1月27日「マトリックス・イン・パリ」アングレーム→パリ
 
 
パリに帰る朝、お世話になったアパートのオーナー夫妻や下宿人の学生とお別れして、いそいそと駅に向かう。なにぶんTGVの本数が限られているので、同じ電車で帰る人々も多い。駅のホームで電車を待っていると、またまた偶然にチェリー・ロバンに会った。これは丁度良かった。実は昨日手帳を紛失してしまい、ジョフ・ダロウの電話番号が判らなくて困っていたのだ。その事をチェリーに告げると、パリに帰ったら調べてくれるという。いや有り難い。持つべきものは友達だ。
 
 駅のホームに自動販売機があったので、ここぞとばかり小銭を出してミネラルウォーターをしこたま買う。おかげで重い鞄がますます重くなってしまった。アングレーム9時2分発のTGV8420便に乗り込むと車内は漫画フェスティバル帰りの乗客で一杯だった。なんだかまだお祭り騒ぎのまま、一路パリへ向かう。
 
 モンパルナス駅に着くと、駅の構内でチェリーが待っていた。傍にに漫画家のオリビア・タダックもいたので一緒に記念写真を撮る。早速チェリーが私の携帯電話で奥さんに電話を掛け、ダロウ君の電話番号を調べてもらう。すぐに電話番号が判明したので、今度はダロウ君に電話を掛けてホテルに来てもらうことにした。
 
 チェリーとホテル「マジソン」へ行き、荷物を預けてチェックインの時間まで近くの中華料理屋で昼飯を食べる。その後再びホテルに戻ってチェックインし、ようやく部屋に荷物を運び込むと、程なくダロウ君が現れた。チェリーもダロウ君と会うのは久しぶりらしい。二人で何やら話をしているが、フランス語なので判らない。それからダロウ君の先導でダロウ君の家に向かう。何でもチェリーの奥さんの仕事場がダロウ君の家の近くだそうで、チェリーも一緒に出掛ける。
 
 途中、カルチェ・ラタンの美麗華(MIRAMA)で中華料理のテイクアウトを注文する。またまた中華かい!?何でもここはフランスの映画業界人がよく注文する人気店だそうで、いつも行列が絶えないのだそうだ。料理が出来るまでの間、近くのノートルダム寺院まで出掛けて時間を潰し、戻ってみると確かに行列が出来ていた。
 
 それから再び地下鉄に乗って北駅に向かう。ここでチェリーと別れ、我々はダロウ君のマンションへ。エレベーターで最上階に上り、ダロウ君の家に入る。家では娘のアリスとベビー・シッターが待っていた。奥さんのロレーンは映画監督で、今映画撮影の真っ最中だ。主演は何とアラン・ドロンの息子らしいから、どんな作品になるのか、今から楽しみだ。
 
 アリスにお土産を渡したらとても喜んでくれたのでホットする。さすが日本の玩具は良く出来ている。娘の心をゲットしたところで、ダロウ君に仕事場を見たいと言ったら鍵を渡してくれて、自由に見て来いと言われた。ただし強力なガードマンが待ち構えているから覚悟しろって?。ふふっ、望むところだ。彼とは一度勝負しなければと思っていたからね。
 

 エレベーターで一階に降りて、ダロウ君の仕事場に向かう。鍵を開けて中に入ると、おおおおぉ!!出たなエイジェント・スミス!勝負だ!ビシッ!バシッ!アチョッ!アタタタタタタッ!壮絶な戦いの末エイジェント・スミス(またの名をエルロンド)を倒した我々はダロウ君の宝物庫いや仕事場に侵入した。うひょおおっ!もの凄いお宝いや資料の山だ。しかも半分は日本の物じゃないか。ううむ、ポスターの管理も完璧だ。この天井の高さが羨ましいぞ。この整理の仕方は私も参考にしたいなぁ。
 

 お宝を物色した後、我々は再びダロウ君の家に戻って夕食をご馳走になる。と言っても、美麗華(MIRAMA)のテイクアウトなんだけれど。これが美味いのなんのって、成る程人気があるはずだと至極納得してしまった。いやぁ、お腹が一杯になったら無性に睡魔が襲ってきたよぉ。さすがに旅の疲れが溜まっていたのか、先程の死闘のせいか、ついつい眠りこけてしまった。
 
 「シッカリシロ!タモリ」とダロウ君の声で目が覚める。夜も更けたのでアリスも眠る時間だ。奥さんに会えなかったのは残念だけれど、我々はタクシーでホテルに帰る事にした。ダロウ君とは又明後日会う予定だし、明日は小旅行が控えているので今夜は早く帰って睡眠をとらなければ。それにしても眠い眠い。本の荷造りもしなければいけないけれど、今夜はそんな気力も無いなぁ。