし、アメリカ海軍も全面協力しているし、エキゾチックなシーンあり、サスペンスあり、アクションあり、ロマンスありで申し分無しです。市場調査による観客動員要素は全て入っていますから、これで当たらないワケがありません」
 「そう言ってコケた作品は、過去に数知れずあるがな」
 「そ、そう悲観的にならずとも…。それに、御社の製品やロゴを作品中に沢山盛り込んでいますから、多少の予算オーバーは宣伝費と考えれば安いものですよ。ほら、あの新型ステルスに搭載されているコンピュータの名前だって…」
 「また上手いこと言ってごまかす気だな。しかし、あれはまるっきり『HAL』にソックリじゃないか。かえって悪い印象を与えないか?」
 「いえいえ、それを言うなら『アイアン・ジャイアント』と言ってくださいよ。感動的な結末に観客は好印象を持つはずです」
 「なんだ?どこが感動的なんだ?一人で勝手に納得するな!だいたいSFというのが気に入らんのだ。SFはなかなか儲からんからな」
 「何をおっしゃいます?これは『トップ・ガン』のようなミリタリー青春映画ですよ」
 「おお、そうだな。アメリカ海軍も全面協力しているしな。空母のシーンやステルスの発着艦シーンは確かに凄い迫力だ。しかし、どちらかというと『エネミー・ライン』の方が近くないか?」
 「まあ、そうとも言えますが…」
 「それともう一つ気になることがある。こんなにあちこちの国に無断で侵入し、勝手に爆撃するのはどうかな?アメリカの横暴という風に捉えられないか?世界配給にマイナスにならないかが心配で仕方ないぞ」
 「いや、それがステルスの目的ですし、この作品のキモなんです。密かに他国に侵入し、都心のビルを爆撃する。これがステルス戦闘機の魅力なんです。テロリストだろうが悪の枢軸国だろうが、ステルスの攻撃からは逃れられないのです」
 「うむ、ステルスの凄さは判るが、興行成績もステルスになっては困るぞ」
 「はい、そんなことはステルス(知ってるす)」
 お粗末。