4月26日 「六本木ヒルズ」
 
 出町書房の斎藤クンがぶらりと東京にやって来たので、これ幸いと昨日オープンした六本木ヒルズへ一緒に出掛ける。東京人なら、こういう所に出掛けるのは「お上りさん」みたいで気が引けるものだ。でも今日は本当のお上りさんが一緒だから平気だ。
 
 斎藤クンが泊まっている赤坂プリンスホテルからタクシーで六本木に向かう。車内で六本木ヒルズの話をしていると、タクシーの運転手さんが興奮気味に「でかいでしょう。」と声を掛けてきた。丘の上にあんな大きい物を建てたから目立ってしょうがないらしい。それでも今後、広大な自衛隊跡地にはもっと大きな建物が建つらしいから、それまでの天下に違いない。こんな物がどんどん建つと、元々狭い六本木の空が益々狭くなって、どんどん息苦しい街になって行きそうだ。
 
 さすがに昨日グランド・オープンしたばかりとあって、六本木の街は観光客で溢れている。まあ、あれだけTVで宣伝すれば、無理からなるところだろう。テレビ朝日のスタジオも取り込んでいるから、TV局が勝手に宣伝してくれるというのもなかなか巧い戦略だ。
 
 それにしてももの凄い人混みなので、中を廻るのもなかなか大変そうだ。並ぶのも面倒なので、六本木ヒルズツアーの東京パノラマツアーに参加する。海抜250メートルの東京シティービューと東京スカイデッキを廻るという、まさにお上りさんのお上りツアーだ。なんと一般で2500円もするが、東京シティービューに入るだけでも1500円取られるし、東京スカイデッキはツアー客しか入れない。森美術館も入れて、ガイドも付いて、並ばず上に上がれることも考えれば安い物だ。…って、やっぱり高いぞ。とはいえ、高い所から東京一円を見下ろせるのはなかなか気分が良い。
 
 東京スカイデッキは要するに屋上で、ヘリポートもある。東京タワーの特別展望台は地上250メートルあるので、実は東京シティービューよりも高い。だが屋外で東京を一望出来るという意味では、東京スカイデッキが東京で一番高い所ではないかと思う。今日はたまたま天気が良かったのでいいけれど、悪天候や風の強い日はちょっと危険な気がする。いずれにしても、ここにはツアー客しか来れないので、天気が良ければここは案外穴場かも知れない。
 
 その後建物を下りながら、ショップなどを覗いてみる。ファッション関係の店が多く、私には関係のない店ばかりのようだ。レストランも一流処が揃っているようだけれど、どこもかしこも満員なので敬遠する。まぁオープンしたてだし、こんなものだろう。
 
 それにしても、この六本木ヒルズのマスコットキャラはなんとかならないものだろうか?建物全体の印象として、このキャラクターに代表されるように、薄っぺらで奥の浅い文化を感じてしまった。人々の動線を無視したようなレイアウトも疑問だし、何より建物としての面白さが少しも見られない。高いのが取り柄の建物なので、私はもう二度とここには訪れ無いだろうと思う。元々六本木はあまり好きでないしね。
 
 斎藤クンも私と同じ印象だったので、さっさと赤坂に戻ることにした。赤坂プリンスホテルに戻って、何だかホットする。何故かと思ったら、赤坂にはまだ自然が残っていることに気が付いた。そうか!我々は六本木の粗末で人工的な自然に、微妙な不協和音を感じていたんだ。ホテルからの帰り、石畳の道を横切る蛙の姿に、あるべき東京の未来像を見る思いがした。