6月14日

 朝から世田谷の病院へ出掛けようと家を出ると、目の前を紺色のシャツを着た青年が自転車で走り去って行った。バスに乗って多摩川を渡り、向ヶ丘遊園駅に向かう。小田急線に乗ると車内は紺色のシャツを着た若者であふれていた。

 病院に着くと、いつも通りロビーは人でごった返していた。受付で並んでいると、どうも今日は薬を処方してもらうだけの人が多いようだ。もちろん私も今日は薬をもらうだけで帰るつもりだ。だって今日は3時半から「日本×チュニジア」戦があるんだもの。病院に長居は無用だ。

 とっ、ここで不測の事態が!入院中同室だったI氏にバッタリ会ってしまった。I氏は人当たりも良く、話し上手な人なので、ついつい話し込んでしまう。そして、久しぶりの対面だから積もる話もあるので、一緒に昼飯でもという話になってしまった。おおっ、時間までに帰れるかちょっと不安になってきたぞ。でもI氏も4時までに芝浦まで行かなければならないと言うから、そんなに長引くことはないだろう。

 というわけで、I氏のイプサムで近くのロイヤルホストに行く。おおっ、ロイヤルホストに行くのは退院以来初めてだ。もちろん二人とも肉は食べられないので、サラダとかお粥なんかを注文する。あれこれ話しているうちに携帯電話の話になって、この間買った「au」のナビゲーションが便利だという話になる。するとI氏はもと東京トヨペットにいたので「au」なら安く入るよと教えてくれた。何故かというと「au」はTOYOTAの系列なのだそうだ。成る程、それでナビゲーションの提供がTOYOTAだったのか。

 そうこうしているうちに試合開始の時間が迫ってきた。そろそろ帰らなくてはと切り出すと、I氏が最寄りの駅まで送ってくれると言う。それじゃあお願いしますと、イプサムに同乗して最寄りの駅に向かうことになった。

 それにしても最近の日本車は便利になったもんだね。ナビゲーションもワイドで立体地図は当たり前。目的地までの到着予想時間やETCメニューも出るんだね。それに「バックモニター」はもちろん、ラジエータグリル中央に付いているプリズム内蔵カメラが見通しの悪い交差点やT字路などで車両左右方向の状況を画面に表示するという「ブラインドコーナーモニター」まで付いている。

 車の装備に感心しながら話をしている内に、ふと道路が空いている事に気が付く。これもやっぱり「日本×チュニジア」戦の影響だろうか?I氏も、これなら家まで送ってあげられそうだと言う。それはありがたいので、お言葉に甘える事にした。うむ、さすがに空いている。どこもかしこもスイスイスイと、車は全く渋滞に引っかかることもなく、あっという間に家に着いてしまった。おかげで充分キックオフに間に合った。いや、Iさんありがとうございました。

 さて試合の方は大方の予想通り、終始日本が優勢を保ったまま、日本の勝利に終わった。歴史的な決勝トーナメント出場を決めた瞬間だ。日本の勝利は確信していたけれど、ずっとその事は口にしないでいた。言葉に出すと夢が逃げるような気がしたからだ。その夢が叶った今、新たな夢が始まる。もちろん、その夢については語らない。とにかく、これでようやくスタートラインに立ったところだ。臆せず、油断せず、ひたすら前に進んで攻めきって欲しいと思う。