2月1日 「ネバーランドと怪人」
 
 今日は映画の日です。誰でも1000円で映画を観られるのは有り難いことです。理不尽なレディース・デイに対抗して、余程の作品でない限り今年はこの日にしか映画を観ないことにしました。(でも本当は、映画を半額で観るもう一つ別の方法があるのですが…)月に一回ですから、なるべくこの日にまとめて観なければなりません。そうしないと見損なってしまう可能性もあります。しかし、さすがに続けて何本も観ると疲れてしまいます。ですから体調を考えて、今日は2本で我慢しましょう。
 
 で、まず1本目が「ネバーランド」です。ジェームズ・マシュー・バリが、公園である家族と出会ったことを切っ掛けに「ピーター・パン」が生まれたという事実に基づいた感動秘話です。この辺り、ルイス・キャロルがアリスという少女に出会って「不思議の国のアリス」が生まれたという経緯に似ています。
 
 創作には必ず何かの切っ掛けや動機が必要ですが、往々にして「一つの出会い」がその発端とか原動力となる場合が多いようです。そんなわけで、映画を観ながら何度もうなずくシーンが多々ありました。主人公のセリフと全く同じ事を考えていたりするので、観ていてちょっと気恥ずかしくなってしまいます。ですから、映画の趣旨とは別の感動を味わっていたかも知れません。
 
 その意味で、この作品がアカデミー賞各部門で候補に挙がったのも無理からぬ事だと思います。きっと観客とは別の意味で、アカデミー協会員たちの共感を呼んだはずです。う〜ん、こうなると今年の予想が益々混沌としてきたぞ…。
 
 アカデミー賞はさておき、この作品は非常に抑えたトーンで作られた名品と言えるでしょう。大げさな表現や極端な描写は控え、多分に観客の想像力に訴えるところがあります。大声で泣き叫ぶ映画が感動作だと勘違いしている人々にはピンと来ないかも知れませんが、感受性の豊かな人程感動出来ると思います。
 
 ちなみに映画の中で、バリの友人としてコナン・ドイルが登場します。考えてみれば彼の交友関係にはH・G・ウェルズやキップリング、トマス・ハーディなんかもいたんですね。凄い!

 もう一つついでに言うと、実際バリが出会った子供は5人いて、その一番下の子の娘がこの映画に出演しています。その娘とは、バリに舞台の感想を話すあのお婆さんです。ピーター役のフレディ・ハイモアはジョニー・デップと次回作「チョコレート工場の秘密」で再び共演するそうですので、そちらも期待大ですね!
 
 そして次に観たのが「オペラ座の怪人」です。さすが有名なミュージカルの映画化だけあって、セットも衣装も音楽も豪華絢爛です。それに、出演している俳優自ら歌も歌っていますが、みんな驚く程上手いんです。…と言いたいところですが、肝心要のファントムが今一つなんですね。
 
 いや、歌は上手いんですけれど、周りがみんな凄すぎるんです。そりゃそうですよ、オペラやミュージカルのベテランばかりじゃないですか!(と思ったら、カルロッタ役のミニー・ドライヴァーは元インテリア・デザイナーの役者だと!?…したら彼女は凄いですね!)クリスティーヌがファントムの歌声に惚れるのに、これじゃあ説得力が全く無いです。
 
 それにファントムはクリスティーヌと親子以上に年が離れているはずですが、ちょっと若すぎるんじゃないでしょうか?大体、仮面に隠した顔がそれ程おぞましくないというのも、ファントムの悲哀さを描くには弱い気がします。主役にネーム・バリューを持たせたかったのかも知れませんが、このキャスティングは如何なものでしょうか?
 
 とは言え、小悪魔クリスティーヌ役のエミー・ロッサムの歌はまさに天使の歌声です。ファントムの子守歌で閉じかかった眼も、彼女の歌声でパッと見開かれます。というわけで、今回の映画化で最大の収穫と言えば、まさに彼女の歌声ではないでしょうか。