9月8日

 宅急便で荷物が届く。何かと思ったら、先日注文した「ミステリーゾーン」のDVDだった。以前から買おうとは思っていたが、全シリーズ揃うかどうかも怪しいし、後でBOXが出ることも充分考えられるので躊躇していたのだった。

 「ミステリーゾーン」(The Twilight zone)は1959年10月2日からアメリカCBSテレビで放送された、初めてのファンタジー・ドラマ・シリーズで、その後のファンタジー・ドラマ・シリーズの先駆けとなった作品だ。毎回ホスト役のロッド・サーリングのナレーションから始まり、ナレーションで終わるというアンソロジー形式はその後の多くのドラマ・シリーズに継承され、各エピソードのエッセンスは様々な形でその後のテレビドラマに幾度となく焼き直しされている。ハッキリ言って、この「ミステリーゾーン」が無かったら、「スタートレック」も「Xファイル」も存在し得ないのだ。

 ホストのロッド・サーリングは企画、製作、脚本まで手がけ、自ら全156話の内92話のシナリオを書き、エミー賞を6度、ヒューゴ賞を3年連続受賞している大天才だ。彼はTVの他に、「五月の七日間」「クィーン・メリー号襲撃」「猿の惑星」といった映画の脚本も書いていて、私が最も尊敬するシナリオライターの一人でもある。彼の語り口はレイ・ブラッドベリ色が強いが、それもそのはず、元々この「The Twilight zone」の企画はシナリオをレイ・ブラッドベリが担当する予定だった。実際ブラッドベリのシナリオは1話だけに留まったが、シナリオのロッド・サーリングやリチャード・マシスン(「トワイライトゾーン」「激突!」「ある日どこかで」「奇跡の輝き」「ヘルハウス」etc.)らの相談役として、様々な影響を与えている。

 「ミステリーゾーン」の面白さはそのバラエティーに富んだシナリオの妙にあるのだが、とにかくそこに結集した才人達の顔ぶれが凄い。音楽をバーナード・ハーマンやジェリー・ゴールドスミスといった、今やハリウッドの巨匠と呼ばれる人達が担当していることも凄いが、リチャード・ドナーをはじめとする監督陣も凄い。

 そして何といっても驚くのが出演陣だ。ロバート・レッドフォード、バート・レイノルズ、ロバート・デュバル、テリー・サバラス・リー・マービン、ピーター・フォーク、デニス・ホッパー、ジェームス・コバーン…。中にはチャールズ・ブロンソンとエリザベス・モンゴメリー(「奥様は魔女」のサマンサ)の二人だけの共演なんていう話もある。エリザベス・モンゴメリー(サマンサ)と言えば、ディック・ヨーク(ダーリン)もディビッド・ホワイト(ラリー)もアグネス・ムーアヘッド(エンドラ)も出ている。ウィリアム・シャトナー(ジェームスT・カーク船長)レオナード・ニモイ(Mr.スポック)ジョージ・タケイ(ヒカル・スールー=カトー)の「スタートレック」三人衆も出演している。

 しかもこれらのスターの魅力が話の中でいかんなく発揮されるような演出になっている。例えばバスター・キートンが出演する話は無声映画風演出だし、演技派のアグネス・ムーアヘッドが出演する話はなんと台詞無しの完全一人芝居だったりする。TV創世記だから出来た実験だったのかも知れないけれど、とにかくこれ程意欲的で刺激的なTV番組は「ミステリーゾーン」以降あまりお目にかかったことが無い。いや、まだ「アウター・リミッツ」や「世にも不思議な物語」「ヒッチコック劇場」「コンバット」「ルート66」「サンセット77」…沢山あるか。でも昔の番組ばかりなのがちょっと寂しいね。

 ちなみに昔TVの仕事をしていた時、某局のMディレクターから「何か面白い番組の企画ないですか?」と聞かれたので、即座に「『ミステリーゾーン』みたいな番組作ってくれませんかね?もし作ったら尊敬しちゃうよ。」と答えたことがある。それからだいぶ経って、本当に「世にも奇妙な物語」という番組が出来たのには驚いたなぁ。ストーリーテラーがタモリだし…。