1月28日「恐怖のドライブ」パリ→モン・サン・ミッシェル
 
 朝電話で起こされる。げげっ!すっかり寝過ごしてしまった。今日は念願のモン・サン・ミッシェルへ小旅行だ。小旅行と言っても片道350q往復700qの長旅だからかなり大変な旅になるだろう。それでも一応パリからの1日観光コースになっている。今回は車をチャーターして寄り道観光を敢行することにした。以前同じ手でロワール地方の城廻りをしたことがあるけれど、この方法なら観光バスの倍くらいの城に寄ることが出来た。もっとも、滅茶苦茶ハードな旅だったけれど。
 
 今回は近藤君という日本人ドライバーがピンチヒッターでやって来た。代役というのがなかなか怪しいけれど、日本人なら言葉が助かる。眠い目をこすりながら起きると、そこにSCEの山元さんから電話が入った。いかん、予定より遅れている。これじゃ昼までに目的地に着けなくなるぞ。さあ急げ!
 
 そんなわけで勝川克志さんを叩き起こしてホテルのロビーに駆け下りる。近藤君が待っていたので、地図で山元さんのホテルを確認し、慌てて出発する。そして凱旋門の辺りで山元さんを乗せ、一路西へと向かう。高速道路を突っ走り、ル・マンを越えて更に西へ。途中のドライブインで給油や休憩しながら単調な道をひたすら走る。
 
 通常ならパリからモン・サン・ミッシェルに行くには、モンパルナスからTGVでレンヌへ行き、そこからバスに乗り換える。車でもやはり同じ様にレンヌ経由で国道175号を行くのが普通のコースだ。でも今回は高速道路を途中で降りて、近道を行く。…つもりが、途中のラ・ポルトという街で思わぬ城を発見した。城というよりは城壁だけなのだが、妙に堂々としていて格好が良い。そこでしばらく周囲を観察して歩く。
 
 街中に突如ど〜んと威風堂々としたお城が出現するのだから、こういう古い町は侮れない。塔はかなり改装されているけれど、付近の街並みは嬉しいくらいに昔の面影を残している。それに、まだあまり観光地化されていないのが良い。山元さんも思わぬ出会いに少々興奮気味のようだ。車をチャーターした甲斐があった。
 
 更にボナブリィという小さな街では、ちょっと変わった形の教会を見つける。やや新しく改装した跡が見受けられるが、面白い建物だ。もっと細部を検討したいところだけれど、今日の目的は別にある。ここで油を売っていると時間も無くなるので、先を急ぐことにした。

 
そしてついにやって来ました、モン・サン・ミッシェル。一度は来たいと思っていたけれど、ようやく実物を拝むことが出来た。メビウスをはじめ様々な作家がこの「西洋の驚異」にインスパイアされ、多くの作品を残している。島全体が建物に覆われ、その切り立った崖の上には修道院がそびえる。満潮時に水面に映るその姿は、まるで天空の城ラピュタのようだ。
 
 サン・ミッシェルとはセイント・ミカエルの事で、その昔この近くのアヴァランシュ町のオベール司教の夢に大天使ミカエルが現れ、海に囲まれたモンの島の頂上に教会を建てよと命じたのが建造の始まりだそうだ。この辺りの湾は干満の差が激しく、昔はモンに渡るのも時間が限られ危険だったが、今では防波堤通路が出来て自由に行き来出来るようになった。(まるで江ノ島みたいだね)
 
 まぁ歴史はともかく、モン・サン・ミッシェルに上陸して中を探索しよう。狭い商店街を抜けて行くと食堂があるので、まずは昼飯を食べる。もちろん名物のオムレツは欠かせないが、牡蠣も美味しいなぁ。
 
 さて食事が終わったら坂を上り、大階段を上がって、崖の上の修道院に到着。門をくぐって修道院に入れば、そこは天空のワンダーランド。なにしろ長い年月を掛けて建て増しを続けたので、その時代その時代に合わせて様々な建築様式が見られる。大柱聖堂を抜け、院内のダンジョンを上に進むと回廊に囲まれた中庭があり、しばし休憩。順路に従い大食堂の更に奥へと進むと何故か螺旋階段があり、それをグルグル周りながら降りて行くと、驚くことにそこは入り口だった。
 

 というわけで、ついに念願叶ってモン・サン・ミッシェルに来てみたけれど、次に来る機会があれば、近くのホテルに泊まって朝や夜など様々な姿のモン・サン・ミッシェルを見てみたいものだ。とにかくこれで今回の旅行の目的の一つをクリアした。空模様も怪しくなってきたので、さぁパリに帰ろう。
 
 我々がモン・サン・ミッシェルを後にする頃から、次第に雲が厚く垂れ込め始め、とうとう土砂降りになって来た。あまりの豪雨に前は見えないわ、道は間違えるわで大騒ぎ。あちこち迷ったけれど、ようやく高速道路に出て一安心。ホットしたら、ドッと眠気が襲ってきて寝ていると、いきなり車がドライブインに入った。運転手の近藤君も眠くなってきたらしい。
 
 後で山元さんに聞くと、車が少し蛇行していたそうだ。うひょぉ!危ない危ない。近藤君に聞くと、今まで1日に最高600q運転したことはあるけれど、700qは初めてだと言う。ゲゲゲッ!桑原桑原。鶴亀鶴亀。危険が危ないぞぉ〜。
 
 それでも夜9時頃には何とか無事にホテルに辿り着いて、山元さんとはここでお別れする。運転手の近藤君もご苦労さんでした。いやぁ、命があって良かった良かった。次回の小旅行はもう少し安全な手段を考えなくてはね。
 
 ホテルの部屋に着くと、貴田さんから電話があって、谷口ジローさんと一緒に食事を済ませたところだそうな。そう言えば谷口さん達は明日日本に帰るんだっけ。谷口さんにもお別れを言って、私は寝床についた。今日は10時間も車に揺られてすっかり疲れてしまったぞ。
 
 すると勝川さんがこれから街に出て、買い物をして来ると言い出した。何?これから夜のパリに出るのか?道に迷わないように気を付けてね。狭い路地に入り込まないようにね。と、散々注意して送り出すしたが、なかなか帰って来ないので、次第に心配になって来た。
 
 何処かでパリジェンヌに声を掛けられて、酷い目に遭わされていなければいいけれど、とあらぬ妄想をかき立てていると、ひょこり勝川さんが帰って来た。何でも12時までやっている本屋を見つけたそうな。しかも驚きの品揃えだと?う〜む、そんな本屋があったとは驚きだ。それにしても夜中にプイと出掛けて、ちゃっかり秘密の本屋を見つけるなんて、さすがは嵐を呼ぶ男だ。