11月1日「遠すぎた空港」

 今日は帰国するので、その前に観光客らしくロッテ百貨店の免税店に行くことにした。ブランド品には全く興味がないけれど、残ったウォンを出来るだけ使い切りたいので、ここでちょっと買い物をする。百貨店の玩具売り場が気になったので行ってみたら、幼児用の玩具しか置いていないのでガッカリ。よくよく考えてみたら、市内にも玩具屋やキャラクターグッズの店をほとんど見かけない。もちろんフィギュアやアニメの店や漫画専門店なんてもってのほかだ。
 
 古川タクさんと玩具屋を探し回っているうちに、地下街に大きな書店を見つけた。DVDやCDも売っているので、これ幸いと入ってみる。漫画の本もかなり置いてあるけれど、日本の漫画が大半を占めている。ところがCDに関しては日本のCDは1枚も無い。音楽CDに関してはまだ政府の許可が下りていないようだ。
 
 色々物色した中で、面白そうな本を見つけた。本のタイトルは読めないのでよく判らないが、アメリカやヨーロッパなど海外の漫画を紹介している本だ。特にメビウス等フレンチコミックに沢山ページを割いていたり、アメコミでも創世記の作品やアンダーグラウンド系をしっかり押さえているところが素晴らしい。著者は韓国人らしいが、かなりの見識に驚かされる。残念ながら文字がサッパリ読めないので、早く日本語版が出ることを望みたい。(もう出ているかも知れないけれど…)
 
 もう一つ、韓国製アニメのDVDを買う。もちろん言葉も文字も判らないけれど、幸い英語の字幕も付いているので助かる。タイトルは「my beautiful girl Mari」。セルアニメのタッチを残すフルCG作品だ。この独特なキャラに好き嫌いはあるかも知れないけれど、かなり良質なファンタジー作品だ。美術もなかなか素晴らしい。後でメイキング映像を観て判ったことだが、スタッフ自ら登場人物のモデルになっている。ほとんどパワーマックG4で作り上げていたり、モーション・キャプチャーと称しながらロトスコープで描いているところが、いかにも手作りという感じで好感が持てる。
 
 さて買い物も済ませたし、ウォンも残り少なくなってきたので、韓国最後の食事に向かう。毎日ヘビーな食事をしてきたので、最後はお粥と軽く済ますことになった。観光本で見つけた「ソゴン・チョクチプ」というお粥専門店がこの近くにあるらしいので、早速その店に向かう。しかし、これがなかなか見つからない。なにしろ看板が全然読めないから大変だ。ようやく路地の奥に件の店を発見し、入ってみる。
 
 店の中はさすがに昼時ということもあって、お客で一杯だ。お腹もそれ程空いていないのでカキと椎茸の粥を注文してみる。今回はまだ石焼きビビンバを食べていないのが心残りだったけれど、このお粥は思わぬホームランだった。こりゃ美味い!韓国に来て色々食べて、どれもこれも全部美味しかったけれど、これが極めつけだ。今まで食べたカキ料理の中でも一番かも知れない。しかも安いから泣けてくる。調理が絶妙で、カキの臭みが全くなく、それでいてあっさりした味付けが嬉しい。いやぁ、韓国に焼き肉を食べに来て、お粥に一番感動してしまった。
 
 食事も済んで、一端ホテルに戻り、それから空港にバスで出発する。いよいよ帰国なので、空港のバーガーキングで残りの小銭を使う。おおっ、見事に使い切ったぞ!何しろウォン硬貨は日本の硬貨と色も形も大きさもソックリだから、下手に残すと日本で間違えて使ってしまう可能性がある。いやホント、紛らわしい。搭乗手続きを済ませ、17:50発のJL956便で成田に向かう。2時間後にはもう日本に到着…となるはずだった。
 
 帰りの便の機内で「スクービー・ドゥー」を観終わったところで、機内に到着案内が流れた。それによると、成田の気象状態が悪いらしい。悪天候ったって台風が来ているワケじゃないから、そう大したことはないだろうとタカをくくっていたら、どうも様子がおかしい。機体が降下し始めたと思ったら、今度は上昇し始めるし、何だか着陸し損なっているようだ。窓の外を見ると、翼の向こうに数個の光の点滅が見える。ゲゲゲッ!他の旅客機も着陸出来ないで、成田の上空を旋回しているぞ!ふと「ダイハード2」を思い出して、このまま着陸出来ないで燃料切れになったらどうするんだろうと不安になった。
 
 窓から下を見ると、雲が低く垂れ込めていて、その合間から地上の光が漏れている。まるで「未知との遭遇」のように神秘的な光景だ。この雲の低さから見て濃霧なのだろう。でも、濃霧ぐらいだったら着陸出来るはずなんだけどなぁ。機長の話では悪天候としか言わないので、実際のところ地上がどんな状況なのかは判らない。まぁ仕方ないので、もう1本映画でも観ていよう。
 
 次に観たのが「マイノリティ・リポート」。凄い映像だが、何だか暗い話だ。凝りに凝った映像の作りで画面の密度が高いから、座席の小さな液晶画面で観るのはちょっとつらい。劇場の大画面で観直したい作品だ。目が疲れるので途中で観るのを止め、麻雀ゲームを始める。初めてやってみたけれど、機内でゲームというのはなかなか良いものだ。機内で対戦ゲームが出来るようになれば結構盛り上がるかも知れない。機内麻雀大会で優勝者は料金半額とかにしたら面白いと思うけどね。
 
 機内放送が流れ、機長は成田に着陸することを断念し、これから羽田に向かうとの発表があった。小さく歓声が上がる。羽田の方が帰るのに便利だからね。でもこの決定が後で大変な事態を招くとは、この時誰も想像していなかったのだ。唯一人を除いて…。続く!