3月24日 「第75回アカデミー賞授賞式!」
 
 去年は入院していて観られなかったアカデミー賞授賞式だけれど、今年はちゃんと観られて良かった。時期が時期だけに延期されるかという危惧もあったが、「どんな時でも芸術は大切だ!」というアカデミーの心意気で、ちゃんと予定通りに行われた。そして会場に集まった人々のそれぞれが、それぞれのやり方で戦争に対する意思表示をしていたのが良かった。
 
 「戦場のピアニスト」で主演男優賞を獲ったエイドリアン・ブロディがスピーチをした時は、会場の全員がスタンディング・オベーションで讃えた。ベストセラー「アホでマヌケなアメリカ白人」の著者で「ボウリング・フォー・コロンバイン」の監督・脚本・主演のマイケル・ムーアは長編ドキュメンタリー賞のスピーチで、彼を選んだアカデミー会員の期待通り痛烈なブッシュ批判をぶちまけた。
 
 結局、「シカゴ」が作品賞・助演女優賞・美術賞・衣装デザイン賞・編集賞・音響賞と最多6部門を獲得。戦争が暗い影を落とした今回のアカデミー賞授賞式だが、だからこそ歌とダンスの夢に希望の光を見出したのかも知れない。その意味で、「サウンド・オブ・ミュージック」のジュリー・アンドリュースをスタンディング・オベーションで迎え、「アラビアのロレンス」のピーター・オトゥールに名誉賞が与えられた事は、なかなか意味深い出来事だった。
 
 それはさておき、「千と千尋の神隠し」が長編アニメーション賞を獲得したことは実にめでたい。公開館数が当初たったの26館で始まり、最大でも151館と冷遇されていたけれど、この受賞でようやく800館に拡大されるようだ。「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔」が音響編集賞と視覚効果賞を獲ったこともやはりめでたい。何しろ視覚効果賞は「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃」を押さえての受賞だから凄いねぇ。
 
 ただちょっと残念だったのは、期待の長編ドキュメント映画「WATARIDORI」(WINGED MIGRATION)が受賞を逃したことだ。監督のジャック・ペランは「ミクロ・コスモス」や「キャラバン」でも凄い映像を見せてくれたけれど、今回の映像は本当に素晴らしい。俳優としても「ニュー・シネマ・パラダイス」に大人になった主人公役で出演していたが、この監督の作品の映像はいつも凄い。今回受賞を逃したのは、彼がフランス人だからという事もあるかも知れない。