JULY 2005
Diary

  7月6日 「さよならダンさん」」
 
 昔北海道に単身赴任していた時に、札幌の本屋で1冊の漫画本を手にしました。朝日ソノラマ版の「漫画家残酷物語」です。当時、私は様々な事情で漫画家になることを諦めかけていたのですが、この本に深く感動し、もう一度頑張ってみようと大変勇気づけられました。
 
 この本の著者が永島慎二さんです。その頃、漫画青年の間で絶大な人気を誇っていたカリスマ的漫画家で、「フーテン」に描かれた生き方は若き漫画家達にとっての模範であり、憧れでした。(もちろん、現在は全く違いますが…)
 
 その後東京に戻ってから、永島さんとお会いしましたが、飄々とした風貌と言い、話しぶりと言い、まさに漫画の中の「ダンさん」そのものでした。風に流されず、かと言って無理に逆らわず、しなやかに、自分らしく生きる。そんな姿を見て、本当に漫画家らしい漫画家だなあと、つくづく思ったものです。
 
 今日、永島慎二さんが亡くなったことがマスコミで報じられました。実は既に6月10日に心不全で他界していたのですが、本人の遺志により今まで公にされずにいたのです。自分の死を家族に口止めするところなど、いかにもダンさん(永島慎二さん)らしいなと思います。
 
 数年前、病気療養のため筆を折るとのことで、最後の個展が阿佐ヶ谷のいつもの喫茶店で開かれました。その時、来客一人一人に深々とお辞儀して、丁寧にお別れの挨拶をしていた姿が今でも眼に焼き付いています。思えば、それがダンさんとの最後のお別れでした。
 
 ちなみに今日は奇しくも私の父の命日でもあります。