8月28日 「A級とB級」
 
 ワーナーマイカル・シネマズ新百合ヶ丘で「LOVERS」と「ヴァン・ヘルシング」を観る。「LOVERS」はチャン・イーモウ監督の作品だし、チャン・ツィイー、金城武、アンディ・ラウのアジア3大スターの競演ということで、非常に興味深く観ることが出来た。
 
 相変わらず画面は美しく、特に冒頭におけるチャン・ツィイーの踊りは映画史に残るのではと思うほど素晴らしい。アクション・シーンも「HERO」のようなスケールや派手さはないけれど、素早く、堅実で、動きが実に見事だ。金城武の弓を射る姿勢もかなりきまっている。ワイヤー・アクションは地味だが、むしろかなり難易度が高まっていると思う。
 
 お話についてはネタばれになるので触れないけれど、実は少々破綻している点があるように思う。これはおそらく、重要な役で出演するはずだったアニタ・ムイの死で、シナリオを変更せざるを得なかったことが原因だろう。いずれにしても、切なく美しい作品なので、日本でもかなり受け入れられるに違いない。多分、難解な「HERO」よりもヒットするだろう。音楽も素敵なので、サントラは是非とも購入したいと思う。
 
 A級作品とB級作品の違いはなにかと言えば、それは恐らく、人間をちゃんと描いているかどうかの違いではないだろうか。その点で言えば、2億ドルもの製作費で作られた「ヴァン・ヘルシング」は間違いなくB級作品だ。もちろん、B級だからといって、悪いわけではない。要は娯楽作品として楽しめれば良い。ところが困ったことに、この作品はデコレーションが立派なだけハリボテという感じが強く、どうも楽しめない。
 
 ユニバーサルの3大モンスター(ドラキュラ・狼男・フランケンシュタインの怪物)に気兼ねしてか、登場する人間達の存在感が非常に希薄な感じがする。主人公のヴァン・ヘルシングでさえ、どうも魅力に欠けるし、感情移入もできない。だから、主人公達がどうなろうが少しもハラハラ出来ない。
 
 それで、肝心の3大モンスター達はどうかというと、こちらもやはり存在感が希薄で、折角のキャラが立っていない。CGの乱用で生身の実感が湧かないし、少しも恐くない。なによりモンスター達に対する愛がないから、全く魅力を感じない。これでは一体何のために作ったのかよく分からない。
 
 話としても、3大モンスターを上手く絡めているように見えるが、どうも生かし切れていないような気がする。むしろ、ヴァン・ヘルシングをモンスター・ハンターにせず、「リーグ・オブ・レジェンド」のアラン・クォーターメインの様な役どころにして、3大モンスターと共に別の強大な敵と戦うという話にした方がよっぽど3大モンスターのキャラを生かせるし、遙かに面白いと思う。やっぱり「リーグ…」に先を越されて、二番煎じの印象は避けたかったのかも?
 
 というわけで、採点が厳しいのはそれだけ期待度が高かったからだし、なにしろ3大モンスターが登場するのだから、期待するなと言う方が無理だ。「サンダーバード」といい、過去の遺産を汚すのはいい加減止めてもらいたいものだ。

 こうなったら、後はピーター・ジャクソンの「キングコング」とスピルバーグの「宇宙戦争」に期待しよう!