3月20日 「寒い!」
 
 昨日の小春日和とはうって変わって今日は雨。しかも寒い!春先はこのように寒暖の差が激しいので、非常に危険な時期だ。冬が去って、これから暖かくなると油断していると、急に寒くなって体調を崩してしまう。私が過去二回大病で入院したのもこの時期で、病院の庭に咲く桜で花見をしたのが懐かしい。
 
 あんまり寒いので、今日は外に出ないことに決める。家でDVDでも観てみよう。取り敢えずリュック・ベッソン製作の「ラ・タービュランス」を観る。いきなり東京から始まって、まるで「ロスト・イン・トランスレーション」みたいな話かと思えば、今度はいきなりカナダの僻地に舞台が移り、話は思わぬ展開を見せる。次々に登場する奇妙な人々。う〜〜ん、この雰囲気は昔観たビル・フォーサイス監督の「ローカル・ヒーロー」に近いモノがある。でもこの映画はそれ程生やさしいモノではない。
 
 主人公の周りで起こる様々な奇妙な出来事。その原因を解明することはなかなか難しいし、観客の殆どが理解出来ないであろう。「潮の満ち干」「磁場の異常」など、人々の奇行や偶然性を説明出来そうな言葉も出てくるが、この映画の主題は「シンクロニシティ」に他ならない。
 
 ユングの提唱したこの「シンクロニシティ」は「共時性」とも訳され、複数の非因果的出来事が意味を持って同時に起こる事を意味する。人々の無意識における深層部には共有している部分があり、これによって一見何の因果律も見いだせない偶然の共鳴行動を引き起こすという心理学の概念だ。だが、やがてこの考えは、ユングの患者でもあった物理学者ハイゼンベルグにも受け継がれ、今や広範な分野での偶然の共時現象を説明する概念となっている。
 
 ということで、「ラ・タービュランス」は「シンクロニシティ」を正面から扱った初めての映画なのだ。その意味で実に興味深い作品であり、個人的には大変面白かった。(ちなみに、森林火災消火のために海水をくみ上げた飛行機が偶然行方不明の○○を拾ったというエピソードは、実際にあった事件が元になっている。)