IMPRESSION
映画評
注意!映画の内容について、ネタばれがあります。

(評価:☆は個人的好き度、★はお奨め度。ただし赤はマイナス!)

2006年から新作順に並べ替え、DVD鑑賞作品も少し採り上げるようにしました。
お奨め度の目安
★…観るのはどうかな?★★…観たいというなら止めはしない★★★…普通に楽しめるかも
★★★★…出来れば観てね★★★★★…是非観て欲しい!
WMCSY:ワーナー・マイカル・シネマズ新百合ヶ丘/WMCT:ワーナー・マイカル・シネマズつきみ野/
T109GM:109シネマズ・グランベリーモール/T109K:109シネマズ川崎/WMKN:ワーナー・マイカル・シネマズ港北ニュータウン他

TCK:TOHOシネマズ川崎T109H:109シネマズ二子玉川

2016年
「シン・ゴジラ」
T109H
8/4
★★★★★
見たか、これが本当のゴジラだ!
(
野村萬斎のゴジラはどっしりしていて、まさに神の身業!)



 今日は久しぶりに109シネマズ二子玉川へ行きました。実は先日も「インデペンデンスデイ」を観に行ったのですが、出来があまりの体たらくだったので、日記に書く気も無くなってしまったのです。もっとも、ポイントを使ってタダで観たのですから、あまり文句も言えませんが。
 今日観たのは「シン・ゴジラ」です。総監督の庵野秀明はアニメでは成功しているものの、実写映画はどれも頭をかしげる出来でしたし、監督の樋口真嗣監督ときたら、「進撃の巨人」という眼も当てられない作品を作った張本人ということで、正直この新しいゴジラにも期待していませんでした。
 大体、ハリウッドで作られた、ギャレス・エドワーズ版ゴジラを観たたばかりです。CG技術はもちろんのこと、予算も製作期間も人材も圧倒的に劣るなかで、今更日本で作る必要があるのか?世界にみっともない作品を発表しないで欲しいと願うばかりです。
 そんな不安な気持ちで観た「シン・ゴジラ」ですが、意外や意外。なるほど、そう来たか!と、思わず膝を打つ、見事な特撮映画に仕上がっていました。
 まず、邦画の欠点である、俳優の自己満足的演技を極力廃し、子供だましにも、マニアックな演出過剰にも陥らないように、ポリティカル・フィクションとして作り上げたところが上手い!ハリウッド版のように、個人の視点で、家族や、愛情を描くこともなく、ただひたすらに政府とゴジラの対決を描くことに専念したのです。この攻防は、まるで「プロジェクトX」を観ているような高揚感を与えてくれます。
 次に、ゴジラの強さを強調する演出が上手い!とにかく、今回のゴジラは強いのなんのって、もはや最強最悪です。その強さを演出するために、架空の兵器を廃し、自衛隊の全面協力のもと、丁寧に自衛隊の兵力を描写したおかげで、これだけ強い自衛隊でも倒せないのかという感じが良く出て、絶望感さえ覚えます。
 そして、貧弱なCG技術だけに頼らずに、あえてミニチュア・ワークを多く併用したのが功を奏している!CG合成に頼るハリウッドではなかなか描写出来なかった(CG合成がばれるので避けていた)真昼間の戦いを、自然光の下ではより本物に見えるというミニチュア・ワークの利点を効果的に使って難なくクリアした点は流石です。政府のゴジラ対策チームによる奇想天外な作戦といい、斬新なアイデアを惜しげもなく投入しているところも、まさに東宝特撮映画の真骨頂と言えます。
 そして、そして、要所要所に流れる伊福部音楽の勇ましいことよ!極論で言えば、これだけでも、日本でゴジラ映画を作る意義があります。
 そんなわけで、今回の「シン・ゴジラ」は非常に庵野色の強い作品ですが、まさに東宝特撮映画の集大成とも言える作品に仕上がっています。
 邦画の弱点を廃し、そして逆手に取って上手く作り上げた「シン・ゴジラ」ですが、果たして興行的に大成功を収めることが出来るのか?特撮日本の今後を占う意味でも注視したいと思います。
「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」
T109H
1/2
☆☆☆☆★★★★
(まずは見事に復活を遂げました。次回作に期待します)
 どこから見てもSWですので、SWファンの方は安心してご覧ください。ルーカスの会社がネズミに買収されたことで危惧された例のお城も出てきません。というか、その痕跡すらありません。
 ルーカスが監督を降りて、その後を任されたJ・J・エイブラムス監督の奮闘の甲斐あって、見事にSWの世界を復活させています。その点は、スタートレックの場合と同様に、よく頑張ったと思います。ともかく、随所に溢れる旧SW愛を感じさせるシーンやキャラの数々から見ても、ファンに対しては有無を言わさないほどの細心の注意を払って作られていると思います。それは配給会社も同様で、お城のクレジットを出さない英断や、翻訳も林寛治にしたことは、何よりSWファンのことを思ってのことでしょう。
 そんなわけで、SWファンにとっては感涙の作品に仕上がっていますが、逆にファンに媚びすぎるという過ちも犯しています。ファン待望の作品ですから、それも仕方がないことですが、どうしても旧作の模写に陥ってしまい、既視感を受けるので、作品が本来もっていたセンス・オブ・ワンダーを阻害してしまっています。
 これが原作者のルーカスならば、敢えて期待を裏切る作りもできたでしょうが、J・J・エイブラムスには、とても荷が重すぎて、もちろんそんな恐ろしいことはできません。それは仕方がないことですが、誰も見たことがないような全く新しい衝撃を受けたいと、昔ながらのSFファンは、いつでもSWに期待してしまうのです。
2015年
「ピクセル」
T109H
9/13
☆☆☆☆★★★
(アーケードゲームにハマった人限定)
 アーケードゲーム世界大会のビデオ映像をヴォイジャーに乗せて宇宙に送ったら、宇宙人に対しての宣戦布告と見なされたから、さあ大変。ゲーム画面と同じ立体ピクセル状態のモンスターが地球を襲ってきたのだった。
 もうアイデアからして荒唐無稽、いや奇想天外です。最初から、頭の固い人お断りですから、あれこれ文句を言うのは野暮です。とにかく、昔を懐かしんで楽しむことが肝要な作品と言えます。メーカーの垣根を越えて、あんなキャラやこんなキャラが立体映像で共演することも、嬉しい驚きです。
 例によってエンドロールの後に、とんでもないオチがついていますので、是非見逃さないように。というか、公開何週もつか不安でなりません。
「カルフォルニア・ダウン」
T109H
9/13
☆☆☆☆★★★★
(天災のトラウマのない人限定)
 カリフォルニア州を南北に走るサンアンドレアス断層。ここを震源として、大地震の連鎖が起こる。レスキュー隊のヘリのパイロットである、レイは妻や娘の危機を知り、他の任務を顧みず、妻や娘の救助に向かう。まず、ロサンゼルスの高層ビルの屋上に避難していた妻を救うと、今度は妻と共にサンフランシスコの高層ビルの地下に取り残された娘を救いに、陸海空とあらゆる乗り物を駆使して、次から次へと迫る天変地異や難関をくぐり抜けて行く。
 まず、レスキュー隊のパイロットが、任務を投げ出して家族の救出を優先するなど、日本では考えられないことですが、家族至上主義のアメリカならではのことでしょう。ともかく、これは家族愛を描いた、堅いこと抜きのアクション娯楽作品なのだと、割り切って観るべきでしょう。なにしろ、地震や津波の描写が凄まじいので、これらにトラウマのある人にとっては目を覆いたくなるシーンの連続ですが、裏を返せば、それだけアメリカ人は天災に関しても、羨ましいほどノー天気だと言えます。それは自然を克服し、国土を開拓してきたという自信の現れなのかもしれません。
 天変地異を扱っても、家族愛という一本筋を通して描いているので、観ていて清々しささえ感じてしまいます。その意味で、映画としては大変よくできています。
 昔、「大地震」というロサンゼルス大地震を扱った作品をセンサラウンド方式という低周波で振動させる方式で上映していましたが、実際に大震災を経験した今となってはそれも夢物語。本来ならIMAX4Dで観たいところですが、やはり日本では無理かもしれませんね。
「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」
T109H
8/09
☆☆☆☆☆★★★★
イーサン・ハントは謎の無国籍スパイ組織「シンジケート」を追っていたが、ロンドンで敵に拘束されてしまう。一方、ハントたちの無謀な活動が批判を浴びて、IMF自体が存亡の危機に瀕していた。謎の女の助けで窮地を脱したハントだが、IMFが解散したばかりか、あらぬ嫌疑をかけられCIAから追われる身となったことを知り、地下に潜って、独自に「シンジケート」を探り続けるのだった。
 いや、トム・クルーズは偉い。50歳も過ぎるのに、離陸する軍用機にしがみ付くなど、狂気の沙汰としか考えられないアクションを自ら行い、バイクに乗って高速チェイスするわ、水中で長時間息を止めながらのアクションをするわで、もうホント頭が下がります。
 そんなトム・クルーズの独り舞台かと思いきや、今回はレベッカ・ファーガソン演じる謎の女性諜報員が七面六臂の大活躍で驚かされます。果たして彼女は敵か味方か?その微妙な加減も良い感じです。
 脇を固めるサイモン・ペックらも適材適所でキャラが立っていて、良い味出しています。
 今回、アレンジながら、ようやくメインテーマ以外のオリジナル曲も流れ、ちゃんと長官も誕生したのは、これから原点回帰に向かうという現れか?
「ジュラシック・ワールド」
T109H
8/09
☆☆☆☆★★★★
16歳のザックと11歳のグレイの兄弟は叔母がマネージメントする「ジュラシック・ワールド」に招待されて、パーク内を自由に見学していた。同じ頃、パークの最高責任者であるサイモン・マスラニの指示でヘンリー・ウー博士が複数のDNAを掛け合わせて創り出した最強恐竜インドミナス・レックスの管理状況を
調べるために、元軍人でヴェロキラプトルの調教に従事していたオーウェンが呼ばれる。ところが、この新しい恐竜は、創造者の博士も予測しなかった能力を発揮して、まんまと檻から抜け出してしまうのだった。
 こうして、人間のエゴが生み出した人造恐竜がパーク内で殺戮を繰り返す中、それを知らない兄弟は、ジャイロスフィアに乗って恐竜たちのいるエリアに入ってくのだった…。
 初期のジュラシック・パークでは、琥珀に閉じ込められた蚊から取り出した恐竜のDNAをカエルのDNAで補完することで復元し、ワニの未授精卵に注入して再生に成功していました。ところが、その後の遺伝子操作技術の進歩から、ジュラシック・ワールドでは、様々な遺伝子を掛け合わせて、全く新しい恐竜を創り出すことまでできるようになりました。
 テーマパークに観客を呼び続けるためには、毎年新しいアトラクションを開発しなければなりません。それはジュラシック・ワールドでも同じことで、観客を飽きさせないために、新しい恐竜を毎年発表し続けることになります。そして、観客が喜ぶように、より巨大でより凶暴な恐竜を追求した結果生まれたのがインドミナス・レックスです。しかし、良かれと思って改良したものが仇となって、思わぬしっぺ返しを受けることはよくあることで、この新しい恐竜の思わぬ能力のために、ジュラシック・ワールドは恐怖のるつぼと化すのでした。
 この大作を任されたコリン・トレボロウ監督は「彼女はパートタイムトラベラー」という小品を初監督したばかりという新人ですが、最近こういうケースが多くて、正直なところ少々心配していましたが、まわりの大物スタッフの助けもあって、充分見られる作品に仕上がっています。ただ、もともと人間描写に関心がある監督のせいか、どうもサスペンスや恐竜の存在感などの部分に希薄なところが感じられます。ですので、いかにCG技術が進歩したとはいえ、初めて恐竜を見た時の高揚感は「ジュラシック・パーク」に遠く及びません。
 そうは言っても、この作品での白眉はモササウルスの登場でしょう。この海棲爬虫類(恐竜ではない)の絶対的な強さには胸のすく思いがします。それと、シリーズ中悪役だったヴェロキラプトルの調教にも目を見張るものがあります。もちろん、シリーズの顔だったTレックスの勇姿にも拍手を送りたくなります。
 なんだかんだ言っても、非現実的な恐竜がいっぱい登場して、人間を襲いまくる映画は、理屈なしで楽しめます。
「ターミネーター:新起動/ジェニシス」
T109H
7/23
☆☆☆★★★
(真価が問われるのは次回作でしょう)


 ほんとにタイムマシン物はややこしいです。「ターミネーター」なんか、もう何度も未来と過去を行き来して、歴史がこんがらがってしまっています。そのあたり、スカイネットはどう考えているのでしょうね?初めの暗殺計画が失敗してから、少しは反省したのでしょうか?いや、実は大変なことに気が付いてしまっていたんですね。それがどういうことかは、ネタバレになるので言えませんが、ともかく、タイムパラドックスのジレンマに自ら陥ってしまっていたのです。
 …ということで、そのジレンマを断つべく、ウルトラCのアイデアでリブートした今回の作品。1作目と2作目を忠実に継承しつつも、全く新しいシリーズの幕開けとなりました。シュワちゃんも伊達に歳はとっていないぞとばかり、とんでもないバージョン・アップまでして、この先一体どうなるのやら。
「チャッピー」
T109H
6/6
☆☆☆☆★★★★

「第九地区」のニール・ブロムカンプ作品なのですが、「エリジウム」が今一つの出来だったので、期待してはいませんでした。それに、ロボットのデザインが「アップル・シード」のブリアレオスそのまんまなので気になっていましたが、さすがに、そのあたりは当然クリアしているのでしょう。SFとしては抜け穴だらけの設定ではありますが、観ていて次第にチャッピーが可愛く見えてくるのは、ある程度成功している証でしょう。
 それにしても、赤子同然のチャッピーが、いきなり超頭脳を発揮してしまうのはいただけません。嘘でも、ネットを使って、超高速学習するシーンとか欲しかったところです。
 とはいえ、パパ&ママ役をやっている、ミュージシャンのダイ・アントワードとヨーランディが地のままの演技で大変素晴らしかったです。この二人を使ったことだけでも、この作品は大成功と言えると思いますし、その意味でカルトムービーになるでしょう。
「トゥモローランド」
T109H
6/6
☆☆☆★★★
「アイアン・ジャイアント」や「ミッション・インポシブル:ゴースト・プロトコル」など、はずれのないブラッド・バード監督作品なので、大変期待していましたが、少々期待はずれな出来でした。…というのも、登場する奇想天外なシーンの数々が、アニメでなら問題ないのでしょうが、実写となると、生身の人間とのバランスを欠いて、どうも違和感を感じてしまうのです。暴力シーンもディズニー印でオブラードに包まれている為、全くハラハラできないという歯がゆさが残ります。特に一番感動的なシーンになるはずのところにストッパーが掛かってしまっているのは、とても残念に思います。
「アメリカン・スナイパー」
T109K
2/21
☆☆☆☆☆★★★★★
 戦場で160人(狙撃した数なので、実際はそれ以上?)を射殺した、アメリカ海軍特殊部隊ネイビーシールズ伝説の射撃手クリス・カイルの半生を描いた作品。テキサス生まれでカウボーイになることを夢見ていたカイルは、父親から人には「純朴な羊とそれを襲う狼と、狼から羊を守る番犬」の3種類いると教えられる。そして、「お前は何になるか?」と問われて、「番犬」になりたいと答える。そして、羊たちの番犬となるべく育ったカイルは9.11の惨劇を見て、国家の番犬になる決意をするのだった…。
 こう粗筋を書くと、まるで戦争の英雄を讃える作品のように見えるかもしれないが、そこはイーストウッド監督の作品だから、一筋縄にはいかない。都合4回もイラクに出兵したカイルの精神が次第に壊れていく様がつぶさに描かれ、文字通り体を壊された仲間たち同様、彼も戦争の犠牲者であったことがよくわかる。と同時に、敵の視点からの描写も抜かりない。敵味方関係なく、戦争はどちらにも犠牲を強いるものだ。そして、衝撃的な結末に、観る者は打ちひしがれることになる。随所に見られる細かい伏線も相まって、実に見事な幕引きだ。
 エンドロールの前に流れるエンニオ・モリコーネの曲と、その後の見事なまでの沈黙が何を意味するのか?主人公ばかりか、監督の行く末をも暗示するようで怖いです。
「ベイマックス」(BIG HERO 6)」
T109K
2/21
(併映の「愛犬とごちそう」もアカデミー賞を受賞しました!
☆☆☆☆☆★★★★
 ピクサーもといディズニーの、日本愛もとい兄弟愛溢れる物語。14歳の天才少年ヒロは幼い頃に両親と死に別れ、兄のタダシと共に叔母の経営する店の三階に住んでいたが、自作のロボットでロボット・ファイトに明け暮れる毎日を送っていた。ところがある日、兄の通っている大学でロボット工学の権威キャラハン教授に会い、大学に進学しようと決意する…。
 邦題では、主人公の兄が作った介護ロボット、ベイマックスがタイトルになっているけれど、原題は「BIG HERO 6」だから、明らかに戦隊もの。何を売りにするかによって、タイトルも変わってくるので、日本では兄弟愛を売りにしているということだろう。これも姉妹愛を売りにした「アナと雪の女王」(原題は「FROZEN」)の成功が影響しているのだろう。
 映像的にはもう無敵。大都市の細々した描写から、人物の些細な仕草や、ベイマックスの質感に至るまで、文句のつけようのない完成度だ。シナリオに関しても、練りに練りこんだ手の入れようで、様々な要素を無駄なく詰め込んで、飽きさせない。いや、もう恐れ入りました。
 そして、エンド・クレジットの後で、こんな形でスタン・リーが出てくるなんて!!どこまで、マニア的サービス精神に溢れているんだ!
 同時上映の短編は、犬の視点で描かれた「愛犬とごちそう」で、こちらもグーです。
2014年
「トランスフォーマー ロストエイジ」
T109K
8/10
☆☆☆★★★

 キャストもデザインも一新して、シリーズを立て直したつもりでしょうが、やはりお話の方はいつもの通り、途中でいきなりトランスフォームして、さっぱりわかりません。大体なんでいつも、敵が狙っている大事なものを大都市に隠そうと思うのでしょうか?それも爆弾を!?まるで、大都市を破壊してくれと言わんばかりで(もちろん、製作者側はそれが狙いでしょうが)、まったく理解不能です。それでも3Dは見事、CGも見事と、見世物としては有無を言わさぬ物凄さがあります。興収もバッチリのようなので、このシリーズはまだまだ続きそうな感じですが、いつまで付き合えばいいのやら?もうホント、ため息が出てしまいますよ。
「GODZILLA」
T109K
7/25
☆☆☆☆☆★★★★
(とにかく、大画面で観てね!)
 初代「ゴジラ」が、唯一の被爆国で作られた「反核映画」であったのに対し、今回の作品は、同じ原発事故国で作られた「反原発映画」という立ち位置でも作られています。もっとも、放射能の恐怖という点では、相変わらず甘さが目立ちますし、核実験の正当化ともいえる設定は、日本人としてナーバスにならざるをえませんけれども。しかし、それらのことを凌駕する存在として「GODZILLA」を描いていることが、なによりも嬉しく思います。「ゴジラ」を英訳したとき、偶然にも「GODZILLA」と書けたことが、すべてを物語っているように、「ゴジラ」は「破壊神」であり「守護神」でなければならないのです。ですから、ただの恐竜として描いたエメリッヒ版「GODZILLA」は、到底「ゴジラ」と呼べる存在ではありえないのです。その点今回の映画は、キリスト教国にとっては、まさに「邪神」といえる「ゴジラ」を、畏敬の念で描いている点が、ともかく素晴らしく、日本人として誇らしく思いました。
 まず、巻頭に東宝のマークが燦然と映し出されて、ビックリです。IMAXで東宝のマークを観れるなんて、思いもしませんでした。さらに、それに続いてワーナーのマークが登場するんですから、今まで東宝とワーナーが不仲だったことを知る者にとっては、なおビックリです。
 監督は、これが長編二作目となる、新人のギャレス・エドワーズで、前作の「モンスターズ」が製作費130万円の超低予算(実際は、機材費1万5千ドル、製作費50万ドル)だったのに比べると、大変な出世です。異例の大抜擢に、国の内外から作品の出来を危惧する意見もありましたが、心配は無用でした。最も「ゴジラ」を愛する監督に撮らせた、製作陣の英断に、拍手を送りたいくらいです。
 ともかく、監督の「ゴジラ愛」が随所に見られて、胸が熱くなります。そして、なによりも、ゴジラがカッコイイ!こんなに格好いいゴジラは、初めて観たように思いますし、米国の映画館で拍手が起こるのもわかります。出来れば、この調子で続編も期待したいと思います!
 ちなみに、今回の作品には、「MUTO]と呼ばれる敵怪獣も登場して、壮絶なバトルが展開されます。その描写は、「パシフィック・リム」よりも、さらに東宝怪獣映画のそれに近く、それを最新のVFXで再現しています。設定で言えば、「ガメラ 大怪獣空中決戦」に近いですが、同じではありません。そういえば、監督の名前も「ギャオス」に近いし…。暗いシーンもあるので3Dで観るならば、やはりIMAX3Dで観るべきでしょう。
「ホビット 竜に奪われた王国」
T109K
3/16
☆☆☆☆☆★★★★★
(ジャクソン映画恒例ピーター・ジャクソンのカメオ出演は、今回も同様のパターンです)
 トールキン原作「ホビットの冒険」の映画化3部作の2作目にあたります。当然、前作を観なければ内容が掴めませんし、次回作に続く未完の作品です。上映時間も161分と長尺なので、途中で中弛みしないかと少し心配しましたが、そんなことは見始めた途端消滅しました。次から次へと怒濤の如く凄いシーンが続き、あっという間にエンディングを迎えてしまいます。シナリオもよく練られていて、観客の興味を繋ぐ要素満載で、しかも、驚きの恋愛要素まで加わって、当初2部構成の予定だったところを3部構成にしたのも納得の出来です。早くも第3部が待ち遠しいです。
 
「アナと雪の女王」
T109K
3/16
☆☆☆☆★★★★
(氷の方が鉄よりも堅いなんて、
初めて知りました!)
 本年度アカデミー賞を受賞したディズニーの3Dデジタル長編アニメです。なにより驚くのは、3Dデジタル技術の進歩です。特に素晴らしいのが雪と人間の表現力で、雪の質感や人間の骨格の上の肉感なんかもよく表現されて、それでいて、ちゃんとデフォルメもされているのですから、よくぞここまで作り込んだものだと感心してしまいます。ここまできたら、もう2Dのアニメが必要なくなる日も近いのではないでしょうか?少なくともディズニーは、もう2Dアニメは止めたと宣言しているような気がします。その感は、同時上映の短編アニメ「ミッキーのミニー救出大作戦」に、如実に表れています。
 お話の方でも、旧来のディズニー・アニメの伝統を打ち破る展開を見せていますが、果たしてそれで良かったのか?ちょっと疑問を持ちますが、でも本国では史上最高の興収をあげているのですから、これも時代の流れなのかも知れません。とはいえ、基本的にミュージカルを受け入れない土壌の日本で当たるかは、大いに疑問の残るところです。私は大いに楽しめましたが…。
2013年
「ゼロ・グラビティ」
T109K
12/26
☆☆☆☆☆★★★★★
(SF映画初のアカデミー賞受賞も
夢じゃない!)
 ともかく映像が素晴らしい!3D効果も抜群で、飛んでくる破片を避けながらの鑑賞とあいなりました。臨場感が凄まじく、IMAX3Dって、まさにこの映画のためにあるんじゃないかと思います。それにしても、どうやって撮ったんでしょうかね?
 お話も良くできていて、主人公の女性宇宙飛行士の成長物語として捉えれば、最後の感動もひとしおです。ただ、邦題の「ゼロ・グラビティ」は、如何なものでしょう?原題の「グラビティ」の方が良かったと思いますけど。
 
「47RONIN」
T109K
12/26
☆☆☆★★
(こんな作品を作ったら、
当分日本を舞台にした映画が
作られなくなってしまいそうです)

 キアヌ・リーブスが主演で「忠臣蔵」の映画を作ると聞いて、どんな映画になるのかと思いきや、もう、すっかりファンタジー映画になっていました。でも、ラストで折角のファンタジー世界から、過酷な現実に引き戻されてしまうのは、如何なものでしょうか?そこが「忠臣蔵」の神髄であり、それを尊重したというのも解るんですが、それでも納得できません。日本人でも納得できないなら、西欧人ならなおさらでしょう。
 しかも、どうも解せないのが、豊富なキャラクターの使い捨てです。面白そうなキャラが意味ありげに登場したかと思えば、すぐに引っ込んで、その後無関係なんて、どういうことなんでしょうか?まあ、メインキャラだけで47人もいるんですから、仕方ないのかも。
 ともかく、豊かな題材を無駄に浪費して、わざわざ盛り上がらないように作ってしまうという、世にも不思議な作品でした。
 
「クロニクル」
TCK
 9/28
☆☆☆☆☆★★★★
(そういえば、「キック・アス」を観たのもTOHOシネマズ 川崎でしたね)
 高校生のアンドリュー、マット、スティーヴの3人は、ひょんなことで突如超能力を手にする。最初は高校生らしい遊び心から、たわいのない悪戯に使っていた超能力も、その力が増すに連れ、その行使に責任が伴うことを自覚し始める3人だったが、普段から抑圧を受けていたアンドリューの暴走が始まってしまう…。
 自らをビデオ撮影するアンドリューの視点で物語が展開するモキュメント方式の映画ですが、超能力が暴走するに連れ、モキュメントからも逸脱し始めます。まず、自分撮りを、超能力で可能にするというアイデアが面白い。モキュメントは低予算で臨場感のある映像を撮ることに大変優れた手法ですが、それを逆手にとって、観る者を仰天させる演出に、とにかく感心しました。
 最初は「超能力学園Z」かよ、と思わせる悪戯の数々も、やがて来るべき大惨事の予兆として生きてきますが、それにしても、もっと他に超能力の使い方があるだろうと、思ってしまう私は、心が大分汚れているのでしょうか?
 これが長編監督第一作という、ジョシュ・トランクの手腕にも舌を巻きますが、他の新鋭同様、第一作目がピークだったとならないことを切に願います。
「エリジウム」
T109K
 9/22
☆☆☆★★★
(この監督には頑張って欲しいので、ちょっと厳しい採点です)
 2154年の未来。環境汚染と人口爆発により荒廃した地球上には貧困層が溢れ、劣悪な生活を強いられていたが、一方、一握りの超富裕層だけはスペースコロニー“エリジウム”に移り住み、永遠の美と健康を約束された、優雅な生活を送っていた。地上に住む窃盗犯のマックスは、ある日、工場の事故で放射線を浴び、余命5日の宣告をされてしまう。助かるには、エリジウムの各家庭に一台用意されている、どんな病も治す医療ポッドに入るしかないのだが…。
 「第九地区」のニール・ブロムカンプ監督の新作です。エリジウムの洗練された美術といい、登場するガジェットのデザインといい、地上の荒廃した雰囲気といい、大作に恥じない出来ですが、様々なSF映画で描きつくされたせいか、私的には既視感があって、「センス・オブ・ワンンダー」には至っていません。
 あいかわらず、銃撃戦や破壊シーンは迫力があって、充分見せますが、肉弾戦になると、アップが多用されているせいか、非常に観づらくて、急にトーンダウンしてしまうのが残念です。
 エリジウムの組織や防衛システムの貧弱さも気になりますが、シナリオ的にも無理があって、どうもついて行けません。マックスとフレイの物語に収斂させようというのは分かりますが、途中で登場するカバとミーアキャットの逸話も唐突な感じが否めません。
 …と、不満たらたらですが、基本的にこの手のSFは好きですので、余計に目が厳しくなるのかも知れません。
「スター・トレック
イントゥ・ダークネス」

T109K
9/15
☆☆☆☆☆★★★★
(たいへん良くできました!)
 前回の話で平行宇宙に移り、TVシリーズとの矛盾を一掃した映画版新シリーズの第2弾です。
 ロンドンの宇宙艦隊の秘密施設が爆破され、艦隊幹部が招集されるが、その席上、カークは、この爆破事件に別の意図を察知する…。
「スター・トレック」シリーズでお馴染みのキャラそれぞれに、活躍の場が与えられていて、トレッキーたちにも大納得の内容になっています。今回の話では、カーク船長が強靱な肉体を得たり、MRスポックが心の内を明かしたりと、驚かされることばかりですが、特に、全速力で走るMRスポックの姿には、新鮮な驚きがありました。
 映像的にも3Dに適応した作りで、最近の3D作品の中では最も立体感を感じました。監督のJ・J・エイブラムスは「スター・ウォーズ」の監督にも抜擢されたようなので、そちらもたいへん期待できます。
「マン・オブ・スチール」
T109K
9/15
☆☆☆★★★
 滅亡寸前の惑星クリプトンから、科学者ジョー・エルによって地球に送られた、息子カル・エルは、ケント家に拾われ、クラーク・ケントとして育てられたが、自分の並はずれた能力に戸惑い、放浪の旅をしていた。だがある日、ファントム・ゾーンに囚われていたゾッド将軍たちを乗せた宇宙船が地球に飛来する。
 今まで、何度も映画化されてきた作品だけに、クリストファー・ノーランがどう料理するかと思っていましたが、シナリオ的にも、かなり苦労のあとが伺えます。それが成功しているかは別にして…ですけど。
 リアルさを追求したのでしょうが、無精ヒゲには、どうしても違和感を感じてしまいます。なにしろ、鋼鉄の体を持つ男の無精ヒゲです。どうやって剃るんだ?って、気になります。
 ともかく、CGによる映像の迫力だけは凄いのですが、「マトリックス」のような、ケレンもなければ、意外性もないので、観ていて次第に飽きが来てしまいます。
 それにしても、スーパーマンのコスチュームになってからの活躍が破壊ばかりとは!一体彼は人類にとって、救世主なのか?破壊神なのか?非常に気になるところです。
「パシフィック・リム
T109K
8/11
☆☆☆☆☆★★★★
(レイ・ハリーハウゼンときたら、円谷英二だろうが!!!)

 海底にできた次元の裂け目から巨大生命体(KAIJU)が突如現れ、パシフィック・リム(環太平洋地域)の都市を次々と襲い始めた。滅亡の危機に瀕した人類は、巨大人型ロボット兵器イェーガーでこれに対抗した。しかし、戦うたびに進化を遂げるKAIJUに、イェーガーの存続さえも危ぶまれる。そんな中、最後の反撃作戦のため、残されたイェーガーたちが香港に集められた。
 
 日本のお家芸である、怪獣映画やロボットアニメのマニアを自認するデル・トロ監督が創り上げた、オタク度全開のSFバトル・アクション巨編です。本家の日本では、怪獣映画を撮らなくなって久しいですが、遠くメキシコの分家が巨額の製作費をかけて、本家以上の怪獣映画を撮ってくれました。ミニチュアのあらや、ピアノ線などを脳内消去する必要もなく、ものの見事に映像化してくれたのです。そう、昔の怪獣小僧たちが長い間夢見ていた映画が、ついに現実の物となったのです。
 
 お話も簡潔でわかりやすく、何故KAIJUたちが人類を襲うのかというナゾも明確に解き明かしてくれています。まあちょっと、ID4みたいだけどね。結末も…。とはいえ、シナリオはよく練られていて、登場人物も無駄が無く、すんなり感情移入できて、大変盛り上がります。
 特にイェーガーの操作には二人以上のパイロットが必要で、脳をシンクロさせないといけないという設定が絶妙です。そこで、お互いの過去やトラウマを知ることになるのですね。
 イェーガーたちのデザインもお国柄がよく出ていて、面白いです。例えばロシア製のは「チェルノ・アルファ」なんて名前で、頭はモロにあの形してるし、中国製のなんて、3つも腕があって、2つの腕の回転ノコギリで、敵を切り刻み、左腕のプラズマ砲でとどめを撃つのですよ。
 
 森マコ役の菊池凛子は、殆ど主役です。彼女のための映画といっても差し支えない程の扱いです。すごいですね。 
 芦田愛菜ちゃんは、森マコの子供時代を演じていますが、絶叫するだけで、殆どセリフがありません。でも、他のだれよりも、印象に残る名演技を見せてくれています。今後、ハリウッドからオファーが一杯来るかもしれませんね。
 刑事ジョン・ルーサーでお馴染みのイドリス・エルバがやたら格好いいけど、「プロメテウス」の時といい、相変わらず悲壮感が漂っています。
 怪人ロン・パールマンは、相変わらずの変人ぶりを見せてくれています。さすが、ヘル・ボーイだ!
 
 それにしても、怪獣オタクを自認するだけあって、流石にこの監督はよくわかっていらっしゃる。怪獣が登場するのは、やはり海からでしょう。当然漁船が最初の獲物にされるでしょう。怪獣は超生命体なので、普通の動物のように、障害物の建物を避けるのではなく、無闇に破壊しまくるでしょう。逃げまどう人々は、例えそれが小さな子供でも、容赦なく執拗に追いかけるでしょう。等々、昔の悪夢が甦り、私は嬉しくて、涙が止まらなかったですよ。

 でも、怪獣爺から言わせてもらえば、イェーガーや怪獣の全体像をハッキリ見せるためにも、もう少し引いた画が欲しいところです。雨降る夜の海の闘いというのも、暗くて、かなり見づらいです。通常の3D上映では画面が暗くなるため、余計に見づらくなるではないかと思いますので、IMAXで観るか、2Dで観ることをお薦めします。続編を作る際は、この辺の改良が望まれますし、やはり、変形合体もよろしくお願いしたいですね。
「風立ちぬ」
T109K
7/28
☆☆☆☆☆★★★
(賛否両論あるでしょうが、私は楽しめました。現代アニメ世代には、到底理解できないかも知れませんけど。)
 宮崎駿監督の最新作、「風立ちぬ」は主人公の声を素人の庵野秀明が演じています。それには賛否両論あるようですが、私は、その素人臭い朴訥とした話っぷりが、かえって昭和初期の映画俳優を想起させ、作品の時代に合っていると感じました。
 また、この作品のポスターにある、丘の上でキャンバスに向かう女性の姿は、光の画家クロード・モネの「日傘の女」を連想させます。風を表現するには、風そのものを描くのではなく、風で動く物や音で表現するのですが、この時一番重要な要素が光と影なのです。その意味で、このシーンをメインに持ってくることからも、今回の作品が、多分に「風」を意識した作品だということがわかります。
 宮崎アニメ「風立ちぬ」は、世界に冠たる零戦を創り上げた堀越二郎の半生を、堀辰雄の小説「風立ちぬ」を借りて語った半ファンタジー・アニメです。表向きは、戦争の兵器として使われるのを知りながら、ただ美しい機体を創りたいがために、戦闘機の設計に邁進する青年の矛盾と葛藤を描いていますが、それはまさしく、戦争を否定しながらも、今までアニメの中で多くの人々の殺戮シーンを描いてきた、宮崎氏本人が抱える矛盾と葛藤の裏返しと言えるでしょう。
 つまりこの作品は、物創りに励む人(堀越=宮崎)が、物創りの憧れについて綴った愛情物語なのです。飛行機作りで、欧米に20年遅れているという主人公の焦りは、アニメ製作において、宮崎氏自身が感じていたことでしょう。ですから、夢に出てくるカプローニ男爵はアニメにおけるフライシャーであり、ユンカースはディズニーなのです。そして、初めての成功作である、九試単座戦闘機は、ジブリ創設の発端となった「風の谷のナウシカ」に他なりません。
 そう、「風立ちぬ」の「風」とは、「ジブリ」自体を指すとも言えるのです。ですから、ナウシカで巨神兵の原画を描いた庵野秀明を主人公の堀越二郎の声優に抜擢したのも、そんな意図が込められているのではないかと思うのです。
 総じて、今回の作品は、ポール・ヴァレリーの詩の一節で紹介される「いざ生きめやも」というテーマがあまり感じられないし、物語としては、菜穂子との再会があまりに唐突だったり、「堀越二郎の実話」と「風立ちぬ」の融合は、あまり上手くいっているとは言い難いと思います。しかし、憧れのカプローニ男爵を「ファウスト」のメフィストのような役回りにした構成は、すこぶる意欲的で、大変面白く観る事が出来ました。ですから、私としては、最近の宮崎アニメの中でも、一番好きな作品と言えるかもしれません。当然、海外の映画賞も沢山受賞することでしょう。
 余談ですが、今回のアニメで人の声を音響効果に利用した手法は、ジブリの森美術館の土星座で公開されている短編アニメ「やどさがし」で使われていた手法です。前回の「崖の上のポニョ」が「くじらとり」の応用であったように、ここで公開されている短編アニメは、どれもこれも大変意欲的で、優れた作品ばかりです。ここだけで公開なんて、実にもったいない。一般公開されたら、毎年アカデミー賞を獲れるのにと思うのですが…。
2012年
「モンスターホテル」
T109K
10/1
☆☆☆★★★
(モンスター好きを無視したモンスターアニメってどうなんでしょう?)
 ドラキュラ伯爵の娘メルヴィスの118歳の誕生パーティのため、世界中のモンスターがモンスターホテルに集まって来ていた。完璧箱入り娘のメルヴィス は、父との約束で118歳になったら外の世界に出させてもらえることになっていたが、そんな時、バックパッカーのジョニーがホテルにやってきた……。 
 娘を人間の世界から隔絶するためにモンスターホテルをつくってしまうという発想からして、設定に無理を感じてしまいますが、「ともかくノリと勢いで突っ 走れば何とかなるさ」という制作者側の思いに貫かれた作品です。ですから、細かいことを突いたらキリがないほど矛盾点やおかしなところだらけです。特に最 大のクライマックスからして掟破りのルール違反を犯しています。モンスターマニアほどその点が許せないかも知れません。だいたいネタからしてモンスターの 知識を必要とするマニアックな作りなのに、マニアを無視してどうする?
 そんなマニアの心配をよそに、ノリと勢いで思わず笑わせてくれます。お笑いタレント を起用した日本語吹き替え版も、今作ばかりは、ノリと勢いがうまくはまって、成功していると思いますが、興行的には非常に難しいことが容易に予想されま す。
「ハンガーゲーム」
T109K
10/1
☆☆☆★★★

 富裕層と貧困層に大別され、富裕層に完全に支配された独裁国家パネム。そこでは、各地区から選ばれた12歳から 18歳までの男女が森の中で殺し合い、最後に残った1人に栄誉と富が与えられるという殺人サバイバル「ハンガー・ゲーム」が行われていた。妹の代わりに ゲームに出場を志願したカットニスは、狩猟で鍛えた弓矢の腕で戦い続けるのだった…。
 まずルールがおかしいです。各区域から12歳から18歳までの男女を2人ずつ選んで殺し合いをさせて、生き残った1人が勝者というルール自体、ショーと して見せるならあまりにアンフェアで、あり得ない設定といわざるを得ません。こういう場合は、年齢を一定に定めて、男女ペアのチームで戦わせるべきでしょう。案の定、主催者側もその点に気がついて、結局ルールを改正することになるのです。これは明らかに物語の都合で決めたルールとしか思えません。それにし てもこの主人公、弓の名手のはずなのに、よく的を外します。もちろん決める時には決めるけれど、これも物語の都合を感じさせます。という具合に、物語を盛り上 げさせるために、物語の都合に合わせて勝手にルール変更をしている感が否めません。都合良くあらわれるお助けキャラにしても、男女3人の三角関係にして も、どうも「トワイライト」シリーズを想起させる設定だなあと思ったら、やはり米国女子に人気の小説が原作でした。成る程、米国で超ヒットしたのもうなず けます。でも、日本ではどうでしょうか?宣伝部によほど自信がないのか、スタッフロールが始まるやいなや、いきなり「第2部日本公開決定」の文字がスク リーンに映し出されて、大いに興ざめさせられます。
 物語としては感情に訴えるシーンも結構あって、なかなか良くできてはいるのですが、物語の都合でコロコロ変わるルールに振り回されている感じがして、ひ ねくれ者の私としては、どうにも乗り切れませんでした。それに、役者の技量不足を補うためか、アクションシーンでアップを多用しているので非常に見づらく て、何が起きているのかよくわからないのが困りものです。この点次回作では改良を強く望みます。観ないだろうけれど…。
 ただ、主題歌はけっこう効果的に使われているので、アカデミー賞の候補になるかも知れません。
「プロメテウス
T109K
9/1
☆☆☆★★★
 久々のリドリー・スコット監督作で、しかも「エイリアン」の前日譚だということで期待してしまうのですが、CMで流される「種の起源」という言葉には一 抹の不安を感じてしまいます。どうも大風呂敷を広げすぎではないかと思うんですね。こういう場合は大概収拾がつかなくなって失敗に終わることが多いもので す。
 古代壁画に描かれた人類の創造者"エンジニア"の存在を確信した考古学者エリザベスはウェイランド社からの支援のもと、アンドロイドのデヴィッドら16人の乗組員とともに、宇宙船プロメテウスで壁画の指し示す恒星系へと向かう。だが、そこに待っていたのは…。
 「種の起源」という点についても、異星人がいったい何をやりたかったのかが全くわからないので、大きな不満が残ってしまいます。そして、「エイリアン」 に繋がっているかというと、些細なところで実は全く繋がっていません。大きな期待をさせながら、この穴だらけの貧弱なシナリオはいったいどうしたことで しょうか?まさか謎の解明は続編任せというわけじゃないでしょうね?いや、その気だとしても、続編があるかどうか?
 しかし、相変わらずビジュアルは素晴らしいです。登場する近未来装置の数々も非常に興味をそそります。「刑事ジョン・ルーサー」のイドリス・エルバも頑張っているし、高評価をつけたいところなんですが…。
「アベンジャーズ」
T109K
9/1
 ☆☆☆☆☆★★★★★
(最後のおまけの痛烈な批判精神に★ひとつ!)
 
 S.H.I.E.L.D.が秘密裏に調査していた四次元キューブが突如暴走し始め、そこに現れた邪神ロキに奪われてしまう。地球の危機を救うため長官ニック・フューリーは、アベンジャー計画を発動する…。
 CMの謳い文句は「日本よ、これが映画だ!」。なんと、自信満々の上目線な言葉でしょうか。「これが映画だ!」と大見得切られても困ってしまうのです が、「これがハリウッド映画だ!」と言われれば、確かにその通りと言わざるを得ません。実に豪勢な娯楽巨編で、日本映画人から見れば、確かにうらやましい 限りです。いや、もうあまりの力の差にぐうの音も出ませんぜ。
 それは40億ドルでマーベル・エンタテインメントを買収したディズニーにも言えることです。なにしろ、「Xメン」(20世紀フォックス)も「アイアンマ ン」(パラマウント)も「インクレディブル・ハルク」(ユニバーサル)も「マイティー・ソー」(パラマウント)もみんな他社が手掛けてヒットした作品で、 それらをまとめてディズニーは手中に収めてしまったのです。世界中の童話を自社キャラで独占したかとおもえば、今度はコミックの世界にも手を広げようとい う節操のなさに、ただただ呆れるばかりです。まさに、「日本よ、これがディズニーだ!(ちっともオリジナルはないけれど…)」ですね。
 という愚痴の一つも言いたくなるくらい、この映画は確かに良くできています。登場するスーパーヒーロー1人1人に見せ場をちゃんと用意するし、最初は反 発し合うキャラたちがいかに力を合わせて、最後は一致団結するかまでを丹念に描いているし、もう、これで盛り上がらないわけがないというくらいに良くでき ています。それにしても、登場するスーパーヒーローたちが、どう咬み合うかが心配でした。なんてったって、マイティー・ソーは神様だし、ハルクは化け物だ し、キャプテン・アメリカは軍隊バカだし、アイアンマンはもともと武器商人だし、ホークアイやブラック・ウィドウはただの人間だし、考え方も力量も差があ りすぎて、到底ひとつのパーティにまとまるのは不可能と思えてしまうのです。
 ところが、その不可能を可能にしたところが、何より凄いと思いました。ただの人間のホークアイとブラック・ウィドウには007顔負けの秘密兵器を装着さ せて、ジェダイ・マスターの如く大活躍する姿には胸が熱くなります。そして、やっぱりキャプテン・アメリカにはチームリーダーがよく似合う。でも、おちゃ らけアイアンマンと化け物ハルクに神様マイティー・ソーはやっぱり油断がならないという、潜在的危機感も漂わせて、もう〜憎いね!
 で、余談ですが、原作者のスタン・リーが相変わらず元気な姿を見せています。
「ミッション:インポシブル
/ゴースト・プロトコル」

T109K
1/29

☆☆☆☆★★★★
(CG技術の進歩は実現不可能な映像も可能にしました。元来アニメでしか表現できなかったことも、実写で作れるようになったのです。ですから、今回の成功で、実写に乗り出すアニメ監督が増えることでしょう)


 ロシアの刑務所から脱出したイーサン・ハントはクレムリンに潜入する任務を受けるが、そこで思わぬ事件に巻き込まれてしまう。そして、その容疑をかけられたうえ、「ゴースト・プロトコル」が発令され、イーサンとその仲間は孤立無援になってしまう。
この事態を打開するためには、真犯人を捕らえなければならない。こうして、イーサンたちは実行不可能なミッションに挑むことになるのだが…。

 監督のブラッド・バードはアニメで実績がありますし、特にシナリオを重視するPIXA出身ですからシナリオに関しても心配していませんでした。特に冒頭のシークエンスはテンポも良く、おなじみのタイトルバックに繋がるアイデアも最高で、まさに掴みはOKです。見せ場も多く、豪華なアクションシーンの連続と、風光明媚な現地ロケの多用に、見る者を全く飽きさせません。
 …が、サービスも過剰になると、お客は辟易してしまうものです。今まで1時間半の枠で作っていた、そのペースで2時間越えの作品を作られても、観客の集中力はそれほど長続きはしません。もう少し物語に緩急をつけて、静のシーンを用意してくれないと、観客は息をつく暇もありません。そして、ラストに最大の見せ場を用意してくれないと、折角たくさん見せ場を用意しても、作品全体の印象が薄れてしまいます。
 とはいえ、本来の「ミッション・インポシブル」に立ち返り、主人公たちを孤立無援にして、仲間との連携プレーを重視した作りは非常に好感が持てますし、実際面白いのですから、文句は言えません。私としてはシリーズ最高の出来だと思いますし、まさに「ミッション・インポシブル・リボーン」として、次回作に期待がますます高まります。
2011年
「世界侵略 ロサンゼルス決戦」
T109K
9/19
 ☆☆☆☆★★★
(大きな声では言えませんが、私は結構好きです)
 どの国を敵にまわしても、人種や宗教といった様々な要素が絡んでしまい、何かと批判を受けないでは済まされません。かように、最近では戦争映画を作るの が難しくなってきたということで、ハリウッドが目を付けたのが異星人です。それも、有無を言わせない侵略者。女子供に対しても情け容赦なく、地球人をただ 駆除するだけの異形のエイリアンたちです。
 
 突如地球に飛来した流星群。その正体は地球侵略を狙うエイリアンたちの宇宙船でした。海岸線に着水した宇宙船から現れたエイリアン軍によって、地球上の 主要都市は瞬く間に制圧されてしまいます。これに対してロサンゼルスでは、起死回生のため占領地区の全面空爆が決行されることになりました。そんな中、引 退を決めていたベテランの海兵隊員のナンツ軍曹は、新任の指揮官と共に小隊を率いて、占領地区内の警察署に取り残された民間人を救い出す任務を受けるので した…。
 
 海兵隊が現地に向かってからは、ひたすら通常武器による、エイリアン軍との白兵戦が繰り広げられます。SF映画というよりは「ブラックホーク・ダウン」 か「プライベート・ライアン」の趣が全面におしだされていて、これはまさにSFの名を借りた戦争映画に他なりません。

 だいたい、何故エイリアンたちは地球にやってきたのか?(一応水が目的のようですが、それならサッサと奪えばいいように思いますが…)はるばる遠い宇宙 からやってきたのに、何故、海兵隊の武器で簡単に倒されてしまう程の、柔な装備しか持っていないのか?(一応最初はなかなか倒せないのですが、急所が判明 した後半になると、急所関係なくバタバタ倒されるのって、どうよ?)高度な科学力がありながら、何故エイリアンの武器はそれ程破壊力がないのか?(ゴロゴ ロ台車で運ぶ武器ってローテクっぽいです)もっとも大切な中枢であるはずなのに、何故、簡単に海兵隊の進入を許してしまうほど、指令船はガードが甘いの か?謎は謎のままで、一向に解明される兆しも見せません。
  
 そんな理屈はともかく、ドンパチ好きにはたまらない作品で、ただひたすら燃えに燃えまくる2時間です。米国海兵隊賞賛のプロパガンダと見る向きもあるでしょうが、単純に娯楽として楽しめば良いと思います。
「スリーデイズ」
東商ホール
9/13
☆☆☆★★★
フランス映画「すべて彼女のために」を 「クラッシュ」のポール・ハギンズがリメイクした作品です。無実の罪で刑務所に入れられた妻を、夫が刑務所から救い出すお話です。オリジナルの「すべて彼 女〜」はフレッド・カヴァイエ監督の長編第一作ということで、非常に勢いのある演出でしたが、人間ドラマが希薄気味なところとか、展開に無理があるところ とか、偶然に負うところが多いとか、少々気になる点がありました。とはいっても、かなり面白い作品であることに違いはなく、その荒削りな演出が魅力でもあ りました。
 そこで、この作品をポール・ハギンズがどう料理するかという点に興味をそそられた訳ですが、さすがハギンズです。人間ドラマとして、かなり厚みを増して いますし、オリジナルで気になった点を補強して上手く解決しています。そして、次から次へと新たな障害を設けて、ハラハラ度も10割増しになっていま す。…が、要素や説明を増やした分、演出に勢いが欠けてしまい、結果として鑑賞後の印象が薄くなってしまいました。作品としては良く出来ているが魅力に欠 けるという、職人芸のジレンマに陥ってしまったという感じです。
 ところで主人公の父親役を演っているブライアン・デネヒーは主演のラッセル・クロウとキャラが被っているところが多くて、上手いキャスティングだと思いました。ちょい役で出るリーアム・ニーソンも、誰もが納得の適役です。
「グリーン・ランタン」
T109K
9/10
 ☆☆☆★★★
(全体に緑がかった映像を3Dで見せられても、アナグリフ式の赤青のメガネで観ているようで、トホホです)
 テストパイロットのハル・ジョーダンはある夜、突然緑色の光に捕われて、とある海岸へと運ばれます。そこには一隻の宇宙船が不時着していて、なかには瀕死の宇宙人がいました。
彼の名はアービン・サー。宇宙の平和を守るグリーン・ランタン・コアのメンバーで、地球を含むセクター2814を守護する最強のグリーン・ランタンです が、最大の敵パララックスとの戦いで瀕死の重傷を負い、地球に逃れてきたのです。そして、彼はハル・ジョーダンを彼の後継者に任命し、無限のパワーを持つ 緑の指輪を託すのでした。
 銀河を守る警察機構と聞けば、レンズマン・シリーズを彷彿とさせる壮大な物語を期待してしまいますが、なんだか妙にせせこましい印象です。
 原作によれば、グリーン・ランタン・コアのメンバーの種族は多種多様で、細菌レベルの生命体から惑星レベルの生命体までと大きさも形態もまちまちだそう です。それじゃあ、肝心のグリーン・ランタンや緑の指輪をどう携帯するのか、どうやって使うんだ?と、どうにも疑問が湧いてきます。 
 それは良いとしても、オズの国のようなエメラルド・グリーンの光りに包まれた世界というのが、色補正を間違えたCG画像のようで、折角の高度なCG技術を台無しにしています。これも設定ですから仕方ありませんけれど。 
 また、想像力によって様々な物を作り出せるパワーというのも、画で観ると漫画のようで、ドラマに緊迫感を欠落させています。まあ、これも原作がコミックということで、仕方ないんですけれど。 
 なにしろ銀河を股にかけるお話ですから、ものすごいスケール感を期待してしまうのですが、その期待は見事に裏切られてしまいます。銀河の中心にあるとい われるグリーン・ランタン・コアの本部がある惑星オアに行くにも、ワームホールに入ってあっという間に到着ですし、だいたい地球を襲う超巨大なパララック スだって、結局地球上の一都市の一区画しか襲わないのですから、大言壮語もいいところです。また、単純明快なストーリーは良いのですが、主人公の人物描写 が通り一遍なので、どうにも感情移入出来ず、まさに絵空事の世界の出来事に感じてしまうのが残念です。 
 SFとしてスケール感に乏しく、人間ドラマとしても薄っぺらいときては、どう考えてもヒットは望めません。次回作を予感させる終わり方が、ただ空しく映 るだけでした。と、ここまで言いながらも、(元々この手の話が好きな)私としては意外と面白く観られました。それにしても、「グリーン・ゾーン」といい、 「グリーン・ホーネット」といい、タイトルに「グリーン」のつく作品は外ればかりなのでしょうか?
「カーズ2」
WMCSY
 ☆☆☆☆☆★★★★

 ピクサーにしては米国の映画評論家の採点が低くて心配したのですが、さにあらず、とっても楽しい作品でした。でも、米国車以外が活躍する様を観 て、米国内での評価の低さも納得できます。非常にマニアックな車のうんちくも一般には受け入れられないかも?でも、そんなことを気にせず、マニアックな道 を突き進むピクサーはさすがです。観客に媚びを売らない姿勢が素晴らしいです。
「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン」
WMCSY
 ☆☆☆☆☆★★★★

 アポロ11号が月の裏側に着陸したとは初耳ですが、どうせホラなんだからと割り切ったシナリオからして、いかにも大雑把なマイケル・ベイらしい作りですが、ともかく映像は凄い!!!!「これは是非ともIMAXで観るべきでしょう。
 …にしても、凄いシーンのてんこ盛りで、その上3Dときて、時間も二時間超えていますから、観ている方の疲労困憊ぶりも尋常ではありません。ストーリーは二の次にして、理屈抜きで体感してみましょう。
「ハリー・ポッターと死の秘宝パート2」
WMCSY
☆☆☆☆☆★★★★
 最終章だけ二部構成にしたことが功を奏し、思った通りクライマックスは大いに盛り上がり、最良のエンディングを迎えることが出来ました。このシ リーズの原作を読むことはもうとっくに諦めていたのですが、シリーズを通して、しっかり伏線が回収されていて、思わぬ展開や、隠されたテーマなども納得の 作品になっています。世界中に愛された作品とはいえ、これ程まで完璧に近く映像化されたことは、まさに原作者冥利につきるでしょう。実に幸せなシリーズと 言えるでしょう。
 
「SUPER 8」
WMCSY
 ☆☆☆★★★
 S.S.(スピルバーグ)もJ・J・エイブラムスも、みんなカセットポンの「SUPER8」が映画作りの原点でした。そんな映画少年たちを主人 公に、グラインドハウスで観たB級SFさながらの冒険を繰り広げます。J.J.がS.S.の後継者たることを高らかに宣言しているようにも見えますが、所 詮S.S.とJ.J.は水と油。そんな二人の個性のぶつかり合いが、エイリアンの性格を「友好的」なのか「危険」なのかあやふやにさせ、作品の印象を据わ りの悪いモノにしています。
 結局、主人公たちの作った8ミリ作品が本編よりも面白くて、(隣席のおばさん連中には大受けでした)本末転倒な残念な仕上がりになってしまいました。狙いは痛いほど解るので、その辺りがいかにも惜しいです。
「コクリコ坂から」
WMCSY
☆☆☆★★★
 やや単調な演出ですが、これが宮崎吾朗の味とも言えないでもありません。父駿氏とは両極端なところが面白いです。結果、このような地味な作品には合っているような気がします。
 それにしても、監督が生まれてもいない時代を描くとき、それはまさにファンタジーなのでしょうね。絶望の淵にあっても希望を捨てず、人を信じる事が出来た良き時代。それこそが、現代人が渇望してやまない未来図なのかも知れません。
 物語の肝の部分を暴露したCMは、この作品の興業にマイナスとしか思えないのですが…。
 
「ブラック・スワン」
WMCSY
☆☆☆☆☆★★★★

 ニューヨーク・シティ・バレエ団の新演目「白鳥の湖」のプリマ候補に選ばれたニナ。彼女は白鳥の演技は完璧だったが、監督のルノワは白鳥と正反対の黒鳥の演技も彼女に求めた。  
 曲がりなりにも創作活動家ならば、必然的に他人の批評に曝されるもの。そんな時支えとなるのが、自分への揺るぎなき信頼なのですが、その信頼が時として 揺らぐこともあります。それがいわゆる「スランプ」であり、それを克服出来てこそプロというものなのです。
 私はこの作品を観て、我が身のことのように感情移入してしまいました。主人公のニナの気持ちが痛いほどよく分かります。それ故、至福の表情のナ タリー・ポートマンの最後の台詞に思わず涙してしまいました。こんな気持ちでこの映画を観た人なんて、この劇場で私一人くらいでしょうが、後日和田慎二さ んにそのことを話したら、しっかり同意してくれました。そう、故和田慎二さんが最後に観た劇場映画でもあるのです。その意味で、私にとっても忘れられない 作品になりました。
 アカデミー賞主演女優賞は当然ですが、作品賞を与えても良い出来だと思います。非常に特殊な作品ではありますけれど…。
 
「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉」
WMCSY
☆☆☆★★★
 シリーズのスピンオフと言うよりは、新シリーズの幕開け的作品です。前シリーズは結局エリザベス・スワンとウィル・ターナーの愛の物語が主軸 だったのですが、脇役のジャック・スパロウが人気を博し、主役を完全に食ってしまった格好です。でも、この女一人に男二人のコンビは「冒険者たち」に代 表されるようにコンビの黄金律であり、これを破ってジャック・スパロウに独り立ちさせるのは、いかにも心細いです。
 それを補完するように、恋人役のアンジェリカや、新たに宣教師のフィリップと人魚のシレーナの恋人同士を登場させていますが、男二人の女二人ではどうも不安定感が残ります。興行的には成功していますが、先行き不安な幕開けとなりました。
 それに折角の3Dですが、全体的に画面が暗くて、3Dはあんまり効果がないように見えました。
「ガリバー旅行記」
WMCSY
 ☆☆★★★
 ジャック・ブラック(ブラック・ジャックではない!)主演のコメディー映画です。スイフトの名作を、よくもこんなおふざけ映画にしてくれたもん だと、怒り心頭ですが、まあ、観ているぶんには、素敵なCGシーンもふんだんに使っているし、飽きずに観られるかなというところでしょう。
「エンジェル・ウォーズ」
WMCSY
4/15
 ☆☆☆☆☆★★★
 母を失ったベイビードールは、その莫大な遺産を狙う継父に妹を殺されたうえ、継父の策略で精神病院「レノックス・ハウス」に入院させられ、更に継父の差し金で5日後にはロボトミー手術を受ける羽目になる。この絶望的な現実から逃れるために、ベイビードールは空想の世界に身を投じるが、そこでの彼女はナイトクラブ「レノックス・ハウス」の踊り子だった。そして、彼女が踊り始めると第二の空想世界が開かれ、そこで会った賢者に「レノックス・ハウス」から脱出するには5つのアイテムを手に入れなければならないと告げられる。こうして、ベイビードールは仲間の少女たちと共に、夢幻世界で壮絶な戦いを繰り広げることになった…。
  「300」や「ウォッチメン」のザック・スナイダー監督、初めてのオリジナルストーリー作品です。ビジュアルに拘る監督だけのことはあり、映像はどのシーンも素晴らしい出来です。
特にオープニングのシークエンスは、非常に手の込んだ演出に、傑作の予感さえ感じさせます。
しかし、空想世界の二重構造という「インセプション」擬きのアイデアが消化不良のため、観るものを混乱させてしまいます。
 コスプレ美少女隊がファンタジー世界やSFワールドで戦いまくるという、オタクの夢を完璧に具現化することには成功していますが、その目的のためにストーリを見繕った感じがどうしても拭えません。そのことは物語の迷走具合からも言えることで、観客に丸投げしたようなラストも、単なる苦し紛れにしか見えないのです。 
 とはいえ、映画は映像だと割り切れば、これ程楽しく面白い作品もないでしょう。一般受けは難しいでしょうが、オタクは狂喜乱舞することでしょう。かく言う私も大変楽しめました。でも、ザック・スナイダーの次回作が少々心配です。
「塔の上のラプンツェル」
WMCSY
4/15
 ☆☆☆☆★★★★★
 森の奥の秘密の場所にある高い塔に、一人の少女が住んでいました。彼女の名前はラプンツェル。21メートルにも伸びたその黄金の髪の毛をもつその少女は、母親のゴーテルから外の世界に出ることを禁じられ、18年間も塔のなかに閉じこもっていたのです。そんなラプンツェルにはただ一つ気になることがありました。それは、毎年同じ日に夜空に現れる無数の灯りのことで、ラプンツェルはいつかその正体を知りたいと願っていました。そんなある日、盗賊のフリン・ライダーが追っ手を逃れて、塔のある秘密の場所にやってきたのです…。 
 ハリウッド大通りにあるエル・キャピタン劇場はディズニー作品のプレミア上映が行われることで有名ですが、拡大公開前の先行公開劇場の一つでもあります。この先行公開の時に、日に数回ミュージカルと映画のセットで観られる回があって、昔偶然観たことがありました。そのときの映画は「ポーカス・ホーカス」でしたが、その前に上演されたディズニー・アニメ主題歌メドレーのミュージカルが素晴らしかったことを覚えています。名もない若き俳優たちの歌唱力の素晴らしさに、米国演劇界の層の厚さを思い知らされたものです。  
 というわけで、この作品もミュージカルですから、是非とも原語で鑑賞したいところなのですが、例によって字幕版を公開している館がほとんどないのが困りものです。でも、日本語吹き替え版も決して悪くありません。音色の調整が上手いのか、声優のしょこたんと歌手の小比木麻里の境が全く解りません。さすがディズニー、ミュージカルに関しては全くそつがないです。 
 ストーリーも映像も全体的に非常に良くできていて、ディズニー長編アニメ50作品目を飾るにふさわしい作品だと思います。まさにディズニー・アニメらしく、だれにでも安心して薦められる作品です。でも、細かいところで少々気になるところがありました。 
 例えば結局自力で簡単に塔を出られるのに、ラプンツェルが何故これまで塔を出なかったのかという理由付けがゴーテルの説明だけでは、どうにも納得出来ません。それに、たとえ己の私欲のために塔のなかに幽閉していたとはいえ、何不自由なく育て上げてくれた母であるゴーテルを、いとも簡単に切り捨ててしまえるのだろうかと、少々疑問に感じました。それに、自分の身の上を悟るシークエンスを台詞に頼らず映像だけで見せるのは良いのですが、どうも無理矢理こじつけたようで、強引すぎる印象を受けました。 
 とはいえ、映像は相変わらず素晴らしく、特に日本人スタッフが担当した長い髪の描写はまさに神懸かり的なものがあります。それに3Dを最初から意識した作りになっているので、ストーリーにもマッチしていて、3Dが非常に効果的に使われています。ただ、3Dでリアルに描写されたラプンツェルのギョロ目は、もう一回り小さくしても良かったように思います。
「英国王のスピーチ」
WMCSY
3/1
 ☆☆☆☆★★★★
 英国王の次男ジョージ6世は吃音に悩んでいたが、父親のジョージ5世はあえて彼に式典のスピーチを命じ、彼を更に追いつめていた。見かねた妻のエリザベスはスピーチ矯正の専門家ライオネルのもとを訪ね、夫に彼の診察を受けさせた。このオーストラリア人は非常に型破りな方法でジョージの吃音を矯正しようとするが、ジョージにはその真意がどうにも理解できなかった…。 
 歴史の裏側で密かに行われた英国王の奮闘記ですが、非常にウィットに富んだ台詞回しの中に、家族や夫婦の愛、そして友情を細やかに表現したシナリオがともかく素晴らしいです。目を引くシーンは特にありませんが、これだけの話の中で抑揚を持たせ、ラストに向けて盛り上げていく演出もなかなか見事です。この時代の英国王室のことなど日本人には馴染みがないので、万人受けするかどうかは疑問ですが、アカデミー協会が好む題材や演技であることは納得できます。私もこれからは、言葉に詰まったら無音で「フ○ック」と言うことにしようと思います。
「ナルニア国物語
第3章 アスラン王と魔法の島」

WMCSY
3/1
 ☆☆☆☆★★★★
 エドマンドとルーシーのペベンシー兄妹は従兄弟のユースチフの家に預けられていたが、意地悪なユースチフと反りが合わず、ことあるごとに衝突していた。ところがある日、寝室の壁に飾ってあった海の絵のことで3人がもみ合っていると、突然絵から海水があふれ出し、気がつくと3人はナルニアの海に漂っていた。そして、そこにカスピアン王の「朝びらき丸」が通りかかった…。
 
 映像としては申し分のない出来で、特に水の表現が素晴らしく、CG技術の更なる進化をまざまざと見せつけています。もはやCGのクリーチャーたちは完全に画面に溶け込み、実写の人間と一緒にいても違和感を殆ど感じません。しかし、3Dに関しては必要性があまり感じられません。ディズニーの方針でしょうが、なんでもかんでも3Dにすれば、良いというものでもないと思うのですが…。
 
 時間に合わせて原作を改変していますが、ユースチフの成長と変身がきっちり描かれているので、結果として正解ではないかと思います。それに、エクゼクティブ・プロデューサーがC.S.ルイスの息子とくれば、誰も文句を言えないでしょう。ただし、一カ所だけ理解しがたいシーンがありましたが…。
 
 ともかく、特殊効果の冴えもあり、ファンタジー映画としてはかなり良い出来ではないかと思います。ただ、あいかわらず主役級の役者に華が無いのが、どうにも惜しい気がします。
「ヒア アフター」
WMCSY
2/20
 ☆☆☆☆☆★★★★
 死者の声を聞くことが出来るジョージは、かつては霊能者として働いていましたが、その呪われた能力を嫌い、今はサンフランシスコの工場で働く一労働者として、ひっそりと静かな生活を送っていました。一方、パリの花形ニュースキャスターのマリーは、旅先の東南アジアで災害に巻き込まれ、死後の世界に目覚め始めます。そして、ロンドンに住む双子の弟マーカスは、事故で兄を失い、どうしようもない喪失感にさいなまれていました…。
 
 とうとう死後の世界を語り始めたのか、イーストウッド?と、少々心配になったのですが、考えてみれば、「荒野のストレンジャー」や「ペイルライダー」といったゴースト西部劇を撮っていたので、それほど不思議なことでもないようです。それに、これは来世について語っているようで、実は逆説的に現世に生きる者たちを励ます物語なのですね。ここに登場する3人は、それぞれがあるものを喪失します。それは仕事や名誉であり、愛であり、肉親の命ですが、3人の運命が複雑に絡み合うことによって、やがて希望の灯を見出していくのです。
 
 米国での評価は芳しくなく、興行成績も振るわなかったのですが、死後の世界というとどうしても宗教観が絡んでくるので、米国の評価や成績は全くあてになりません。むしろ、このテーマを宗教観抜きで、堂々と撮ってしまうイーストウッドの心意気というか、恐れを知らないところが、さすがだと感心させられてしまいます。

 相変わらず決して奇をてらわず、淡々と自然に演出しているのも、まさにイーストウッド流。特に冒頭の災害シーンなんか、今まで観たどんなディザスター・ムービーよりも臨場感があり、とても驚かされます。アカデミー視覚効果賞にノミネートされたのもうなずけますが、これもイーストウッドの自然な演出が功を奏しているように思います。そしてなにより、この作品には生きている人々に対する暖かい優しさが溢れているので、観ていて非常に心が癒されます。今の世情を考えると、もっとも求められている要素なので、日本なら受けるかもね。
 
「アンストッパブル」
WMCSY
2/1

☆☆☆☆★★★★
 リストラの憂き目にあって引退を迫られているベテラン機関士のフランクは、新米車掌のウィルと共に機関車1206号に乗り込み、貨物列車を牽いてペンシルヴァニア州ブリュースターを出発する。同じ頃別の操車場では、運転手が離れた隙に貨物列車777号が暴走を始めた…。

 トニー・スコット監督が「デジャヴ」「サブウェイ123 激突」に続いてデンゼル・ワシントンと組んだ暴走列車映画です。前回の「サブウェイ123 激突」では、わざと画面をブラした撮り方で非常に見辛かった列車の暴走シーンも、今回は反省したのか、オーソドックスな撮り方に戻っているので、安心して観られます。余計なシーンをばっさり切ったおかげでテンポも非常に良く、まさに息をもつかせぬアクションの連続で、観ている方の心拍数は上がりっぱなしです。 
 でも、よくよく考えてみれば、結局その手しか無いのなら、何故その手を何度も試さなかったのか?と不思議に思ってしまうのです。フランクの娘がフーターズで働いているというのはご愛敬ですが、それにしても事件の発端となった運転手の再就職先がファースト・フードとは!
「RED/レッド」
WMCSY
2/1

☆☆☆★★★
 元CIAの敏腕エージェントだったフランク・モーゼスは、現役引退後静かな余生を送っていたが、クリスマスも近いある夜謎の暗殺部隊の襲撃を受ける。これを難なく撃退したフランクだったが、密かに心を寄せる年金課のサラにも魔の手が忍び寄っていた。
 そこで、彼は半ば強制的に彼女を掠うと、かつての上司であるジョー・マシスンや同僚だったマーヴィン・ボックス、仇敵KGBのイヴァン・シモノフ、それにMI6のヴィクトリアらに助けを求め、暗殺部隊の黒幕を突き止めるのだった…。
 
 ブルース・ウィリス、モーガン・フリーマン、ジョン・マルコヴィッチ、ヘレン・ミレン、リチャード・ドレイファスそれにアーネスト・ボーグナインまでと、実に豪華なキャスト陣です。なんだかんだ言っても、これだけ豪華なキャストが集まれば、それだけで観る価値があろうというものです。DCコミックの映画化ですが、映画の方も多分にコミカルで漫画チックな出来になっています。でも、こういう作品でアカデミー賞受賞俳優たちが演じているわけですから、ハリウッドも懐が深いものだと、ただただ感心するばかりです。
 特に懐かしいアーネスト・ボーグナインにリチャード・ドレイファスの演技が見物です。ところでこのふたり、新旧版「ポセイドン・アドベンチャー」で、同じような役処をしていましたっけ。最後に生き残るところも一緒ですね。ボーグナインなんか92歳ですから、一回りも若いイーストウッドなんか引退するのはまだ早いってもんですよ。
「グリーン・ホーネット」
WMCSY
2/1

☆☆☆★★
(観ているぶんには楽しいのですが…)
 デイリー・センチネル社長の放蕩息子ブリット・リードは、父親の謎の死をきっかけに、優秀な技師であり、発明家であり、格闘家でもある、お抱え運転手のカトーと知り合う。そして、この優秀な相棒を得たことで、昔から憧れていたスーパーヒーローになろうと決意するのだが…。
 ミシェル・ゴンドリー監督といえば、「ヒューマンネイチュア」「エターナル・サンシャイン」「恋愛睡眠のすすめ」「僕らのミライへ逆回転」という、いかにも映画マニアが喜びそうなプリミティブな手作り感溢れる作品を作り続けてきた監督です。その監督にビッグ・バジェットの作品を撮らせたらどうなるのか?これは甚だ疑問ですが、案の定子供に大金を掴ませたが如く、嬉々として映像に懲りまくっています。奇抜な映像も良いのですが、無駄にやり過ぎとしか思えません。主役ふたりの凸凹コンビぶりもコミカルで、往年の「グリーン・ホーネット」の活躍を知るものとしては、コメディーに成り下がったようで寂しく思います。クリストフ・ヴァルツの怪演は面白かったけれどね。
「GANTS」
WMCSY
1/29

 ☆☆??★★??
(まさか「LOST」のように○○オチにはしないでしょうね?)
 就職活動中の大学生の玄野は、地下鉄のホームから落ちた酔っぱらいを救おうとして、旧友の加藤と共に電車にはねられてしまう。当然死んだと思った次の瞬間、ふたりは気がつくと、東京タワーを望むマンションの一室にいた。そして「GANTS」と呼ばれる黒い大きな球体の命令で、強制的に「星人」を狩るゲームに参加させられるのだった…。
 
 奥浩哉原作コミックの映画化ですが、一般向けの作品にするために原作の肝であるエログロを極力廃し、主役のふたりに二宮和也と松山ケンイチをもってきたところなんか、原作ファンの逆鱗に触れるかもしれません。でも興行的なことを考えると、私はこれはこれで良い選択ではないかと思います。エロはもちろん難しいですが、グロは最低限の描写はしていて、これでも私の隣にいた女性ふたりは具合が悪くなって途中で退場したくらいです。とはいえ、軟弱といえば軟弱ですが…。
 基本的に「SAW」や「バトル・ロワイヤル」のようなシチュエーション・スリラーですけれど、ふたりの人間ドラマとしても少々浅いですが掘り下げてはいます。主人公の年齢を上げたことも功を奏して、シナリオ的には結構うまくまとまっていると思います。
 もっとも、130分という尺に合わせるために、かなりの省略を余儀なくされているので、説明不足な点や唐突な描写も目立ちます。ともかく、すべての謎が解けるという後編を観てみないことには何とも評価しかねるところです。
「キック・アス」
TOHOシネマズ川崎
1/4
☆☆☆☆☆★★★★
 (おかげで、やっと正月気分に浸れました!)
 ニューヨークに父親と暮らすデイヴは、スーパーヒーローに憧れるアメコミ・オタクの冴えない高校生だ。女の子にももてず、毎日オタク仲間と連んで、悶々とした生活を送っていたが、ある日ついに自らがスーパーヒーローになろうと決意する。そして、ネットで注文したコスチュームを着ると、「キックアス」と名乗り、世の悪を退治するために街へ飛び出すのだったが…。
 
 最初はこの平凡な高校生を中心にリアルなドラマが展開します。ところが、途中から「ヒットガール」という11歳の少女が登場してからは、ヒットガールとビッグ・ダディの復習劇が絡んで、俄然ファンタジー・モードが増して、コミックさながらの世界に突入していきます。
 
 このヒットガール、可憐な少女なのに汚い言葉は吐くわ、軽快に悪人どもを惨殺するわで、
児童に対する表現に厳しい米国作品とは思えないほど際どいものがあります。実際米国内での公開が危ぶまれていたそうですが、こりゃ、まるでジャパニメーションのヒロインのようじゃないですか!日本でも少女が活躍するスプラッター・アクション映画は存在しますが、それにしても、これ程センスが良くてキレのあるアクション映画にはお目にかかれないのがとても残念です。

 少女にこんなことやらせて良いのかはともかく、映画ファンやコミック・マニアが身をよじらせて喜ぶような、オタク心のツボを突いた台詞や映像満載の楽しい作品には違いありません。コミック・マニアで有名なニコラス・ケイジも、物語の要となる役を嬉々として演じ、作品に重厚感を持たせています。音楽の使い方が、これまたニクイんですね。
「相棒-劇場版II-警視庁占拠!
特命係の一番長い夜」

1/1
品川プリンスシネマ
☆☆☆★★★
(正月早々こんな地味で重い映画を観るなんて!)
 拳銃を持った男が警視庁本部で、警視総監ほか幹部12名を人質にして会議室に籠城する事件が起きた。早速特殊捜査班と機動隊が会議室を包囲するが、犯人の要求もなく、犯人の動機も目的も分からないまま膠着状態が続く。そんな中、蚊帳の外に置かれた特命係の杉下警部と神戸警部補は独自の方法で事件の真相を究明するのだった…。
 
 この長ったらしいタイトルからしてTV番組の延長という感じですが、まさにその通りで、驚くほどTV番組と違和感がありません。「踊る大捜査線」のような派手なアクションや誇張した娯楽性も殆どなく、非常に地味な印象さえ受けます。それも、最初の掴みは良いのですが、次第に規模も興味も尻窄みになってしまって、最後のクライマックスなんか、もう銃撃戦はおろかカーチェイスもアクションシーンも無くて地味極まりないんですね、これが。
 
 では面白くないかというと、これが意外と面白いのです。そもそも「相棒」ファンが望むものは派手なアクションではなくて、そのドラマ性にあるのです。製作者もその辺は重々解っているようで、前作の「相棒 劇場版 絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン」ような失敗は繰り返さないとばかりに、今回はドラマを充実させることに腐心したように見受けられます。
 
 そして、今回相棒の二人が対決する相手は警察庁組織そのものですから、ことは複雑で一筋縄ではいきません。自らも警察組織の一員であるというしがらみが、杉下警部の信条である「正義感」さえも大きく揺さぶります。そのあたりの攻防が今回のドラマの中心にあるので、およそ勧善懲悪とはほど遠い結果に、単純明快な娯楽作品を期待した観客は戸惑うことでしょう。でも、そこが本来相棒ファンの望むところであり、この作品を「大人のドラマ」たらしめている所以なのです。
 
 とはいえ、籠城犯の犯行計画や特殊捜査班の対策など、細部の描写がお座なりになっているのは如何なものでしょうか?その辺もTV番組と全く違和感がありませんけれど…。
2010年
「ロビン・フッド」
12/20
WMCT
 ☆☆☆☆★★★★
 時は12世紀後半のフランス。十字軍の遠征に加わっていた、弓の名手のロビン・ロングストライドは実直な性格で仲間たちから慕われていた。彼とその仲間は故郷の英国に帰る途中、謎の一団の闇討ちにあって瀕死の重傷を負った騎士に遭遇する。その騎士ロバート・ロクスリーは、戦死したリチャード一世の王冠を母国に持ち帰る途中で、ロビンに王冠と家宝の剣を故郷に戻すよう頼むと事切れた。どうやって海を渡ろうか思案していたロビンたちは、これ幸いと騎士になりすまし、英国に帰るのだったが…。
 
 リドリー・スコットが「ロビンフッド」をどう料理するのか気になっていましたが、なるほどこう来たか!と、結構納得の出来でした。亡き父を当時理性の最先端にあった石工とし、ロビンをマグナ・カルタの立役者に据えるとは、史実に絡めたなかなか憎いシナリオです。その後シャーウッドの森で、ノッティンガムの代官やジョン王に対しても反旗を翻し、義賊として活躍することへの見事な伏線となっています。
 
 また、いつもながら迫力の戦闘シーンは健在で、特にお得意の城攻めのシーンなどは、他の追随を許さない、リドリー・スコット史劇のまさに真骨頂です。雨あられと降り注ぐ無数の矢などはCGなのでしょうが、全く違和感なく、鮮烈な戦闘シーンを劇的に描写しています。ともすれば残虐シーンに陥るところも、構図の妙で巧みに覆い隠し、まるで一枚の絵画を観るような、荘厳さも漂う美しいシーンに作り上げているのは、さすがリドリー・スコットです。
 
 とはいえ、不満も無いわけではありません。折角ロビン・フッドを描くのですから、もう少し弓の名手という点を強調するようなシークェンスを盛り込んで欲しかったと思います。例えば仲間たちと射的を競い合うとかして、彼の弓の腕を際だたせるとか、ひと工夫があっても良かったのではないかと思います。
 
 また、マリアンとシャーウッドの森に巣くう盗賊団との関係も説明不足で、後に何故マリアンが盗賊団を率いて戦闘に参加するのか、今ひとつ理解しかねます。もっとも、鎧姿のマリアンという図はなかなか魅力的ではありますが…。
 
 あと、「ER」のアーチー・モリス役のスコット・グライムズがウィル・スカーレット役で出ていたのには少し驚きました。結構人気があるんですねぇ。
「トロン レガシー」
12/20
WMCT
 ☆☆☆★★★
(なんといってもあの「TORON」の続編ですから、☆一つおまけです)
 前作でコンピュータの世界から帰還したケヴィン・フリンは相棒のアランとエンコム社を立ち上げ、巨大企業へと成長させたが、ある時突然姿を消してしまった。残された一人息子のサムにエンコム社の全権が委ねられたが、サムは会社の経営には目もくれず、夜な夜なバイクを乗り回し、奔放な暮らしに明け暮れていた。そんなサムの元に、ある夜アランが訪ねてきて、失踪した父親からのメッセージを告げ、父の所有するゲームセンターの鍵を手渡すのだった…。 
 
 その昔「TORON」の公開時は、世界初のフルCG作品という触れ込みだったのですが、実際CGが使われたシーンはほんの少ししかなく、ほとんどが白黒フィルムに色を着色してごまかした偽CG映像でした。なにしろ当時は1秒数千万円という費用が掛かった時代です。天下のディズニーが果敢に挑戦してもこの体たらくですから、手間も時間もお金もかかるCG映画なんて夢のまた夢なのかと、非常に落胆したものでした。ですから、その後ルーカスがCGスタジオを立ち上げて、スターウォーズをCG映像で作り始めると言い出した時も、「トロン」の失敗を目にした大半のSWファンはこれに懐疑的で、せいぜい出来ても「スター・ファイター」が精一杯だろうと思ったものです。
 
 ところが、その後CG技術はめざましい進歩を遂げて、今やCG抜きでは映画が作られないという位にハリウッドを席巻するまでになりました。ルーカスの作ったCGスタジオからは世界に冠たるCGアニメ・スタジオ「ピクサー」が誕生し、CGアニメは2Dアニメを凌駕するほどに成長を遂げました。こうした技術革新の源をたどれば、やはりディズニーに辿り着くといっても過言ではありません。そして、中でもエポックメイキングな作品が「TORON」なのです。ですから、「TORON」の続編が出来ると聞いたとき、今度はどんな映像で驚かせてくれるだろうかと、期待に胸を膨らませずにはいられませんでした。
 
 でも、技術開発に時間が掛かりすぎたのでしょうか、何もかも遅きに失してしまったようです。コンピュータ内の世界観では既に「マトリックス」がユニークな映像を見せてくれていますし、3D映像としては、なんといっても「アバター」に先を越されてしまっています。どうにも目新しさを感じないどころか、そのデジタルな世界観が古めかしく感じられてしまうのです。主演のジェフ・ブリッジスをCGで若返らせたのも、「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」で見せた若き日のブラッド・ピットの方がはるかにインパクトがありました。期待が高かったせいもあり、これは非常に残念な結果といわざるを得ません。
 
 さらに困ったことに、工業デザイナーという畑違いの人材に初監督させたおかげで、映画の骨格すら非常に危うい出来になってしまいました。状況説明をもっぱらセリフに頼るという、ディズニーらしからぬ過ちを犯しています。一応父子の絆を軸としてまとめ上げてはいますが、人間描写はお座なりで、第一、主人公に全く感情移入できないとあっては、どうしたって、人間ドラマとして盛り上がりに欠けるものになってしまっています。
 
 そんなドラマ性の欠如があっても、「TORON」の最大の売りは、やはり誰も観たことがない世界を見せてくれるという先駆的革新的な映像に他なりません。常に業界の先駆者であろうという、ディズニーの精神と意欲には惜しみない賛美と尊敬の念を捧げますが、いかんせん製作期間があまりにも長すぎたため、技術革新の急速な進歩に追いつけず、後発の者たちに追い越されてしまった観は拭えません。少なくとも「アバター」の前に公開されていたならと、非常に残念でなりません。
「カンフー・サイボーグ」
12/1
(TCC試写室) 
 ☆☆☆★★★
(正直よく分からないシナリオですが、これもお国柄ということで…)

 2046年、中国の片田舎の警察署に政府が秘密裏に開発していたロボット警官K1が赴任してきました。ただ一人彼の正体を知る警察署長のタイチョンですが、片思いの女性警官ムイがK1に好意を抱き始めたと知って、内心穏やかではありません。
 そんな平和な村に、ある日、政府の天安科学センターからシステム異常のロボットK88が逃走してきました。タイチョンは科学センター主任ラムから、K1と協力してK88を捕まえるように依頼されます。こうして、タイチョンは秘密兵器iガンを携え、恋敵のK1とK88逮捕に向かうのでした…。
 「カンフー・ハッスル」のプロデューサーであり、VFX超大作「西遊記リローデッド」の監督であるジェフ・ラウが脚本・監督し、セントロ・デジタル・ピクチャーズのCG技術を駆使して作った爆笑サイボーグ映画です。といっても、冒頭から40分以上(時計をみて計ったわけではないですが、おおよそその位)もの間、サイボーグは出てきません。出てきても、どこがサイボーグなのか疑問の残るところなのですが、ともかく、中国のCG技術の粋を尽くした作品です。でも、さすがというかやはり、中国の作るCG映像はどこかアカ抜けないところがあります。創造性やアイデアよりも、やたら人海戦術で作ったという感じのアカ抜けさです。ギャグもなんとなくアカ抜けませんし、妙なラブコメもアカ抜けません。自由化したとはいえ、共産党が一党支配する国ですから、アカ抜けないのは当然かも知れませんけど、これもお国柄なのでしょうね。
 それにしても、ここに登場するロボットやサイボーグたちの能力は尋常ではありません。家庭用電源から取り入れたバッテリー・パワーは天井知らずで、鉄腕アトムも真っ青の威力を持ち、次々にトランスフォームを繰り返すと、何故か質量も大きさも百倍くらいに増大します。…かと思えば、孫悟空の如く何百という数に分身するんですね、これが!ギャグなのかマジなのか分かりませんが、もうロボットやサイボーグを何だろうと思っているんでしょうか?こんな魔可不思議なことを平然とやってしまうところなんか、やはり、中国三千年の歴史は伊達じゃなかったようです、ハイ。
「SPACE BATTLESHIP ヤマト」
12/1
WMCT
 ☆☆☆★★★
(なにはともあれ、CGとはいえ宇宙戦艦ヤマトが実写で観られたのはうれしい限りです)

 時は2194年、突如宇宙の彼方より飛来した謎の敵ガミラスが地球への侵攻を開始した。ガミラスの放つ遊星爆弾は地上のすべてを破壊尽くし、地球は放射能に汚染され、わずかに生き残った人類は地下に潜って、反攻の機会を伺っていたが、頼みの綱の連合艦隊もガミラス軍に破れ、もはや人類の運命は風前の灯火となっていた。
 そんな時、元地球軍のパイロットだった古代進は、廃品回収の最中、不思議な落下物を拾う。それは、地球より14万8千光年彼方の惑星イスカンダルから送られた通信カプセルだった。そして、そのカプセルには、地球を救う重要な情報が隠されていたのだ…。
 往年のSFアニメシリーズ「宇宙戦艦ヤマト」の初の実写映画化と聞いて、一抹の不安とささやかな期待を寄せていました。気になるのは、デスラー総統とスターシャの配役が発表されていないことでしたが、映画を観てなるほどと納得しました。でも、やはりこの手の映画では魅力的な敵の存在は必須でしょう。その点、ファンが納得出来るのか、疑問の残るところです。
 シナリオはやや詰め込みすぎながら、結構よくまとまっていると思います。もちろん、物語の改変部分は賛否両論あると思いますが、これ一本で完結させようという潔さというか心意気は買えると思います。でも、やはり物語を急ぐあまり、どうしても人間描写が軽薄になってしまっています。それと、戦闘シーンなのに、スリルとサスペンスが全く感じられないのはなぜなんでしょうか?
 それにしても、ラストにおける別れ際のすったもんだは長すぎて、少々苛つかせます。まあ、これが日本映画の特徴といえばそれまでなのですが、それにしても、もっとスマートな別れさせ方はないのでしょうか?それに、最も重要なモノは何かということを見失っているので、このシーンには唖然とさせられてしまいます。だいたい、あんなことをしたら、放射能除去装置も失われてしまうのではないでしょうか?
 監督の山崎貴はVFX出身ですから、さすがにVFXはなかなか素晴らしい出来です。とはいっても、ハリウッドからは5年ほど遅れている感じですが…、それでも、少ない予算でよくぞここまで出来たものです。ただ、どうしても、美術においては二番煎じの感が拭えません。もう少し独創的なアイデアがほしいものです。
 それと、セットが小さいせいか、どうも画面に狭苦しいさを感じてしまいます。CG合成で格納庫など船内をもっと広く見せたり、乗組員の数も増やす工夫が必要だったように思います。同様に、宇宙空間も雄大さを欠いて見えます。これも空間のタメが出来ていないせいですが、そういえば、同監督の作品はどれもこれも箱庭的な画作りに陥る傾向があるようです。
 配役でいえば、キムタクの古代進や黒木メイサの森雪はなかなかいい感じだと思います。でも、森雪の戦闘服は下も黄色にすべきです。それも、体にピッチリのボディ・スーツであるべきです。それ以外考えられませんよ!
 PS)それにしても、最近のヤマト映画からは松本零士の名前が完全になくなっているのね。
「ハリー・ポッターと死の秘宝 Part1」
11/20
WMCT


 ヴォルデモートの勢力は魔法界を席巻し、その影響は人間界にも及んでいた。ホグワーツ魔法学校も安全ではなく、ハリーは仲間たちと共に秘密の隠れ家に逃れたが、そこも死喰い人たちの急襲を受けてしまう。もはや、ハリーたちに残された最後の希望は、宿敵ヴォルデモートを倒す鍵である7つの「分霊箱」を探し出すことしかない。こうして、ハリーはロンとハーマイオニーと共に、残りの「分霊箱」の行方を求めて、荒涼とした世界を彷徨うのだった…。
 人気のファンタジー・シリーズもついに最終巻にはいりましたが、あまりに長いので、さすがに今回は前後編に分けて公開ということになりました。しかも、当初は3D映画で作るはずだったのですが、どうも満足のいく出来上がりには間に合いそうもないということで、急遽2Dで公開と相成りました。
 前後編に分けたため、後編に向けての前振りに充分な時間を割けることが出来たようです。おかげで前回までのお気楽学園ラブコメムードは一新され、ヴォルデモートとの最終決戦に向け、各人の不安な胸の内も表現するゆとりが出来ました。「Part1」は言わばクライマックスの前哨ですから、当然の如く全体のトーンは暗く、「静」を基調とした構成になります。つまり「動」の前の「溜め」の部分であり、夜明け前の闇ですから、ハリーたちはひたすら堪え忍ぶことを強要されます。
 というわけで、いきなり人が死ぬわ、敵はますます強大な力を得るわ、仲違いでやきもきさせるわ、主人公たちはどんどん追いつめられるわで、シリーズ中かつてないほどに暗く重い雰囲気が立ちこめています。そんな中でも、ちょっとしたユーモアや、意外なキャラの活躍や、ハーマイオニーの衝撃シーンが刺激剤となって、観ていて気が滅入るどころか、後編に向けて気分がますます盛り上がっていきます。
 
 ただ、最終巻ということで今までのキャラが次々と登場し、今回も新しいキャラが登場するとあって、原作を読んでいない者には名前と顔を一致させることだけでも至難の業です。ですからこの作品を楽しむためには、復習と予習は必須だろうと思います。でも、そんなファンだけを相手に莫大な製作費をかけられるんですから、それはそれでたいしたものです。なにはともあれ、後編に期待が膨らむ一編ですが、こんなに盛り上げといて、後編は一体どんなことになるのでしょうか?前編で張られた数々の伏線が見事回収されるのか?評価は、それを見極めてからということにしたいと思います。
「怪盗グルーの月泥棒」
11/1
WMCSY
 ☆☆☆☆☆★★★★

 世紀の大泥棒を自認するグルーだが、最近ギザのピラミッドが何者かに盗まれたというニュースを聞いて、心中穏やかではない。グルーにはもっと大きな物を盗むという計画があったが、泥棒銀行が資金を貸し出してくれないのだ。そこで、グルーはバナナから作ったミニオンたちと、「縮ませ光線銃」を東洋(日本です!)のとある研究所から盗み出そうと図るのだが…。

 そのバタ臭いキャラクターが日本人に受け入れられるかは甚だ疑問ではありますが、まあ観ていれば次第に慣れてきて、気が付けば感情移入している自分に驚いてしまいます。歳のせいか、最近涙腺がゆるくなったようで、グルーが子供たちに手作り絵本を読んで聞かせるところなんか、ついホロリとさせられました。
 
 そんなわけで、取っ付きにくいキャラで、観ようか躊躇していた私ではありますが、これが結構お気に入りになってしまいました。かなりブラックな笑いとかもあって、子供たちの鑑賞にはどうかなとも思いましたが、周りで鑑賞していた子供たちには非常に好評だったようです。なにより、サブキャラのミニオンたちの動きが面白く、それに加え、3Dの飛び出し方が尋常でないくらいに凄いので、それだけでも、子供たちには充分楽しめるものになっているのです。
 
 今年は長編アニメが豊作で、来年のアカデミー賞の予想がかなり難しくなってきました。もちろん「トイストーリー3」が最右翼であることに変わりはありませんが、こういうヒネた作品がダークホースに浮上しても良いんじゃないかと思います。
「エクスペンダブルズ」
11/1
WMCSY
 ☆☆☆☆★★★★
バーニー・ロス率いる傭兵部隊エクスペンダブルズ。賃金もエクスペンシブだが、腕も立つエキスパート揃い。どこの傭兵会社も断るような、犬も食わない仕事でも、悪いやつを懲らしめるためならば、ついつい男気で引き受けてしまう、命知らずの男たちだ。今回もCIAのチャーチから、南米の小国ヴィレーナを牛耳る将軍暗殺の仕事を受けるが、そのあまりに無謀な内容に、同業者のトレンチからも馬鹿にされる始末。それでも、臆することを知らないバーニーは、仲間たちとヴィレーナに向かうのだった…。
 シルヴェスタ・スタローンが当代随一のアクションスターたちを集めて作ったマッチョ男祭り映画です。もう、筋肉ムキムキの男たちばかりが出るんで、観ているこちらも自然と力が入ってしまいます。それも、マーシャルアーツのチャンピオンとか、プロレスラーとか、カンフーの達人とか、極真空手のチャンピオンとか、凄い経歴の男たちが、ガチでバトルを繰り広げているんですから、ひとつひとつのアクションのレベルが違います。そんなアクションをめいっぱい詰め込んで、超過激な銃器やら大量の爆薬やらを投入し、これでもかとばかりに見せつけるんですから、アクション好きにはたまらない逸品に仕上がっています。
 まあ、アクション重視ですから、巧妙なストーリーテリングなんていう小賢しいマネは一切なしで、敵地に踏み込むのも計画性は無いも同然。よく言えば臨機応変。悪く言えば、出たとこ勝負の殴り込み状態ですが、これで結構!さすがスタローン、観客が望むものをよく心得ています。
 ドルフ・ラングレン対ジェット・リーの極真VS小林拳対決や、ジェイソン・ステイサム+ジェット・リー対ゲイリー・ダニエルズのハゲチビコンビVS北斗神拳の対決などの他、スタローン、ウィルス、シュワ知事の3大スター揃い踏みシーン(一部合成?)もあって、見所も多いです。
 続編が作られれば、次回はジャン=クロード・ヴァンダムやザ・ロックやスチーブン・セガールやチャック・ノリスやジャッキー・チェンも参加させて欲しいです。

「ナイト&デイ
10/16
WMCSY
 ☆☆☆★★★
 妹の結婚式に出席するためにウィチタの空港からボストンへ向かおうとしたジューンは、見知らぬハンサム男に二度までもぶつかってしまう。しかも同じ飛行機に乗り合わせたとあって、これは運命の出会いなのかもと胸をときめかす彼女だが、ロイと名乗る件の男にはとんでもない秘密があった…。
 トム・クルーズとキャメロン・ディアスという、少々薹のたった二人による、アクションあり、ロマンスあり、笑いありの軽快な娯楽作品です。監督のジェームズ・マンゴールドは「ニューヨークの恋人」「アイデンティティー」「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」「3時10分、決断のとき」という具合に、ジャンルを選ばない職人監督ですが、こういうロマンチック・アクション・ムービーも手堅くしっかり撮っています。
 しかし、あまりに手堅過ぎて、印象が薄いのが残念です。たとえばアクション・シーンなど、どれも本当に凄いんですけれど、撮影や演出に危うさが無いので、その凄さが伝わってこないのです。特にバイクでのアクション・シーンなど、移動カメラによる撮影が素晴らしいのですけれど、あまりにそつの無い演出のため、その迫力が半減してしまっています。これがいかにも惜しいですね。 2大スターの共演で、アクションあり、コメディーあり、ロマンスあり、エキゾチックな風景ありとてんこ盛りの娯楽要素を手堅くまとめたのはよいですが、欲張りすぎて、どっちつかずになってしまったという印象です。でも、デート・ムービーとしては手頃な軽さかも知れません。
 ちなみに、牛追い祭りのシーンで使われているCG技術はかなりの高レベルです。「十三人の刺客」でも、これくらいの技術が欲しかったと思いますが、やはり無理かもね〜。
「バイオハザードIV アフターライフ」
10/01
WMCSY
☆☆☆★★★
(渋谷の第一感染者役で中島美嘉が出ています)


 宿敵アルバート・ウェスカーを追って、渋谷の地下にあるアンブレラ社東京支部を急襲したアリスだが、逆にT−ウィルスで得たパワーを無効にするワクチンを注射され、既の所で逃してしまう。半年後、T−ウィルスに汚染されていない安住の地「アルカディア」を目指してアラスカへと飛び立ったのだが…。
 今回の話で、ようやくクリスとクレアの兄妹が再会し、CGアニメの「バイオハザード デジェネレーション」と繋がります。それにしても、刑務所に囚われているクリスを演じるのが「プリズン・ブレイクのウェントワース・ミラーとは、ちょっと笑えますが、彼ならどんな刑務所からでも脱出出来そうなので納得です。
 まあ、冒頭でパワーを失ったアリスですが、これでゾンビの恐怖が復活すると思いきや、半年後にはすっかり力を回復していて、あの設定はどうなったんだ?と唖然としてしまいます。その上、逃げたはずのウェスカーも、アリスのDNA欲しさに再び舞い戻るし、この方向転換は確かに意外性はあるものの、なんだか筋の通らないシナリオに振り回されっぱなしという感じです。そんなわけで、観客は頭を空にして、ただアトラクションを楽しめとでもいうのでしょう。これって、もしやアンブレラ社による、観客ゾンビ化計画の一環では?
 また、次回作に続くとばかりの、盛大なラストですが、確かニュースで主演のミラ・ジョヴォヴィッチはこれで最後と聞いていたのに、これはいったいどうしたことなのでしょうか?そういえば、今作では脱がなかったのね。シャーワー室まで入って、どういう肩すかしなんだ!
「ガフールの伝説」
10/01
WMCSY
☆☆☆☆★★★
 人類が滅亡した遠い未来(ということらしい)、あるところにふくろうの国があった。ある日、クラッドとソーレンの兄弟は、けんかをして巣から落ちたところを、謎のフクロウたちに掠われてしまう。彼らは邪悪なフクロウ組織「純血団」のメンバーで、掠ってきた子フクロウたちを満月の魔法で意のままに操り、組織の兵士に育て上げ、いつの日かこの国を支配しようと目論んでいたのだ…。
 原作者のキャスリン・ラスキーが製作総指揮し、「300」のザック・スナイダーが3Dアニメを監督したとあって、結構期待して観ましたが、予想に違わずスナイダー色が色濃く出た作りになっていました。特に戦闘シーンなど、まさにふくろう版「300」という趣向で、血しぶきこそ出ませんが、鋭利な金属のかぎ爪や翼に仕込ませた刃物が3Dで飛び出す様は、これが児童文学か?と思わせる程の凶暴さです。いったい誰のために作ったのか、製作意図がよく分かりません。案の定、本国アメリカでの興行成績も低迷する始末です。日本でも、このキャラでは大変厳しいと言わざるを得ません。
 でも、3D技術についてはかなりの進歩の跡が見られ、スナイダーお得意のスローモーション演出も功を奏して、飛び出し効果は抜群です。また羽毛の細かい揺れも見事に描写しているので、「風を感じる3D」といううたい文句は案外的を射ていると思います。
 お話的には少々わかりにくいところもありますが、映像的には非常にきめ細かく作り込んであり、製作姿勢としては大変好感が持てます。しかし残念なことに、その方向性が誤っているように思えてなりません。
 それにしても、これほどフクロウに種類があったとは知りませんでした。聞くところによれば、フクロウに魅せられたキャスリン・ラスキーが、その生態を子供たちに知ってもらいたいと、この原作を書いたそうです。 その意味では、原作者の意図は充分に伝わっているのかも知れません。
「十三人の刺客」
9/29
WMCSY
☆☆☆★★★
(夢に出てきそうです)
 時は江戸後期、老中土井利位の屋敷の門前で、明石藩江戸家老の間宮図書が切腹して果てた。その傍らには主君を諫める訴状があった。明石藩主松平斉韶は生来の屈折した性格により、到る所で非道の限りを尽くしてきたが、12代将軍家慶の弟であることもあり、幕府から全くお咎め無しばかりか、次期老中を約束される始末。そこで、斉韶の目に余る極悪非道ぶりに業を煮やした老中の土井利位は、ついに公儀御目付役の島田新左衛門に斉韶暗殺の密命を下すのだった。こうして、将軍の弟暗殺の密命を受けた十三人の侍対警護の侍三百人(劇中では二百人超)による、大儀と忠義と侍魂を賭けた壮絶な戦いの火蓋が切って落とされた…。
 なにしろ、オリジナルの1963年版「十三人の刺客」は東映時代劇のオールスターキャストで、島田新左衛門役の片岡千恵蔵ほか、嵐寛寿郎、丹波哲郎、山城新伍ばかりか、月形龍之介、西村晃、里見浩太朗、という新旧黄門さま揃い踏みで出演しているくらいですから、役者としての格が違い過ぎ、リメイク版の配役では、どうしても力不足を感じてしまいます。これも、昨今の邦画界における大スター不在という窮状では、仕方のないことなのかもしれません。
 そこで、リメイク版では、かなりの変速技を駆使して、オリジナルとはまた違った味を醸し出しています。その最たるのが斉韶役の稲垣吾郎でしょう。甘いマスクに少し影のある彼が演じることで、極悪非道の斉韶に一瞬の憂いを垣間見ることができ、単純に憎めない、複雑な悪役に仕上がっています。まさに、この役にSMAPの人気アイドルを持ってきた三池崇史監督の采配の妙といえます。それに、オリジナルにない野人役の伊勢谷友介も、不死身の体を持つ型破りなキャラを好演し、時代劇の堅苦しさの中に一抹の清涼感を与えてくれます。
 また、三池監督らしく、オリジナルの敵五十三人を三百人(劇中は二百人超)に増員し、爆薬や牛を使った戦略も取り入れたりして、クライマックスの活劇シーンを派手に演出しています。でも、全体的に剣の殺陣というよりは、やくざ同士のガチンコ勝負という感じで、泥と血にまみれて、誰が誰だか分からない状態なのは困りものです。凝ったアングルでの撮影や、アップの多用など臨場感を出そうという趣旨は分かりますが、やはり「300」のような、太刀筋のよく分かる演出も心がけて欲しかったと思います。ただ、さすが時代劇役者の松方弘樹だけは別格で、ロングで見事な殺陣を十二分に見せてくれます。
 それにしても、この作品で一番強烈なのは、斉韶の非道ぶりを表すシーンで、まるで怪談映画のような演出には、思わず息をのみました。
「超強台風」
9/9
ブロードメディア・スタジオ月島試写室
 ☆☆☆★★★
 (トンデモ度は★5つ!)

 韓国映画「TSUNAMI -ツナミ」と時を同じくして公開される、中国が総力をあげて作ったディザスター・ムービーです。日本にいては気にも留めていませんでしたが、当然のごとく、台風の猛威は中国本土も襲っているわけで、2006年に発生した台風8号「桑美」(さおまい)は福建省や浙江省で大きな被害をもたらしています。あの「カトリーナ」に匹敵する破壊力の「桑美」をモデルに、それをも凌ぐ超強台風「藍鯨」が画面狭しと暴れ回るのがこの作品です。
 
 ディザスター映画といえば、危機を察知した科学者が行政に対して警告しても、行政側はそれに取り合わないというパターンが普通ですが、この映画は違います。なにしろ主人公は高潔この上ない市長なのです。科学者の方が危機の確率が小さいと及び腰なのに対して、この市長ときたら、たとえ確率が1パーセントでも人命を守る方が大切だとばかりに、120万市民を早々と避難させるのです。これに対し、多少の脱落者はいても、ほとんどの住民が市長命令に従って、一糸乱れぬ避難行動を起こすのも、さすが中国!
 
 こんなにすんなりと事が運んでは、面白くもなんともないだろうと思ったら大間違い。なにしろ相手は人知を越えた自然の猛威です。それに加えて、誰ひとり犠牲者を出すまいという、無謀とも思える信念に燃える市長の肩には、120万市民の命が重くのしかかります。市長にとっては、孤島で難産に苦しむ産婦も、無人の町に残ったコソ泥も、金魚鉢を大事そうに持った少年も、みんな大切な命なのです。どんなことがあっても救わなければなりません。こんなムチャぶりに自ら率先して身を投ずるんですから、市長には次々と無理難題が降りかかってきます。危機また危機の連続です。

 波に流された船が避難所の壁をぶち破り、どっと流れ込む海水。それと一緒にサメまでも現れ、人々を襲い始めます。まるで「ジョーズ・イン・ツナミ」みたいなシチュエーションですが、これで驚いてはいけません。次の瞬間、やおら市長が「私は元特殊部隊だ!」と叫んで、サメにむかって飛び込んでいくのです!とんだところで市長の過去を知り、驚く間もなく、市長に続けとばかりに次々とサメに飛びかかる人々。さすが中国人は違います!サメなんぞフカヒレの材料にしか思わないのでしょう。こんな展開、アメリカ映画では絶対にアリエネェ〜!
 
 この映画のもっともユニークなところは、CG全盛の現代において、ミニチュア・ワークを主体にした特撮技術を駆使しているところです。なにしろ水を扱っているから、それなりの波を表現するにはかなりの規模が必要となってきます。波の大きさからして10分の1スケールのミニチュアの町を作ったと思われますから、そこに流れる水の量と来たら莫大な量になる。どんだけ大きなプールを使ったんだと、考えただけでも気が遠くなりますけれど、さすが中国、スケールが違う!撮影所から特撮用プールが次々と消える日本に代わって、今やミニチュア・ワークの分野でも中国が世界の覇者となりつつあるようで、昔からの東宝特撮映画ファンとしては残念で仕方ありません。
「ヒックとドラゴン」
8/20
WMCSY
☆☆☆☆☆☆★★★★★
(史上初の☆6つ!ただし「誤訳」により☆★各2つ減点!?是非とも正しい訳で
IMAX公開しなおして欲しい作品です!だいたい名前がトゥースじゃないし、つまらないCMもマイナスでした。なんとも不幸な作品ですが、今年一番の高評価は変わりません!)
 昔々、海の彼方のバーク島では、バイキングとドラゴンの戦いが続いていました。この島の頭の息子ヒックは生まれたときからひ弱で、仲間からも馬鹿にされ、父親のストイックには悩みの種でした。そんなヒックがある時、傷ついた一匹のドラゴンと出会ったのですが、それはナイト・ヒューリーと呼ばれる、幻のドラゴンでした…。

 まず言っておきたいことは、この作品の吹き替え版には重大な「誤訳」があるのではないかということです。いや「誤訳」と言うよりは、誤った解釈と配慮による「意訳(異訳)」というべきでしょうか。それは作品の意図からすれば、絶対に言うべきでない単語が使われているということで、その単語によって★2つ分くらい評価が分かれてしまうのですが、残念なことにほとんどの劇場では日本語吹き替え版しか公開されていないようなので、確かめようがありません。というわけで、DVDが発売された時に原語版で検証し、改めて評価したいと思います。

 とはいえ、この3DCGアニメの出来映えは非常に素晴らしく、デフォルメされた人物の繊細で豊かな表情といい、その適度な質感といい、「トイストーリー3」を凌ぐ程の完成度を見せています。

 更に特筆すべきは3D演出で、飛翔シーンにおける画面のカット割りや構図の取り方など、従来の2D演出からは思いもよらない斬新な切り口で、観る者を驚かせてくれます。この迫力はあの「アバター」さえも超えていて、3D映画の凄さを改めて見せつけられた思いがします。この作品こそ是非ともIMAXの大画面で観るべきでしょう。(残念ながらIMAXでは公開していませんが…)

 そして、更に更に素晴らしいのが、ディズニーやピクサーでは絶対にあり得ないラストで、ここにこそ、制作陣のこの作品に賭ける心意気とあふれる愛情が見て取れるのです。ですからこそ、あの致命的とも言える「誤訳」が残念でならないのです。

追記)字幕版を検証したところ、以下の理由から「大誤訳」ということがわかりました。
冒頭のシーンと最後のシーンは対になっていて、
冒頭のシーンで「pest」と言っているところが
最後のシーンでは「pet」となっているのです。
これは明らかに韻を踏んだ使い方なので
「pest」=やっかい物
「pet」=すばらしい物
という対照的な意味で使っていると解釈するのが正しい。
ところが、日本語吹き替え版では
「pest」=害虫
「pet」=ペット
と訳していて、意味がちぐはぐになってしまっているのです。
ですから、観客のことを考えるのなら、
「乱暴(者)」と「相棒」とか、
「外敵」と「快適」といった韻を踏んだ超訳をするか、
無理に韻を踏まなくとも「友達」とか、もっと適切な言葉を使って欲しかったところです。
「魔法使いの弟子」
8/20
WMCSY
☆☆☆★★★
 (面白そうな要素はたくさんあるのに、それが全く生かされていない。けっして、満足できる出来とはいえません。それでもまあ、映画を観たという気にはさせてくれます)

 少年デイブはひょんなことから、ニューヨークのとある骨董屋に迷い込みます。そこに現れたのが魔法使いのバルサザールで、彼は1000年ものあいだ偉大なる魔法使いマーリンの後継者を捜し続けていたのでした…。

 どうもブラッカイマー印の映画は観客に対するサービス精神が旺盛すぎていけません。面白いと思われるアイデアを惜しげもなく投入するのは良いのですが、あれこれ投入しすぎて、結局収集がつかなくなり、空中分解してしまうパターンが多いようです。
  この作品でも、物理オタクの駄目青年が魔法使いの弟子になるというアイデアは面白いのですが、なにぶん登場人物が多すぎて主人公に思い入れする余裕もなく、ただ物語の流れに身を任すだけになってしまいます。敵キャラも無駄に多く、それぞれ面白そうなんですが、知らないうちに次々と消えていき、気がついたら最終ボスが現れて、なんだか知らないうちにやっつけたというのが正直な感想です。後に残るのは、「あいつはどうなった?」「彼はどこに消えた?」という疑問ばかりです。
  もっとアイデアを整理して、エピソードやキャラにメリハリをつけるべきなんですが、それをしないのがブラッカイマー印ということなのでしょう。でも、やはり資金とアイデアと技術と人材の無駄使いと思えて仕方ありません。
「インセプション」
8/1
T109K
 ☆☆☆☆☆★★★★
 (ただひとつ解せなかったのは、ケニアのモンバサのシーンをモロッコで撮ったことです。何故でしょうか?)
 コブ(レオナルド・ディカプリオ)は標的の夢に入り込みアイデアを盗む産業スパイだが、ある時、日本人実業家サイトー(渡辺謙)から奇妙な仕事を依頼される…。
 
「夢から覚めてみたら、それも夢だった」という経験は誰にでもあると思いますが、それを夢の階層化としてとらえたアイデアは、ユングの集合的無意識とも違い、斬新でユニークな世界観を構築しています。観客はこの世界観をまず理解しなければならないのですが、映画はやや不親切ながらも、具体的かつ簡潔に、非常に上手く脚本に絡ませて説明していきます。ただ、提供される情報量があまりに膨大なので、一度観ただけでは充分理解することは困難だと思います。その意味で、これはかなりマニアックで実験的な作品だとも思いますが、そんな作品に膨大な資金をかけられたのも、やはり「ダークナイト」の成功があってのことでしょう。

 また、夢の世界ということで凄い映像ばかりに注目が集まりそうですが、この脚本の巧みさは見事で、全編にばらまかれた伏線の数々がラストに向かって一気に収束していく様は、観ていて爽快であり、ある種の感動さえも呼び起こします。このあたり、「メメント」で見せたクリストファー・ノーランの緻密な脚本術の面目躍如といったところでしょう。
 
 なお、劇中に登場する雪山の病院施設とスキーを履いた警備隊のシークエンスは監督自ら好きな映画ベスト10にあげている「女王陛下の007」へのオマージュでしょうし、無重力シーンは同じくベスト10にあげている「2001年宇宙の旅」を想起させます。そんなわけで「インセプション」は、実は監督自身の夢を具現化したものと言えるかもしれません。
 
「トイストーリー3」
7/25
WMCSY
☆☆☆☆☆★★★★


 時は流れ、アンディも17歳に成長して、今ではすっかりオモチャたちと遊ぶこともなくなっていました。そしてアンディが大学の寮へ行くことになり、オモチャたちはどこに処分されるのか、気がかりでなりません…。オモチャは子供に遊んでもらえるのが本望ですが、持ち主はいずれ年をとり、オモチャを手放す日がやって来るものです。屋根裏の段ボール箱の中にしまわれるのか?オークションで売られるのか?施設に寄付されるのか?オモチャにとって運命の分かれ道ですが、どの別れ方が彼らにとって幸せなのでしょうか?
 
 オモチャに対して真摯に向き合い、考え抜かれた幸せなシナリオは一分の隙もなく、まさに完璧です。シナリオ作りの段階で、十分に話し合い、思いつく限りのアイデアを惜しげもなく大量投入し、練りに練って作り上げられたことがよく分かります。この辺りが日本のアニメに一番欠けているところなのですが、もはや如何ともしがたい状況で、それを期待するのは諦めるしかないようです。
 
 ともかく、いつもながらに素晴らしいシナリオに基づいて作られた今作は、まさにピクサー・アニメの集大成とも呼ぶべき作品に仕上がっています。ただ、シリーズ物の常として、「1」や「2」を観ていないと分かり辛いところがあるかも知れません。それに結構マニア向けのネタもしっかりあったりするので、オモチャに関する知識も案外必要だったりします。このようにピクサーのアニメは子供から大人まで万人受けする体裁はしていても、意外とマニアックな面もあるので油断なりません。そこがまた、多くのファンを掴んで離さない所以なのでしょうね。
 
 また、併映の短編アニメ「デイ&ナイト」がこれまた大変な意欲作で、ピクサーの弛まぬ冒険心と志の高さを見せつけてくれます。凄いですね、まったく♪
 
「借りぐらしのアリエッティ
7/25
WMCSY
☆☆☆★★★
 郊外の古い屋敷に密かに借り住まいしている小人の一家がいました。頑固で頼りがいのある父親のポッドと心配性の母ホミリー。それに、明るく元気で向こう見ずな14歳の一人娘、アリエッティです。小人たちは、生活に必要な物を少しだけ床上の人間たちから借りて暮らしていましたが、一つだけ重要な掟がありました。それは、絶対に人間たちに姿を見られてはいけないということです。でもある日、アリエッティは屋敷にやってきた少年、翔に姿を見られてしまったのです…。
 
 スタジオジブリの最新作はメアリー・ノートンの「床下の小人たち」を元に宮崎駿が企画・脚本し、新鋭米林宏昌が監督しました。宮崎駿が監督しないという意味で、ジブリの明日を占う作品でもありますが、果たして巨頭の呪縛から逃れられたかというと、それは甚だ難しかったようです。
 
 今までのジブリ作品同様、背景や美術の素晴らしさはもちろんのこと、小人の視点から描いた世界観は実に鮮やかで生々しく、なかなか興味深いものがあります。しかし、生々しいが故に少々清潔すぎる点に不満が残ります。実際の床下はもっと埃やカビが蔓延していて、不健康な環境であるはずです。それに害敵となる虫や小動物の類があまりに少なすぎます。もちろんファンタジーですから、それほどリアルにこだわる必要は無いのですが、個々の描写がリアルなものですから、逆に蜘蛛の巣ひとつも無いなんてことが気になってしまうのです。その辺り、もう少しデフォルメしても良かったのではないかとも思うのですが、そうしないところがジャパニメーションらしいところなのでしょう。
 
 ともかく、小人の生活を丁寧に描き出し、淡々とした語り口で物語は進みます。そして、山場らしいところもなくサラリと終わってしまうのですが、観客としてはその後の展開が気になるところで、どうも喰い足りなさを感じてしまうのです。それは偏に監督が宮崎駿のシナリオに忠実に作ったがためなのでしょう。もしも宮崎駿自身が監督したならば、絵コンテの段階で更に幾重にもキャラを膨らませて、結局シナリオ全体が破綻してしまうという最近の作品群と同じような末路を辿ったことでしょう。でも、そうならなかったのは、やはり新人監督が巨匠の書いたシナリオに縛られてしまったからではないかと思うのです。そのため、実におとなしい、味わい深い作品に落ち着いたのでしょう。私はこういう作品の方が結構好きですが…。
「宇宙ショーへようこそ」
7/1
T109K
☆☆☆★★★
(相変わらず美術は素晴らしいですし、水や光の描写もなかなか見事です。でもストーリーは???)
 
 山間の小さな村にある小学校に、一週間の夏合宿に集まった5人の生徒たち。彼らは行方知れずのウサギを探しに森の中へ入っていくが、そこで一匹の犬を見つける。だが、犬と思ったのはプラネット・ワンより飛来した異星人ポチだった…。
 
 タイトルの付け方といい、登場人物のネーミングといい、明らかに子供を対象に作っているという感じですが、登場する子供たちの目線で作られているかというと、年齢不相応の言動があったりして、大人目線が見え隠れするのが気になります。この立ち位置のブレが観客に、どうしても居心地の悪さを感じさせてしまうのです。この点、「ドラえもん」や「ポケモン」のような不動の立ち位置の作品を見習ってほしいものです。その意味では明らかにシナリオに不備があるといわざるを得ません。

 同様に、キャラやストーリーにも一貫性が見られず、どうもちぐはぐな印象を受けてしまいます。おそらくは製作に相当の紆余曲折があったのでしょう。製作期間の相次ぐ延期(多分…)は往々にしてこういった結果を招くものです。 
 なんといっても一番問題なのがタイトルにある「宇宙ショー」です。いったい何のショーなのか、肝心なところがどうもよく分かりません。どこが宇宙全体が注目するほどのショーなのか?私には全く理解できませんでした。そこに地球の小学生が入り込む余地がある理由もよく分かりません。悪玉は一体何がしたかったのか?それもよく分かりません。
 
 ともかく、美術は無駄に素晴らしく、異星人たちのデザインやその文化に関するアイデアの豊富さには恐れ入りますが、それらをストーリーに生かすわけでもなく、統括するわけでもないので、全体としてちぐはぐな印象しか残りません。そこに取って付けたようなスーザン・ボイルの英語の歌が被るんですから、なおさらです。
 
 元々こういう世界観は好きなのですが、好きな領分だけに見る目も厳しくなってしまいます。残念ながら、私はどうしても登場人物たちに感情移入できず、最後のクライマックス(?)でも睡魔と戦っている始末でした。ところで、宇宙に飛び出したジャングルジムはその後どうなったんでしょうか?
 
「アイアンマン2
6/30
WMCSY
☆☆☆☆★★★
(例によって最後のオマケが???なんですけど…)
軍需企業のCEOのトニー・スタークは自らが開発したパワードスーツを装着し、アイアンマンとして日夜活躍していることを公表してしまう。アイアンマンを国家の驚異と見なした政府はパワードスーツの引き渡しを要求してきたが、トニーはこれを拒絶する。だが動力源のアーク・リアクターに使われているパラジウムはトニー自身の体を蝕んでいた。一方、スターク一家に恨みを抱くロシア人科学者イワンは、父親の残した設計図を元にアーク・リアクターを独自に開発し、トニーに復讐を誓うのだった…。
 
 「アイアンマン」の楽しさは、パワードスーツ開発のプロセスと複雑なギミックにありますが、その点は「2」でも健在で、今回はなんと携帯型のパワードスーツや戦闘タイプにバージョンアップしたウォーマシーンまで登場して、メカ好きのファンを十分楽しませてくれます。そして、アーク・リアクターも●から▼にフルモデルチェンジします。この分だと「3」では■か×になるんじゃないかと心配にもなりますけど…。
 
 それはともかく今回の白眉は、ミッキー・ローク演じるイワンの体むき出しのプロトタイプなパワードスーツでも、先進のアイアンマン・マーク4でもなく、なんといっても、スカーレット・ヨハンソン演じるブラック・ウィドーの肉体美でしょう。周りが鋼鉄のマシーンだらけなので、余計にその美しさが際立っています。いやー、眼福、眼福。
 
 まあ、お話は中途半端な感じもありますけれど、楽しいギミックや激しいアクションや美しい肉体も盛りだくさんで、観るものを飽きさせません。「2」としては及第点じゃないでしょうか。
 
「プリンス・オブ・ペルシャ
/時間の砂」

6/5
WMCSY
 ☆☆☆★★★
(ヒロインが合わないので★一つ減点です)
 幼い頃にペルシャ王に拾われたダスタンは、王家の血筋ではないものの、二人の兄弟とともに王子として育てられました。その後、立派に成長したダスタンは聖都アラムート攻略の功績で、神殿に納められていた奇妙な短剣を手に入れます。ところが、戦勝の祝賀会の席で王が暗殺され、ダスタン王子はその罪を負わされてしまいます。そして、隙をついて逃げ出す王子に、なぜかアラムートの王女タミーナが救いの手をさしのべ、二人はまんまと城から脱出したのでした…。

 まず驚くのが、ペルシャ帝国が聖都アラムートを攻撃する理由です。密かに敵国に武器を売りつけているという情報を得たからとういうのは、まるで米国が大量破壊兵器の情報を得て聖都バクダットに侵攻したのと同じじゃないですか。こういったところが、最近のハリウッド映画は妙に生々しいのですが、ディズニーまでもどうしちゃったんでしょうか?

 この作品のユニークなところは、時間の砂の入った短剣というアイデアで、短剣の柄についたボタンを押すと時間の砂が流れて1分間だけ過去に戻れるんですね、これが。武器がそのままタイムマシンも兼用するということで、結構劇的なシチュエーションが色々と考えられて、これはなかなか良いアイデアだと思います。でも、それは一定のルールの中で使われる場合に限ります。ルールのタガを外して無尽蔵の時間の砂を使ってしまっては、何でもありになってしまい、そこから導き出されたオチでは、(最後のナレーションで、必死に取り繕っても)ご都合主義の謗りを免れられないのです。そういった意味で、良いアイデアを生かし切れていないところが少々残念でした。(それでも、結構面白いんですけれどね)
 
 それにしても主役のジェイク・ギレンホールの肉体改造は見事なものですが、その上パルクールまで身につけて、ほとんどのスタントを自分でこなしたというのだから恐れ入ります。CG台頭の昨今だからこそ、ハリウッドスターはここまでやらなければならないということなのでしょうか?
 
 ともかく主役は良いとして、ヒロイン役のジェマ・アータートンが、どうにも絶世の美女という設定にそぐわないように見えます。この人、「007慰めの報酬」、「タイタンの戦い」に続いて今作でもヒロイン役を射止めたとあって、ハリウッドでは新進気鋭の注目株なのだそうですが、どの作品もホントに彼女で良かったのかは甚だ疑問です。まあ好みの問題ではあるのですが、もっと他に良い女優がいるんじゃないかと思えて仕方ありません。
 
 ディズニーとしてはパイレーツ・オブ・カリビアンの後釜としてシリーズ化したいようですが、ジェイク・ギレンホールはいても、残念なことにキーラ・ナイトレイはいないし、当然ジョニーデップもいないとあっては、シリーズ化は難しいでしょう。
「グリーン・ゾーン」
5/20
WMCSY
 ☆☆☆★★★
(さすがに「ハート・ロッカー」の後での鑑賞なので、自然と評価は厳しくなってしまいます)
 マット・デイモン扮するロイ・ミラー上級准尉がイラク政府が密かに持っているとされた大量破壊兵器の謎を追う、ミステリー仕立ての戦争活劇です。
 ハリウッド映画とあって米国一辺倒かと思いきや、通りがかりのイラク人フレディが主演のマット・デイモン以上に活躍するのが、なかなか興味深いところです。
 ポール・グリーングラスの手持ちキャメラによる撮影と高速カット割り編集は相変わらずです。これによって臨場感とリアリティが醸し出されるのですが、アップでブレた画のアクションシーンはやはり見辛く、観客に何が起こっているのか分かりにくくしています。家庭のモニター画面でのDVD鑑賞には適しているでしょうけれども、大きなスクリーンで観るのに相応しくないなんて、映画としてどうかと思ってしまいます。
 とはいえ、戦時下のバクダットを再現した巨大なセットやCG画像は大変素晴らしい出来です。ニュースで観た画面と全く同じ風景を作りあげたスタッフはホントに良い仕事をしています。スタッフ・ロールに出る「CARPENTER」の文字の多さに成る程と感心させられました。
「ハート・ロッカー」
5/20
WMCSY
☆☆☆☆★★★★
 バクダット駐留の爆発物処理班ブラボー中隊に、ジェームズ二等軍曹が配属されてきた。彼は上官の命令も無視するような無頼漢だが、爆発物処理の腕は一級だった。だが、その死をも恐れぬ無軌道ぶりが、仲間達の反感を買うこととなった…。
 イラクで働く爆発物処理班の活動を描いていますが、爆発物処理の技術的な面に関しては意外な程あっさりと流して、主にそれに関わる人物の心理描写に重きを置いています。様々なエピソードを淡々と綴りながら、女流監督ならではの視点と細やかな演出で、ジワジワと観る者の心に戦争の狂気を訴えます。
 危険と隣り合わせの任務の連続で、観ている方もハラハラドキドキのし通しですが、次第に感覚が麻痺していき、気づけば戦争中毒の主人公に感情移入しています。狙撃兵の顔にまとわりつくハエや、陳列棚一杯に積まれたシリアルなど、劇中に見せるなにげない描写にも、なかなかの力量を感じさせます。
「ウルフマン」
5/01
WMCSY
☆☆☆☆★★★
(「タイタンの戦い」同様、共にリメイクで、共に父子の確執がお話の軸となっている点が興味深いところです)
 19世紀末、舞台俳優のローレンス・タルボットは、英国ブラック・ムーアの生家に帰ってきた。兄の失踪の知らせを受けたからだ。だが、彼を待っていたのは無惨に引き裂かれた兄の遺体と、満月の夜に出没する謎の殺人鬼だった…。
 ゴシック・モンスター・ホラーの雄、「狼男」(1941)のリメイクです。ベニチオ・デル・トロ(殆ど素顔が狼男!)とアンソニー・ホプキンス(殆ど怪人!)という二人のアカデミー賞俳優を迎えていることでも、並々ならぬ本気度が伝わってこようというものです(実際にはカットされましたが、マックス・フォン・シドーも出演していたそうです)。豪華な出演陣といい、ヴィクトリア時代を見事に再現した美術といい、もちろんリック・ベイカーによる意欲的なメイキャップ技術も素晴らしく、「狼男」のリメイクとしては、ほぼ完璧に近い出来と言ってさしつかえないでしょう。
 父子の確執を軸に、愛と呪いに翻弄される男の姿を描き、更に「切り裂きジャック」を捜査したアバライン警部という実在の人物を絡め(「フロム・ヘル」の続きと考えても面白いです)、虚実を織り交ぜたミステリー仕立てのシナリオはなかなか見事です。ただ、あまりに色々な要素を詰め込みすぎたせいか、旧作にもあった「愛は呪いに勝てるか?」というテーマ(…だったと思うけど)に関しては少々中途半端な印象が残ります。
 それにしても「狼男」というと、どうもダークでマイナーなイメージは避けがたいです。美形のバンパイアが出るわけでもなく、ネタ的に当たるかというと否定的にならざるを得ません。案の定、公開したばかりだというのに、シネコンで一日一回しか上映しないという体たらくです。この分だとアッと言う間に公開打ち切りになってしまうでしょう。劇場で観るなら早めに行っておくことをお奨めします。
「タイタンの戦い3D」
5/01
WMCSY
☆☆☆☆★★★
(アンドロメダが…こんな仕打ちで良いのか?)
 レイ・ハリーハウゼンが特撮を手がけた最後の長編映画「タイタンの戦い」のリメークです。ギリシャ神話の時代、大神ゼウスと人間の子ペルセウスが、海の魔物クラーケンに生け贄として差し出されたアンドロメダ姫を救い出すまでを描いた冒険物語です。
 
 旧作では、ペルセウスが神々に言われるがままに行動し、アンドロメダと結ばれてメデタシメデタシで終わるのですが、新作はひと味もふた味も違い、ペルセウスの成長物語として描かれています。ペルセウスは育ての親を殺された恨みから神々に敵愾心を抱き、ゼウスからの助力も断り、人間として冥界の王ハデスとクラーケンに敢然と立ち向かうのです。そして意外なことに、今作ではアンドロメダが殆ど脇役にまわり、代わりにイオという謎の巫女が旅の道案内人として相手役を務めます。このように旧作の単純明快な冒険譚を、父子の確執を軸とした複雑なお話に膨らませているのですが、その分見終わった後の爽快感が削がれてしまったように感じます。やっぱり、ヒロインはアンドロメダ姫でなくっちゃ、達成感が無いですよ!
 
 とはいえ、さすがにCGで再現したモンスター達の登場シーンは素晴らしく、それに対する兵士達との攻防戦には充分見応えがあります。個人的には最後のクラーケンよりも、途中登場する大サソリやメデューサの方が魅力的に感じました。特にメデューサは、その妖艶な身のこなしといい、その魔性の美しさには目を見張るモノがあります。もっとも、まともに見たら石にされてしまうけれど…。
 
 ともかく、大作だけあって美術は素晴らしく、モンスターの造形はもちろん、冥界への渡し守カローンの船など実にアイデア溢れたデザインで感心しました。でも、常時輝く鎧を身にまとったゼウスというのは、どうもいただけません。アテナならまだしも、いつも臨戦態勢なんて、オリンポスを治めるゼウスらしくないと思うのは私だけでしょうか?
「アリス・イン・ワンダーランド」
4/20
WMCSY
☆☆☆★★★
19歳のアリス・キングスレーはある貴族のパーティーで、貴族の息子から求婚を迫られる。返事に困ったアリスは思わずその場から逃げ出してしまう。すると、庭園に逃げ込むアリスの前に、懐中時計を持った不思議なウサギが現れる。そして、そのウサギのあとを追って行き、アリスは地面に空いた大きな穴の中に落ちてしまった…。
 
 ティム・バートンとジョニー・デップの鉄板コンビで「不思議の国のアリス」を撮るというと、「チャーリーとチョコレート工場」のようなはじけた作品を期待してしまいますが、ティム・バートンとしてはいかにも燃焼不足な印象を受けます。なにしろ肝心のジョニー・デップ演じるマッドハッターからしてちっともマッドじゃないし、赤の女王だって動機がハッキリしていて、ちっとも理不尽じゃないんです。ワンダーランドはもう、「マトモではいられない」じゃなくて、至極マトモなアンダーランドに成り下がってしまいました。これも、きっとアリスが大人になったからでしょうか?
 
 そんな中、一番マトモそうな白の女王が、そのおかしな仕草からして、実は一番マトモじゃなさそうで気に入りました。美しく慈悲深いといいながら、実はこれが最も危険な存在なんですよ、きっと。
 
 また、アリス映画初登場となるジャバウォッキーが、折角声優にクリストファー・リーを迎えながら、ちっとも生かしきれていないどころか、なんとも扱いがあっけなくて残念でなりません。それにしても、ジャバウォッキーにはセリフらしきものは皆無だったように思いますが、クリストファー・リーは何を喋ったのでしょうか?謎です。
 
 それに、売りの「3D」ですが、これがとってつけたような3Dで、どうも不似合いな感じを拭えません。さすがにチェシャ猫は3Dにマッチして存在感がありますが、その他の雑多なキャラは、複雑な背景の中にとけ込んでしまって殆ど3Dの意味を成していません。これを観ると、いかに「アバター」が3Dを計算尽くして作られていたかが良く分かります。
 
 それで、肝心のお話の方ですが、ディズニーらしく妙にこぢんまりとまとまっていて、こちらもアリスの世界らしくありません。しかも、一見少女から大人への成長をテーマにしているようですが、劇中のアリスは周りの言動に流されるままで、実はちっとも成長が描かれていないのです。ですから、最後のアリスの変貌が唐突に感じざるを得ません。どうもティム・バートンらしからぬ出来ですが、それもこれも、やはりディズニー製作だからでしょうか?これがライブでなく、いつもの人形アニメだったら、もっと個性を発揮出来たのではないかと思われて仕方ありません。
 
 とは言え、美術的にはアリスの世界をかなり上手く描写していたように思います。そこだけはさすがティム・バートンだと感心しました。総じて、アリス・ファンにもバートン・ファンにも、デップ・ファンにも、ディズニーにも気兼ねして、結局どちらにも中途半端な出来に終わってしまったような気がします。
「DISTRICT9:第九地区」

T109K
☆☆☆☆☆★★★★★
(音楽もまた、ハリウッドらしくなくて良いんですね)
 1982年、突如巨大な宇宙船が南アフリカ共和国のヨハネスブルグ上空に飛来し、そのままそこに停止したままになった。そして、政府の調査隊は船内に何百万人もの地球外生命体を発見する。彼らは宇宙の彼方から来た難民だったのだ。仕方なく、彼らはヨハネスブルグ市内にある第九地区に収容されることになる。だがやがて、異星人たちはその容姿から「エビ」と呼ばれ、人びとから蔑まされ、付近住民との間に軋轢が生じるようになった。そこで、政府から異星人の管理を任されたMNU社は、彼らを市郊外の「第十地区」へ移転させるべく、社員のヴィカスを責任者に命じ、強制移住を執行させるのだった…。

 なんと大胆な映画なのでしょう!今までエイリアンの地球移住を描いた作品は数々ありましたが、これほど斬新で、リアルで、感動的な話は初めてです。3000万ドルというハリウッドでは比較的低予算ながらVFXや造形も素晴らしく、映像的には一つの破綻も感じさせません。
 それどころか、辛辣な社会風刺や、暴力描写などにも妥協が無く、これを観ると、ハリウッドの大味で生ぬるいSF映画に慣らされてきた自分に気づき、ハッとします。
 そう、こいう映画が観たかったんだ。そんな気にさせられ、また、同じ創作者として、冒険を恐れない製作態度に大変勇気づけられました。
 
 
「シャッター・アイランド」

T109K
 ☆☆☆★★★
(宣伝担当者は余計な配慮は無用と心して欲しいものです)
 連邦保安官のテディ・ダニエルズは相棒のチャックと共にボストン沖合の孤島にあるアッシュクリフ病院へ向かう。そこは精神障害の犯罪者を収容する病院で、テディ達は、ある女性患者の失踪事件を捜査しに来たのだ。だがテディの本当の目的は別にあった…。

 上映前に目の錯覚を表す図形が示され、観客に挑戦的な前置きが映し出されます。恐らくこれは配給会社の配慮なのでしょうが、こんな事をされたらこちらも厳しい目で観ざるを得ません。当然、観客の想像を上回るオチが用意されていなければなりませんが、余程自信があるのでしょう。
 でもハッキリ言って、これは不要です。最初から疑いの目で観たら、察しの良い人なら冒頭のシーンでオチが見えてしまいます。結果、想像の範囲を超えないオチに、私は殆ど満足を得られませんでした。何だか損をした気分だぞ!
 謎解きというよりも、心理描写の妙に注目すれば、結構楽しめる作品だと思います。とっても哀しいお話ですが…。


「コララインとボタンの魔女3D」

WMCSY
☆☆☆★★★
(ダコタ・ファニングで聴きたかったです)
 郊外のアパートに引っ越ししてきたコララインですが、両親は仕事が忙しくてちっともかまってくれません。仕方なしに家の中を探検していると、壁紙に覆われた小さなドアを発見します。でも、壁紙を剥がしてドアを開けてみると、ドアの向こうには壁があるだけでした。その夜、寝室に現れたネズミを追って、再び例の小さなドアを開けてみると、その先には長いトンネルが広がっていました。不思議に思ってトンネルを抜けていくと、その先には何ともうひとりのパパとママがいるのでした…。
 
 ニール・ゲイマン原作の同名小説を「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」の監督ヘンリー・セデックがストップモーションの人形アニメで作り上げたこの作品は、規模といい緻密さといい、前代未聞のスケールで驚かせます。何しろ主人公のコララインの表情だけで207336通りあるというんだから呆れます。「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」のジャックの表情がたった16通りだったことを考えると、いかに膨大な数かが分かろうというもの。しかも、犬248匹の観客やら、61匹のネズミのサーカスやら、50種類の顔パーツで作った変身シーンやら、その数を聞いただけでも卒倒しそうになる程の手間と労力をかけているのです。CG全盛のこのご時世にあえてストップモーションに拘る執念には頭が下がります。
 
 加えて今回は最初から3Dを念頭に作っているのです。これがまた巧い具合にハマって、かなりの3D体験をさせてくれます。特に最後の3D映像はビックリする程飛び出ていました。まさにストップモーションと3Dの見事な融合といえるでしょう。
 
 さて本作ですが、元来児童文学なのですが、「ホントは怖いグリム童話」のように結構怖い描写もあって、子供達を震え上がらせるには充分です。私が観た回は昼ということもあって子供連れが多かったのですが、場内のあちこちで子供の泣き声が聞こえました。きっと彼らには恐ろしいトラウマとなって、生涯忘れられない作品となる事でしょう。
 
 キャラのデフォルメも素晴らしく、アニメも良い出来なのですが、唯一気になったのが日本語吹き替えの声優です。集客を狙ったのでしょうが、安易なタレントの起用で少々興ざめさせられたのが残念でなりません。3D版ということで日本語吹き替え版しか上映されていなかったのですが、是非とも字幕版でもう一度見直したいものです。
 
 ★★★☆☆☆(ダコタ・ファニングで聴きたかったです)
「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」

WMCSY
☆☆☆☆★★★★
(稲妻を盗んだ犯人はすぐに分かりますけど、推理物ではないので文句は言わないで…)
ブルックリンの高校に通うパーシー・ジャクソンは重い難読症で勉強にも身が入らず悩んでいました。そんな彼が学校の課外授業でギリシャ・ローマ博物館を訪れた時、引率のドッズ先生が突然怪物に変身して、「ゼウスの稲妻を返せ!」と叫びながら、襲いかかって来たのです…。
 神と人間のハーフをデミゴッドというんだそうで、ご存知のようにオリンポスの神々は性に関しては天真爛漫ですから、もうあちこちで繁殖を重ね、この世にはたくさんのデミゴッドが産み落とされました。実はパーシー・ジャクソンもそのひとりで、しかも大神ゼウスの兄弟ポセイドンの子供だというんだから大変です。こうしてゼウスの子ヘラクレスのように、試練と冒険の旅を強いられるハメになってしまうのでした。
 何でオリンポスの神々がアメリカにいるのかはさておき、ギリシャ神話を現代のアメリカに融合して作り上げた世界観がなかなか良くできていて愉快です。なにしろエンパイア・ステート・ビルディングの上にオリンポスがあるなんて、東京タワーのてっぺんに高天原があるみたいでまことに痛快な発想ではありませんか。各神々のいる神殿のある場所も、こじつけとはいえ実際のアメリカ各地の名所名跡に上手いことリンクさせ、これがなかなか納得出来て笑わせてくれます。
 ともかく、気軽に楽しんで観られる娯楽作品として非常に上手く出来ていますが、その分各キャラの掘り下げとか、人間ドラマの部分はおざなりになっています。主人公は青年ですが元々は児童文学ですから、その辺りは大目に見て、迫力ある視覚効果とゲームのようなドラマ進行に身を委ねましょう。
「Dr.パルナサスの鏡」
2/08
T109K
☆☆☆☆★★
(個人的には好きですが、一般的にはどうかと問われると微妙です)
 ロンドンの街に毎夜現れるDr.パルナサス率いる旅芸人の一座。彼の出し物は、入る者の秘められた願望を映し出す不思議な鏡「イマジナリウム」でした。ある夜、博士の娘ヴァレンティナは橋の上で首を吊っている男を救います。記憶を失ったその男はそのまま一座に留まり、一座と行動を共にするようになりますが、博士には一つ心配なことがありました。それは、その昔悪魔と交したある約束のことで、もうじきその期限が訪れるのです…。
 
 テリー・ギリアムは実に災難続きの監督です。「未来世紀ブラジル」ではユニバーサル・スタジオに勝手に結末を変えられてしまうわ、ドン・キホーテの映画では洪水や主役の降板で製作中止に追い込まれるわ、「ローズ・イン・タイランド」は米国公開を配給会社から拒否されるわで、全く映画の神から見放されたというか、悪魔に呪われているかのようです。そして今作では、なんと主演のヒース・レジャーが撮影半ばで急逝してしまいました。
 
 でも、そうした災難にもめげず、それをバネとして見事に這い上がってみせるのがテリー・ギリアムの鬼才たる所以でしょう。今作でも「イマジナリウム」という設定を活かし、鏡の中にはいるとその容姿も変わることにして、ヒースの友人達に代役を依頼したのでした。しかも、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン、ファレルの3人が代役を務めるという豪華な布陣です。まさに、災い転じて福を成すというか、転んでもただでは起きない、テリー・ギリアムの面目躍如というところです。
 
 こうした紆余曲折を経てようやく完成に漕ぎつけた今作は、まさにテリー・ギリアム本人を描いたような作品です。Dr.パルナサスとはギリアム本人であり、イマジナリウムとは彼の作る映画そのもの。観客はイマジナリウムというギリアムの描く妄想の世界の中へと引き込まれていくのです。
 
 相変わらずギリアム節は健在で、そのどこか舞台装置のような作り物風なテイストの美術は、CG技術のおかげで独創性に更に磨きが掛かり、アカデミー賞美術部門にノミネートされたのも頷けるというものです。
 
 ただ、3人で一役という変則技は感情移入がしづらく、どうも物語に入りにくい印象を与えます。その意味で上手く行ったとは言い難く、いっそのことトム・クルーズ主演にした方が良かったのではないかとさえ思えてしまいます。
「ラブリーボーン」
2/08
T109K
☆☆☆☆★★★
(私は意外と好きですが、作品の性格上、見る人を選ぶと思います)
 14歳の少女スージー・サーモンはある日、近所に住む男に襲われて殺害されてしまいます。遅々として進まぬ警察の捜査に業を煮やした父親と妹は独自に犯人捜しを始め、心の整理がつかない母親は家を出て行ってしまいました。一方、この世と天国の間を彷徨うスージーは、事件を境に散り散りになっていく家族の様を、ただ黙って見守るだけで、何もすることが出来ないのでした…。
 
 14歳の初々しい少女の目を通して語られる、死後の世界と現実の世界。両者は決して交わることが無く、何も手出しを出来ないでいるスージーの歯がゆさが切実に伝わって来ます。そして、それが人生の中途で命を絶たれてしまった少女のやるせなさと相まって、見る者の胸を打ちます。
 
 霊となった少女は現実世界に対して何もする事が出来ないので、殺人犯に復讐することはもちろん、残された家族を守ることも助言することも出来ず、ただ見守るだけしかありません。そこがこの物語のユニークなところであり、また賛否の分かれるところでもあります。死者の霊が癒されるのは、残された者たちが死者の復讐を果たすことではなく、ただ平穏に生き続けることにあるというテーマを受け入れられるかどうかで、この作品に対する評価が大きく分かれるでしょう。
 
 主人公は死んでしまっており、現世と交わることも許されないとあって、死者の視点から描かれる物語はそれ自体盛り上がりに欠けるものになりがちですが、巧妙なシナリオと美しいビジュアルのおかげで、奇妙なスリルとサスペンスに溢れています。そして、純真無垢な少女の心に感情移入出来れば、不思議な感動さえも呼び起こしてくれるでしょう。
「サロゲート」
2/08
T109K
☆☆☆★★
近未来の世界。人々は自宅に引きこもり、自分の分身としてのロボット〈サロゲート〉を遠隔操作して生活していました。なにしろサロゲートを使えば、戦争など危険な仕事を代行させたり、自分の理想の姿形に成り代わることも出来るのです。というわけで、サロゲートは人間の欲望や夢を本人に代わって実現してくれる夢の機械として売り出され、瞬く間に全世界に広まったのでした。ところがある日、数体のサロゲートが何者かによって破壊され、同時に絶対に安全だと思われていた本体の方も命を奪われるという事件が起きたのです…。

 インターネット上の仮想空間に自分の分身として動かすキャラクターが「アバター」なら、この「サロゲート」は現実世界で自分の分身として動かすロボットという実体を持った存在です。ロボットを動かすには動力もいるし、機械ですから故障もすれば老朽化もします。何かと余計なエネルギーを使うという意味で、地球に優しくないシステムです。でも、本来は身障者や老人のために開発されたそうで、外に出られない人の代わりに外へ出るという意味では有意義なモノだったのでしょう。それが世界中に広まり、みんな自宅に引きこもった生活を送っているとなれば、本末転倒も甚だしく、一体何のための発明なのか分からなくなってしまいます。
 
 それにしても、「ターミネーター3」のジョナサン・モストウが監督しただけのことはあって、やっていることは世界規模なのに、その大きさがいっこうに伝わって来ません。折角大金をかけて作ったにも拘わらず、なんともこぢんまりとした印象で、全体として小品なイメージしか残りません。実際の街並みの背景に高層ビル群を合成するとかすれば良いのにと思ってしまいます。どうもこの監督は大風呂敷がヘタなようで残念です。
2009年
「アバター」
12/23
T109K
☆☆☆☆☆★★★★★

「カールじいさんの空飛ぶ家」
12/01
WMCSY
☆☆☆☆★★★★
「2012」
12/01
WMCSY
☆☆☆★★★
「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」
11/1
WMKN
☆☆☆☆★★★★
 今年の6月に急逝したマイケル・ジャクソンによるロンドン公演のリハーサル風景を描いたドキュメント映画です。本来なら最後のコンサートのメイキング映像だったですが、コンサート自体が幻となってしまった今、実際のコンサートの片鱗を味わえる貴重な映像となりました。
 中で歌われている曲は順に「Wanna Be Startin' Somethin'」「Jam」「They Don't Care About Us」「Human Nature」「Smooth Criminal」「The Way You Make Me Feel」「Shake Your Body」「I Just Can't Stop Loving You」「Thriller」「Beat It」「Black Or White」「Earth Song」「Billie Jean」「Man In The Mirror」「Heal The World」です。
 リハーサルとはいえ、完全主義のマイケルの熱演と上手い編集のおかげで、まるでライブを観ているような臨場感を味わえます。ただじっと座って映画鑑賞しているのがもったいなく、これは是非ともコンサートホールで公開して欲しいものです。アカデミー賞のドキュメンタリー部門も狙えるかも?
 もっとも、個人的にこの作品に対して無条件に賛同出来るかというと、それにはどうしても疑問符が残ります。故人の偉業を讃えることには全く異議はないのですが、やや神格化した扱いに、ドキュメンタリーとして多少の違和感を覚えてしまうのも正直なところです。
 それにしても、女ギタリストのオリアンティが格好イ〜ですね♪この映画で一番得しているのは彼女だと思います。    
「ATOM」
10/10
T109GM
☆☆☆☆★★★★


当初米国では12月公開予定でしたが、10月23日に早まりました。

追記)DVDでは、最後のアレが聴けないなんて!何故なんだ?日本の劇場で観た人だけが知っている、この感激!貴重な体験でした。
 空中都市「メトロシティ」の天才科学者テンマ(天馬)博士にはトビーという一人息子がいました。彼は父親同様、頭脳明晰で好奇心旺盛な少年です。でもある日、父親の実験現場に潜入したトビーは、そこで事故に遭ってしまうのでした…。
 
 私が観たのは日本語吹き替え版でしたが、アトムの声の上戸彩やテンマ(天馬)博士の役所広司も適役で非常に上手く演っていたと思います。他にテンマ博士の助手に手塚治虫似のキャラが出て来るのですが、その声を手塚真が演っていて、これが本人にソックリでビックリしました。また、米国版「アストロボーイ」ではアトムの声をフレディ・ハイモア、テンマ博士の声をニコラス・ケイジが演っているそうですが、それぞれの顔がどことなく各キャラに似ています。米国版では他にもサミュエル・L・ジャクソンとか、シャリーズ・セロン、「ヴェロニカ・マーズ」のクリステン・ベルなんかも声を当てていて、ホントに豪華です。是非とも字幕版も観たいと思うのですが、公開している映画館が少ないので困ります。
 
 確かにアトムの顔は原作よりもやや年上で、原作ファンとしては不満も残ります。でも、実際の動いている画面を観ると、それ程違和感はありませんでした。むしろ、原作に近づけようという製作者側の努力が見てとれます。例えば、大人達の中にあってはそれ程は感じないのですが、子供達の中にいると、アトムの頭身だけが幼児のように小さいのです。おかげで、妙にアトムの頭が大きく、まるで着ぐるみをかぶっているみたいに見えてしまうのです。原作でも他の子供と比べてアトムの顔だけ大きかったのですが、平面の絵ではそれ程感じなかった不釣り合いがCGの立体的な造形では顕著に感じられました。
 
 シナリオ的には不備な点もあります。例えば、天馬博士がアトムを拒絶するに至るまでの過程や、それに対するアトムの心の葛藤など描写が不足しているので、アトムが家出する件でどうしても唐突な感じがしてしまいます。その辺り、ピクサーなんか、細かいシークエンスをたたみ掛けて否が応でも観客の気持ちを誘導することに長けているなあと感心します。
 
 また、アトムの動力源としてさすがに原子力は使えないので、新しいクリーンエネルギー「ブルーコア」と「レッドコア」を編み出したのは良いのですが、このエネルギーの説明が足りないので、最後の決断等どうしても腑に落ちない点が残りました。嘘でも良いので、誰にでも分かるような簡単な理屈が欲しかったと思います。
 
 脚本監督のデビッド・バワーズは手塚ファンだそうですが、映画を観る限り嘘偽りはないようです。全編を通じて、原作に対するリスペクトが感じられました。米国市場を狙っているので映画オリジナルキャラも沢山出てきますが、天馬博士やお茶の水博士はもちろん、ヒゲ親父にハムエッグ、ヒョウタンツギも出てきます。劇中登場するロボットや建物なども、手塚漫画らしい丸みを帯びたデザインに統一されていて、手塚イズムはちゃんと継承されていると思います。
 
 総じて、色々と不備はありますが、ハリウッド映画化された日本の漫画作品としては充分満足のいく出来だと思います。「AI」や「ウォーリー」、「スターウォーズ」などの影響が見られますが、元を質せば全部「鉄腕アトム」が本家本元なんですね。原作が生み出されてから半世紀以上も経って、手塚治虫の夢がアメリカ人の手によってようやく結実したと思うと、感慨深いものがあります。手塚先生もさぞや天国で喜んでいらっしゃることでしょう。
 
 因みに、エンドクレジットが流れたら、途中で席を立たないようにしましょう。感涙の○○を逃しますので…。
 
「サブウェイ123 激突」
10/1
WMKN
☆☆☆★★★
 ニューヨーク、地下鉄ペラム駅1時23分発の列車が武装した集団にハイジャックされた。たまたま運行司令室にいたガーバーは、ライダーと名乗るハイジャック犯から交渉役を命じられる。犯人の要求は、乗客の身代金1000万ドルをニューヨーク市が1時間以内に用意することだ。何故犯人はガーバーを交渉人に指名したのか?何故1000万ドルなのか?何故1時間以内に用意させるのか?どうやって犯人は逃走するつもりなのか?謎が謎を呼ぶ、ノンストップ・クライム・アクションが動き出す…。
 
 74年版「サブウェイ・パニック」のリメイク版です。本当は1998年に一度リメイクされていますが、これはトロントで撮影されているので、今作が正真正銘のリメイク作です。前作はウォルター・マッソーとロバート・ショウの軽妙で洒落たセリフの駆け引きが面白かったのですが、今回はどうでしょうか?主演がデンゼル・ワシントン、監督がトニー・スコットということで「デジャヴ」のような切れ味するどい映像の切り返しとか、ちょっと素敵なオチを期待してしまうのですが…。
 
 しかし映像のトニー・スコットとしたことが、どうしたことでしょう?アップを多用したカットや列車のワザとブラした映像など、見辛いだけでとても効果的とは言えません。74年版を踏襲したカーアクションもわざとらしくて、どうにも無理矢理な感じがします。撮影技術は格段に進歩しているはずなのに、印象的なシーンの多かった前作と比べると、映像面でも見劣りがしてなりません。
 
 また前作と違い21世紀を反映して携帯電話やGPS、インターネットにビデオ・チャットといった現代のツールは出てくるものの、ストーリーに生かし切れていません。地下鉄という本筋から逸脱してしまうのを恐れたのでしょうが、それらを見せるだけというのではあまりに芸がないというものです。
 
 とはいえ、ジョン・トラボルタ扮するライダーは簡単に人質を殺してしまうし、何をするか分からない緊迫感があります。ガーバーも前作のように公安局の警部補ではなく、ただの地下鉄職員というのが心許なくて緊迫感を増しています。この二人の舌戦が素晴らしく、今回の見せ場となっています。
 
 でも、ライダーの本当の目的やその仕組みについて説明不足なので、どうにも理解しがたい点が残りますし、ただの地下鉄職員であるガーバーの終盤における行き過ぎた行動も腑に落ちません。序盤のたたみかけるスリリングな展開はゾクゾクする程良いのですが、後半の無理矢理なアクションや余計などんでん返しの挿入で、シナリオも演出もバタバタした感じになってしまったのが残念です。
 
☆☆☆★★★ 
「ウルヴァリン:
X-MEN ZERO」

9/20
T109GM
☆☆☆★★★

「X-MEN 」シリーズの主要キャラ、ウルヴァリンを主人公にしたスピンオフ作品です。
 驚異的治癒力と、激昂すると拳から伸びる爪を持つふたりの兄弟、ビクターとローガン。彼らはその能力ゆえ人間社会から疎まれ、やり場のない怒りを発散するかのように、南北戦争からベトナム戦争まで戦いにその身を投じてきました。そんなある日、ふたりはストライカー大佐率いる超能力者部隊への誘いを受けるのですが…。
 まず、その過去が謎だらけの人気キャラを主人公に描くスピンオフ作品としては、なかなか上手い脚本だと思いました。ウルヴァリンの誕生秘話を、「X-MEN 」に登場する他の人気キャラも巧妙に絡ませながら明らかにし、「X-MEN 」の第一作に繋がる前日譚として描き上げた技量は大したものです。殊に、何故過去の記憶を全て失ったのかという最大の謎についても、成る程という理由が描かれていて、思わず溜飲が下がりました。
 しかし、ここまでいくとウルヴァリンは殆ど不死身ですね。それと気になるのは、150年前に生まれてから最初は普通に成長していたのに、何故途中から成長が止まったのだろうかという点です。多分隠れた能力が覚醒するにつれ、徐々に不老不死になったのでしょうが、その辺り少々疑問が残りました。
 ともかく、超能力者の派手なビジュアルをふんだんに織り交ぜた演出はサービス満点です。でも、こんなに矢継ぎ早に沢山見せられるとさすがに食傷気味になってしまい、最後の対決で盛り上がりに欠ける結果を招いてしまいました。
 とはいえ、石川五ェ門のようなウェイドの華麗な剣さばきや原子炉崩壊のシーンなど、芸術的ともいえる美しいシーンの数々には思わずため息が出ます。まあ肩肘張らずに、ヒュー・ジャックマンの肉体美など、ビジュアル面を愉しむには恰好の作品だといえるでしょう。
 日本では人気が今一つのウルヴァリンですが、次回は日本が舞台になるようなので、今のうちに観ておくのも悪くないと思います。なお、例によってエンドロールの後にもうひとつのシーンが残されていますが、米国公開版ではまた別のシーンが用意されていたようです。
「96時間」
9/1
WMKN
☆☆☆☆★★★★
(続編は東京が舞台という話もあります)

 パリは危険な街です。観光シーズンともなると、観光客目当てにヨーロッパ各国から、悪い連中がたくさん集まって来ます。地下鉄に乗れば財布をスられるわ、目を離したスーツケースは盗まれるわ、タクシーはわざと遠回りするわ、ホテルは予約を無視するわ、レストランでは法外な料金を請求されるわで、ホントに油断も隙もありゃしません。
 
 そもそもパリの街にはレジスタンスの名残で、いたるところに地下組織が蔓延っています。そして闇の市場では、それこそ何でも売買されているのです。ですから特に若い女性の観光客は、片言の日本語で話しかけてくるイケメン男にひと夏のアバンチュールを期待してはいけません。金銭やパスポートを盗まれるならまだしも、闇の組織に掠われて、薬漬けにされて、人身売買されたり、臓器売買されてしまうのがオチです(…という噂です)。
 
 「フランティック」という映画がありましたが、人掠いの都パリに愛娘が単身旅行しようなんて言い出したら、お父さんは気が気ではありません。そりゃあ断固反対するでしょう。この作品に登場するバカ,元い「愛娘」もパリに行きたいと言い出します。しかも、友達も一緒だから安心だと言うのですが、この友達が更に輪を掛けたバカ娘なんですね。案の定、不安的中。パリでふたりは、まんまと謎の集団に掠われてしまいます。
 
 ところがどっこい、娘の父親はもとCIAの敏腕工作員だったから、さあ大変!お父さんの怒り爆発。「愛娘奪還」という大儀の前には、法も国家もありません。使える者は誰でも使い、刃向かう者には全く容赦せず、悪者どもは有無も言わさず殺しまくります。もう、無茶苦茶の限りを尽くします。もう、誰も彼を止めることは出来ません…。
 
 原題は「TAKEN」と単刀直入ですが、「24」に引っかけた邦題の「96時間」というのも、なかなか上手いタイトルだと思います。でも、後半になると時間的な切迫感とかは殆ど無いですけれど。ともかくリーアム・ニーソンが適役で、彼の渋い演技のおかげで、現実世界につなぎ止めている感じです。これがシュワちゃんだったら、「コマンドー」のように、殆どコミックの世界になってしまいますからね。
「サマーウォーズ」
9/1
WMKN
☆☆☆★★★
 内気な数学の天才小磯健二はあこがれの夏希先輩に誘われて、長野の山奥にある彼女の実家を訪れました。そこには祖母の誕生日を祝うため彼女の一家が皆集まっていて、大家族を前に夏季のフィアンセと紹介されたものだから、健二は大いにうろたえました。しかし、健二がメールで送られたパスワード解析問題を解いたために、世界は大いなる危機に見舞われてしまいます…。
 
 田舎の大家族が一致協力して、デジタルな仮想世界の危機に立ち向かうというミスマッチが面白いのですが、その辺り、現実世界と仮想世界との対比がなかなか良く描き分けられています。また、アカウントをアバターという目に見える形で表現出来たということが、この作品をアニメとして成立させていると思います。その意味で、着目点は非常に良かったと思います。
 
 しかし「大家族」を主眼としたために、主人公のキャラが他に分散して、非常に薄くなってしまいました。また「花札」という特殊なゲームを選んだことにも甚だ疑問が残ります。世界のどれだけの人々が、このゲームを知っているでしょうか?絵的な派手さで選んだとは思いますが、この点がどうにも腑に落ちません。その他にも、何故健二を犯人に選んだのか?とか、何故探査衛星を制御するという回りくどい方法を選んだのか?とか…沢山の疑問が残ります。総じて良くできたアニメで、恐らく各賞を総ナメすることでしょうが、偏屈おじさんはちょっと不満なのでした。
「ボルト」
8/1
T109GM
☆☆☆★★★

  ハリウッドのスタジオ内で育てられ、自分をドラマの主役のスーパードッグだと信じ込んでいたボルトは、パートナーの少女ペニーが掠われたと勘違いし、誤って外の世界に投げ出されてしまいます。そして気が付くと、ボルトはニューヨークに運ばれていました。初めて外の世界に出て、ボルトは自分の超能力が消えたことを(無かったことを)思い知らされます。こうして、役者犬ボルトは現実世界の辛酸を舐めさせられながらも、飼い主の少女ペニーを求めて、大陸横断の旅に出るのでした…。
 
 ピクサーのジョン・ラセターがディズニーのアニメスタッフを指揮して初めて最初から作った3DCGアニメです。ですから、ピクサーとディズニーの良いとこ取りをしたような作品に仕上がっています。逆に言うと、どっちつかずの中途半端な出来ということにもなりかねません。

 ドラマの主人公と思いこんでいた犬が現実の姿に目覚めるという、犬版「トゥルーマン・ショー」のアイデアは面白いのですが、どうも現実世界の描写が中途半端な印象を受けてしまいます。現実と非現実の差を際立たせるならば、現実世界でも犬が文字を読めたり、ネコがバットを振りかざしたりというのは如何なものでしょうか?まあそこはアニメですから、目くじら立てることもないのでしょうが、どうも気になってしまいます。
 
 ともあれ、野良猫のミトンズとカプセルの中に入ったハムスターのライノも仲間に加え、さながら「三匹荒野を行く」のような道中を続けるうち、ボルトが次第に普通の犬の暮らしに目覚めていく過程が丁寧に描かれていきます。この三匹のキャラの配分が実に良いんです。一見おかしな取り合わせの三匹ですが、夢の世界に生きるボルト、現実主義で懐疑的なミトンズ、ドラマの中のボルトを信じるポジティブ思考のライノという具合に、よく考えたキャラ設定が成されて無駄がありません。さすがキャラ重視のピクサー仕込みと感心させられます。
 
 というわけで、笑いあり、涙あり、成長ありで、ファミリー・ムービーとしては大変良くできた作品に仕上がっているのですが、私のようなひねくれ者にはどうも物足りなさを感じてしまうんです。実際TVドラマの中のボルトがあまりに素晴らしいので、このままドラマを続けても良かったんじゃないかと思います。これがピクサーなら、きっと本物のスーパー・ドッグを主人公にした物語にしたのではないかと思えてなりません。(でも、同時期ディズニーで「アンダードッグ」というスーパー・ドッグの映画が作られていたので、やっぱり無理だったのかも?)
 
 なお同時上映の短編アニメ「メーターの東京レース」は、ピクサーの「カーズ」でお馴染みのキャラメーターが東京へ行った時のお話ですが、如何にもという感じの似非東京が描かれていて、遊び心満点のとても楽しい作品です。さすがピクサーですね♪ 
   
「モンスターVSエイリアン」
8/1
T109GM
☆☆☆★★★

 結婚式の日、青く光る隕石の直撃を受けた花嫁のスーザンは、みるみる体が大きくなって、身長50フィート弱の巨人に変身してしまいます。早速現れた軍隊に捕獲され、スーザンの身柄は秘密のモンスター収容施設に運ばれました。一方、時を同じくして宇宙の彼方からは、謎の巨大ロボットがやって来ました…。 

 昔懐かしい50〜60年代のB級SF映画や怪獣映画にオマージュを捧げたパロディの数々が楽しめます。その懲りようたるや尋常でなく、例えば巨大なムシザウルス(虫怪獣)に壊される日本の建物がわざわざミニチュア風にしてあったり、実に細かい所まで元ネタを3Dアニメにアレンジして再現してくれています。そして、なんと言っても圧巻なのが3Dのアニメ風に再現されたサンフランシスコの街並みです。その中を巨大ロボットに追われながら、自動車をローラースケート代わりに転がして逃げ回る身長50フィートに1インチ足りない巨大女スーザンの姿が、なんとも痛快です。
 
 日本語吹き替え版しかやっていなかったので、仕方なしに吹き替え版で観たのですが、危惧された通りやはり今一つシックリと来ませんでした。米国のアニメは吹き替えの人の演技に合わせて動画を製作していますから、日本語の吹き替えも本来の吹き替えの人に近い人を選ぶべきです。3D映画の台頭で日本語吹き替え版が益々増えてくるのでしょうが、有名タレントやお笑い芸人の安易な起用は、いいかげんに止めてもらいたいと切に願います。

 それと、折角W.R.モーガン将軍の声をキーファ・サザーランドが吹き替えしているのですから、日本語吹き替えは是非とも小山力也にやってもらいたかったです。実際、セリフにジャック・バウアーの名前が出るくらいですから、「キミの協力に感謝する」とか「キミにはホントに済まないと思う」とか、ジャック・バウアーのアドリブを入れて欲しかったですね。 
「ハリー・ポッターと謎のプリンス」
7/19
T109GM
☆☆☆★★★
(次回の「死の秘宝」は前後編の二部構成だそうですが、ここまで来たらもう惰性です。最後まで見守ってやろうじゃないですか?)

 ハリー・ポッター・シリーズも、もう6作目です。出演していた子役達もみんな大きくなりました。こうなると、観客の方もまるで我が子の成長を見守るような感覚で観てしまいます。

 復活を果たした闇の帝王ヴォルデモートはますますその力を増し、マグル界や魔法界に数々の災厄を及ぼしていました。そして今や、その魔の手は結界に守られたホグワーツ魔法学校に迫りつつありました。そこでダンブルドア校長は、若き日の闇の帝王を知るホラス・スラグホーンを再び学校に招き入れ、ハリーにヴォルデモートの弱点を探らせようとします…。
 
 いよいよシリーズの終盤に向け、物語はますます暗く陰湿な雰囲気が漂ってきます。しかし、そんなダークなムードを払拭するかのように、ホグワーツ魔法学校では乙女チックでコミカルな学園ドラマが繰り広げられます。この明暗のバランスがなかなか良くて、観る者を飽きさせません。ただ、闇の勢力が迫っているというのに、脳天気にラブコメをやってる場合か、と少々心配にもなります。まあ、そこがまたハリー・ポッター・シリーズの良いところではありますが。
 
 それにしても気になるのは、原題の「 HALF-BLOOD PRINCE」の正体は明らかにされるものの、何故そう呼ぶのかについて全く説明がないことです。どういうワケか、そこが謎のままなんですね。その意味で、邦題の「謎のプリンス」はまさに言い得て妙でした。そんなタイトルとは裏腹に、今回一番気になったキャラはなんといってもルーナ・ラブグッドという不思議少女です。妙なメガネを掛けた容姿といい、その調子外れの口調も可笑しくて、どうも今後の動向が気になってきます。
 
 ともかく、今作も全体としてユルイ展開でドラマチックな盛り上がりに欠けますが、様々な要素がてんこ盛りで、2時間半という長丁場も気にならず最後まで愉しませてもらいました。一本の映画としては問題だらけではありますけれど、長いシリーズの中の一編としてみればこれも有りでしょう。

「ノウイング」
7/10
T109GM
☆☆☆★★★
 (迫真のVFXは劇場で観る価値あり。結末にもう一ひねり欲しいけど、やっぱりこうするしかなかったんだろうかネ?)
 
 もはやニコラス・ケイジ主演というだけでB級SFの臭いがプンプンしますし、トレーラーを観るにつけ、「フォーガットン」のようなトンデモ映画の予感さえしています。それでも、「ダークシティ」「アイ・ロボット」のアレックス・プロヤス監督作品ということで、やはり期待してしまうんですね。

 マサチューセッツ工科大学の宇宙物理学教授のジョン。彼の息子ケイレブは小学校の創立記念祝典で、50年前に埋められたタイムカプセルから一つの封筒を受け取ったのですが、その中には数字の羅列で埋められた一枚の紙が入っていました。そして、ジョンはある偶然から、一見何の意味もない数字の羅列の中に秘められた、恐るべきメッセージを見出すのでした…。
 
 果たして、予感的中です。しかし、いかにトンデモ映画でも、ここまで潔く直球勝負されると、かえって親近感が湧いてしまいます。ひとつにはニコラス・ケイジの熱演にもよるのですが、やはりVFXでここまで見事に見せられると、納得せざるを得ないと寛容な気分になります。その点で言うと、「地球の静止する日」とはエライ違いです。そこはやはり、カルトな人気を誇るアレックス・プロヤス監督の面目躍如ということでしょうか。
 
 とはいえ、トンデモ映画には違いなく、一体誰がこんな作品を観て喜ぶのだろうかと心配になります。当然興行的に期待出来るはずもありませんが、このまま消えてしまうには、いかにも惜しい作品です。
 
「トランスフォーマー
 リベンジ」

6/19
T109GM
☆☆☆??★★★??
(評価不能状態です!)

 前作から2年後、オートボットたちは新たに設立された政府の秘密組織「ネスト」と協力して、ディセプティコンとの戦いを続けていました。しかし宇宙の彼方では、ディセプティコンの残党たちが、復讐の機会を虎視眈々と狙っていたのです…。
 
 ともかく、いきなり驚愕映像の連べ打ちで、あれよあれよと言う間もない怒濤の展開です。オートボットにも新メンバーが加わり、ディセプティコン側も沢山の新型ロボットが次々と登場します。この映像密度の濃さにまず驚かされますが、驚くのはまだ早かった。この密度の濃さが最後まで持続するんですから、呆れてしまいます。
 
 たたみ掛けるアクションの連続で、まさに息つく暇もなく、観ているこちらは殆ど思考停止状態に陥ってしまいます。そのせいでしょうか。どうにも腑に落ちない事が沢山出てくるのですが、単なる見落としなのかも知れないし…、「彼らが何故、どうやってその場所に来たのか?」とか…、「何故、彼らがそのことを知り得たのか?」とか…、よく分からないことが多いんですね。この辺り、どうなんでしょう?マイケル・ベイ監督のことですから、やっぱりいつものストーリー無視なんでしょうか?それとも編集ミスか?ううん、気になって仕方ないです。こうなったら、もう一度日本語吹き替え版を観に行かなければならないかも。
 
 とはいえ、オプティマス・プライムは泣ける程カッコイイし、新登場のツインズもなかなかキュートで、敵のディセプティコンも小さいのから巨大な物まで凶悪そうで、これまたグー。ただ惜しむらくは、構造が皆複雑すぎて区別が相変わらずしにくいです。これが敵味方入り乱れて戦うんですから、観ている方は何が何だか分からなくなってしまいます。
 
 ということで、ストーリーもキャラの区別もよく分からないうちに、マイケル・ベイお得意の物量と超絶映像の力業で押し切られた感じです。まあ、アトラクション・ムービーと思えば、これでいいのかもね?
 
「ターミネーター4」
6/14
☆☆☆☆★★★
(こうなったら、次回作ではCGで州知事を沢山出して欲しいなあ…) 

 審判の日の後、2018年の世界では、スカイネットが繰り出すロボットたちと人間たちの弛まぬ戦闘が繰り広げられています。レジスタンスのリーダーとなったジョン・コナーは、敵の仕掛けた罠をかい潜り、スカイネットへの反撃を繰り返していました。一方、同じく審判の日を生き延びたカイル・リースは謎の男マーカス・ライトと出会い、共にレジスタンスに加わるべく、ジョン・コナーのいる街へと向かうのでした…。
 
 今までのターミネーター・シリーズでは、未来からやって来たターミネーターがサラ・コナー母子の命を狙うという、追う者と追われる者という構図で語られていたのですが、今回はそこにカイル・リースと謎の男マーカス・ライトが加わり、関係がやや複雑化しています。そして、追う方のターミネーターも、これがまた様々な種類の物が沢山出てきます。そんなワケで、思い入れの対象が分散してしまっているんですね。群像劇ならいいのですが、そりゃあ「ターミネーター」じゃないよね。なんて思ってしまいます。
 
 アクションもVFXも凄いけれど、何故か燃えないこの気持ちは何なのでしょう?近未来ロボットSF戦争映画としては申し分ない出来なのですが、私たちが「ターミネーター」に望むものが得られないもどかしさを、どうしても感じてしまうのです。

 そんな中、なつかしいあの顔が登場した時、私たちはこの映画が「ターミネーター」だったんだと再認識します。やっぱり州知事は偉大だなあと、思い知らされる瞬間です。
 
「スタートレック」
5/30
T109GM
☆☆☆☆☆★★★★
(でも、やっぱりビール工場みたいな機関部は、ちょっとなあ…)

 アイオワの片田舎で粗暴な生活に明け暮れていたジェイムス・タイベリアス・カーク青年は、ある日酒場で宇宙艦隊士官候補生たちと些細なことで大乱闘を起こします。それを止めに入ったのが、宇宙艦隊のクリストファー・パイク大佐でした。パイク大佐は実はカークの父ジョージの知り合いで、カークに父の跡を継いで宇宙艦隊へ入隊するよう勧めに来たのです。自分の進むべき道を見失っていたカークはパイクの言葉に突き動かされ、宇宙艦隊への入隊を決心をします。
 
 こうして宇宙艦隊アカデミーに入ったカークは、医者のレナード・(ボーンズ)・マッコイや宇宙言語の才媛ウフーラと知り合います。父親譲りの才能に恵まれたカークですから、メキメキと実力を発揮し始め、超難関のテストも楽々クリアしてしまいます。しかし、それに異を唱える男がいました。バルカン人のスポック中佐です…。

 スタートレック正史ではジェイムズ・タイベリアス・カークはU.S.S.エンタープライズNCC-1701の3代目の艦長で、初代はロバート・エイプリル、2代目がクリストファー・パイクなのです。しかもエンタープライズ号は衛星軌道上のサンフランシスコ・ヤードで完成したことになっています。もちろんジェイムズ・T・カークの父親も無事でしたし、あの星も消滅したなんて事は無かったのです。
 
 ところが、ロミュランの巨大掘削船が過去へタイムスリップしたおかげで、時空に歪みが生じ、新しい時間軸の歴史が生まれました。そう、このJ.J.エイブラムス版「スタートレック」はパラレル・ワールドの新しい「スタートレック」なのです。ですから、カークが粗野な性格だろうと、スポックが精神破綻しようが、ウフーラが誰と仲良くなろうが、チェコフがいきなり登場しようと、全然問題ないのです。
 
 というわけで、上手いこと新規再生を果たした映画版「スタートレック」は、「宇宙大作戦」を知らない世代にも、熱狂的トレッキーにも、充分満足出来る作品に仕上がりました。冒頭の血湧き肉躍る感涙のシークエンスに始まり、お馴染みのキャラが次々と集まっていく展開には、否が応でも胸が高まります。
 
 「スタートレック」の魅力は、なんと言っても登場するキャラクターたちにあります。ロマンチストで楽天的なカーク艦長の機転と決断力、冷静沈着なMr.スポックの論理的判断力、人情味溢れるDr.マッコイの愚痴、専門技能に優れたウフーラやスコッティやスールーやチェコフたちとの友情とチームワーク。それらが上手く噛み合って、全体として「スタートレック」の魅力を構成しているのです。その点についても今作はそつが無く、個々に見せ場を用意して、彼らのキャラを充分に引き立てています。
 
 そして、特筆すべきはCGによる美しい宇宙空間の描写と、宇宙戦闘シーンです。そう、こういう宇宙SFを観たかったんだよなあと思わせる程、それは見事なVFXです。そして何より、制作陣の「スタートレック」に対する思い入れの深さと尊敬の念が画面の端々からヒシヒシと伝わって来て、同時代を生きてきた者としては、嬉しい限りです。
  
「天使と悪魔」
5/19
T109GM
☆☆☆☆☆★★★★

 ある日、ハーバード大のラングドン教授の許にヴァチカンから使者がやってきて、教授に力を貸して欲しいとのメッセージを告げます。前回「ダ・ヴィンチ・コード」で非常に険悪な関係になったヴァチカンからの依頼に訝しむ教授ですが、「イルミナティ」の紋章を見せられて、何か言いしれぬ危機を感じた教授は申し出を受けることにしました。「イルミナティ」とは元々16世紀のイタリアで科学者たちが結成した友愛結社ですが、教会の弾圧を受けて地下に潜伏し秘密結社化しました。その「イルミナティ」がヴァチカンに対し何を謀ろうといるのでしょうか?
 折しもヴァチカンでは教皇が急逝し、次期教皇を選ぶコンクラーベの儀式が厳かに開かれようとしていました。更にその前日には、スイスの欧州原子核研究機構(CERN)から、反物質を収めた容器が何者かに盗まれるという事件が起きていたのです。こうして、ラングドン教授はスイスから来たヴィットリア博士と協力して、ヴァチカン市国を巡るイルミナティの陰謀に立ち向かうことになるのでした…。
 
 実際、反物質がこうも簡単に生成され、それをどうやって電磁石の容器に収めるかは知りませんが、ともかく宇宙生成の鍵を握る反物質ということで、神の領域を科学が侵すという構図上必要な要素だったのでしょう。この少々SFっぽい設定も、ヴァチカン市国を始めローマの歴史ある名所旧跡と荘厳な美術品の圧倒的な存在感の前には陰を失い、素直に受け入れたくなってしまうから不思議です。
 
 このヴァチカン市国の撮影ですが、当局から撮影の許可が下りるワケもありません。当然CGと大がかりなセットで復元したのでしょうが、これがなかなか見事な仕上がりで、まるでその場にいるような気分にさせられます。最近の映画におけるCGの多用に辟易気味の私でしたが、こういうCGの使い方なら大歓迎ですね。
 
 この「天使と悪魔」は原作ではラングドン教授シリーズの第一作目にあたるのですが、映画では「ダ・ヴィンチ・コード」の後日ということになっています。では、ヴァチカンのカメルレンゴは何故仇敵ラングドン教授に救いを求めてきたのでしょうか?当初この辺りが謎だったのですが、映画を見終わると、成る程と納得してしまいました。いや、上手いこと辻褄を合わせたものです。
 
 このカメルレンゴとは、教皇が死亡してから次の教皇が決まるまでの間だけヴァチカンを総指揮する権限を与えられた教皇の侍従のことで、劇中ではユアン・マクレガーが演じています。実は今回の作品ではラングドン教授以上に存在感を誇示しています。額のでき物も取れたようで、これからの更なる活躍に期待が持てます。
 
 原作は読んでいませんが、恐らく余計な所は全部端折って、非常にタイトな脚本に仕上がっていると思います。時間的な制約の中で、ローマ市内を走り回るラングドン教授の姿は、まるで「24」のジャック・バウアー捜査官のようです。次から次へと有無を言わさぬスピーディな展開に、あれよあれよという間に140分が過ぎました。推理を愉しむ暇もなく、その辺りに不満を持つ人もいるかも知れませんが、私としてはヴァチカンやローマの歴史ある荘厳な美術品の数々に囲まれての贅沢な時間を過ごすことだけでも、充分に愉しむことが出来ました。
「スラムドッグ$ミリオネア」
5/1
WMCSY
☆☆☆☆★★★★★

 テレビの人気番組「クイズ$ミリオネア」に出場した青年ジャマールは次々と正解を続け、なんとあと一問正解で2000万ルピーの最高賞金を手に入れることに。スラム育ちで無学のこの青年が何故正解を続けられたのでしょう?まぐれ当たりか?イカサマか?それとも…?

 これは、貧困にあえぐスラムの凄惨な生活からのし上がっていく青年のサクセス・ストーリーの体裁はしていますが、実は一途な思いを貫く男女の愛の物語なのです。低迷を続けるアメリカ経済にあって、経済と愛の両方を手中に収める現代のおとぎ話がアカデミー協会員の琴線に触れたことは、想像に難くありません。大作を押しのけての、アカデミー賞8部門受賞も頷ける所です。
 
 ――という意地悪な見方はさておき、シナリオはさすがに上手く、過去と現在を交互に行き交うストーリー構成も絶妙です。また、クライマックスに至る疾走感溢れる演出が高揚感を煽り、ラストに大きな感動を生んでいます。そして、極めつけがインドの作曲家A・R・ラーマンの手による音楽です。軽快に奏でるインド音楽が楽しげで、ジャマールとラティカばかりか、観ているこちらの方も祝福されているような気分になります。まさに、気分はボリウッド!
  
 「トレインスポッティング」のダニー・ボイルが「サンシャイン2057」の後に監督した作品ですが、宇宙規模の作品を撮ったかと思えば、インドのスラムを舞台にした映画を撮っていたなんてちょっと驚きです。でも、尊敬する監督がリドリー・スコットと聞いて、妙に納得出来ました。
「グラン・トリノ」
4/16
読売ホール
☆☆☆☆☆★★★★

 「ミリオン・ダラー・ベイビー」で俳優引退を宣言したクリント・イーストウッドですが、この作品のシナリオを読んでもう一作だけ銀幕に復帰することにしたそうです。全米で去年の12月12日に少数館で限定公開した後、今年の1月から拡大公開され、その後もロングランを続け、結局イーストウッド最大のヒットとなった作品です。

 ウォルト・コワルスキーは偏屈で頑固な老人です。朝鮮戦争で受けた心の傷に苛まれ、ところ構わず悪態を吐き、周りの人々との間に壁をつくっています。おかげでふたりの息子達にも疎まれ、妻に先立たれた後は、貧民街の一軒家でただひとり孤独の生活を送っています。そんな彼の唯一の慰みは、ピカピカに磨き上げた自慢の愛車「グラン・トリノ」を眺めることでした。
 ところがある日、隣のアジア系移民一家の息子タオが不良グループにそそのかされて、こともあろうか「グラン・トリノ」を盗みに入ったのでした…。

 イーストウッドの抑揚を抑えた演出は極めて自然で、少しも奇をてらったところがありません。ただ淡々とエピソードを繋げていくだけなのに、何故か画面にグイグイと引き込まれていきます。まるで円熟した武道の達人ワザを見るかのように、静かだが力強い、そんな神業的な演出力で観る者を魅了します。
 
 ところで、タイトルの「グラン・トリノ」とはフォード社がオイルショックで低迷する直前に発売した「アメ車最後の栄光」と呼ばれる車です。言わば大量消費大国米国の申し子みたいな車です。また主人公の隣に住むモン族の一家ですが、このモン族とはベトナム戦争当時米国軍に協力していたが米国軍撤退の際見捨てられ、その為に帰る地を失った悲劇の民族です。つまり、朝鮮戦争のある意味被害者の主人公の家の隣にベトナム戦争の被害者が引っ越してきたということです。映画ではこの両者の関わりをユーモアと皮肉を込めて描かれますが、なかなか意味深いものがあります。
 
 そんなわけで、米国の過去の栄光(グラン・トリノ)をタイトルに掲げる今作は、ある意味米国に捧げる挽歌であり、その再生への道しるべを示す物語でもあるのです。そして、イーストウッドは「許されざる者」で荒野の名無し男と決別しましたが、この「グラン・トリノ」でハリー・キャラハンと決別したのでした。
 
「レッドクリフ partU─未来への最終決戦─」
4/10
T109GM
☆☆☆☆★★★★

 曹操率いる2000隻の大船団が赤壁の対岸に陣を張り、決戦ムードが高まって終わった「パート1」から早6ヶ月。いよいよ待ちに待った「パート2」の始まりです。孫権軍との同盟のため周瑜に協力を誓った孔明。周瑜の妻、小喬に横恋慕する曹操。敵軍に忍び込む尚香。周瑜に命を救われた趙雲。「パート1」で張りに張りまくった伏線の数々は果たして全て回収されるのでしょうか?
 
 驚くことに、これがほぼ回収されるんですね。もちろんいくつか取りこぼしもあるのですが、登場人物の多さからも、これはなかなか良くできたシナリオといっていいでしょう。特に「パート1」に上手く引っかけたシークエンスを用意している点には感心させられます。例えば「パート1」で地に伏して敵の動向を探った孔明は、今度は空を見て気候の変化を読みます。妻の字を真似た書道の達人周瑜は、今度はある人物の文字を真似て罠を仕掛けます。劉備の妻を救い出せなかった趙雲は、今度はある人物を救い出します。ツボを突いて人を気絶させた尚香は、今度はツボを突いて目覚めさせます。
 
 しかし、中国特有の笑いのセンスはどうも頂けません。敵地で男装した尚香が蹴鞠の青年と織りなすエピソードの件は、観ていてなんとも気恥ずかしい思いに駆られます。…にしても「デブ助」はないよなあ。
 
 それに、さすがに登場人物が多いせいか、関羽、趙雲、張飛といった蜀の将軍たちの個性を生かし切れているとは言えず、少々残念でなりません。そんな中、中村獅童演ずる甘興が破格の活躍を見せ、ひとり気を吐いているのが印象的でした。それにしても魚油の爆弾って、そんなに大爆発するのか?
 
 とはいえ、ジョン・ウーの派手なアクションシーンは健在で、戦闘シーンも爆発シーンも凄まじく、いかにも「最終決戦」の名にふさわしい出来でした。というわけで、大音響、大スクリーンで観ておいて損はないと思います。まあ、後には何も残らないけれど、久々に大作を観たという満足感は得られるはずです。
「ウォッチメン」
4/1
T109GM
☆☆☆☆☆★★★

 個人的には大満足ですが、なかなか人に奨めにくい作品です。


 「300」のザック・スナイダーの最新作がアメコミ(グラフィック・ノベルと言うべきか?)最高傑作の誉れ高い「ウォッチメン」と聞いて、どんな作りになるか気になっていました。なにしろ原作はSF文学の最高峰に与えられるヒューゴー賞を唯一受賞したグラフィック・ノベルなのです。というわけで早速観てみましたが、予想に違わず大変な出来でした。
 
 舞台はニクソン大統領が3期めを務めるパラレルワールドな1985年の米国。10月12日の夜、元「ウォッチメン」のメンバーのひとりが何者かに惨殺されます。事件現場を訪れた、同じく元メンバーのロールシャッハは、この事件の裏には何かあると察知し、事件の謎を探り始めます。想像を絶する巨大な陰謀の渦に巻き込まれていくとも知らずに…。

 「ウォッチメン」というのは、並はずれた体力や頭脳や瞬発力を持ったメンバーが集まったコスプレ自警団「ミニッツメン」を前身としたスーパーヒーロー集団です。でも、超能力という点では全身青白く輝くDr.マンハッタンがただひとり突出していて、その他はバットマンタイプの生身の人間なのです。この作品では、その人間的な面をリアルに描いていますから、スーパーヒーロー物を期待した観客は肩すかしを受けてしまうでしょう。過去のトラウマに怯え、精神も病んでしまうという、心の闇の部分を抱えたヒーローの姿を嫌と言うほど見せられて、辟易してしまう人もいるかも知れません。でも、ここがこの作品の面白いところなのです。映画では各ヒーローの人間描写にかなりの時間を費やしていますが、このことがかえって映画のテンポを停滞させる結果を招いています。でもこれは、この世界に長く浸れる幸せを味あわせてくれる至福の時間でもあるのです。このあたり、評価が大きく分かれるところでしょう。
  
 さてザック・スナイダーの手腕ですが、これはかなり冴え渡っていると思います。まずオープニングロールにボブ・ディランの「The Times They Are A-Changin’」が流れるくだりからグイと胸を鷲づかみされます。この選曲と、「ウォッチメン」の変遷を綴って見せる演出は真に見事と言うほかありません。ここで一気にこの世界に引き込まれたならば、163分という長丁場も決して長いと感じないでしょう。逆に言えば、ここが観客の評価の分岐点となっています。
 
 「ウォッチメン」とは「見張る者たち」という意味ですが、前身の「ミニッツメン」でも分かる通り、「時計」という二重の意味を持ちます。このことは、スマイルバッジについた血痕が終末時計の12時5分前を指しているとか、Dr.マンハッタンの額に描かれた水素記号が時計の12時を指しているという具合に、画面の様々なところで暗示されていて、作品の奥深さを感じさせます。
 
 また、過去の映画、特に「未来世紀ブラジル」や「博士の異常な愛情」といったSF映画へのオマージュを捧げたシーンも数多く見受けられ、SF映画マニアには堪らないことでしょう。ことに「宇宙水爆戦」や「アウターリミッツ」といったマニア好みの選定が心憎いです。
 
 ということで、「ウォッチメン」は非常にマニアックな作りながら、奥の深い、大人の鑑賞に堪える良質な作品に仕上がっています。映画化不可能と言われた原作をよくぞここまで作り上げてくれたものだと、個人的に感慨深いものがありました。やったね、ザック・スナイダー♪
 
 
「バンク・ジョブ」
3/28
DVD

☆☆☆☆★★★★
 1971年にロンドンべーカー街で起こった実際の銀行強盗事件の謎を暴く、犯罪スリラー作品です。ジェイソン・ステイサム演じるテリーは、昔なじみの美女マルティーヌから銀行強盗計画を持ち込まれます。二軒隣の地下から穴を掘って銀行の貸金庫の床に抜けるというこの計画に乗ったテリーは、早速仲間を集め実行に移しました…。
 
 しかし銀行の貸金庫というところには、金品ばかりか、他人には公表できない色々な物が預けられているものです。そんなわけで、王室や政府高官のスキャンダルにまつわる物とか、マフィアの裏帳簿とか、相当ヤバイ品物もテリーたちは手に入れて、おかげで警察ばかりか、MI−5やマフィアや汚職警官たちにも追われるハメになったのです。果たしてテリーたちに、これらの魔の手から逃れる道はあるのでしょうか?
 
 この作品、実話を元にしているだけあって、英国黒人解放運動家リーダー、マイケルX(マルコムXではない)とか、実在の人物が色々出てきます。中にはジョン・レノンとオノ・ヨーコとおぼしき姿まで見られます。しかも、ミック・ジャガーなんかホントに出演していてビックリさせられます。
 
 それにしても、これがホントだったら凄いですねぇ。9割の事実に1割の脚色ですが、上手いことまとめあげたものです。特に後半のテンポが良くて、観ていてハラハラさせられます。ちゃんとジェイソン・ステイサムの見せ場も用意されていて、なかなか満足できた作品でした。
「おくりびと」
3/28
DVD

☆☆☆☆★★★★
 「死」がテーマなので重い話かと思っていましたが、意外や意外。結構楽しく観れてしまいました。広末涼子の濡れ場とか、意外な拾い物感もあって、好印象です。全体的に非常に「優しい」映画ですね。本木雅弘 の好演も光ります。でも、アカデミー賞外国語映画賞受賞というのは、色々な意味でラッキーだったと思います。
「パコと魔法の絵本」
3/23
DVD
☆☆☆☆☆★★★★
 中島哲也監督の作品といえば「下妻物語」は主演の深田恭子のフワフワした感じが良くて面白かったけれど、「嫌われ松子の一生」は主人公があまりに痛々しく、観ていて一緒に落ち込みそうで嫌でした。でもって「パコと不思議な絵本」はどうかと思っていましたが、大変面白かったです。劇場で観ていたら、きっと去年のナンバー1に選んだんじゃないでしょうかね。
 
 中島監督のCMで培った極彩色のコテコテな画面作りと、役者の過剰なメイキャップやオーバーな演技は、観ていて少々辟易してしまいそうです。でも、この作品に関しては、それがお話にうまくマッチしていて成功していると思います。現実と絵本の世界の境目を無くす演出が功を奏して、CGアニメとライブアクションとの切り替えもスムーズに観られますが、これは新鮮な驚きでした。
 
 出演している俳優達は殆ど誰だか分からないくらいにコテコテにメイキャップしていますが、ただひとり主人公のパコだけは素顔のまんまです。それがかえって彼女の純真無垢さを強調しています。このパコを演じている、主演のアヤカ・ウィルソンが良いんですね。周りの役者達がオーバーな台詞回しをする中、彼女のたどたどしい台詞が耳に心地良く響き、作品全体のコテコテなイメージを和らげてくれています。まさに掃きだめに鶴というのでしょうか、このコントラストが彼女の可愛らしさを更に際立たせているのです。
 
 ともかく、笑って泣ける、コテコテでも可愛いらしい、まさに飛び出す絵本のような作品でした。

「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」
2/19
T109GM
☆☆☆☆★★★★

所詮人生は孤独なもの。
だが、添い遂げる相手がいることの、なんと幸せなことか!
是非、カップルでご覧になることをお奨めします。
 
 1918年、ニューオリンズの老人ホームに捨てられ、ベンジャミンと名付けられた男の子は確かに赤児でしたが、その体は80歳の老人そのものでした。目は白内障に侵され、耳も遠く、腰は曲がり、手足も不自由で、医者からは余命幾ばくもないと診断されました。でも、彼は老人の体で生まれ、歳をとるごとに若返るという運命を背負っていたのです。まるで時計の針が逆回転しているかのように…。
 
 そして、ベンジャミンが12歳の時、6歳のデイジーと運命的な出逢いをします。ふたりの見せかけの時間は互いに逆行しているので、ふたりの人生はどうしてもすれ違ってしまいます。そんなふたりも人生の中間点でようやく交差するのですが、それも片時の幸せでしかありません。やがて訪れる皮肉な運命を前に苦渋の選択を迫られるのでした。
 
 奇妙な話ではありますが、何故かすんなり受け入れられるのは、やはり古くからの街並みが今でも残っているニューオリンズという土地柄なのでしょうか?デンゼル・ワシントン主演の「デ・ジャブ」の舞台でもありますし、どうしても時間との深い関わりを感じてしまいます。
 
 物語はベンジャミン(ブラッド・ピット)とデイジー(ケイト・ブランシェット)の関係を軸に、ベンジャミンの辿った数奇な人生について語られています。それはまるで「フォレスト・ガンプ/一期一会」のようでもあり、彼の旅を綴ったロード・ムービーのようでもあります。ただこの映画のユニークなところは、通常と全く逆の成長をする主人公の特殊性にあります。老人ホームに育ったベンジャミンは、周囲の人達が次々と亡くなっていく現実に遭遇し、否が応でも人との出逢いや関わりが如何に大事かを思い知らされるのです。そして、決して逆らうことのできない時の残酷性と人生の孤独を際立たせています。
 
 ともかく、こんな映画を可能にしたのはなんと言っても視覚効果技術の進歩のおかげでしょう。ベンジャミンの幼年期の顔はまさしくブラッド・ピットなのに体は子供という不思議。成長と共に若返っていくと、シワがどんどん無くなり、ついには眩いばかりの青年ブラッド・ピットが登場するという驚き。メイキャップやCG技術によって描き出された映像には、ただただ驚嘆するばかりです。今年のアカデミー賞にノミネートされたのも頷けます。
 
 脚本も演出も巧妙で、167分という長尺にも関わらず、決してだれることもなく一気に見せてくれます。ひとつにはベンジャミンが出逢う人々のユニークさにもよるのですが、何よりブラッド・ピットとケイト・ブランシェットの変貌と、それにあわせた熱演によるところが大きいと思います。そして、決して無理強いしないデビッド・フィンチャー監督の人生に対する真摯な態度が、観る者に深い感銘と余韻を残します。
「007/慰めの報酬」
1/24
WMKN
☆☆☆☆★★★
(血だらけのシャツを着たボンドというのも、初めて見ました)

 監督のマーク・フォスターと脚本のポール・ハギスという布陣からも分かるように、人間ドラマを中心に据えた、今までとは違った007映画に仕上がっています。もちろんアクション満載で、陸・海・空と矢継ぎ早に繰り広げられるアクション・シーンはCGを極力排したガチンコ映像で、どれもこれも迫力満点です。
 この作品は前作「カジノロワイヤル」の1時間後から始まる完全な続編ですが、こんな作りは今までの007シリーズには無かったことです。タイトルバックに流れる主題歌にしてもデュエットだし、なんか違和感を感じてしまいます。ボンドにしても相変わらず寡黙で洒落た台詞を吐くでも無く、ひたすら肉体派のパルクールなアクションを披露します。これはもはや007映画ではなく、よりリアルさを追求したジェイソン・ボーンの世界です。(──といっても、こんなアクション、実際にできるわけ無いんだけど)
 それにしても今回のボンドときたら、関わる人間が次々と死んでいくし、まるで死に神のように見えてしまいます。犠牲となるのは敵ばかりでなく、仲間や友人も身代わりとなり盾となって死んでいきます。しかも、彼らに追悼の言葉を贈ることもなく、ひたすら敵を追いつめることに専念するのです。いくら前作で恋人を殺され、復讐の鬼と化したボンドといっても、そりゃあんまりでしょう。そんなボンドに未来はあるのでしょうか?…と思わせるのが、さすがマーク・フォスターとポール・ハギスのコンビ。そんな極限の状態を乗り越えた後に、本来の007が誕生するんですね。そう、「カジノロワイヤル」と「慰めの報酬」はボンドがいかにして007になったかという、 007の前日譚なのです。
 でも次回にはそろそろマネーペニーとQがでて欲しいものです。
「K-20(TWENTY) 怪人二十面相・伝」
1/1
WMKN
 ☆☆☆☆★★★
(怪人20面相というわりには10面相くらいで終わっているのが少し残念なところ。もう少しパッパッと変わるところが見たかったです)

 第二次大戦がなかった1949年の日本を舞台に繰り広げられる空想科学冒険活劇。サーカスの曲芸師遠藤平吉は、ある日雑誌出版社から名探偵明智小五郎と財閥令嬢羽柴葉子との結婚式の盗撮を依頼されるが…。
 
 架空の日本が舞台ということで、その背景を如何に描写するかが重要になってくるのですが、これがなかなか良く作り込まれています。ミニチュアとCGを組み合わせた都市の空撮に、「魍魎の匣」でも好評だった上海ロケによる街並みを盛り込んだ風景は、大正ロマンの香りを漂わせた摩訶不思議空間を見せてくれています。
 
 ただ、惜しむらくは建物の外観だけでなく、内装もそれらしく見せてくれたら良かったのですが、そこまで手が回らなかったのが残念です。例えば高層ビルの高さを表現するには、外観だけでなくエレベーターとか内装の描写が必須なのですが、その辺りが欠けているのでどうも高さを感じられないんですね。
 
 ともあれ、宮崎アニメの実写版のような作りといい、和製バットマンのような映像といい、娯楽作品としての面白さに徹した臆面もない製作態度には好感が持てます。アニメチックな作りにしてはケレン味に今ひとつ物足りなさが残りますが、この調子で日本映画も頑張って欲しいものです。その意味でも、明るい希望の持てる、正月に相応しい映画でした。
 
2008
「地球が静止する日」
12/20
WMKN
 ☆☆☆★★★
(キアヌ・リーブスありきの企画ではないかと思えるほど、彼はハマっています。彼は「マトリックス」から、もう3度も人類を救っていることになります)
 地球外生物学者のヘレン・ベンソン博士はある夜、突然政府からの招集を受けます。そして、同様に連行された科学者たちと共に向かった場所で、政府の高官から彼女らは驚くべき事態を聞かされます。宇宙から地球に向かって高速で飛来する謎の物体があり、それはもうじきマンハッタンを直撃するというのです。

 本作は1951年製作「The Day the Earth Stood Still」のリメイクですが、東西の緊張状態にあった当時の旧作では核問題を扱っていました。今作では環境問題に焦点を当てていますが、どうも問題をややこしくしている嫌いがあります。地球を救うために人類を○○するというわりに、宇宙人がとった方法は、人類以外の生物にも甚大な被害をもたらすんじゃないかと思うんですけれど…。それも警告なしに、いきなりはあんまりじゃないかと思いますよ。

 確かに謎の球体や破壊シーンのVFXは見事で、アカデミー賞視覚効部門の候補に挙がったのも頷けます。ただ残念なことは、描かれるべき肝心のシーンが欠落していることです。球体の位置からして、当然○○○○○○の破壊シーンが観られると思ったのに…。そこが無いので、人類が○○する恐怖のドラマ的な盛り上がりに欠けて、今ひとつカタルシスを得られないんですね。
 
 それに、そもそも何故(宇宙人)クラートゥが心変わりするのか、肝心な点がどうもあやふやで、よく分からないのです。まあ、宇宙人の考えることですから、我々地球人には計り知れない論理と考察があってのことかも知れませんけれど。

 清水寺で発表された今年の漢字は「変」ということですが、この作品で描かれているテーマも「人類は変われるか?」ということです。果たして我々は「Yes、we can!」と胸を張って言えるでしょうか?
 
「WALL・E」
12/6
T109GM
☆☆☆☆☆★★★★★ 
 生のないものに生命を吹き込むことがアニメというならば、ピクサーは卓上ランプに生命を吹き込んだ時から、ずっとアニメに打ち込んできました。「WALL・E」は、そんなピクサーが新たに息を吹き込んだ、今までの集大成ともいうべき作品です。

 人類がとうにいなくなった29世紀の地球で、ゴミ処理ロボットWALL・Eは、もう700年もたったひとりでゴミ片づけを続けていました。そこに、ある日天空から一台の宇宙船が舞い降りてきました。そして、その船から現れたのは、イヴという新型ロボットでした…。
 
 今までピクサー作品で外れた物はひとつもありませんでしたが、今回も然りでした。相変わらずシナリオは完璧です。完璧すぎるのも、先が読めて詰まらないものですが、そこはピクサー。ひとつもふたつも捻りを入れています。それでも、ちゃんと収まるところに収める手腕もたいしたものです。
 
 また、機械の擬人化も素晴らしく、ひとつひとつの細かい仕草にはホトホト感心させられます。主人公のWALL・Eの寄せ集めのようなデザインも楽しいですが、イヴの洗練された(ipodのように)流麗なデザインも素敵です。それに様々な脇役達のどれをとっても、アイデアが一杯詰まっていて、惚れ惚れします。すごいなあ〜!
 
 アンドリュー・スタントン監督は、この作品のことを、子どもの時に観て影響を受けたSF映画へのラブ・レターだというようなことを言っていましたが、その愛は充分伝わります。
 
 劇場に行った時、私の後の席に5歳くらいの子どもが座っていました。映画が始まる前、親にしつこく話しかけていたので、ちょっと不安でした。でも、それは余計な心配でした。映画が始まるとすぐに静まりかえり、結局映画が終わるまで、私は後の子どものことなどすっかり忘れて、画面に集中することができました。さすがピクサーですね。
「僕らのミライへ逆回転」
12/1
WMKN
☆☆☆☆★★★★
(これを観ると、自分で映画を撮ってみたくなります)
 街角の古びたレンタルビデオ店の店長から店番を任されたマイクのもとに、友達のジェリーが遊びに来た。だが、ジェリーは発電所の事故で、全身に強い磁気を帯びていたから、さあ大変。彼が近づいたおかげで、店中のビデオの映像が消されてしまった。客からの苦情でその事を知ったふたりは、どうせ中身は知らないんだからと、ビデオカメラ片手に映画のお手軽リメイクを始めるのだった。
 
 今や完全にDVDに席巻され、死語になりつつあるレンタルビデオ店ですが、ビデオテープだからこそ磁気で映像が消えてしまうし、ツメを戻せば録画を上書きできるというのがミソ。ともかく、勝手に映画をリメイクして貸しだそうというアイデアが面白く、しかもそのチープな作りにもかかわらず、映画に対する愛が感じられて微笑ましいです。
 
 それに、リメイクする作品のチョイスがなかなか良いんですね。「ゴースト・バスターズ」(シガニー・ウィーヴァーも出ています!)に始まり、「ラッシュアワー2」(あえて「2」を選ぶところがニクイ!)「2001年宇宙の旅」に「ロボコップ」「ドライビングMissデイジー」「キャリー」「ラストタンゴ・イン・パリ」「メン・イン・ブラック」「キング・コング」(主演のジャック・ブラックはピーター・ジャクソン版リメイクに出ていましたね)「シェルブールの雨傘」「ライオン・キング」(アニメも!)…といった具合。これらを一体どうやってリメイクしたのか?その半ば強引で大胆なアイデアときたら、まさに脱帽ものです。
 
 ここに描かれているのは、ハリウッド映画のビッグ・バジェットに対する皮肉であり、映画作り本来の楽しさとは何かという問いかけなのですが、それにしてはラストの一抹の寂しさが気に掛かります。やはりリメイクとはいえ、映画の知的財産は守らなければなりませんし、この辺りが難しところでしょうか。
  
 それにしても、この邦題はいかがなものでしょう?原題の「BE KIND REWIND」は、ビデオレンタル店がテープの返却時の注意書きとして使う常套句で、「(返却の際は)テープの巻き戻しをよろしく」といった意味です。たしかにこの邦題は難しかったでしょうが、それにしてもこれではまるで青春ドラマかタイムトラベル物ですよ。とはいえ、良い代案も思いつきませんけど…。
「D-WARSディー・ウォーズ」
12/1
WMKN
☆☆☆★
(VFXはゲーム並ですが、見られるところもありますし、一応怪獣映画ですので☆ひとつオマケ)
 わたしは基本的に怪獣映画が好きです。モンスターが出る映画なら、どんな映画でも、愛情を持って観ることにしています。ですから、どんなに前評判が悪くても、この映画を観に行くことに決めたのでした。
 
 突如ロサンゼルスを襲った地殻変動の現場を訪れたTVレポーターのイーサンは、そこで大きな鱗のような物を発見する。そして、それを見たイーサンの脳裏に、子どもの頃骨董屋で聞いた、韓国の伝説が甦った。それは500年に一度くり返されるという、善と悪の大蛇の戦いにまつわる伝説で、その戦いが今度はこのロサンゼルスで再現されると知った彼は、「ヨイジュ」と呼ばれる特別の力を宿した少女の生まれ変わりを探すのだった…。
 
 たしかにVFXは凄い(ところもある)…かもしれないし、色々なモンスターがうじゃうじゃ出てきて、楽しい…かもしれないですが。始めにVFXありきで、物語は二の次という作り方はどうなんでしょうか?

 ともかく、わたしはこの物語についていけませんでした。例えば、地殻変動の現場で見つかった鱗のような物体について、主人公と物体を調査している鑑識との会話です。 
「この世で一番硬い物質は?」
「そりゃ、ダイヤモンドだろう」
「これは有機物だ」
ちょっと待てい!話が全然噛み合ってないじゃないか!
…という具合に、一事が万事、この調子なのです。

 そもそも、韓国伝説の大蛇が何故ロスで甦るのか?さっぱり分かりません。FBIはどうやって大蛇の棲む洞窟を見つけたのか?そして、洞窟に向かった隊員が全滅させられたのに、何故そのまま放置しているのか?さっぱり分かりません。突然現れたモンスター軍団は、一体何を目指して行軍しているのか?さっぱり分かりません。大体、モンスター軍団の存在理由自体が、さっぱり分からないのです。
 
 このように、理由も意味も不明のまま、なんの脈絡もなく物語は進んでいき、何だか釈然としないままラストを迎えます。この作品が韓国で大ヒットしたというのですが、その理由がさっぱり分かりません。
「レッドクリフ」
11/22
T109GM
☆☆☆☆★★★★
(ともかく、来年春の「Part2」が今から待ち遠しいです
 「レッドクリフ」は三国志の赤壁の戦いを描いた作品なのですが、三国志といえば名前も読みづらい登場人物がたくさん出てくるし、長い原作読むのも大変だし、敷居が高いと思ったら大間違いですよ。この「レッドクリフ」はとにかく分かりやすくできていますので、三国志初心者でも安心してご覧になれます。
 
 冒頭に簡単な背景説明はあるし、主要人物が登場するたびに名前が大きめの字幕で出るし、しかも漢字にはルビがふってあるし、配給会社も余程気を遣ったのでしょう。勢い余って、「民」にまでルビふるのはやりすぎですが、それにしてもこの親切設計には逆に驚かされました。
 
 お話の方も必要な要素は逃さず、非常に上手く簡潔にまとてあって、主要キャラにはそれぞれ見せ場を用意して充分立たせてあるし、実に見事な出来映えと言えるでしょう。
 
 特に、小喬をトロイのヘレンに見立てて曹操の動機付けとしたり、さらにお抱えの踊り子に小喬のコスプレをさせるなど、曹操の偏執的なキャラを際立たせています。
 
 もちろん、関羽や張飛、趙雲といった各武将達の一騎当千の活躍も見物ですが、中村獅童の甘興ひとりがワイヤー・アクションを多用していて、これが意外と目をひきます。また、周瑜と孔明が琴を合奏するシーンなど、互いの危ない視線が交差して、見ていてゾクゾクするほどです。それに、孫権の妹尚香の秘技がなかなかの曲者で、とても良い味を出しています。
 
 まだ「Part1」ですので明言はできませんが、ジョン・ウーの最高傑作になるであろう、そんな期待をさせる作品です。
「イーグル・アイ」
11/1
☆☆☆☆★★★★
 T109GM
(主人公達が途中立ち寄るビデオ店の店頭には、同監督の前作「ディスタービア」のDVDがちゃっかり並べてありました) 
 
 
 最近の映画はスピーディーだし、一画面に込められた情報量は多いしで、画面の隅々にまで目を配って観ていると疲れて仕方ないです。これも歳のせいでしょうかね。ともかく、今日は大事を取って一本だけ観ることにしましたが、これがもの凄く濃密な内容で、見終わってホトホト疲れ切ってしまいました。
 
 「イーグル・アイ」は予告編を観た時から、「知りすぎていた男」や「北北西に進路を取れ」のような巻き込まれ型サスペンス映画を予想していたのですが、予想に違わずシチュエーションは往年のヒッチコック作品から明らかにインスパイアされたものでしょう。確かに前述2つの映画の見せ場が巧みに盛り込まれていて、ヒッチコック・ファンならずとも思わずニヤリとさせられます。でも、監督のD・J・カルーソ監督はヒッチコック・スタイルの演出は行わず、怒濤のアクション映画に作り変えてしまいました。それが彼のスタイルなのでしょうし、今風なのでしょう。
 
 でも、この肝心のアクション・シーンがどうも私にはいただけません。アップのシーンが多くて、しかも暗がりで、何がどうなっているのかよく分からないんですね。この辺ダメ監督でもマイケル・ベイだったら、もっと分かりやすく退いた絵で見せてくれるはずなんですがね。そこがどうも残念でなりません。
 
 ともかく脚本家が4人も関わっているだけのことはあり、これでもかと色々なアイデアが詰まっています。それが濃密な画面に反映されていて、次から次へとたたみ掛けるアクションで見せていく構成は、観る者を決して飽きさせません。ただ見せ方が今ひとつ不親切な気がしますが、それでも観客を強引に引っ張っていくD・J・カルーソー監督の手腕はさすがと言うべきでしょうか。
 
 私としては、やはりヒッチコックのウィットに富んだ会話やユーモアのセンスが欲しい気もしますが。
 
「ウォンテッド」
10/1
WMKN
☆☆☆☆☆★★★★
 「ナイト・ウォッチ」「デイ・ウォッチ」の新感覚映像で我々を驚かせたロシアのティムール・ベクマンベトフ監督が初めてハリウッドと手を組んで撮った新作です。やはりハリウッドはこの才能を見逃さなかったかと感慨深いものがありますが、ハリウッドの波に呑まれて才能を潰されるのではという一抹の不安もありました。が、それはいらぬ心配。ロシア土着の泥臭い感覚と洗練されたVFXがよくマッチして、更なる映像進化を遂げたのでした。
 
 ともかく冒頭からもの凄いアクションの連発で、度肝を抜かれます。物理法則を完全に無視したこの動き。これをマトリックスの世界でなく現実世界の人間がやっているかと思うと、もう、アクションが凄すぎて笑っちゃいます。でも、主人公が鍛錬を受ける様が丹念に描かれる中で、次第に「出来るかも?」と納得させられちゃうんですね。そして一旦この世界を受け入れると、後はどんな超絶アクションが展開されようと、少しも違和感なく観られちゃうんです。シナリオ的にはおかしなところだらけですが、こういう映像を見せられると、やっぱり「映画は映像だ!」と思ってしまうんですね。この映像にはそれ位のインパクトがあります。ある意味、映画の壁を破ったかも知れません。これがOKなら、何でもOKになってしまう。これからの映画の将来を左右する、そんな力を感じました。
 
 その力に大きく貢献しているのが、アンジェリーナ・ジョリーの存在でしょう。やはり大スターの彼女がやるからこそ、どんな嘘も許されるのです。「ウォンテッド」は、まさに彼女の存在無しでは語れません。ですから「ウォンテッド2」に彼女が再び登場することも当然と言えます。もっとも、お話的にはかなりの無理がありますが…。
 
 ところで、劇中「1を倒して、1000を救う」という言葉が出てきますが、どう見ても罪のない人々を1000人以上倒しているのが気になりました。因みに「デイ・ウォッチ」の続編「ダスク・ウォッチ」は一体いつになったら出来るのでしょうか?
「アイアンマン」
10/1
WMKN
☆☆☆★★★
 「ウォンテッド」にも言えることですが、小さな嘘を丹念に描き、それを積み重ねることによって、どんなに大きな嘘も観客に納得させられるようになるのです。「アイアンマン」では、主人公がプロトタイプのアイアンマンを作り上げるところから、いかに改良を加え、試行錯誤をくり返したかが、詳細なメカと共に丹念に描かれています。ミサイルの頭部を改良して作られたから、アイアンマンのマスクがあんな形になったとか、飛行バランスをとるのにどんなに苦労したかとかが、実に細かく描写されるのです。ですから、当初、身体に入りこんだ金属片が心臓に行かないように付けられた電磁コイルが、途中から謎の人工心臓アーク・リアクターにすり替わろうと、丹念に描かれた製作工程の中に埋没して、少しも気になりません。いや、むしろこの製造過程が大きな説得力を持って後押しをしているのです。
 
 ともあれ、「アイアンマン」は今までのスーパー・ヒーロー物の中でも、細部に拘ったキャラクター作りが出色で、メカ好きはもとより、メカに疎い人にも馴染みやすい作品に仕上がっています。でも、なんでこの作品が米国で3億ドルを超える興行収入を上げたのかは理解しがたいものがあります。
  
 因みに「スパイダーマン」にも「Xメン」にも「インクレディブル・ハルク」にもカメオ出演していた原作者のスタン・リーが初めて本人の役で登場します。またエンドクレジットの後には、アメコミファンが驚喜するようなオマケ・シーンがあります。ついにあれが始動するんですね…。
「ハンコック」
9/1
WMKN
☆☆☆★★★
 飲んだくれで嫌われ者のスーパー・ヒーローの再生の物語です。ハンコックがスーパー・ヒーローとして自覚し始める前半部は大変面白いのですが、ハンコックの謎が解け始めてからの取って付けたような後半部になると雲行きが怪しくなってきます。出来の悪さにもかかわらず、楽しく観れてしまうところが困ったところです。
 
「ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン」
9/1
WMKN
☆☆☆☆★★★
 「ショーン・オブ・ザ・デッド」でその才気を遺憾なく発揮し、「グラインドハウス」のフェイク予告編「ドント」で観客を沸かせてくれたエドガー・ライト監督の最新作です。本来なら日本ではDVDスルーになるところを、熱狂的なファンの投書のおかげでなんとか劇場公開に漕ぎつけたのだそうで、ワーナー・マイカルでも巡演が決まり、おかげでようやく私も近所のシネコンで観ることが出来ました。単純に刑事物のパロディーと括るわけにはいけません。相変わらずキレのあるカット割りと、英国らしいアイロニーたっぷりの捻りのきいたギャグも冴え渡っています。好き嫌いがハッキリ分かれそうですが、私は楽しく観ることが出来ました。

「ダークナイト」
8/16
T109GM
☆☆☆☆☆★★★
 凄い映画です。並の映画2〜3本のボリュームに綿密なシナリオといい、どうやったらこんな映画が作れるのか分かりません。しかしながら、バットマンは何故こんなにもストイックなんだろう?自虐的とも言えるバットマンに対して自由奔放なジョーカーのなんと魅力的なことか。敢えて自らを闇に投じ、仲間を失い、警察に追われ、市民の反感を買い、主役の座までジョーカーに奪われ、恋人の愛まで得られずに走り去るバットマンの後ろ姿には、涙を禁じ得ません。世界の警察を自認し、自由と平和を守るために世界各地でテロリストたちを懲らしめているのに、世界から反感を買っている米国の姿こそダークナイトそのものとでも言いたげな内容に、米国では共感を呼び大ヒットしました。
「ハムナプトラ3」
8/16
T109GM
☆☆☆★★

3は中国が舞台です。ともかくレイチェル・ワイズの交代が納得できないし、間違いなく大きな痛手となっています。いけ好かない息子にも感情移入できないし、肝心のジェット・リーも生身では活躍しないし、もう何を拠に観たらいいのでしょうかっていう感じです。だいたい「ハムナプトラ」なんて全然関係ないでしょうが…。
「崖の上のポニョ」
8/1
(T109GM)
☆☆☆★★★
(パンフレットの説明を読まなければ分からない設定って…どうなのかな?)

 
 この作品は恐らく、三鷹の森ジブリ美術館で随時公開されている短編アニメ「くじらとり」の延長にあるのでしょう。「くじらとり」は幼稚園の園児が積み木の船に乗ってくじら獲りに出かける童話で、実験的な手描きアニメの秀作です。短編アニメとしては素晴らしいのですが、同じ手法で劇場用長編アニメを作るとなると、そこには大変なギャップが生じます。果たして、宮崎駿監督はその溝を埋めることが出来たのでしょうか?(因みに、「…ポニョ」のスタッフ・ロールの表記方法は「くじらとり」と同じです)
 
 結論として、様々な要素を取り込んだために、何とも収まりの悪いものになってしまったように思います。本来なら終始子供の視点で進めるべきところが、時々大人の視点に移るために、観客が拠とする視点を掴むことを阻害しているように思います。また、5才の子供の視点と大人の視点では物事の解釈に大きな開きがありますが、この作品ではその差が曖昧になっているのです。それを象徴するかのように、主人公の少年は両親を名前で呼び捨てにしますし、ポニョもデボン紀の生物を学名で呼んだりします。その結果、観客に大きな戸惑いと混乱を招くことになりました。いつものことですが…。
 
 ともあれ、単純にアニメとしては、海の描写や子供の細かい表情など、大変素晴らしいシーンも多々あります。継ぎ接ぎだらけのシナリオや穴だらけのストーリーを気にしなければ、観るべき所も多い作品だと言えるでしょう。
 
「インクレディブル・ハルク」
8/1
(T109GM)
☆☆☆☆★★★
(折角だから最後の対決にもグレーシー柔術を生かして欲しかったです)
 前作アン・リー版の情け無い「ハルク」は無かったことにして、本来の「ハルク」をアクション中心に描いた新版「ハルク」の誕生です。緑の大男ハルクを3DCGで大いに暴れさせるため、人間ブルース・バナーの葛藤部分を演技派のエドワード・ノートンに任せたのは正解で、作品をよりシリアスで深みのあるものにしています。
 
 また、アクションに定評のあるルイ・レテリエ監督の手腕には確かなものがあり、CG技術の向上も相まって、驚くようなアクションシーンを作り上げています。これなら原作ファンも納得の出来でしょう。
 
 今回キャストが一新されましたが、TV版ハルクを演じていたルー・フェリグノだけが、前作と同じ大学の守衛役で出ています。もちろん、原作者のスタン・リーはブルースの血液の入ったジュースを飲んで倒れるおじさん役でカメオ出演しています。また、ヒクソン・グレーシーがブルースに柔術の呼吸法を伝授する役で登場します。そして最後には驚くような人物が登場して、驚くような発言をします。彼らがレストラン「スタンリー」で一堂に会する日がやって来るのかと思うと、どうしても胸が高まります。
「カンフー・パンダ」
8/1
(T109GM)
☆☆☆☆☆★★★★
(パンダらしい戦いっぷりに、思わず納得!)
 まず、冒頭の2Dアニメからして素晴らしいんですね。このまま2Dで続けてくれても良いんじゃないかと思ってしまう程です。3Dアニメなのに、この様に2Dもちゃんと大事に描いてくれるところに、スタッフの技術的な底力とアニメに対する熱意を感じます。
 
 そして何より、シナリオが素晴らしいです。劇中の様々なエピソードが伏線となって最後のクライマックスにしっかり結実し、ラストに昇華される構成が見事です。こういうシナリオを見せられると、どうしても日本アニメにおけるシナリオの脆弱さが気になって仕方ありません。今はジャパニメーションともてはやされていても、肝心のシナリオを疎かにしているようでは、いずれは衰退の一途を辿るような気がしてなりません。
 
 それに、キャラクターの配分がこれまた見事です。メタボのパンダに龍の戦士をやらせるところもニクイですが、最も勇猛果敢なマスター・タイガーの声にアンジョリーナ・ジョリーのセクシー・ボイスを配するとか、小さな蟷螂に重い荷を持たせるとか、キャラの対比を実に上手く生かしていると思います。
 
 それと…、カンフーを扱った作品だけに、カンフーをアニメでどう描写するかが気になるところですが、これが実に本格的なもので驚かされました。特に鶴・蛇・猿・蟷螂・虎のマスター・ファイブは、それぞれの特徴を上手く反映した拳法を披露してくれますし、色々な訓練具や経絡秘孔突きなど、カンフー映画を良く研究しているなと感心させられます。聞けば、カンフーアクションについては、声でも出演しているジャッキー・チェンのお墨付きをもらったそうです。
 
 ギャグ満載の中に教訓も交え、大人も子供も楽しめる、誰にでも安心して勧められる作品と言えるでしょう。
 
「スピード・レーサー」
7/5
(WMKN)
 ☆☆☆☆★★★
(やっぱり日本語の主題歌が流れると胸が熱くなります。ウォシャウスキー兄弟のアニメオタクぶりは尋常じゃありません)
 
 極彩色の世界に目まぐるしく飛び交う光りのシャワー。もう、何て言うんですか、凄いですねえ。なんでここまでと思うくらいに、画面に詰め込まれた情報量が半端じゃありません。ひとつのシーンで4つも5つも情報を重ねていますから、とても把握できたもんじゃありません。ウォシャウスキー兄弟が「マトリックス」を越える映像革命を起こそうと挑んだ「スピード・レーサー」は、まさにCGの万華鏡でした。「シン・シティ」や「300」に触発されたのでしょうが、それにしてもこれはやり過ぎで、観る者を生理的に拒絶しかねません。ここまでやると、「マッハGoGoGo!」の実写化というより、CG映像化と言うべきでしょうね。
 
 とは言え、凄いことは凄いんですよ、これが…。漫画的とも言える演出も、見方を変えれば功を奏していて、驚くほど効果的だったりします。例えば過去の出来事を紹介しつつ、現在の出来事を色々な視点で描ききってみせる手腕には舌を巻きます。こんなに沢山の情報を数秒で表現するなんて、まさに驚異と言わざるを得ませんが、これについていく観客の身も考えて欲しいですね。それも、全編に渡ってこの調子ですから、観ている方はたまったもんじゃありませんよ。いや〜、疲れたぁ!
 
 ちなみに、劇中登場する、変な日本語を喋るアニメはG・ダロウ君の作品です。主人公の家の壁にも彼の絵が飾られていました。ついでに言えば、冒頭のシーンに登場するパラパラ・アニメは彼の娘が描いたそうです。
「ミラクル7号」
7/1
(WMKN)
☆☆☆★★★
(このキャスティングは凄い!これが出来たら、恐い物無しです) 
  もうチャウ・シンチーってば、お茶目なんだから〜。主人公の男の子役のシュー・チャオは女の子だし、いじめっ子の男の子役も女の子だし、その用心棒役の巨漢は女だし、更に巨大な女の子役はプロレスラーだし、もうキャストからして破天荒。何でも有りの世界なんですね。宇宙からやって来た「ナナちゃん」に至っては、見るからにぬいぐるみそのもの。そこで繰り広げられるベタなギャグの数々に笑えるかが評価の分かれ目となりそうですが、まあ、お子様映画ということで、広い心で観てやってください。
 ともあれ、主役のシュー・チャオの表情豊かさには感心しました。それに、お父さん達にはキティ・チャン(冗談みたいな名前ですが…)が目の保養になるでしょうね。
「アフター・スクール」
7/1
(WMKN)
☆☆☆☆★★★
(後から考えると、北沢に付き合う神野の行動はおかしいと思います。余程人が良すぎるのか?案外危険が好みなのか?教師の血が騒ぐのか?)
  「運命じゃない人」を脚本監督した内田けんじの新作と聞いて、一筋縄には行かないと思っていたのですが、またしても上手いこと欺されてしまいました。でも、よく考えてみると、少々脚本に綻びが見え隠れします。脚本を複雑にした分、「運命じゃない人」のような分かりやすさが無くなったことも、物語に引き込まれない要因になっている様に思います。上手いとは思いますが、どうもねえ。

 それに、台詞の一言が伏線になっているなんて、昨今のTV文化に慣れ親しんだ若者達に分かるはず無いじゃないですか。私はこういうの嫌いじゃないけれど、一般ウケはしないだろうなあ。
「インディ・ジョーンズ:クリスタル・スカルの王国」
6/14
(WMKN)
☆☆☆☆★★★★
(ディズニーランドに新しいアトラクションが出来るかも?)
 時は「最後の聖戦」から19年後の1950年代。スピルバーグもルーカスもマチネでB級SFやパラマウントの冒険活劇やらを観て、歓喜していた時代です。今回のインディ・ジョーンズには、そんなふたりの思いが詰まっています。
 
 冒頭のキノコ雲に髑髏が映し出されていないのは、やはり諸般の事情でしょうか?とても良いアイデアだと思ったのですが、ここが如何にも惜しいなあ。ラストは賛否両論ありましょうが、流れ的にはやはりアレを出さずにはいられないでしょうね。むしろ、アレのデザインが気になりました。どうせなら、ナスカの地上絵とか絡めれば良いのに…。
 
 インディ・ジョーンズといえばやはりハリソン・フォード。老骨に鞭打って頑張っています。この分ならまだまだ行けそうですね。
「スカイ・クロラ」
6/12
(ワーナー試写室)

 ☆☆☆☆★★★ 
 (戦闘機乗りの話にしては、意外と空の描写が淡泊で、その手のファンにとっては物足りないかも?)
 
 押井守監督久々の長編アニメ作品です。
 舞台は別の世界の地球。束の間の平和を維持するために、ショーとしての戦争を必要とし、TVで観戦することでしか平和を実感することのできない大人達の時代。キルドレという思春期のままの姿で戦闘に駆り出される新人類がいた。…ということは劇中では殆ど説明がありません。

 ともかく、そういう奇妙な世界での話。ある時、欧州の前線基地にひとりの飛行機乗りが配属されてくる。彼はキルドレで思春期の姿のまま歳をとらず、戦闘で死ぬまで生き続ける運命を背負った新人類であった。前線基地には彼と同じキルドレの戦闘機乗りが3人いて、基地の司令官も以前は女性エース・パイロットのキルドレの一人だった。だが、何故か彼の前任パイロットについては誰も語ろうとしなかった…。

 作品の舞台はSF的でありますが、ただひたすら主人公の日常を淡々と描写していきます。その日常の会話の中から舞台背景や決して越えられない思春期の若者の焦燥感といったものを探り出すといった趣向の作品です。ですから、爽快なスカイ・アクションや娯楽作を期待すると肩すかしを食らってしまいます。実際クライマックスも非常に淡々と進み、意外にあっけなく終わってしまいます。

 でも、面白くないかというと、これが実に面白いんですね。押井監督独特の語り口が知的好奇心をくすぐり、なかなか味わい深い作品に仕上がっています。こんなアニメ、他では決して拝めないでしょう。ですから、これも日本アニメのひとつの到達点と言って差し支えないのではないでしょうか。 
「ザ・マジックアワー」
6/10
(T109GM)
 ☆☆☆★★★
 (結局、豪華なセットだけは素晴らしい!)
 

 三谷幸喜監督の作品は嫌いじゃないですが、それ程好きだというワケでもありません。傑作というのはおこがましいですが、彼の過去の作品ではやっぱり「ラヂオの時間」が最高作ではないでしょうか。その三谷幸喜監督の最高傑作という謳い文句に釣られて観たわけですが、果たして…?

 どこかレトロな雰囲気の漂う、映画のセットのような港町「守加護」。町を牛耳るボス天塩の愛人マリに手を出して捕まった備後は苦し紛れに伝説の殺し屋「デラ富樫」の知り合いだと嘘を言う。「デラ富樫」を尊敬するボスは、5日以内に連れて来ることを条件に備後を放免するが、さすが伝説の殺し屋だけあって、何処を探しても一向に見つからない。そこで備後は売れない俳優村田大樹に映画を撮ると偽り、デラ富樫に仕立てて、天塩の事務所に連れて行くのだった…。

 マジックアワーとは昼と夜の間の「逢魔が時」のこと。それは現実と虚構=映画の狭間。全ての映画人が憧れる至福の一時。というわけで、虚実入り乱れての大騒動が、過去の様々な作品に対するオマージュやパロデイを込めて繰り広げられます。なんか面白そうでしょ?カメオ出演のゲスト陣も豪華です。あんな人やこんな人がちょい役で現れては消えていきます。これも三谷幸喜監督の人徳の成せる技なのでしょう。でも、それらの豪華なゲストを生かし切っているかというと全くそんなこともなく、ただ浪費しているだけで終わります。

 肝心のクライマックスに至っては、サジを投げたというか、もう滅茶苦茶で(といって、無茶苦茶が悪いわけではないですが…)、結末も有耶無耶にされた感が残り、どうもシナリオ的に釈然としません。練り込みが足りないというか、首尾一貫性がないというか、物足り無さの残る残念な仕上がりと言わざるを得ません。
 最後に笑うのは観客か?いえ、監督でしょう…か?
「ナルニア国物語第2章:カスピアン王子の角笛」
6/10
(T109GM)
☆☆☆☆★★★★
(考えてみると、結構殺伐とした内容のファンタジーですが…)
 
 ナルニア国物語の続きです。カスピアン王子の角笛に導かれ、再びナルニア国へやって来たペベンシー4兄妹。だが城は朽ち果て、そこでは既に1300年の年月が過ぎていた。そして、ナルニアの大地はテルマール人に征服されていた…。

 LOTRのレゴラス並に活躍するスーザン。敵の大将と果敢に戦うピーター。でも、彼らが殺傷する相手は怪物でも妖怪でもなく、紛れもなく人間です。その点がどうしても気になり、子供を主人公にしたファンタジーの限界を感じてしまいます。

 ともあれ、今回の作品はすこぶる出来が良いように思います。VFXも見事で、テルマール軍とナルニア軍の攻防シーンなど非常に手に汗握る仕上がりになっていますし、精霊達の描写も未だかつて無い程の素晴らしさです。加えてオールCG製作によるキャラクターも多数登場し、特にリーピチープなど、実写キャラに負けない程の魅力と存在感を放っています。

 とはいえ、今回最大の売りはなんと言ってもカスピアン王子役のベン・バーンズでしょう。どこから見てもいかにも王子様という彼が、主役の4兄妹を完全に食っています。しかし、彼が本領を発揮するのは次回作になる模様です。
「紀元前1万年:10,000BC」
5/1
(WMKN)
☆☆☆★★★
 時は紀元前1万年。山奥に住むヤガル族の若きハンター、デレーの前にある日青い目をした美少女エバレットが現れる。親もなく部族内で孤立していたふたりは互いに惹かれあうようになっていったが、一方、部族の巫母はエバレットに部族の未来がかかっていると預言するのだった。やがて立派な青年に成長したデレーはマナク狩りの儀式に勝利し、エバレットを妻に迎える。だがその直後、突如村を襲った四本脚の悪魔たちに、エバレットが掠われてしまった…。
 
 ローランド・エメリッヒの作品だから、どうせ荒削りの大雑把な作品だろうと思っていましたが、期待に違わず、やっぱりその通りの作品でした。だいたい英語を喋る鼻筋の通った二枚目顔で、これのどこが起源前1万年の人類なのか?細かい装飾品や巨大な網なんて作る文化があったのか?「アポカリプト」の方がよっぽどそれっぽいですよ。子供から大人まで多くの観客を意識しての作りなんでしょうが、一万年以上前の人から人生哲学を聞かされては、やっぱり興ざめしてしまいます。
 
 しかし、映像は流石に凄いです。建造中の巨大ピラミッドの上を駆けめぐるマンモスの群れと逃げまどう群衆なんて、ホントに凄いスペクタクル・シーンです。サーベルタイガーは今ひとつの出来ですが、恐鳥はホントに怖いです。ともかく、マンモスの群れだけでも大画面のスクリーンで観る価値はありそうです。
 
 にしても、ピラミッドについては、相変わらずの解釈なんですね…?
「スパイダーウィックの謎」
5/1
(WMKN)
☆☆☆☆★★★★
 4人の家族が森の古びた屋敷に越してきた。ジャレッドとサイモンの双子の兄弟と姉のマロリーに母親のヘレンだった。冒険心溢れるジャレッドはひょんなことから屋根裏部屋を見つけ、そこで一冊の封印されたノートを手に入れる。それは大大叔父のアーサー・スパイダーウィックが記した妖精の秘密書で、表紙には「決して読んではいけない」という警告のメモが挟まれていた。だが、読むなと言われれば読みたくなるのが人情。好奇心に負けたジャレッドは、その夜こっそりとノートの封印を解き、中を読んでしまうのだった…。
 
 ともかくフィル・ティペットとILMが作りだした妖精たちがわんさか出て来て、妖怪妖精好きとしては大変楽しめました。造形は原作画家トニー・ティテルリッジのデザインを元に作られているとのことですが、ブライアン・フラウドの影響を強く感じます。お話も狭い範囲に限定されていて大変分かりやすく、上手くまとまっていると思います。その意味で、子供から大人まで楽しめる作品になっていますが、そつの無い作りが逆にファンタジー映画に食傷気味の観客からは敬遠されそうです。
 
 双子の兄弟役をフレディ・ハイモアが好演しているのですが、あまりに自然なので、しばらくの間、もうひとりを演じているソックリさんは誰だろうと思って観ていました。二役の合成にも全く違和感が無く、これにはビックリです。
「ネクスト」
5/1
(WMKN)
☆☆☆★★
 ラスベガスのクラブでマジックショーを披露しているクリス(芸名フランク・キャデラック)には、実は2分先が見えるという超能力があった。ある日、その能力に目を付けたFBI捜査官が彼の前に現れて、ある重大事件の捜査への協力を要請する。だが、彼の能力に目を付けたのはFBIだけではなかった…。
 
 この作品のキモは、2分先が見えるという限定されたルールにあります。2分先が見えるからこそ危機を回避出来るし、敵を出し抜けるというのが面白いのです。しかし、2分先しか見れないということは、FBI捜査官が依頼する事件の捜査には到底応えられないように思えます。ここがまず納得できません。
 
 そして物語が進むと、何故か急に2分のリミッターが外れ、あんなことやこんなことまで出来るようになってしまうのです。こうなると観客は完全に蚊帳の外に置かれ、ただ呆然と事態の推移を見守るだけになってしまいます。が、ある意味斬新なラストに、なんと結局納得させられてしまいましたよ。でも、これで良いのかなあ?ニコラス・ケイジやジュリアン・ムーアが出演する映画と聞いて、トンデモ作品の匂いがしていたんですけどね…。

 「フランク・キャデラック」の名前の由来とか、製作にも関わっているニコラス・ケイジの趣味が反映されているようで微笑ましかったです。にしても、劇中ちょい役で出演しているアリス・キムって、ニコラス・ケイジの新しい奥さんでしょうか?
「クローバーフィールド」
4/5
(WMKN)

☆☆☆☆☆★★★★
(大画面で体験することに意義があります)
 この映画は、ロブ・ホーキンス所有のビデオカメラに収められた映像をそのまま上映するという形を採っています。ですから、多少の手ぶれや映像の乱れに関してはご容赦願います。映像の内容は、マンハッタン島に上陸したアレに関するもので、事件に巻き込まれた一市民の目を通して、逃げまどう市民の姿や、アレに果敢に立ち向かう人々の姿の他、アレの実体に迫る貴重な映像も含まれています。
 
 なにぶんパンフレットも封印されているので、内容については殆ど書くことができませんが、ともかく、これ程エキサイティングで、臨場感溢れる作品には滅多にお目に掛かれないでしょう。
 
 ビデオカメラに収められた映像という形は採っていますが、シナリオも構成も演出も映像も一級品です。特に怪獣ファンの方は絶対に見逃してはいけない作品だと思います。まずはともあれ、映画館へGO!
「魔法にかけられて」
3/20
(T109GM)
 ☆☆☆☆★★★★
(この結末は果たしてハッピーエンドなのだろうか?)
 魔法の王国アンダレーシアの森に住むジゼルは、いつか運命の王子様が現れて、「真実の愛の口づけ」で結ばれることを夢見ていました。そんな彼女の前に現れたのが、白馬に乗ったエドワード王子です。ふたりの目と目が合うと、当然のように一瞬で恋に落ち、早速翌朝には結婚することにと、話はとんとん拍子に進みます。ところが、ふたりの結婚で王位を奪われるのを恐れたナリッサ女王の策略で、ジゼルは魔法の王国から追放されてしまいました。そして、追放されたジゼルの行き着いた先は、なんと現代のニューヨークだったのです。
 
 言わば、アニメの世界から現実世界にやって来たお姫様の奮戦記という趣向のこの映画。これまでにもアニメと実写を融合した作品は数々ありましたが、この作品では、魔法の王国アンダレーシアは2Dアニメ、現代のニューヨークは実写という具合に、完全に住み分けされています。むしろ、実写部分では3DCGが幅を効かせ、今のディズニーの実情を反映させている感もあって非常に興味深い作品でした。
 
 ともかく、冒頭の伝統的2Dセルアニメが素晴らしく、ディズニーの面目躍如と言える出来に感激すると共に、実写部分のミュージカルにもさすがディズニーと感心させられことしきりです。でも、手放しで喜んでばかりはいられません。過去のディズニー作品の自虐的とも思えるパロディのオンパレードには腹を抱えて笑うしかないのですが、「この先ディズニーは何処に向かおうとしているのか?」と、一抹の不安を覚えてしまいます。過去の作品にオマージュを捧げているようで、食いつぶしているようにも見えなくもないということです。
 
 それと、お姫様の視点で観る分には良いのですが、他の視点で観ると何だか解せないことが多いのです。何しろ女王の行動が理解できません。ジゼルを追放した後に何故井戸を封鎖しなかったのか?とか、何故飛べないドラゴンに変身したのか?とか、何故ロバートを掴んだのかとか…。それに、ナサニエルが何故心変わりしたのかが、今ひとつハッキリしません。エドワード王子に至っては、天然なのか、心底非常に良い人なのか分かりませんが、ともかく(ネタバレになるので言えませんが)行動が理解不能なのです。これって、どうなのかなと思うのですが、観ている分には楽しいので、まあ良いか…。
「ジャンパー」
3/1
(WMKN)
☆☆☆★★★
(いかにも続編を意識した作りですが、果たして続編は作られるのでしょうか?)
 テレポーテーション(瞬間移動)能力を持つ若者の物語を、スピーディーなアクションでテンポ良く見せるSFアクション映画です。主人公の若者は子供の頃、ある事故がきっかけでテレポーテーション能力に目覚めます。このあたりが面白く、どうやらテレポーテーションする時、自分の近くの物も同時に運ぶようだとか、どういう場合にテレポーテーション出来るのか?とか、目的の場所を決める方法は?とか、少しずつ分かっていく過程が手際よく説明されていきます。それにしても、なんでいつも図書室に行くのか?きっと、書棚にヒントがあるのでしょうね。
 
 彼のテレポーテーション能力には限界がないようで、世界中どこでも好きな場所に瞬時に移動できるから凄いですね。スフィンクスの頭の上でティータイムを楽しむなんて、夢のようなことも出来てしまうんですから…。東京の銀座や渋谷に出没するのは、やっぱりマシ・オカの影響でしょうか?
 
 しかし、この「ジャンパー」は欲望のままにどんどん反社会的行為を重ねて、少しも悪びれないところから、次第に疑念が湧いてきます。これでは、非常にタチの悪い犯罪者と同じじゃないか。案の定、ジャンパーを狩る組織が現れ、今度は追われる立場に。その組織は悪として描かれているけれど、果たしてどちらが悪なのでしょうか?う〜ん、よく分かりません。
 
 ともかく、ジャンパー狩り組織が登場してからは、話が俄然こじれ始め、謎が謎を呼ぶ展開になだれ込みます。で、一応の収拾はつくのですが、多くの謎が未回収のまま残されてしまいます。これって、最初からシリーズ化を念頭に作られたんでしょうかね。なんだか、TVドラマシリーズのプロモーションような作りなんですね。テレポーテーションは爽快なんですが、どうもスッキリしませんよ、まったく。
「アメリカン・ギャングスター」
2/1
(T109GM)
☆☆☆☆★★★
(ふたりの名優のガチンコ勝負が見ものです)
  ニューヨークのハーレムに君臨したギャングのボスがいました。「ハーレムのロビンフッド」と呼ばれ、人々から愛されたそのボスに15年付き添い、世渡りの全てを学んだのがフランク・ルーカスでした。彼はボスの亡き後、自らがハーレムのボスになろうと志します。そして巷にはびこる粗悪品の麻薬に目を付け、それに対抗すべく、東南アジアから純度100%の麻薬を直接買い付けることにしました。そして、その純度の高い麻薬を、市場に安く売ことにしたのです。当然彼の麻薬は売れに売れ、こうして彼は瞬く間に暗黒街のボスに成り上がって行ったのでした。
 
 一方生真面目な警察官のリッチー・ロバーツは、ある事件の際手に入れた大金の着服を拒み、署内のみんなから煙たがれていました。
同僚達がワイロに手を出す中、彼だけはガンとして一切受け付けなかったのです。そして、そんな彼を見込んだ検察官から、麻薬捜査班の責任者にならないかという話が来たのでした。

 このフランク・ルーカスを演じるのがデンゼル・ワシントン。片やリッチー・ロバーツを演じるラッセル・クロウ。この両者が火花を散らす迫真の演技が見所の「アメリカン・ギャングスター」は、リドリー・スコット監督初のギャング映画です。(「ブラック・レイン」はヤクザ映画です)
 
 正義と悪との対決という構図になりがちのところを、二人の名優を配して、互いの信念と信念とのぶつかり合いという、心の葛藤として捉えた脚本が見事です。いつもながら、重厚な画面作りと見事なカット割りはさすがです。個人的には、特に音楽の使い方にしびれました。
 
 実話を元にしているとは言え、麻薬捜査官の多くが賄賂を受け取っていたなんてことをバラしたもんだから、3人の元捜査官たちに訴えられているそうです。
「テラビシアにかける橋」
2/1
(T109GM)
☆☆☆☆☆★★★★
(大切にしたい作品です。)
 絵を描くことが好きな少年ジェスは、ひとり空想の世界に浸っていました。姉妹達に挟まれ言い争いの絶えない家庭でも、いじめの絶えない学校でも、自分の居場所が無かったからです。そんなある日、隣の家にレスリーという少女が引っ越してきました。レスリーの人並み外れた想像力と豊かな文章力に惹かれるジェスですが、レスリーもまたジェスの描く想像力溢れる絵の世界に惹かれました。こうして互いの才能を認め合ったふたりは意気投合し、家の近くの森にふたりだけの夢の王国「テラビシア」を創り始めるのです…。
 
 予告編を観て、「ナルニア国物語」のような正統派ファンタジーを期待してはいけません。この作品はファンタジーというより、その源泉となる「想像力」について描かれた作品なのです。そして、それ以上に、ひとりの少年の抱える現実と憧れとの葛藤を瑞々しく描いた作品なのです。
 
 物語は後半から大きな転機を迎え、俄然重々しい雰囲気に包まれて行きますが、そこがこの作品の一番訴えたいところなのでしょう。単なるファンタジー映画と思ったら大間違いです。辛い現実を乗り越えた想像の世界だからこそ感動があるのです。テラビシアにかける「橋」の意味を噛みしめると、自然と涙がこぼれてしまいますね。

 印象的なシーンも多いです。足の速さが自慢のジェスを追い抜くレスリーの清々しいシーンとか、ロープにぶら下がりながら空を見上げるふたりの表情とか…、とにかく映像が奇麗で良いですね。テラビシアに登場する想像上の生き物たちも個性的で、一つ一つが生き生きとしていて感心しました。特に最後に登場する奴とか、感動物です。それと…巨人の顔を見て、思わずニンマリしてしまいますよ。
「ナショナル・トレジャー2」
1/1
(WMKN)

☆☆★★
(日本人には今ひとつピンと来ない題材です…)
 前作同様、米国の歴史上の人物や名所旧跡を絡めて、まさかという場所に膨大なお宝が眠っていたというお話です。なにしろ米国の歴史のことですから、日本人にはさっぱりです。まあこれが日本なら、差し詰め、聖徳太子が隠した巨額の財宝を、十七条の憲法に隠されたキーワードから大文字焼きの暗号を解いて見つけ出すみたいなところでしょうか。ですから、謎解きに関しては全くついて行けません。主人公達の謎解きにまかせて、ただ名所旧跡巡りを楽しむだけということになります。
 
 …にしても、この主人公達はなんて目立たないキャラばかりなのだろう。脇を固める名優達の方がよっぽど輝いていて、どちらかというと、主人公の両親のサイドストーリーの方が観たい気がします。
「アイ・アム・レジェンド」
1/1
(WMKN)

☆☆☆★★★
(この手の映画では、最も出来の良い作品かも知れません。でも、2が出来るという噂が…)
 リチャード・マシスン原作「I Am Legend=吸血鬼=地球最後の男」の3度目の映画化です。今回の話は2度目に映画化された「地球最後の男オメガマン」(1971)に近い内容になっています。
 
 謎のウィルスによって人類が絶滅した後、ニューヨークにたったひとり残された男は、闇の者たちの襲撃に怯えながらも、絶望の中に一筋の光明を求め、ある研究に勤しんでいた…。
 
 ともかく、誰もいないニューヨークのVFXが凄いです。ニューヨーク摩天楼の俯瞰シーンがあるのですが、よく見ると建物ごとにビニールが被せられています。ウィルスに汚染された建物ごとにビニールで隔離していた跡なんですね。そういった細かい配慮が随所に観られます。中には「バットマン対スーパーマン」なんて看板もあります。恐らく殆どCGなのでしょうが、これ程精巧なデータがあるならば、これからもニューヨークを舞台にしたどんな映画も作れるのではないかと、希望が膨らんでしまいます。
 
 映像の素晴らしさに引き替え、お話の方は今ひとつ盛り上がりに欠ける展開です。過去と現在をフラッシュバックさせて説明する方法はなかなか良いのですが、肝心の最後の決断の所でもう一押しが無いので、主人公の行動が今ひとつ分かりにくくなってしまっています。本来なら、もっと感動的なラストになるはずだったのに…と、残念に思います。
 
 それにしても、犬も感染するのに、鹿やライオンが感染しなかったのは何故なんだろう…?
2007年
「AVP2(エイリアンズVS.プレデター)」
12/28
(WMKN)
 ☆☆☆★★
(もっと他の監督に撮らせる方法もあったろうに…、良い素材がもったいない!)
 「AVP(エイリアンVS.プレデター)」の続編です。エイリアンは他種生命体の体内に寄生し、その遺伝子を継承してより強力なハイブリットに進化し続ける絶対生物なワケで、我々がよく知るエイリアンの姿というのは、実は人間の遺伝子を継承したハイブリッドなのです。ですからプレデターの体内に寄生すると「プレデリアン」という新種が誕生します。

 前回の戦いで死んだプレデターの体内にはエイリアンの幼虫(チェストバスター)が寄生していて、そこから生まれたプレデリアンがプレデターの船内で大暴れし、船を地球に墜落させてしまいます。船内には捕獲されたエイリアンの幼生体フェイスハガーがウジャウジャいたから、さあ大変!逃げ出したフェイスハガー達は宿主を求めて森の中へ。何も知らぬ人間たちは次々にプレデリアンとフェイスハガーの餌食になって行きます。コロラド州の田舎町なんか、あっという間にエイリアンだらけになって、エイリアンの知識もない一般市民は、ただ逃げまどうばかりです。さあ、どうなる?普通なら俄然盛り上がるサバイバル・ストーリーなんですが、そうは問屋が卸さないのが「AVP2」。
 
 ここに登場するもうひとりの主役が「ザ・クリーナー」というエイリアン駆除専門のプレデター。まあ、「ニキータ」に出てきたジャン・レノ演じる「洗濯屋」みたいなものですね。何か問題が起きたら、証拠も残さず何もかも消して回る、その道のプロです。しかも凄腕ですから、たったひとりでエイリアン達に立ち向かいます。それ故、タイトルのエイリアンは複数なのに、プレデターは単数なんですね。ともかく人間なんてそっちのけで、ひたすらエイリアン狩りに邁進します。もう、人間様の出る幕なんてあるのか?
 
 …というわけで映画の感想ですが、正直今回の登場人物はどれもこれも影が薄くて、誰が主役だかよく分かりません。おかげで感情移入が出来なくて、ちっともハラハラ出来ません。これはシナリオが悪いのか、演出が悪いのか?それに加えて、プレデリアンとザ・クリーナーの顔まで似ていて、暗がりで戦う両者の区別が付きにくいときています。せっかく面白い題材なのに、どうも未消化で、なんとも欲求不満が残る内容でした。女子供見境無く殺しまくる凶暴さだけは良かったんだけどなあ…。シナリオや演出がいかにも力不足で、陳腐なセリフやカットを何とかして欲しいです。「スリザー」を見習って欲しいなあ。
 
 ちなみに、このシリーズも3部作構成らしく、次回で最初の「エイリアン」に繋がるようです。その伏線が劇中に出てきますが、この出来だと、果たして次回作は作られるのかが心配になってきました。
「ベオウルフ(3D)」
12/22
(WMKN)
★★★★☆☆☆☆
(ただし、3D上映に限ります。雨あられと降り注ぐ弓矢やドラゴンの炎をよけ、観客自身がヒーローとなる。)
 「ベオウルフ(3D)」は凄いですよ。なんてったって2時間まるごと3Dですからね。字幕スーパーが最後まで飛び出してましたよ。正直あまり好みでないパーフォーマンス・キャプチャーのCG映像も、この3Dとはすこぶる相性が良くて、ごく自然に3D映像の世界を満喫することが出来ます。これは新鮮な驚きでした。

 映像面での驚きもさることながら、脚色もなかなか素晴らしいですよ。原作の叙事詩はいくつもの話を継ぎ接ぎしたかのように辻褄の合わないところも多く、実にまとまりのない話でした。ところが今回のシナリオでは、それらのエピソードを明快な一本筋の通った話に組み立て、難解な古典を血湧き肉躍る冒険活劇として見事にエンターテイメントさせています。いや、こんな面白く深みのある「ベオウルフ」は初めて観ました。この脚色をしたのがニール・ゲイマンとロジャー・エイバリーのふたりですが、このふたりの功績もアカデミー賞ものでしょう。ちなみにニール・ゲイマンといえばアメコミ「サンドマン」や「スターダスト」の原作者です。その手慣れたお話作りと構成力からして、これからも映画界で活躍し続けることでしょう。
 

Slither
(輸入版DVD鑑賞)
☆☆☆★★★
(久しぶりの80年代B級ホラー・テイスト。狙いは悪くないけど、惜しい〜の。)
  なにしろ「Rotten Tomatoes」が選ぶ2006年度B級ホラー部門でダントツの第一位に輝いた作品です。映画評を見ても好意的な意見が多かったので、いつ日本公開されるのかずっと待っていたのですが、未だに噂にも上りません。アメリカでは既にDVDが8ドルなんて値段で安売りされていますし、このままでは日本公開もないでしょうから、辛抱たまらず輸入DVDに手を出してしまいました。
 
 内容については予告編でだいたい察しがついていましたが、予想に違わず立派なB級SFモンスターホラーで、もうヌルヌルのベトベトでグチャグチャでした。お話も単純明快。アメリカの片田舎の町が、宇宙からやって来た異形のエイリアンに侵略されるというもの。例えて言うならば、「遊星からの物体X」に「パラサイト」と「ゾンビ」と「スピーシーズ」を足して「フロム・ビヨンド」で味付けしたような、B級SFホラーのてんこ盛りです。一応ホラーなんですが、ツインピークスの住人みたいな登場人物や、どこか間が抜けたエイリアン(通称「イカ男」)のおかげで、思わず笑っちゃいます。
 
 タイトルにあるヌルヌル動く連中も小気味良く、ブラック・ユーモアに溢れた演出は久々の傑作を期待させます。でも残念ながら、後半の詰めの緩さがいかにもB級らしく、日本で劇場公開されないのも頷けてしまいます。というわけで、惜しいけどカルトになりきれない、ズルズル感一杯のB級作品でした。それにしても、エイリアンの容姿を表現するのにポケモンを引き合いに出すとは、ちょっと嬉しい驚きです。ちなみに、主人公の顔に何処か見覚えがあると思ったら、「セレニティー」の人だったのね…。
「アーサーとミニモイの不思議な国」
(輸入版DVD鑑賞)
☆☆☆☆★★★
(日本語吹き替え版なんかで観たら、★2つ以上損しますよ!)
 リュック・ベッソンはホント好き放題のことをやってくれて、実に羨ましいです。世間的にはアクション映画ばかりが目につきますが、元々ロマンチストだったベッソンにはファンタジーが似合っているような気がします。別れた奥さんへの未練もたっぷり見せてくれて、なんか微笑ましいです(…というか、ちょっと気持ち悪いかも?)。劇中色々な仕掛けがあるので、日本公開の時は字幕版でないと料金の半分くらいは損しそうな気がします。CGのキャラクターがいかにも日本受けしそうにないので興行的に心配ですが、私は大変気に入りました。三部作全部観られると良いなあ。

「トランスフォーマー」
7/25
(UIP試写室

☆☆☆☆☆★★★★
(戦闘シーンが、まるでブラックホーク・ダウンのように凄いです)

 「トランスフォーマー」は、1980年に日本のタカラから発売された変身型玩具「ダイアクロン」の権利を米国のハズブロー社が買って、米国で再開発して売り出した変身型ロボットシリーズです。80年代にはTVアニメシリーズにもなり、マーヴェル・コミックスからはコミック・シリーズも発刊されました。85年には日本でも玩具が発売されるようになり、TVアニメも放映されました。この際、オートボット達の名前も日本向けに変更され、「オプティマス・プライム」は「コンボイ」、「バンブルビー」は「バンブル」という具合にそれぞれ変名しました。その後劇場版アニメも製作され、レオナード・ニモイやエリック・アイドル、ジャド・ネルソン、オーソン・ウェルズなんていう超豪華メンバーが声優を務めました。
 
 この映画版は、独立記念日の前日(正確には前々日の夜中から)に公開された途端、全米歴代火曜日興行収入第一位なんていう何だかマイナーな記録を樹立し、「スパイダーマン」「パイレーツ・オブ・カリビアン」「シュレック」「ハリーポッター」といったシリーズ物の大作がひしめく夏の激戦期にあって、驚異的な興行収入をあげている作品です。公開3週を過ぎても興行ベスト10の上位にあって、いまだに根強い人気を誇っていますから、かなりのリピーターを生んでいるのでしょう。興行収入3億ドルも目前ですから。このまま行くと「パイレーツ・オブ・カリビアン ワールドエンド」も抜くかも知れません。
 
 なにしろピーターパン・シンドロームのスピルバーグと派手なアクションが売りのマイケル・ベイが組んで、日本製玩具のアニメを元にした映画を撮るというのですから、製作が発表された当初からどんな作品になるのだろうと興味津々でした。米国国内の映画評を見ても、熱狂的な大絶賛と辛辣な酷評の両極端に分かれていて、益々その内容と出来が気になっていました。さて、その実体は如何に?
 
 なるほど、酷評する人の気持ちもよく分かります。確かにシナリオは未消化なところもありますし、オートボット達のデザインも複雑でキャラの見分けが付きにくく、何かと分かりにくいところもあります。それに、SF的な設定と突拍子もない展開に全くついて行けない人も少なからずいることでしょう。特にメカに少しも興味や愛着のない人々は、金属生命体達に嫌悪感さえ抱くかも知れません。夢や浪漫に縁遠い人は、この手の映画を観てもただの絵空事とハナから馬鹿にすることでしょう。正直、これはそういった人達のための映画ではありません。
 
 でも十代の男の子達、その想い出を共有するすべての人々にとって、これはまさに夢の映画です。ごく普通のサエない高校生が、ふとした切っ掛けから憧れの女の子と共に、人類の存亡を賭けたエイリアンたちの戦いに巻き込まれていくという、胸熱く心躍る冒険物語なのです。ともかくたたみ掛けるように続く派手なアクションと驚愕の映像を思う存分楽しみ、正義を貫くオートボット達の献身と自己犠牲の精神、それに格好いいキメ台詞に涙しましょう。
 
 映画の出来としてみれば、確かにシナリオで少々納得しがたい点もあります。恐らく上映時間を切りつめるために、シーンを大幅カットした為でしょう。前半の綿密なシナリオ描写に比べ、後半はちょっと乱暴な展開になり、所々で説明不足が目立ちます。
 
 しかし、そんな欠点も些細な問題と思えるほど、この映画が成し得た映像革命は偉大です。CG技術が生まれ、これまで多くの作品にその技術が活用されてきましたが、「質感」とか「重量感」といった存在感において、実写との間にどうしても拭えない違和感がありました。それは数値化された物理法則では到底越えられない壁だったのです。ところが、そんな壁をこの映画は、物理法則の呪縛から逃れることで簡単に越えてしまったのです。「実際には有り得ないデフォルメされた動きの方が実はホントらしく見える」という大胆なアニメ手法と「CGIで出来ないことは極力実写でやる」という発想の転換で、CGIと実写の垣根を見事に取り去っています。これこそまさに、映画のトランスフォームと言えるのではないでしょうか。
 
 さあ、興味のある方は是非とも劇場に足を運んで、新しい映画の夜明けを目撃しましょう。キャラの見分けがつきにくい程画面の情報量が濃密ですので、吹き替え版でご覧になることをお奨めします。因みにオートボット達の吹き替えはアニメと同じ声優陣があたっています。
 

「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」
7/14
(T109GM)
☆☆☆★★★

「ダイハード4」
6/23
(T109GM)
☆☆☆☆★★★


「300」
6/9
(T109GM)
 ☆☆☆☆★★★★
(この映画に触発されて、ビリーズ・ブートキャンプを始めよう!)
 フランク・ミラーの同名コミックを「シン・シティ」同様のコンセプトでコミック映像化した作品です。コミックの映画化と言うよりも、映画のコミック化と言うべき新しい映像表現です。全編抑えた色調で、宗教画のような神々しさを放ちながら、暴力と殺戮の限りが展開されます。もう、手足や首が次々と吹き飛び血飛沫が舞いますが、この新しい映像表現のおかげで、少しも残虐さを感じさせません。むしろ、魂を高陽させる爽快さと美しさがあります。

 映像と共に注目されるのが、変速的なスローモーションによる動きのデフォルメです。アクションの動きが急にスローになったり、いきなりすっ飛ばしたりして、見せたいところはじっくりと、早いところはフラッシュで極端に素早く跳ばします。もちろん「マトリックス」に見られるジャパニメーションの影響とは思いますが、スローの部分がタメになって、後の動きが更に早く強調され、実に爽快です。剣の殺陣もスローで丁寧に見せるので、非常に分かりやすく、実に格好いい。この技法、これからも様々な映画で多用されることでしょうね。
 
 さて、話の元となった「テルモピュライの戦い」は、紀元前480年ギリシャに押し寄せて来た200万のペルシャ軍(実際には21万という説が有力)に対し、7000人のギリシャ連合軍(記録では5000人余りと言われる)と300人のスパルタ精鋭部隊がテルモピュライ街道で迎え撃った、歴史上名高い戦いです。数において圧倒的に勝るペルシャ軍でしたが、スパルタの誇る強力な戦闘集団の抵抗にあい、思わぬ苦戦を強いられます。結局戦闘は3日間に及び、ペルシャ軍は2万人もの兵士を失いました。そして、この戦いが当時バラバラだったギリシャ諸国の結束を喚起し、後の大反撃に結びついたと言われます。その意味でスパルタの300人は、異教徒達の侵略に対して、自由と民主主義を守るために命を賭けて戦った殉教者とも見られるわけです。
 
 アメリカでこの映画が大ヒットした背景には、イラク侵攻など、中東におけるアメリカ軍の活動をこの映画にダブらせて、「自由と民主主義のための戦い」という大義名分とともに、様々なわだかまりを払拭したということが挙げられるでしょう。ギリシャ彫刻のような完全美形のスパルタ兵に対して、殆ど化け物のようなペルシャ軍という、正義と悪を明確にしたデフォルメにより、敵をいくら殺しても罪悪感など微塵も感じられません。
 
 あるいはアメリカのプロパガンダと見られないわけではないこの作品ですが、純粋に映像の美しさとアクションを楽しむ事が出来れば、これ程胸踊り血が騒ぐ娯楽作もありません。所詮は大昔の歴史ファンタジーなのですから、細かいことは抜きにして、この新しい映像世界に浸り、大いに楽しむことをお奨めします。
 

 【300に関する個人的裏話】
 
 1)製作にも名を連ねる原作者のフランク・ミラーは、これまで自分の作品に必ずカメオ出演していましたが、今作では確認できませんでした。(多分、会議場にいるか、ペルシャ兵のひとりになっていると思われますが…、DVDになったら確認します)
 
 2)形状と設定がかなり違いますが、神託を行った神殿はデルポイ神殿だと思われます。そう、ポポロに登場するあの仙人の元ネタですね。
 
 3)「シン・シティ」「300」と映画化作品がヒットを続ける中、当然フランク・ミラーの他の作品も映画化されることが予想されますが、そこで期待されるのがジョフ・ダロウ(ジェフリー・ダロウ)君との共作「ハードボイルド」と「ビッグガイ」です。さぞやダロウ君も「300」の大ヒットを喜んでいると思ったら、ダロウ君は「300」が嫌いだとのこと。曰く「人種差別とブッシュの宣伝映画だ」。うん、さすがダロウ君は真面目だなあ。

「リーピング」
6/1
(WMKN)
☆☆★★
(イナゴ少女に☆ひとつオマケ。ヒラリー・スワンプなんちゃって…)
 もと聖職者で、今は「奇蹟」の真相を科学的に暴くことに心血を注いでいるキャサリンの所に、ヘイブンという町からひとりの教師がやって来ました。町で起こっている怪奇現象を調査して欲しいというのです。しかも町の人々は皆、その原因はひとりの少女にあると思っているらしいのです…。
 
 旧約聖書の「十の災い」を題材にした久々のオカルト・ホラー映画です。主役のキャサリンを演じるのが二度のアカデミー賞に輝くヒラリー・スワンクですから、ただのB級ホラーとは一線を画す作品に違いありません。確かに人物描写や意外などんでん返しなど、脚本は結構手が込んでいます。
 
 でもこれってどこかで観たようなネタだなあ。なんか「呪い村」だったり、「エクソシスト」だったり、「オーメン」だったり、「炎の少女チャーリー」だったり、「ローズマリーの赤ちゃん」だったり…で、少しも新鮮味がありません。
 
 もう世紀末は過ぎたことだし、この21世紀にオカルト・ホラーも無いでしょうが(2012年の黙示録というのがあるそうですけど…)、敢えてこのジャンルに挑戦したスタッフの熱意というか信心深さには敬意を表したくなります。だけど、散々使い古されたネタを、それ程の捻りもなく見せられるのは、少々辛い物があります。それも、信心のまったくない部外者ともなれば、全くの蚊帳の外。これで恐がれと言われても、そりゃ無理じゃないかと思うわけです。
 
 とはいえ、さすがにヒラリー・スワンクの演技は鬼気迫るものがあって、B級で片づけるには惜し過ぎます。VFXも素晴らしく、特にイナゴのシーンなんか凄いです。真っ赤に染まった川というか湿地帯も規模が大きく、思わず環境汚染を心配したくなるほどです。それに、よく見るとイナゴ少女が凄く可愛いじゃないか!でも、その魅力を引き出す詰めが甘いなあ。う〜ん、納得できないけど、斬り捨てるワケにはいかない。そんなもどかしさの残る作品でした。

「シューター 極大射程」
6/1
(WMKN)
☆☆☆★★★
(あ〜っ、もったいない、もったいない!)
 原作は、宝島社が選ぶその年の海外ミステリーbPに輝いた非常に面白い作品です。たしか文庫本の帯には、キアヌ・リーブスで映画化決定!なんて書いてありました。原作ではベトナム戦争を戦った初老(中年か?)の元海兵隊員で、イメージはクリント・イーストウッドなんですが、映画ではそのあたりの設定が現代にゴソッと変えられて、よりスピーディーな展開になっています。主役のマーク・ウォールバーグの風貌もマット・デイモン似で、ジェイソン・ボーンをちょっとマッチョにしたイメージです。
 
 元海兵隊特殊部隊の射撃の名手ボブ・リー・スワガーは、今は山奥でひっそりと愛犬のサムと隠遁生活をしていました。そこにアイザック・ジョンソン大佐が部下を引き連れてやって来ます。そして、ボブの狙撃の腕を見込んで、大統領暗殺計画を阻止するために協力して欲しいと依頼します。半径800メートルの警備網の外から大統領を狙撃するなら、一体どこから狙うか推測して欲しいというのです。ボブは、持ち前の愛国心と義務感からこの任務を受けるのですが、そこには恐ろしい罠と陰謀が隠されていたのでした…。
  
 さて、主人公は伝説のスナイパーと言われるだけあって、その神懸かり的な射撃の腕には惚れ惚れしてしまいます。標的との距離が遠くなればなるほど弾丸の軌道には多くの要素が影響しますが、その一番大きな要素はもちろん天候や風です。しかし極大射程ともなると、空気中の塵や地球の自転までも影響し、着弾するまでに6秒もかかるのです。映画の中でもスコープから覗いた画が映し出されますが、撃つタイミングも、狙う位置も、標的から大分ずれているところがリアルでゾクゾクします。
 
 こういう事細かな描写が素晴らしいので、スナイパーを扱った作品としてはまさに一級の出来と言っても良いでしょう。しかし話が進むに連れて、次第に雲行きが怪しくなっていきます。派手さを求めたのでしょうか、何故か爆破シーンばかりが目立つようになり、狙撃シーンの影が薄くなっていくのです。これはいかにももったいない。この映画最大の魅力を自ら放棄するなんて、製作者は一体どういう神経をしているのでしょうか?特に最後のクライマックスなんか、殆ど至近距離から撃ったりして、折角のタイトルが泣きます。どうせ見せるなら、派手な狙撃シーンで閉めてもらいたかったと思います。う〜ん、もったいない!
 
 劇中、銃に撃たれた時の応急処置とか、日用品での手術とか、爆弾の作り方とか、結構実用的なサバイバル術が紹介されていて、これも興味深かったです。それにしても、悪代官(悪徳政治家)と悪徳商人が笑いながら集まっているところに仕置き人がやって来るという、まるでTV時代劇のようなシーンには、思わず失笑してしまいました。
 「パイレーツ・オブ・カリビアン〜ワールド・エンド」
5/25
(T109GM)
 ☆☆☆★★★
(キース・リチャーズを出すのは如何なものか?むしろリンゴ・スターか、関根勤を出して欲しかったなあ…)
 ジョニー・デップ、オーランド・ブルーム、キーラ・ナイトレイの3人が主役を張る人気シリーズの完結編です。
 
 前回の話でクラーケンに食われたジャック・スパロウを救い出すために「世界の果て」に向かうウィル・ターナーとエリザベス・スワン達。見事ジャック・スパロウを救い出し、伝説の9人の海賊たちを結束させて、海賊撲滅を謀る東インド会社の野望を打ち砕くことができるでしょうか?
 
 まあ、大まかに言うとそんな流れのはずなんですが、この「パイレーツ〜」シリーズは、「じつはこうなんだ…」と後付で新設定をセリフだけで披露するというルール無視の(まさに海賊的な)シナリオ作りが特徴ですから、次に何が起こるかなんて全く予測がつきません。冒頭いきなり女神カリプソなんて新設定を出されたり、仰々しく登場した新キャラがあっけなく消えたりして、観客は翻弄されるばかりです。この有無を言わさず次々と驚かす手法って、なんかディズニーランドのアトラクションに似ています。
 
 そんなわけですから、この作品にあれこれ細かいこと言っても意味がないような気もします。なにしろ、映画というよりアトラクションですからね。ともかく、次々に飛び出すあの手この手のビックリ映像を観て、ただ面白がれば宜しいのでしょう。ですから、曰くありげな伏線の数々が未回収だったり、登場人物の性格がいきなり変わったり、敵が不可解な行動をしたり、何のために出てきたのか分からない物が色々あったり、死んだり生き返ったりのルールがマチマチだったりしても、いちいち目くじらを立ててはいけません。
 
 あれやこれやで内容はゴチャゴチャしていますが、最後はちゃんと巧い具合に締めくくっているので、シリーズ物としてはまとまっている印象を受けました。本来この物語はウィル・ターナーとエリザベス・スワンが中心ですから、ジャック・スパロウの影が薄くなるのは仕方ありません。成る程、「プライドと偏見」で閉めたのね…、と私は勝手に納得してしまいました。 

「スパイダーマン3」
5/1
(WMKN)
☆☆☆☆★★★
(続きを見たいので製作費を回収して欲しいです)
 250億円という巨額の製作費がどこにかかったのかは知りませんが、ともかくCGは凄まじいです。特に、新しく登場するサンドマンとヴェノムの映像はまさに画期的です。でも、アクションが目まぐるしい上に、カット割りも激しく、アップも多くて、暗い背景に黒い衣装が重なるのは、かなり目に負担を強います。パソコンのモニターでトレーラーを観た時は何でもなかったシーンも、大スクリーンではとても見づらく感じました。なにしろキャラの動きが半端じゃないですから、目で追うだけでも精一杯ですよ。劇場では、スクリーン全体を把握しやすい最後部でゆったり鑑賞することをお奨めします。
 
 思えば、9.11の影響でツインタワーに蜘蛛の巣を張るシーンがカットされ、当初からニューヨークの人々と因縁浅からぬ「スパイダーマン」シリーズですが、このシリーズ完結編(…じゃなくなったみたいだけど)では、イラク派兵を終焉させるかのように、復讐心を捨て相手を許そうと説きます。ピーター、ハリー、メリーの3人も、それぞれ心に葛藤を抱えながらも、少しずつ成長して行きます。ですから、「スパイダーマン」らしからぬ、ちょっとアンニュイ漂うしっとりしたエンディングも、シリーズの締めくくりとしては、なかなか味わい演出かも知れません。でも、やっぱり最後はスカッと終わって欲しかったなあ。どうもスッキリしませんよ、これじゃあ。
 
 とはいえ、最後の戦いには胸が熱くなりました。やっぱり、市民の歓声に迎えられてヒーローが登場するシーンはいつ見ても感動しますね。それに加えて、彼の登場には分かっていても泣けました。ヒーローものはこうでなくっちゃ!最後の戦いは、もう30分続けて欲しかったなあ。それと、エンディングには是非とも例のレストランで、例のフランス人に登場して欲しかった!
 
 ちなみに劇中、原作者のスタン・リーが登場して、ピーターになかなか良い助言を与えていますよ。
 

「ゲゲゲの鬼太郎」
5/1
(WMKN)
☆☆☆★★
(猫ダンスに☆ひとつオマケ!)
 元々漫画の映画化にはあまり期待はしていないのですが、前評判がなかなか良さげだったので、気になっていた作品です。今年は「どろろ」も「蟲師」も公開されたし、いよいよ妖怪映画の本命登場だなんて浮かれていたら、うかつにもこれが子供向け映画であることを忘れていました。そうだ、東映まんが祭りなんだ。子供がウジャウジャ観に来ているんだ。子供の泣き声と叫き声と、大運動会でドタバタしているんだ。この手の映画を観るなら、大人のレイトショーに限るということに気が付いたのも後の祭り。場内騒然とするわ、子供が椅子から転げ落ちるわ、目の前を子供を抱えたお母さんが右往左往するわで、全然画面に集中できませんでしたよ。
 
 さてお話の方ですが、お子様向けに何かこじんまりと小さくまとまっている印象を受けました。空を飛んだり、夜見(黄泉)の世界まで行っているわりには、スケールが小さいんですね。アクションも意外と狭い空間でやっていたりして、なんだか窮屈な感じがしてなりません。良くも悪くも松竹っぽい絵作りだなあと思いました。
 
 鬼太郎を演じているウェンツ瑛士は殆ど地のままの演技ですが、日本人離れした風貌が幸いして、なかなか良い感じを出しています。その他の妖怪を演じている役者達も、殆どノーメイク(嘘です!)で伸び伸びと演じています。それだけ役にハマっているというわけで、絶妙のキャスティングだと思います。中でも特筆すべきは田中麗奈の猫娘で、彼女の珍妙な猫ダンスはまさに一見の価値有りかも?NHK教育の子供番組あたりで、是非とも踊って欲しいものです。もしくは、猫娘主演のスピンオフ作品ってのも観てみたいものです。
 
 ところで、鬼太郎の左目が見えたのにはちょっとビックリしました。でもそのすぐ後に、髪の中から目玉の親父が出てきたので、きっとあれは親父さんだったのでしょう。目玉の親父がいないシーンでのアクションの最中、左目が見えたかどうかは確認していませんが、気になるところです。

「サンシャイン2057」
4/27
(T109GM)
☆☆☆☆★★★
(娯楽作品としては、どうもなあ…) 
 なにしろ…「トレインスポッティング」「28日後」のダニー・ボイル監督の宇宙SF映画です。彼の作品は妙に捻くれているので大当たりはしないけれど、そこがマニアには堪らない魅力でもあります。まあ、今回もきっとまともな娯楽作品には仕上げないんでしょうが、何かやってくれるだろうと期待せずにはいられません。
 
 しかし、これはとんでもない物語です。2057年、太陽がなぜか急に活動を減退化させ、凍てつく氷に閉ざされた地球では人類存亡の危機に瀕していました。この危機を救うには、太陽にありったけの核爆弾を投じて再び活性化させるしかありません。そこで人類最後の希望として、8人のクルーを乗せたイカロス2号は、マンハッタン島ほどの核爆弾を抱えて太陽へと旅立ったのでした。
 
 原題はただの「SUNSHINE」なんですが、何故か邦題は「サンシャイン2057」になってしまいました。異常になった太陽を人類の英知で正常化するという話では、過去に「クライシス2050」というトンデモ映画がありましたが、まさかこれに引っかけたわけじゃないでしょうね?いや、同時期に「リトル・ミス・サンシャイン」があったので、紛らわしいと感じたのかも?それとも、年号というか数字を入れるとSFっぽいタイトルになるという浅はかな考えによるのでしょうか?ともかく、このタイトルで、この映画は大分損していると思います。

 この映画、ちょっと分かりにくいですが、実はもの凄く挑戦的な作品なんです。話自体、太陽に行くという、とんでもない事に挑戦していますが、映像的には「2001年宇宙の旅」に真っ向勝負しています。「2001年〜」と同じようなシチュエーションも登場しますが、比較されることを覚悟の上で、更にバージョンアップした映像を見せてくれます。そして、物語の主題たるや実に哲学的で、興行的に心配になるほどストイックな作り方に驚かされます。つまりこの作品は、地球と人類の創造主たる太陽という〈神〉への挑戦であり、「2001年宇宙の旅」というSF映画の〈神〉への挑戦でもあり、形而上的な〈神〉という意識に対する挑戦でもあるのです。
 
 コンピュータ・イカロスが探知した5人目の乗組員の存在が何であるか?その解釈によって、この映画の意味する主題は、無限の広がりを持つに違いありません。で、神について思い詰めた挙げ句、「2001年〜」のような高尚さに背を向けてB級ホラーに走っちゃうのが、さすがダニー・ボイル。でも、当たらないだろうなあ…。

「モンスターハウス」
リアルD

4/26
(WMKN)
☆☆☆☆★★★★
(正真正銘のモンスター映画です。最後まで席を立たないように…)
 この「モンスターハウス」はCGアニメですが、まあちょっと微妙なデフォルメなので、キャラを見ただけで引いた人も多かったのでしょう。日本での興業はサッパリでした。でも、本国アメリカではなかなかの入りだったようで、評価も結構高かった作品です。その証拠に、「カーズ」「ハッピーフィート」と並んでアカデミー賞長編アニメ部門にノミネートされました。 そこにはきっと何かあるに違いありません。

 今回、港北ニュータウンにワーナー・マイカルが誕生した記念に「リアルD」で無料上映されるというので、早速行ってきました。

 まず、のっけから「リアルD」の立体感に驚かされます。ドルビーデジタルのロゴが飛び出すなんて、始めて見ましたよ。あとは、あれよあれよと飛び出す、飛び出す。凄いなあ、これ。高所恐怖症の人はホントに目が眩むでしょうね。いや、3Dの技術も進歩したものです。

 もちろんお話の方も、しっかりモンスター映画していて、感激しきり。そうか、3Dって物の大きさを表現するのにも適していたんだ!なんて嬉しい発見も。これで怪獣映画を作ったら、燃えるぞ!「トランスフォーマー」も是非3Dで上映して欲しいなあ。

 そんなわけで、今日はホントに良い物を見せてもらいました。何にしろタダだし、とっても得した気分です。ついでに言えば、この劇場は音響設備も非常に良いです。ボソボソという子供の声もすぐ耳元で聞こえたりしますので、ホラー映画の場合は要注意です。肝を冷やすこと請け合いですぞ。

 鑑賞用3Dメガネもお土産で持ち帰れて、ラッキー♪

「ハッピー フィート」
3/11
(T109GM)

☆☆☆★★★
(外見の可愛さとは裏腹に、ブラックな内容です)
 今年のアカデミー賞で「カーズ」を破って、長編アニメ部門を征した作品です。長編ドキュメンタリー映画「皇帝ペンギン」が異例の大ヒットをした時、ペンギンのCGアニメを作れば絶対受けるだろうとは思いましたが、この作品の企画はそのずっと前からあったそうです。いずれにせよ、ペンギンが歌で愛を語るという設定と、タップを踊るというアイデアが面白いですね。

 それに、なんと言ってもキャラが可愛いです。仲間が楽しげに歌う中で、ただ1羽歌えない主人公のマンブルの健気さも涙を誘います。CGの技術も、同じ氷を扱った「アイス エイジ2」と比べて格段の進歩を見せています。羽毛の感じはもちろん、特に水の表現が素晴らしいです。ですからもう、さすがアカデミー賞受賞作だ、☆5つだなんて思いながら観ていましたよ、前半までは…。
  
 しかし、後半になって話が急に現実味を帯びるようになると、次第に雲行きが怪しくなって来ます。そして物語はとんでもない展開を見せるのです。そこに見え隠れするのは、宗教観に裏打ちされた欧米人の偏った自然保護思想であり、形を変えた白人至上主義であり、一方的な価値観の押しつけでもあります。結局、選ばれたものだけが生かされ、そうでない者には全く目もくれないのですね。このペンギンたちを黒人に入れ替えると、ピッタリ当てはまるところが、また不気味です。この結末と主張には素直に喜べませんね。
 
 アカデミー賞を争った「カーズ」と「ハッピー フィート」ですが、主張的にも大きく違うところがあります。前者は「古き物も見直そう。古き者の言うことにも耳を傾けよう」という主張でしたが、後者は「古き物は捨てよ。古き者は考えを改めよ」と言うのです。ここがまた好きになれません。う〜ん、日本で受けるかは微妙だなあ。

 あっ、後で振り返ってみて、もしかしてこれは逆説的な皮肉なのかも?と思えてきました。だとしたら、こりゃ凄いブラックユーモアじゃありませんか!うむむ、この作品も侮れない…かも。
 

「ナイト ミュージアム」 
3/11
(T109GM)

☆☆☆☆★★★★
(みんなで博物館に行こう!)
 ラリー・デリーはおかしな発明にうつつを抜かし、夢だけは大きいのですが、何ひとつ上手く行きません。おかげで、奥さんにも愛想を尽かされて離婚されるし、いつまでも定職にありつけない有様です。それでも、息子にだけは立派に働いている姿を見せたいラリーは、アメリカ自然史博物館の夜警員の仕事を引き受けます。ところが、この博物館には信じられないような秘密がありました。なんと、夜になると博物館の展示物が生命を持って、勝手に動き始めてしまうのです。さあ、ラリーは無事にこの仕事をやり遂げて、息子の信頼を勝ち得ることができるでしょうか?
 
 博物館の展示物が今にも動き出しそうに思った経験は、誰にも一度はあるでしょう。それを本当に動かしてしまうのですから、これは痛快です。まあ、ベン・スティラーのコメディーですから、堅いことは言わずに、素直に楽しみましょう。オクタヴィウスやファラオが英語を喋ろうが、動き出す理由がいい加減でも、全然気にすることはありません。ただ、博物館を舞台にしている割りには、博物館の特性や展示物を今一つ活用しきれていない気がします。数も種類ももっとあると思うのですが、何だかこじんまりした博物館だなあという印象を受けました。でも、あんまり数を出したら収拾がつかなくなったかも知れませんね。
 
 米国の歴史には疎いですが、ここに登場するサカジャウィアというネイティブ・アメリカンの女性はアメリカでは大変有名な女性なんですね。ポカホンタスくらいしか知らないわたしにとっては、非常に興味深い登場人物でした。これを機に、アメリカ史を少しかじってみようかなという気になりました。映画としてはバカバカしい内容ですが、知的好奇心を刺激するという意味では、なかなか侮れない作品だと思います。もともと博物館が好きなので、個人的にはかなり楽しめました。
 
 キャストも面白く、ルーズベルトそっくりなロビン・ウィリアムズとか、そのまま博物館入りしそうなディック・ヴァン・ダイクやミッキー・ルーニーなんかも出ていて楽しいです。もちろんベン・スティラー作品には欠かせないオーウェン・ウィルソンもカメオ出演していて、ベン・スティラーの母親アン・メアラも顔を見せています。
 

「ドリーム・ガールズ」
3/1
(T109GM)
☆☆☆★★★
 明らかにダイアナ・ロス、メアリー・ウィルソン、フローレンス・バラードの「シュー・プリームス」をモデルにしたと思われる、コーラスガール3人組の成功と挫折の物語です。この映画でジェニファー・ハドソンがアカデミー賞助演女優賞を獲得しましたが、やはりビヨンセの歌唱力には圧倒されます。それでも、本家ダイアナ・ロスと比べたら見劣りしてしまいます。そんな中、私が一番気に入ったのは、エディ・マーフィのラップでした。モータウン・ミュージックが好きな人には至福の時間ですが、最初から最後までず〜っと、みんな熱唱するので、さすがに疲れました。

「リトル・ミス・サンシャイン」
3/1
(T109GM)

☆☆☆☆☆★★★★
(シナリオが素晴らしい!)
 わたしは映画を観る時、観客の立場から観ると同時に、作り手の立場からも観てしまうので、作品の色々な部分に目が行ってしまいます。例えばセットの作りとか、カメラやマイクや照明の位置とか、エキストラの目線だとか、話に全然関係ないところも気になってしまうのです。もちろんお話にしても、そのまま楽しむことができず、自分でシナリオの先を勝手に組み立てるクセがあります。当然、話の先を常に何通りも予測しながら観てしまいます。ですから、自分の予測通りだったり、それ以下だったりすると、なかなか満足できません。

 そうやって作品の技量を量るワケですが、年に何本か、わたしの予想を超える素晴らしい作品に出くわすことがあります。この作品がまさにそうで、このシナリオにはまいりました。お話やセリフにまったく無駄が無く、実に見事な出来映えです。制作に何年も費やし、シナリオに惚れ込んだ監督の情熱でようやく完成に漕ぎつけた作品と聞いて、成る程と納得しました。有名スターが誰ひとり出ていない、ホントに低予算の小品ですが、作品の完成度から言ったら、この映画にアカデミー作品賞をやっても良かったんじゃないかと思います。

 わたしはかねがね「勝ち組」「負け組」なんていう分け方に大変疑問を感じていたのですが、この作品に登場する家族はまさに「負け組」そのものです。家庭崩壊、破産寸前、自殺未遂、麻薬中毒、性格破綻、肥満、ゲイなど、ありとあらゆる要素が詰まった社会的落伍者の吹きだまりのような家族が、ふとしたきっかけでオンボロ車に乗り、「リトル・ミス・サンシャイン」を目指して旅をするロード・ムービーです。設定からして、何だか楽しいですね。
 
 「リトル・ミス・サンシャイン」というのは、ジョンベネちゃんの事件で日本でも注目された、少女版ミス・コンの大会の名前です。主人公たち家族の娘が、ひょんなことでこの大会に参加することになったのですが、このちょっと太めでメガネを掛けた娘を演じるのが、ポスト・ダコタ・ファニングと言われるアビゲイル・ブレスリンです。この作品でアカデミー助演女優賞にノミネートされましたが、なかなかの怪演を見せてくれます。大きくなったら、結構な性格俳優に育ちそうで、今後の活躍が楽しみです。
 
 この他、作品に登場する俳優は、ひと癖もふた癖もある性格俳優揃いで、これらの登場人物がうまく絡んで、絶妙のアンサンブルを奏でています。このシナリオの妙、日本映画も見習って欲しいですね。日本映画では、それぞれのキャラがバラバラになって、何一つ噛み合っていないという作品が実に多いですから。
 
 さてこの家族、どうあがいたって成功者にはほど遠いです。こんな家族に未来はあるのでしょうか?世間に1割の「勝ち組」と9割の「負け組」がいるとしたら、この映画はまさに9割の人々のための物語です。今に絶望し、明日を見失っている、そんなあなたこそ、この映画を観ましょう。嘘のサクセス・ストーリーに振り回されて、自暴自棄になっているあなた!この映画に、ささやかな光を見出してください。ラストはきっと涙が止まりませんよ。きっと、アメリカの劇場では歓声が上がったことでしょう。
 
 余談ですが、「リトル・ミス・サンシャイン」の会場で、娘を会場にエスコートする係員は「24」のクロエですよ。
 

「鉄コン筋クリート」
2/1
(T109GM)

 ☆☆☆☆★★★ 
(アニメとしては凄いですが、問題は面白いかということ)
  松本大洋原作漫画のアニメ作品です。この原作にして、このアニメ在りという感じで、原作漫画を動かしたら、まさにこうなるだろうという見事なアニメ化です。凄い出来です。尋常じゃないくらいに動いています。関わっている動画家の数も尋常じゃありません。背景も3DCGのトゥーン・シェード使ってグルグル動き回ります。監督が米国人(マイケル・アリアス)というのも珍しいですが、スタジオ4℃が最良と考えた人がたまたま米国人だっただけのことです。数々の実験アニメを生み出してきたスタジオ4℃が、今まで培った技術を結集した、まさに集大成と呼ぶにふさわしい作品に仕上がっています。
 ただし、このキャラクターは好き嫌いが分かれるでしょうし、話も今一つ分かりにくく、内容も至極暴力的ですから、一般ウケはしにくいでしょう。でも、声優は素晴らしく、声の力だけで物語に引き込まれます。特に蒼井優には驚愕しました。この人は凄いね!あと個人的には、絵が骨の髄までメビウスしているのが気に掛かりました。いずれにせよ、この作品は日本よりも海外で受けるような気がします。
 私的には、この調子でフランク・ミラー&ジェフリー・ダロウの「ハードボイルド」や「ビッグ・ガイ」を是非ともアニメ化して欲しいと思います。早速ダロウ君にメールを送って、そそのかしてやろう。

裏話)
 以前パイロット・フィルムを観たことがありますが、それはモーション・キャプチャーで作った3DCGにトゥーン・シェードを掛けるという作りでした。同じ手法のアニメをメビウスが「シティ・オブ・ファイヤー」のパイロットで使っていて、これなんかBDの絵がそのまんま動いているという感じでした。ただモーション・キャプチャーの動きはロトスコープと同じで面白味がないんですよね。完成版の「鉄コン」は湯浅監督に近いデフォルメがなされ、アニメ本来の動きの面白さがありました。正しい判断だと思います。

「どろろ」
2/1
(T109GM)

☆☆☆★★
(クライマックスに行くに連れ、盛り下がる…)
 手塚治虫原作の伝奇妖怪漫画「どろろ」の初めての実写映画です。なにしろ色々と難しい描写がありますので、CG技術の進化を待つまで映像化が非常に難しかったのです。もっとも、倫理的な描写規制の壁の方が大きいですけど…。まあ、長く映像化が切望されてきた作品ですので、どんな出来になったか非常に気に掛かるところです。そんなわけで、不安半分、期待半分で観てみました。
 いや、アクションとかCG合成とか、心配したわりには、なかなか良くできていましたよ。近くの若いカップルは「面白かったね」と言っていました。手塚漫画の映画化作品としては良く出来た方だと思います。でも私は「う〜ん…」と考え込んでしまいます。だって、物語の舞台は日本じゃないし、設定もかなり違いますから、これが「どろろ」かと訊かれれば、「う〜ん」と返事に詰まってしまうワケです。でも、曲がりなりにも「どろろ」を実写映画化したのですから、その勇気は誉めてやりたいと思うのです。わたしなんか、日本では絶対不可能だと思っていましたからね。日本特有の表現の制約があるので、舞台を日本にせず、設定を大胆に変えたというのも頷けるところです。まあ、所詮映画は映画で、漫画とは別物ですから、その辺りは仕方ないところでしょう。
 でも…純粋に作品として見るならば、このシナリオ構成は如何なものでしょう?どう考えても、この構成は間違っています。導入部の作り方からして、大きなミスを犯しています。ここで手際よく百鬼丸の生い立ちを説明しておかないから、後で回想シーンがやたら多くなってしまうのです。回想シーンを多用したがために物語の流れが止まり、映画としてのリズムを壊してしまっているワケです。まあ、そんな致命的なミスを犯しながらも、アクションやVFXが結構楽しめるので中盤までは面白く観られるのですが、そこから後がいけません。まるで坂道を転げ落ちるように、どんどん盛り下がって行きます。もう、最後のクライマックスなんか、目も当てられません。何だか急に新しいキャラが出たかと思えばすぐに死んじゃうし、スケール小さくなるし、いやホント、これ程盛り上がらないクライマックスも珍しいです。結局、観た後印象に残ったのは、妻夫木聡の格好良さと、柴咲コウの泣き顔だけでした。まあ、それを見に来た人にはそれで良いのかも知れませんが、それにしても…こんなことで続編は作られるのでしょうか?う〜ん。
 


2006年

「デイパーテッド」
12/23
(TKNK試写)

☆☆☆☆★★★
(スコセッシ爺さんは凄い!)
香港映画「インファナル・アフェア」をマーティン・スコセッシ監督がリメイクした作品です。キャストが凄いですよ。トニー・レオンをレオナルド・ディカプリオ、アンディ・ラウをマット・デイモン、エリック・ツァンをジャックニコルソン、アンソニー・ウォンをチャーリー・シーンが演じています。警察とマフィアからそれぞれスパイを送り込むという話はそのままで、肝となる要素やシーンは同じですが、場所を香港からボストンに換え、話の展開もかなり変わっています。
 
 この映画は、とにかくテンポが速いです。シーンの切り替えが早く、ちょっと油断すると大事なシーンを見逃しかねません。なんてったってタイトルからして、いつ出たんだっていうくらいにサッと現れてすぐ消えてしまいます。これが最近の映画のテンポなんでしょうか?字幕を読んでいる暇もないほどですし、英語もアイリッシュ訛りが激しくて、日本の観客にはかなり辛いものがあります。
 
 とはいえ、映画としては重厚感もあり、さすがスコセッシと感心させられる出来になっています。オリジナルの「インファナル・アフェア」は香港フィルム・ノワールの傑作ではありますが、良くも悪くも香港映画の甘さが出ていました。その辺り、アメリカ人から見れば、「いったん銃を抜いたら撃てよ!しかも、確実に急所を狙えよ!」と言いたいところでしょう。その点この作品には一切の「甘さ」がありません。銃を抜いたら、必ずだれか死にます。それも驚くほどあっけなく。この恐ろしいほどのリアリズムが作品全体に緊張感を与えています。ですから、2時間半という上映時間にも拘わらず、一瞬たりとも気を抜けないまま、あっという間に時間が過ぎてしまいます。気を抜いたら、そこには「死」があるのみ。まさに「ディパーテッド(故人)」とは言い得て妙なるタイトルであります。
 
 ちなみに、劇中随所に下品な言葉や物が飛び出しますので、女性にはちょっとお奨めしにくいです。
 

「硫黄島からの手紙」
12/23
(T109GM)
☆☆☆☆★★★★
(イーストウッドは本当にエライ!)
 

「エラゴン」
12/23
(T109GM)
☆☆☆★★
(ドラゴンだけは素晴らしい)
 

「007カジノロワイヤル」
12/1
(T109GM)
☆☆☆☆★★★★
(次回への期待を込めて!)
 何だ、この新しいボンド役者は?まるでロシアのプーチン大統領ソックリじゃないか!こんなの007じゃない!なんて思ったあなた。確かにその通りです。もう、どう見ても、KGBのスパイにしか見えませんよ、このダニエル・クレイグという男。映画の冒頭から、マッチョな身体で暴れ回るし、スマートの欠片もない、粗野で野蛮な振る舞いには目を覆いたくもなります。
 
 でも、それもこれも、すべては、新しい007シリーズを構築しなおそうという、製作者の意図したことなのです。ご存知のように「カジノロワイヤル」は007シリーズの第一作です。バットマンで言えば、「バットマン・ビギンズ」なのです。つまり、ここで描かれているのは、野蛮な「007」がいかにしてスマートな「ジェームズ・ボンド」になったかという、そのいきさつなのです。ですから、こんなやつ007じゃない!なんて思ったあなたは、すでに製作者の思うツボにはまっていたのです。
 
 そんなわけで、007らしからぬ行動がいっぱい出てきて驚かされます。ワイルドなアクションは「ヤマカシ」みたいだし、格闘シーンなど「ボーン・スプレマシー」のようにより現実的だし、賭博シーンなんかホントにスッちゃいそうで、「シンシナティ・キッド」のような緊迫感があります。拷問受けたり、敵の罠にはまったり、もう「24」のようにハラハラドキドキの連続です。どんな時でも余裕とユーモアを見せてくれるのが007なんですけどね。このボンドは、まだまだ修行が足りないです。
 
 このように今回の「カジノロワイヤル」には、新しいシリーズを再構築しようという決意が表れていますが、冒頭の白黒映像は、昔の話だという誤解を招くかも知れません。なにしろ、時代背景はまさに現代ですからね。冷戦も終わり、ボンドは携帯電話も持っています。しかも、映画会社のMGMがソニーに買収されたので、もうソニー製品のオンパレードです。でも、携帯電話もデジカメもノートパソコン等々みんなあからさまにソニーというのは如何なものでしょうか?こうなったら、この際007仕様のVAIOとか出せばいいのに。
 
 ということで、当初はこんなやつボンドじゃねえ!と憤っていましたが、映画が終わる頃には、なかなかイケルじゃないかと納得してしまいました。次回を乞うご期待ですね。

「武士の一分」
12/1
(T109GM)
☆☆☆★★★★
(非常に質素で地味な佳作です)

 名匠山田洋次監督の時代劇。藤沢周平原作の時代劇三部作の完結編なのだそうです。主演に木村拓哉を持ってきて、盲目の剣士をやらせるというのが、なかなかニクイです。確かに絵になりますからね。しかし、今回の白眉は、その妻を演じる檀れいです。この女優は大きな収穫でした。宝塚の娘役をやっていた人で、中国公演の時に楊貴妃の再来と騒がれたんだそうです。なんと言っても、今の邦画界に欠落している本当の意味での美人女優の登場を嬉しく思います。そして彼らに仕える徳平役の笹野高史が飄々として、親しみやすい人柄が場を和ませます。この配役は絶妙です。
 
 話の内容はさておき、この作品は夫婦愛に焦点を当てていますので、意識的に殺陣のシーンは押さえめになっています。ひたすら武士の家庭の日常を事細かに表現することに力を入れています。それは、主人公が決闘をする原因となった事件の描写についても言え、かなりあっさりとした扱いになっています。本来なら、果たし合いの相手がいかに悪いヤツか、じっくり描写して、相手への嫌悪感を煽るところですが、そうはしません。何故なら、それをしたら夫婦愛にドロドロとしたイメージを持ち込んで、全体としての印象を汚しかねないからです。
 
 このようなわけで、この作品では、大げさに声を張り上げたり、泣き叫んだするりといった邦画特有のオーバーな表現は鳴りを潜め、主人公たちは、ひたすら感情を押し殺し、堪え忍びます。そして、これがこの作品の最大の見所だと思います。ですから、時代劇三部作の中でも、最も上品で地味な印象を受けました。シナリオも緩いし、見せ場もないし、劇映画としてはとても食い足りなさを感じますが、この質素でホンワカしたところがまた良いのかもしれません。わたしとしては、もっと言葉少なに忍んでも良いかと思いましたが、それでは観客には分からないだろうなあ。観客の反応も上々なので、興行的にはヒット間違いないでしょう。

「トゥモロー・ワールド」
12/1
(T109GM)

☆☆☆☆☆★★???
(この映像は凄い!10年に一度のSF映画)
 イギリスのミステリー作家P.D.ジェイムズの「人類の子供たち」を元にアルフォンソ・キュアロン監督が120億円を費やして映画化した超大作です。とはいえ、話だって「子供ができなくなった近未来。人類の未来に希望はあるのか?」というような、暗いテーマのSFだし…、主人公はニコラス・ケイジの出来損ないみたいなクライヴ・オーウェンだし、「フォーガットン」のジュリアン・ムーアも出ているし、正直予告編を観た限りでは、全然期待していませんでした。だから、この映画を観るために朝早く起きるなんて、ホント苦痛でしたし、映画館へ行く足取りも重かったのです。

 でも見始めたら、巻頭から度肝を抜かれてしまいました。そして次第に、こいつはとんでもない映画なんじゃないかと気づき始め、その凄まじさに背中がゾクゾクしてきました。そう、ヒッチコックの「ロープ」を見始めた時と同じ感触です。いやそれ以上、ホントに凄いんです。いったいどうやって撮ったんだろう?普通の観客は気が付かないでしょうが、カメラの後にはたくさんのスタッフがいるんですよ。録音どうするんだ?とか、照明どうしたんだ?とか、もう沢山の謎が渦巻いて、わたしの頭の中はパニック寸前です。CG合成も恐ろしく多用されているようですが、それだけでこの映像は作れません。もの凄いセットと、スタッフ、キャストの計算され尽くした連係プレー無しには、こんな映像撮れません。う〜ん、凄い!これは映画史に残る作品かも知れません。これからも長く、映画研究の素材として取り挙げられることになりそうです。そんな作品を映画館の大画面で観られて、今日はいきなりヒットです。あっ、でも、かなりハードな作りなので、興行的には厳しそうです。特に女性にはキツイだろうなあ。でも、わたしは結構胸にジーンと来ましたよ。とにかく、こんな映画作った連中はエライ!わたしだけでも誉めてやろう!

 脱力の邦題からして、まず当たらないでしょうから、来年まで持つかどうか大変疑わしいです。でも、できればひとりでも多くの人に観て欲しい傑作です。とはいえ、多分に人を選ぶので、だれにでも勧められるというわけではありません興味のある人は、騙されたと思って、是非大画面で観てください。とにかく凄いですよ。

「父親たちの星条旗」
11/1
(T109GM)

☆☆☆☆★★★★
(とにかく偉い!)
 第二次世界大戦中、唯一日本軍より米国軍の死傷者が多かった(真珠湾攻撃は例外)硫黄島の戦いで、島の象徴とも言える摺鉢山の頂上に星条旗を揚げた6人の兵士の写真にまつわる物語です。あの写真に写っている星条旗は最初に揚げた星条旗ではないし、写っている兵士も別の兵士だったことは後で公にされ物議を醸しました。ようするに多額の国債発行キャンペーンのために利用されたヤラセだったわけです。そのような情報操作は戦時中いくらでもあったでしょうが、アメリカ人にとって最も有名な写真だけに、その影響も凄まじく、それに利用され、偽りの勇者としてもてはやされた当の兵士の心境を考えると複雑なものがあります。
 
 この星条旗を揚げる写真は、ハリウッド映画の中でもアメリカの栄光を象徴するシーンには必ずと言っていい程登場する(世界の危機にアメリカが立ちあがる様なシーンには特に使われます)有名な写真で、言わば、アメリカ人の心の支えでもあるわけです。このアメリカの栄光に影をさすような作品を、巨費を投じてスピルバーグが製作し、イーストウッドが監督するのですから、アメリカという国はホントに懐が広いものだと感心させられます。しかも更に、今まで日本映画界ですら手を付けなかった、日本側から硫黄島の戦いを描く「硫黄島からの手紙」まで作ってしまうのですから、もうこれは偉いというほかありません。ホントに偉いぜ、イーストウッド!
 
 さて映画を観た素直な印象は、さすがイースト・ウッドは凄い監督になったものだということです。こんな凄い大作でも、ひたすらマイペースを貫けるなんて、ホントに恐れ入ります。私がまず驚いたのは、硫黄島に向かう艦隊から兵士が一人海に落ちるシーンです。船は落ちた兵士を救出するでもなく進み続け、海に漂う兵士はどんどん遠ざかっていきます。もちろん、軍が兵士を使い捨てにするという事を表す大事なシーンですが、こんなショットを延々撮るなんて、並の監督では到底できません。製作にゆとりがあるというか、よっぽど演出に自信があるのでしょう。こんな凄いシーンが次々と展開されるのですが、それを妙な音楽や演出で盛り上げるでもなく、いつものイーストウッド節でただ淡々と流していくのですから、もう驚くほかありません。
 
 戦闘シーンは凄いです。「プライベート・ライアン」からまた数段と技術が進歩して、臨場感あふれる戦闘シーンを再現しています。特に、機銃から発射された弾丸の軌跡と着弾の模様なんかは凄いね!摺鉢山と海岸との攻防風景なんか素晴らしいです…って、あんまり感心しちゃいけないですけど、見事です。多分アカデミー賞にノミネートされるのではないでしょうか。素晴らしいシーンや印象的なシーンは他にも沢山あって、いちいち上げたらキリがないですけど、日本映画だったらたっぷり時間を掛けて見せるだろう、そんな珠玉のシーンもサラリと数秒で流しちゃうんだから、イーストウッドはやっぱり凄いね。そして、いつも見事な最後のシーンですが、今回は最後の最後に用意してありました。こう来たか、イーストウッド!このショットで終わるのは実に正しいじゃないか。やっぱりあなたは偉かった!
 
 因みに作曲も手掛けているイーストウッドですが、次回作「硫黄島からの手紙」の曲は東洋的な旋律もちょっと入って、これが実に良くて泣けます。本国アメリカで今年中に限定公開されたら、アカデミー作曲賞の候補になるかも知れません。(息子が作曲していました!)
日本では年内に公開されますが、内容も内容ですし、曲を聴いただけで泣けてしまうので、今から観るのが怖いです。

「ワールド・トレード・センター」
10/15
(WMSY)

☆☆☆★★★
(うむむ、どういう人に奨めたら良いのでしょうか…?実話だけに評価しにくいです。)
 
 2001年9月11日のあの事件現場に急行し、崩壊したビルの下で生き埋めになった警察官の実話です。すべて事実と証言に基づいて作られていますから、映画的な演出を挟む余地は非常に少なく、ドラマチックな展開にするために手を加えることもままならなかったと思います。例えば同じ日の同時多発テロを扱った「ユナイテッド93」など、生き証人はいませんから、想像を膨らませる余地があるのですが、逆にこの作品にはそんな余地など許されません。こんな作品に果敢に挑戦したオリバー・ストーンという監督も大したものですが、あの日の傷がまだ癒えていないこの時期に敢えてこの作品を作ろうと英断した製作者も大した勇気です。
 
 しかし、さすがに様々な描写において、被害者や遺族、更には人種問題に関しては、細かい配慮が成されています。例えば、地下1階で断続的に聞こえた大きな音の正体とか、警察車両をつぶした原因とかは、暗に含めて語らず、ビルに衝突する旅客機の映像も見せず、犯人グループに関する情報も伏せています。このあたりに製作者の、この作品を悪戯にセンセーショナルな作品にせず、ただ事実を伝えようという真摯な態度が見て取れます。
実際の現場は、それこそ地獄絵図でしたし、だいたいセンセーショナルな映像は、ニュースで散々流されていますから、今さら傷をほじくり返すのも、関係者にとってはあまりに酷なことに違いありません。

 そんなわけで、この作品は事件自体よりも、事件の後、如何に献身的で勇気のある救助活動が行われたかについて焦点が当てられています。確かに、この点はニュースでは伝えられなかった部分でもあり、悲惨な事件を嘆き、憎むよりも、その中にも希望を見出すという点で、これは大変意義ある作品になっていると思います。ただ、主人公たちが助かったからといって、手放しで喜べないのも事実ですが…。
 

「16ブロック」 
10/15
(WMSY)

☆☆☆☆★★★★
(人間は変われる!)
 
 ヒマで酒浸りの老刑事が16ブロック先の裁判所に重要参考人を護送するだけの話です。でも、とんでもない陰謀に巻き込まれて、刑事にとっても参考人にとっても、人生最悪の日になってしまいます。しかし、それは本当に最悪の日だったのか?
  
 いや、本当に単純な映画なんです。ブルース・ウィルス主演だし、監督はリチャード・ドナーだし、単純明快なアクション映画かと思っていましたが、確かにそうではあっても、ひと味違う作りになっています。観た印象としては、リチャード・ドナー監督の老練さというか、巧さを感じました。お話としては良くあるパターンです。刑事が犯罪者を護送する途中で思わぬ事件に巻き込まれるとか、寡黙な主人公におしゃべりな黒人のコンビとか、それに警察内のあれやこれやが絡むとか、映画で出尽くした感のある、あんなネタやこんなネタが次々と登場します。
 
 で、こんなもんかネと目の肥えた観客を油断させといて、次々に裏切っていきます。ラストのオチだって決まってるじゃないかと思っていたら、見事にやられました。最後の数秒前までは、なんじゃい、そんなもんかの印象が、最後の最後で見事ひっくり返りました。あんなベタなセリフやこんな荒い演出も、みんなこのためだったのかも?終わりよければすべて良し。見終わって、私もなんだか頑張れそうな気になりました。だから、私はこの映画が好きです。 堂々と言いたいことを主張できる、こんな映画も良いもんです。

「ブラック・ダリア」
10/15
(WMSY)

 ☆☆☆★★★
(ビミョーです。)
 
 ジェイムズ・エルロイの原作をブライアン・デ・パルマが映画化した作品です。でも、私は原作を読んでいません。観ていて、なんだかLAコンフィデンシャルみたいだなと思ったら、同じ原作者だったんですね。(本当は「LAコンフィデンシャル」+「狼たちの街」みたいな感じです)
 
 さて、久々のデ・パルマ作品とあって期待して臨みましたが、さすがに導入部からの盛り上げ方は見事で、お得意の移動カメラによる長廻しや、クレーンを使った俯瞰撮影なんか素晴らしいし、思わず唸る細かい演出もあって、こりゃ久々の傑作かと期待が高まります。でも、それぞれのキャラの印象が薄いせいか、複雑に絡む登場人物の名前もいちいち覚えていられません。おかげで、真相が次々と明らかになっていく段になって、名前を呼ばれても顔が浮かばず、そいつはだれよ?あいつはだれだ?と、頭の中は混乱するばかりです。多分原作ファンや英語が堪能な人には問題ないのでしょうが、私は推理についていくのに大忙しでした。それでも結局、リーの妹のことは分からず終いだった様な気がします。うーむ、DVDでしっかり復習しなければ!私としては、もっと話を整理してくれた方が分かりやすくて有り難いのですが、それではきっと、原作のダークで混沌としたイメージが失われてしまうのでしょうね。
 
 ただ、やっぱり出演者が地味な印象で、なんだか今一つ感情移入できません。例えば主演がブラピとディカプリオだったら(ヘビー級じゃないけど…)もっと面白くなるのにと思ってしまいました。
 

「もし昨日が選べたら」
10/1
(T109GM)
☆☆★★
(気楽に観れば、それなりに楽しめます)

  もう、なんてタイトルなんでしょうね!だって、映画の中では、ちっとも昨日なんて選んでいませんから!原題は「CLICK」で、ここに登場する万能リモコンを押す音を暗示していますが、確かに邦題を付けるのは難しかったかも?
 
 ある日突然、すべてをコントロールできる万能リモコンが手に入ったらどうなるかというドタバタ・コメディですが、とにかくこのリモコンが凄い!基本的にTVのリモコンと操作は同じで、TVを再生できるばかりか、すべての物を早送り、早戻し、スロー再生、巻き戻し、一時停止にコマ送り、チャプター跳ばしも思いのまま。もちろん音量調節や色補正、音声切り替えに、2画面表示に、標準・ワイド・パノラマ画面調整までできます。その上、自動操縦や操作記憶なんていう最新機能までついています。
 
 主人公はこのリモコンを使って、自分の人生を自由に操縦しようとするのですが、これがなかなかままならず、何度も修正を試みている内に、思わぬ結果を招いてしまいます。
 
 ハッキリ言って、このドタバタぶりはかなり度が過ぎて、ついて行けませんが、さすがそこはハリウッド、ちゃんと全体を家族愛でまとめあげ、結構そつなく感動的なお話しに仕上げています。
 
 この作品の配給はソニー・ピクチャーズですが、劇中AIBOを車でひいてつぶしてしまうなんて自虐的ギャグまで飛び出したのには、ビックリ!生産中止だといっても、そこまで邪険にしなくても良いじゃないかと、ちょっと可哀相に思ってしまいました。

「レディ・イン・ザ・ウォーター」
10/1
(T109GM)

☆☆☆☆★★★
(映画評論家は犬に食われてしんじまえ〜!という
シャマランが素敵です)

  これまでM.ナイト・シャマランの作品と言えば、思わせぶりな予告編に何度も欺され、ラストのどんでん返しに拍子抜けしてきたものです。今回の作品も海外の批評では最低だし、興行的にもさっぱりで、また同じ轍を踏まされるのかと内心ビクビクしていましたが、いや、観てビックリですよ!まさに予告編通りの内容だし、つまらないどんでん返しも無しですから。そして、批評が最低な理由も、興行的に芳しくない理由もすぐに分かりました。なにしろこの映画、批評家と映画会社に敢然と挑戦状を叩き付けているのです。偉いぞ、シャマラン!私はこの一作で、すっかりシャマランが好きになりました。ただ、やっぱり観客の反応は賛否両論だろうなあ。(以下ネタバレです)
 
 物語はまさに現代の「おとぎ話」です。フィラデルフィアのコープ・アパートの管理人「クリーブランド(断崖絶壁)」はプールに夜な夜な現れる「ストーリー」という謎の少女と知り合いますが、実は彼女は水の世界から、このアパートのある人物にメッセージを伝えに来たのです。そのメッセージは世界の未来を左右する程大切なものなのですが、それを阻止する邪悪な存在もアパートのそばまでやって来て、彼女の命を執拗に狙っています。彼女の使命を全うさせて、無事に元の世界へ帰すためには、同じアパートに住む隠れた仲間を捜し出さねばなりません。果たしてクリーブランドは、メッセージを受け取るべき人物と仲間を捜し出し、ストーリーの使命を全うさせ、帰すことができるでしょうか?
 
 まず、この映画は映画批評家を痛烈に批判して(何しろ、映画の中で唯一悪く描かれた人間ですから…)、批評家たちを敵に回しています。そして、批評家達がよく口にするシナリオ作りのルールに、ことごとく逆らっています。これだけでも批評家の評価が最低になるのは間違いないでしょう。次に、シャマランはディズニーとの契約が切れたのを幸いに、「シックス・センス」以来自らに掛けていた呪縛「ラストのどんでん返し」を綺麗サッパリやめて、新しい映画会社ワーナーでは、自分がやりたかった本来のスタイルを貫きました。当然こけ威し的な大がかりな宣伝にはならず、興行的にもマイナスになったに違いありません。
 
 また、この作品にはシャマラン自身が大変重要な役で出演しています。今までもちょい役で出てはいましたが、これほどメインに出てきたのは初めてでしょう。それは恐らく、監督が伝えるべきメッセージをこの登場人物に託していたからこそ、自ら演じなければならなくなったのでしょう。アパートの住人が人種や文化、宗教、言語において世界の縮図になっていることからも、監督の意図は明らかだと思います。
 
 そして、謎の少女の名前が「ストーリー」であることは、この物語自体が「物語の物語」であることを暗示しています。少女の使命を全うさせるということは、物語を成就させることに他なりません。ですから、住民が疑いもなく少女に協力的であることに疑問を持つことも、実は的外れなのかもしれません。なぜならここに登場する人々は、少女と会う前から、それぞれの役割をあらかじめ持っている、「物語」の一部なのですから。


「夜のピクニック」
10/1
(WMCT)
☆☆☆★★★
(白のジャージ姿では、青春の輝きも失せてしまうようです)
 第2回本屋大賞を受賞した恩田陸の原作を「青空のゆくえ」の長澤雅彦監督がメガホンを取った作品です。「青空のゆくえ」は私がその年の邦画ベストに選んだ秀作ですから、同じ監督の最新作と聞けば当然期待してしまいます。わざわざシネコンのハシゴをしたのも、この作品を観るためだったのですから。
 
 物語は、北高という高校で例年行われる「歩行祭」が舞台です。この「歩行祭」、24時間かけて80qを白いジャージ姿の生徒たちが1000人揃って、ただ歩くだけの伝統行事ですが、最初の60qは団体行動でも後の20qは好きな仲間と歩いてよいというところがミソです。つまり、仲間と歩きながら様々なことを話し合い、互いに胸の内を語ることで、友人達との絆を深めたり、新しい絆が生まれることを暗に期待しているわけで、生徒達もこの行事を好きな相手への告白の好機と受け止めています。
 
 さて、映画ではこの歩行祭を舞台に、各生徒達の心の交流を通して、原寸大の青春を淡々と描いています。主人公に秘めた謎があるところや、ゴールまでに決着を付けなければいけないという時間的制約があるところは、「青空のゆくえ」と同様です。もちろん、その謎もそれ程深刻な謎ではありませんし、大事件が起こるわけでもありません。ただ淡々とただヌルヌルと物語は進行するわけで、この変に飾らないところが実は清々しいところなのです。
 
 だが、さすがの監督も、ただ歩くだけの話では観客が飽きるのではないかと危惧したのでしょうか、様々なギャグやメルヘンチックな幻想シーンなどを織り込んで、作品に色々な味付けを試みてしまいました。おかげで、悪ふざけのギャグは外しまくるし、奇をてらった幻想シーンは浮きまくってしまいました。この点、もっと歩くことに集中して真摯な態度を貫いて撮れば良かったのにとも思います。いや、むしろ「ピクニックの準備」に描かれているエピソードを含め、群像劇としてまとめあげることはできなかったのでしょうか?
 
 ただ、主演の多部未華子は相変わらず素晴らしく、未来の大女優の片鱗を充分見せてくれました。この子の表情をもっと追っていれば、余計なセリフはいらないのにと、ついつい思ってしまいます。ついでに言えば、「どろろ」は絶対彼女が演じるべきですよ!
 

「X-MEN:ファイナル・ディシジョン」
9/9
(T109GM)

☆☆☆☆☆★★★
(最低「1」「2」は観ておきましょう。そして、映画はスタッフ・ロールが終わるまで、ちゃんと観るべきです。最後まで観ないと、料金の半分は損しますよ!)
 どうでもいいけど、このタイトルどうかと思うんですね。だって原題は「X-MEN:THE LAST STAND」ですよ。「ファイナル・ディシジョン」より「ラスト・スタンド」の方が日本人には呼びやすいと思うのですが、宣伝部はどうしても映画をヒットさせたくないんでしょうかね?タイトルの意味としてはこれでも悪くはないのですが、映画の最後まで観れば絶対に「ラスト・スタンド」の方が良いですよ。携帯電話をかけながら観る試写会を企画したり、この宣伝部は一体何を考えているんでしょうかね?
 
 まあ、そんな宣伝の拙さは置いといて、作品の出来は大変良いですよ。いやホント、久々に映画の構成力について考えさせられました。最近の日本アニメを観て、一番欠けていると感じた重要な要素のひとつです。…なんて、ちょっと言い過ぎかも知れませんけど。
 
 「X-MEN」シリーズ第一作を観たのは、サンディエゴのシネコンでした。丁度コミコンが開かれていた時期に初日を迎えたとあって、映画館の前はコミック・ファンの長蛇の列が出来ていました。しかもこの行列、次の次の回だっていうんだから驚きです。ホントにアメリカ人は、行列するのを楽しんでいるみたいです。まあ、その時のファンの反応ですが、やっぱり黒のコスチュームが不評でしたね。また、原作を大きく変えているところが問題になりましたが、まあマーベルが製作しているし、原作者スタン・リーもOKだって言うんだから、文句は付けられません。それより、映画として上手くまとまっていることを評価する意見も多かったように思います。
 
 それはさておき、このシリーズが始まった当初から、これを三部作でまとめる企画だったかは分かりません。でも、今回の「X-MEN:ファイナル・ディシジョン」を観ると、三部作として実に上手くまとまっていることに驚かされます。「1」のあのシーンがちゃんと伏線になっているとか、「1」や「2」の様々なシーンが「3」で上手く活かされているのが分かって、思わずニヤリとさせられます。それでいて、単独の作品としても、きちんと構成がなされているところが見事ですね。
その上、今回が最後(?)とあって、「X-MEN」の人気キャラが大挙して登場するという大盤振る舞いまでするんですから、呆れます。
 
 もっとも、登場人物が増えた分、個々のキャラクターを掘り下げる余裕はありませんので、物語の本筋に絡まない人物は次々と排除されてゆき、この辺がちょっと寂しいです。特にサイクロップスなんか、「X-MEN」の中心人物なのに、とっても可哀想な扱いを受けていますし、わたしが密かに最強と思っていたローグなんか、「一体おまえはどこをほっつき歩いていたんだ?」と言いたくなるくらいに影が薄いです。
 
 また「X-MEN」シリーズでは、実に細かいところに伏線やファンサービスが仕掛けられていて、これがファンには堪らないようですが、一般の観客には殆ど分かりません。例えば「2」に出てきたナイトクロウラーなんか、本当はミスティークの息子ですからね。このふたりがニアミスして、ファンは感涙にむせったことでしょう。今回の「3」でも、初期の「X-MEN」メンバーが全員登場するという大サービスばかりか、プロフェッサーの元婚約者モイラ・マクダガートまで、もの凄く重要なシーンで登場しています。
 
 そんなわけで「X-MEN:ファイナル・ディシジョン」は、「X-MEN」の事を知れば知る程面白い作品ですが、そんなことを知らない一般客でも「1」と「2」をちゃんと観ていれば、充分楽しめるようには作られています。逆に言うと、「1」と「2」を観ていなければ、何のことだかサッパリ分からないでしょう。まあ、これがシリーズ物の宿命ですから、仕方ありませんが…。
 
 それはともかく、この映画に登場するVFXはとてつもなく凄いです。もう、今はこんな事も出来ちゃうんですね。凄いなあ!これなら「幻魔大戦」なんか軽い軽い。楽勝で出来ちゃいますよ。だって、もっと凄いことやっているんですからね。これにはホント、開いた口が塞がりませんよ。こんな作品こそ、DVDでなく是非とも大画面大音響で観てもらいたいものです。
 
 さて、「X-MEN」の一作目が公開されてから早6年、この映画に出演していた役者も、それぞれアカデミー賞獲ったり、主役を張ったりで、有名になりました。こうして改めて全員揃ったところを見ると壮観です。ギャラも鰻登りで大変でしょう。そんなわけで、どうしたって今回でシリーズをお終いにしないわけにはいかなくなったであろうと、容易に推察されます。もちろん今回は多少ギャラを抑えてもらって、その代わりスピンオフのシリーズを立ち上げるという駆け引きも行われたのではないかと思います。
 
 今回の作品を観て思うのは、やはり6年という歳月の重みでしょうか。みんなあの頃は初々しかったよな、なんて昔を懐かく思いますし、今回も画面一杯に頑張りまくる老人コンビの健在ぶりがこれまた微笑ましくて、とても嬉しく思いました。
 

「グエムル-漢江の怪物-」
9/2
(T109GM)

☆☆☆☆★★
(人に奨めるには、やっぱり微妙だなあ〜)
 ソウル市内を南北に分けて流れる漢江という幅の広い河があります。この河に注ぐ下水構に駐韓米軍が大量のホルムアルデヒドを流したという事件が実際にありましたが、この映画はそれをヒントに作られています。それが原因なのかは分かりませんが、とにかく突然巨大な怪物が真っ昼間に漢江の岸辺に現れ、そこにいた人々をパクパクと食べ始めます。そしてその最中、岸辺で飲食店を営んでいたパク・カンドゥの娘も怪物に掠われてしまいます。悲しみに暮れるパク一家ですが、とあることで娘の生存を確信した家族は、一致団結して娘の救出に向かい、この怪物と戦うことになります。
 
 これは紛れもない怪物映画ですが、単なる怪物退治というよりも、主眼は怪物に家族を引き裂かれたパク一家の悲哀というかドタバタ奮闘ぶりにあります。ですから、ハリウッド風のB級モンスター映画のノリを期待すると、思う存分肩すかしをくらってしまいます。この辺が「殺人の追憶」のポン・ジュノ監督らしさというか、面目躍如ということでしょう。特にラストは好みによって賛否が大きく分かれるところだと思います。私はこういうのもなかなか好きですけどね。(以下ネタバレにつき自主規制:文字を反転させると読めます)
 
 それにしても、この映画には奇妙な点がたくさんあります。娘が何故生きていたかという点は、動物の習性の例からみても有り得ないことではありません。それより不思議なのは、警察も軍隊も保健機構も科学者も、何故この怪物を捕獲しようとしないのかがさっぱり分かりません。なにしろこの怪物は謎のウィルスの宿主(HOST)とされているのですから、当然これを確保して、そこからワクチンを作るというのが本筋というものです。「アウトブレイク」だって、あれだけ宿主の猿を探すのに躍起になっていたのにね…。
 
 そうでなくとも、パク一家以外の人々の行動が全く理解できません。怪物に殺された他の遺族が怪物に懸賞を掛けることもなく、それ目当てのハンターが集まることもなく、怪物に興味を持つ科学者が現れるでもなく、怪物を商品化しようと企む企業もなく、怪物退治に燃える熱血刑事も登場せず、政府も全くの無策というのですから…もう、みんな何を考えているのやらさっぱり分かりません。

 
 まあ、それはともかく、この映画のVFXはさすがに素晴らしいです。ジ・オーファネージ、ケヴィン・ラファティ、WETAワークショップ、ジョン・コックス・クリーチャー・ワークショップといった、世界一流のスタッフが作り出した怪物は、とにかく見事の一言です。モンスターのサイズが10メートルというのも妙にリアルで、功を奏しています。特に真っ昼間に人々を襲うシーンなんかは、悪夢のようなインパクトがあって、怪獣映画史に残るほどの名シーンです。もしかしたら、アカデミー賞にノミネートされるかも知れませんね。
 
 とはいえ、ただのB級に徹していないところが、逆にカタルシスを無くしていることも事実で、それが日本の観客動員にどう響くかが気がかりです(韓国では大ヒットだそうですが、これも文化の違いでしょうか?現在の韓国が丁度日本における安保闘争の時期にあると考えれば、駐韓米軍を悪役視して、頼れるのが自らの力しかないという考え方が受ける理由もよく分かるような気がします)。正直なところ、手放しで人に奨められるワケでもなく、興行的にはかなり厳しい気がします。これが当たらないと、モンスター映画の灯が消えてしまいそうで、それが心配でなりません。…と言う意味では当たって欲しいけど。
 

「ブレイブストーリー」
8/1
(WMCSY)
☆☆☆★★★
(詰め込み過ぎと言うべきか、消化不良と言うべきか、TVシリーズのダイジェスト版みたいな作品です)
 ある人から宮部みゆきはポポロのファンだと言われたことがあります。事の真偽は分かりませんが、この作品を観て、宝玉を集めて剣を強くするとか、頭の上に乗っているモノとか、ネコのガールフレンドがいるとか、願いをひとつだけ叶えるとか、終わり方とか…、似て無くもないなと思いました。
 
 まあ、それはさておき、「ブレイブストーリー」はなかなか良くできた作品です。冒頭の現実世界のシーンと最後のシーンの絡み、現実世界から幻界(ヴィジョン)への持って行き方など、さすがに上手いと思いました。(でも、何故ミツルは外に出られたのだろうか?何故扉のことを知っていたのだろうか?)内容にしても、見せ場は沢山あるし、おかしなキャラクターや種族や怪物たちも沢山出てくるし、さまざまな街や都市も出てくるし、もうてんこ盛りです。
 
 ただ、色々な要素を詰め込みすぎて、それぞれのキャラクターやエピソードがほとんど活かされていません。そのため、すべての印象が希薄になり、結局全体の印象まで希薄にしています。これは実にもったいない。だいたい、各キャラクターのお話にしても、観客に放り投げたまま、何も回収していません。まるで、キャラ紹介のままで終わっているのです。このあたり、どうも商業主義が見え見えという感じがして、好きになれません。(恐らく、TVシリーズも考えているのでしょうね)
 
 絵についても、GONZOお得意のCG映像が人物の動画と違和感がありすぎて馴染めません。実写取り込みの背景やモーション・キャプチャーの動きも、どうも好きになれません。この辺り、手作り感に拘るジブリとは製作姿勢の違いを強く感じます。
 
 そして、最も違和感があったのが声優陣です。特にワタル役の松たか子はいかがなものでしょう。どう頑張っても、少年の声には聞こえないのです。そのため、ワタルが喋るたびに松たか子の顔が浮かび、結局最後まで主人公に感情移入出来ませんでした。有名人に声を吹き込ませて、話題作りしたいという気持ちも分からなくありませんが、もういい加減にこういう悪習はやめにしてもらいたいものです。どうしても松たか子に声優をさせたいのなら、いっそのこと主人公を少女にした方が何倍も面白くなったのではないかと思いますよ。
 
 結局のところ、プロが集まって万人に受けるように作られているのですが、それぞれの思惑がてんでんバラバラの方向を向いているので、どうも作品全体にまとまりのない印象を受けました。でも、それなりのレベルには達していますから、一般客にはちゃんと楽しめます。悲しいことですが、少なくとも「ゲド戦記」よりは面白いでしょうね。

 でも、やっぱり…ファンタジーを粗末に扱っている気がしてならないんですよ、これが。

「ゲド戦記」
8/1
(WMCSY)
☆☆★
(作品としてはダメでも、「ハウル」よりは好感が持てました)
 前回のジブリ作品「ハウルの動く城」を酷評した私ですが、今回は内心少し期待していました。どんな事情かは分かりませんが、監督が息子の吾朗氏に変わりましたので、いくらなんでも同じ過ちはしまいと思ったわけです。たしかにある意味「ハウル…」よりは良かったです。
 
 これまでも原作を改変する事はよくありましたが、時間の限られた映画という性格上、ある程度の改変は致し方ないことです。少なくともひとつの作品として話がまとまっていて、原作者が伝えたい主題なりメッセージがちゃんと込められていて、より面白くなっていれば、それなりに許されると思います。前回の「ハウル…」はたしかに映像としての面白さはありましたが、前二つの条件に関しては完全に欠落していました。《原作を大切にしないヤツは嫌いだ!》
 
 恐らく制作スタッフの中にもそのことに対する不満があったのではないでしょうか?今回の「ゲド戦記」には前二つの条件を満たそうという努力の跡が見られます。でも、残念ながらそれを表現する能力が圧倒的に足りませんでした。伝えるべきメッセージの伝え方を知らず、すべてセリフに頼り、それでいて観客に必要な情報も与えられないという、ごく初歩的なミスを犯しています。その上、これまでのジブリ作品に見られたような、目を見張る動画シーンもありません。おかげで極めて冗漫な作品になり、観客は二時間睡魔と戦うハメになってしまいました。《観客を大切にしないヤツは嫌いだ!》
 
 また、全体的に実にこぢんまりした、非常に地味な作品という印象を受けます。世界的な広がりが表現されていないので、世界の均衡が崩れると言っても、どうもピンと来ません。だいたい城の兵士が十人程度しかいないというのも寂しすぎます。これではさすがに敵の強さも表現できません。ウソでも兵士は百倍欲しいところでしょう。《見せ場を大切にしないヤツは嫌いだ!》
 
 ただ、手嶌葵の歌だけは素晴らしい。もう、この歌がすべてと言っても過言ではありません。手嶌葵はテルーの声を担当していますが、声優としては素人なので、どうしても棒読みになってしまいます。でも、この素人臭さがかえって朴訥な感じを出し、非常に良いです。今回のクロード・ロラン風の背景画も、監督の吾朗氏も朴訥。まさに「ゲド戦記」は、これまでのジブリ作品にあったケレンさ派手さを捨てた、実に朴訥な作品でありました。《歌を大切にするヤツは大好きだ!》

「パイレーツ・オブ・カリビアン〜デッドマンズ・チェスト」
7/15
(WMCSY)
☆☆☆☆☆★★★?
(もはや、海賊版スター・ウォーズ!でも散漫な印象で、後に何も残りません)
 ディズニーランドのアトラクションを映画化した前作「パイレーツ・オブ・カリビアン〜呪われた海賊たち」の続編です。しかし、ただの続編と侮ってはいけません。前作が大当たりしたので急遽シリーズ化を決定したのでしょうが、とてもそんな風には思えない程、シリーズの中編としてハマリ込んでいます。

 シナリオ的には、説明不足があったり、伏線を回収しきれなかったり、色々と問題がありますが、まあそれはおいといて…前作で登場した、あんなことやこんなことがすべて今作に絡み、そして次回作にちゃんと繋がっていく構成は実に見事です。全体で三部構成だそうですが、これはもう海の「スター・ウォーズ」シリーズですね。そう、三部作の中盤として、まさに「帝国の逆襲」の趣がこの作品にはあります。素晴らしいですよ。
 
 それにしても、最近のビジュアル・エフェクトの進化には目を見張るものがあります。今作の殆ど漫画みたいな超絶アクション・シーンにしても、怪物との大スペクタクル・シーンにしても、一昔前には考えられない程の完璧な映像に仕上がっています。それに、キャラクターの造形に施されているCG技術も実に素晴らしい。単純に「メイキャップ」と分類出来ない、新たな分野の誕生を予感させます。間違いなくアカデミー賞の候補となることでしょう。
 
 とても面白いなと思ったのは、ジョニー・デップ、オーランド・ブルーム、キーラ・ナイトレイの三人の主役たちが、それぞれ均等に活躍するという点です。それだけこの三人が同じように大スターになったという証でしょうが、それよりも男二人に女一人という黄金の組み合わせを着実に実践した、当然の帰結と言うべきでしょう。
 
 製作費を抑えるために二部と三部を同時に製作したと聞きますが、最も大きな理由は主演三人のギャラ対策でしょう。前作の成功で押しも押されぬ大スターとなった三人のことですから、出演料の高騰は避けられない問題です。この二部が成功したら、その続編は更に出演料が高騰するでしょうから、二部と三部を同時に製作してまとめて契約する方が全体としての製作費を抑えられるワケです。それでも製作費の半分は、この三人のギャラに消えるでことになるしょうけど…。
 
 とにかく「パイレーツ・オブ・カリビアン〜デッドマンズ・チェスト」はシリーズ三部作の中編として大変良く出来た作品です。しかし、中編という性質上、一般の観客にどれだけ受け入れられるかは疑問の残るところです。でも、三人のスターが充分集客力を持っているので、その心配は無用でしょう。
 
 いずれにせよ、私はこの作品が大変気に入りました。だって疑似「帝国の逆襲」ですもの。きっとルーカスも、大いに触発されることでしょうね。

「M:i:Vミッション・インポシブル3」 
7/1
(T109GM)

☆☆☆☆★★★★
(トムはジャッキーになりたかったのか?CGを使ったアクションが多過ぎです)
 だいたい私はトム・クルーズ版「M:iミッション・インポシブル」シリーズが好きではないのです。TVシリーズのファンなら、「M:i:T」からして許せない。「M:i:U」なんて噴飯モノです。そんな私でも、この「M:i:V」はさすがに面白いと唸ってしまいました。今回脚本監督に起用されたJ.J.エイブラムスの演出が冴えていて、息つく暇もないテンポの良さです。この面白さ、まるで「24」みたいですが、さすが「エイリアス」「LOST」といった超人気TVシリーズを手がけているJ.J.エイブラムスだけのことはあります。TV仕込みの「引き」の巧さで、観客をグイグイ引っ張っていきます。
 
 とにかくシナリオが上手い。最も緊張するシーンから始めるという構成も心憎いです。今回、主人公のイーサン・ハントにジュリアという恋人(イメージがケイティ・ホームズとダブる)が登場するのですが、ハントが不可能なミッションに挑む動機も、すべては恋人を救うためですから、素直に感情移入できます。
 
 「トゥルーライズ」みたいだとか、ジャッキー・チェンの映画のようだとか、「ハドソン・ホーク」みたいだとか、観たことのあるシークエンスの連続ですが、そこはそれ、一捻りも二捻りもしてあります。難易度やスケールも大きくなっているところは、さすがハリウッド大作です。劇場の大画面と大音響で鑑賞すれば、殆どの人が満足できるはずです。きっと大ヒットするでしょうね。さあ、次回の舞台は東京だ…多分。
 
 ところで、気になったのですが…バチカンで通訳をしていた女性は、どんな失敗をしたのでしょうか?

「カーズ」
7/1
(T109GM)

☆☆☆☆☆★★★★
(キャラ作りにピクサーの秘密を垣間見た!)
今まで「ピクサーにハズレ無し」という法則通り、数々の傑作を世に送り出してきたピクサーですが、今回もまたやってくれました。いやあ、こりゃ面白い!クルマだけのアニメだなんて、よくもまあ考え付いたものです。(実際には戦闘機も出てきますが…)
 
 ピクサーのアニメが素晴らしいのは、技術の高さはもちろんのこと、キャラクター作りの見事さもさることながら、なんといっても徹底したシナリオ作りにあります。監督脚本のジョン・ラセター自ら「最も重視するのはシナリオだ」と語るように、ピクサーアニメのシナリオにはいつも感心させられます。子供にも分かる、笑いあり涙ありのお話の中に、主人公達の成長やメッセージがしっかり込められていて、劇中登場するすべての要素が最後にちゃんと集約される構成力はあいかわらず見事です。
 
 自信過剰な若き天才レーサー〈マックィーン〉は、ピストン・カップ決勝戦の行われるカリフォルニアに向かう途中、自分の身勝手から仲間とはぐれてしまいます。やむなく高速道を外れたマックィーンが迷い込んだのは、ルート66沿いの寂れた街〈ラジエーター・スプリングス〉でした。そして、ひょんなことで大騒動を巻き起こしたマックィーンは、やむなくこの街に留まることになるのです…。
 
 都会人が古き良き田舎の町に迷い込み、素朴な街の人々に触れるうち、精神的に癒され成長していくという話は良くあるパターンです。でも、それをすべてクルマでやってのけるというのが、実にユニークです。それぞれのキャラをメーカーや車種で如実に表現できてしまうというのも、クルマならではのことでしょう。この辺り、細かいところまで良く作り込まれていて、カーマニアならずとも思わずニヤリとさせられます。さすが、モータリゼーションの国アメリカならではのアニメと言えるでしょう。
 
 クルマの擬人化で特に感心するのは、フロントガラスに目を付けた点です。普通ならライトを目に仕立てるものですが、それでは車種の特徴でもあるライトの形によって表情が制限されてしまうし、表情を出すためにはライトを不自然に大きくしなければなりません。主人公がレースカーだから(大きなライトがない)ということもあるでしょうが、フロントガラスに目を付けて、ワイパー(の跡)のような眉毛で表情を出すなんて、ホントに目の付け所が良いなと思います。
 
 名前の付け方にしても、映画ファンの心をくすぐる遊び心があります。なにしろ主人公の名前がマックィーンというのがまず泣かせます。「栄光のル・マン」や「ブリット」のカーアクションで有名なS・マックィーンの名をあえて付けたくらいですから、当然「大脱走」のように有刺鉄線に絡まって捕まるのはお約束でしょう。
 
 自信過剰の若きレーサー(マックィーン)と往年のチャンピオン(ドック・ハドソン)という組み合わせは、「デイズ・オブ・サンダー」(マックィーンはサンダーよりも速いライトニング)のトム・クルーズとロバート・デュバルみたいです。ドック・ハドソンという名前からは、往年の二枚目俳優ロック・ハドソンを思い浮かべますが、実は彼の主演作に「自動車」というTVムービーがあります。しかもその声を演じているのが、自身もレーサーの名優ポール・ニューマン。ということは、同じくトム・クルーズと共演した「ハスラー2」の関係をこの二人に見出すことも出来ます。
 
 そんなわけで、「カーズ」はクルマが好きな大人も子供も楽しめる、笑ってホロリと泣ける、ピクサー印の傑作アニメと言えるでしょう。声優の使い方に大きな意味があるので、出来れば吹き替えでなく字幕版でお楽しみ下さい。

「ウルトラ・ヴァイオレット」
7/1
(T109GM)

☆☆★
(CG使い過ぎで臨場感皆無です。レトロな「ガンカタ」が懐かしい!)
 「リベリオン」のカート・ウィマーが脚本監督するというので期待していましたが、一体どうなっちゃったんでしょう?いきなりナレーションで世界観を色々説明されるのですが、もう、何が何だか分かりません。理解不能です。舞台は近未来。新種のウィルスが蔓延した世界。ウィルスに感染すると「ファージ」とかいう超人間になるらしい。どういう風に感染するのかはよく判らないけれど、体液とかが接触すると感染するらしい。よく見るとファージには牙みたいなのがあるし、夜に活動するそうなので、きっと吸血鬼みたいなものだろう。とにかく人間政府はファージを殲滅するために、ある秘密兵器を開発しました。まあ、あとはその「秘密兵器」をめぐる、人間とファージとの攻防というわけです。(でも、その他に何とか言う別の人種もいるらしい…ってか?)
 
 主人公のヴァイオレットは12年前に夫とお腹の子供を政府に奪われて、ウィルスに感染し(感染が先か、奪われたのが先か、よく分からない)ファージとなりました。プログラムの解説によると、ファージは12年しか生きられないそうです!(成る程吸血鬼とは違う。でもそれなら、12年間ファージを封じ込めば勝手に死ぬはずだが…)そんな事情もあって、秘密兵器の正体を知ったヴァイオレットは仲間のファージ達も裏切ることになってしまうのです。(この辺り、「グロリア」とか「レオン」のノリを狙ったのでしょうが、殆ど伝わりません)感染してから12年目ですから、寿命の残り少ないヴァイオレットはやけのヤンパチです。相手が何人いようとかまわず突進あるのみ。対する人間政府やファージ地下組織側ときたら、無為無策の円陣攻撃ワンパターン。そんなことしたら同士討ちするのは目に見えているじゃないですか!
 
 それにしても、髪の毛の色がコロコロ変わる意味が分かりません。兵士が身に着けているゴツイ戦闘服に、何の防弾効果も防御力もないというのが分かりません。ヴァイオレットが身に着けている「重力レベラー」(重力の方向が変わる!)とか武器ポケット「ブレスレット」(銃とか剣とかが出てくる!もちろん銃弾も無尽蔵!)とか、アイデアは面白いんですけど、使い方が突拍子もないです。本来なら「重力レベラー」は敵の基地に潜入する時や逃げる時に使えるし、「ブレスレット」から爆薬やミサイルを出したって不思議はないのですが、そういう使い方はしないんですね。 
 
 これと似たような映画に「イーオン・フラックス」というのがありましたが、コミックが原作だからといって、何から何まで荒唐無稽で済ましていいものでしょうか?少なくとも、お話だけはちゃんとしてもらわなければ、観ている観客が可哀想です。何とか物語を理解しようと務めても、画面から「理解を超えた世界だ」なんて3度も突っぱねられてしまうのですから、たまったもんじゃありません。しかも、肝心のクライマックスが、ホントに真っ暗って、どういうことなんだ!?こりゃ、来年のラズベリー賞最有力かも知れませんぞ! 

「ナイロビの蜂」
6/1
(WMCSY)
☆☆☆☆☆★★★★
(ミツバチは一度刺すと、針が抜けて死んでしまいます。この邦題は素晴らしいと思いますが、これって日本版原作本のタイトルだったんですね。翻訳者の功績でしょうか?)
 ナイロビの空港(多分ウィルソン空港)で妻テッサを見送った英国外務省一等書記官ジャスティンのもとに訃報が入ります。ロキへ向かったとばかり思っていた妻の遺体がトゥルカナ湖で発見されたと知ったジャスティンは、テッサの行動に不審を抱きます。妻はなぜそんな場所に、何をしに行ったのだろうか?そして事故死と報告された妻の死因と謎の行動を探るうちに、ジャスティンはアフリカの大地で繰り広げられている闇の部分を知ることになるのです…。
 
 ハッキリ言って、CMで強調していることは、この映画の主題の一部でしかありません。もっと深くて重いテーマが、この映画にはあります。この作品はラブストーリーであると同時に、サスペンスドラマであり、硬派な社会派ドラマでもあるのです。むしろ主眼としているところは後者の方にあるかも知れません。ですから、韓流映画のような甘い恋愛ドラマを予想していると、そのあまりに重いテーマ性に面食らってしまうかも知れません。アフリカを舞台にしながらも、野生動物なんて鳥くらいしか出てきませんから、雄大なアフリカというイメージからすると、ちょっと期待はずれかも知れません。でも、一般にイメージされている野生の王国なんて実際には自然保護区だけの話ですから、これがアフリカの現実なのです。
 
 それにしても、この映画で最も驚かされることは、ナイロビのスラム街でちゃんとロケをしていることです。こんなこと、ケニヤ政府の協力無しでは有り得ません。普通の観光客がこんな所へ行ったら、身ぐるみ剥がされちゃいますからね。エンドロールを見ると実際ケニヤ政府が協力してくれたようなので、これにも驚かされます。昔は税関でもワイロを渡さないと通してもらえなかったような国が、自国の恥をさらすような映画にも協力するようになったのですから、大変な変わりようです。ともかく、こんなにも治安が悪く不衛生な場所でのロケを敢行した、撮影スタッフと俳優達の努力と勇気には頭が下がります。
 
 この作品の原題は「The Constant Gardener」ですから、直訳すれば「誠実な庭師」ということになるのでしょうが、主人公が庭いじりにかまけているという描写が希薄なので、邦題の「ナイロビの蜂」の方が内容にマッチしているような気がします。ことに「蜂」という言葉が色々なことを暗示していて、優れたタイトルだと思います。つまり、それは企業の名前であり、甘い蜜を搾り取られるアフリカの人々であり、そういった現状を告発する活動家を意味します。もちろん、原題の方も「Gardener」と「guardian」をかけているようで、なかなか味わい深いタイトルです。つまり、前者はジャスティンであり、後者は夫を守るテッサと捉えることも出来るのではないでしょうか?
 
 出演陣の演技もさることながら、フラッシュバックを多用してまとめあげた演出の腕も、巧みなシナリオも、泣かせる音楽も、すべてが一級の見事な作品です。「シティ・オブ・ゴッド」で名を馳せたフェルナンド・メイレレス監督ですが、その実力が本物だということを、この映画で証明したように思います。力強くキレのある演出が、観る者の心に重いメッセージと感動を与え、やるせない現実と隠された愛が涙を誘います。

 とはいえ、個人的には主人公の行動が今一つ理解できません。私ならトゥルカナ湖に行かず、そのまま逃げるけどなあ…。それじゃ、愛がないかな?

ダ・ヴィンチ・コード
5/20
(WMCSY)
☆☆☆★★★ 
(どこが「ダ・ヴィンチ・コード」なんじゃ?というのはさておき、ラングドン教授の講義は★★★★★!DVDには是非とも講義の特典映像を付けてください、ソニーさん!)

 科学や芸術に携わる人々にとって、自然の摂理や自由な感性こそが最も尊ばれるものです。ですから、権力や宗教の教義によって縛られたり歪曲されることは実に不本意なことです。そんな場合、多くの芸術家はささやかな抵抗として、どこかに自分の主張を潜り込ませるものです。ですから、レオナルド・ダ・ヴィンチが自分の作品の中に自分の思いを忍ばせていても、なんの不思議もありません。ただ、後世の人々がそのことに気づいて、それを「暗号」だと騒ぎ立てるだけのことなのです。ですから、「ダ・ヴィンチ・コード」といっても、そうとり立てて騒ぐ程のことではありません。もちろん、宗教の立場からすると大問題なのですが…。
 
 さて映画の方ですが、カンヌでの評価が散々だったとか、でも次の日はスタンディングオベーションだったとか、教会が抗議しているとか、上映禁止の国もあるとか、様々な噂やニュースが飛び交っていますが、蚊帳の外のわたしにしてみれば、大変贅沢な娯楽作品という印象でした。なんてったって、ドラマの背景には常に名画や彫刻や建物などの芸術作品があるのですから、それらを観るだけでも充分楽しめてしまいます。
 
 原作本は3冊にも渡る大長編だそうで、それを2時間半の映画にまとめたのですから、さすがに忙しい内容になってしまいました。「シオン修道会」とか「テンプル騎士団」とかいった宗教がらみの名称や「ウェストミンスター寺院」「ロスリン礼拝堂」といった名所旧跡、「最後の晩餐」やら「岩窟の聖母」といった名画などが、とにかく次から次へと飛び出して、まるでウンチクのジェット・コースターみたいです。多少の知識はあると自負していた私でも、それぞれの意味を咀嚼するのに忙しくて、折角の謎解きやサスペンスを楽しんでいる暇などありません。とはいえ、それでも途中でオチが推測できたのですから、結構脚色も分かりやすく整理されているのでしょう。
 
 しかしこの作品には、どうしても理解できない3つの謎があります。(以下、極度のネタバレにつき、自主規制します)
 
 一つめは「なぜタイトルがダ・ヴィンチ・コードなのだろうか?」ということです。原作のラストは知りませんが、この展開とこの終わり方にはどうも納得できません。順当に話をまとめるなら、当然ラストは「モナリザ」であるべきでしょう…。 「モナリザ」の右手はなぜか大きく描かれていますが、それは大きなお腹を右手で押さえているから、その分手前に来て大きく見えるのです。更に、「モナリザ」のX線写真を撮ったところ、その下にキリストらしき顔が浮かび上がったのだそうです。そのことから、モナリザはマグダラのマリアであり、マリアとキリストの子がお腹の中にいるということを、この絵は示唆しているのだという説もあります。この説を採るなら、最後はモナリザの絵で終わるのが、最も美しい終わり方のように思います。
 
 二つめの謎は「なぜオドレイ・トトゥがソフィーなのだろう?」ということです。ラングドン役のトム・ハンクスもイメージが合いませんが、ソフィー役といったら、若い時のソフィー・マルソーを連想してしまいます。(出来れば、若い時のオリビア・ハッシーが良いな)原作にどう描写されているかは知りませんが、前述の理由からいってイメージが違うように思うのですが…。
 
 そして3つめの謎は、「なんでソニエール館長はあんなメッセージを残したのだろうか?」ということです。そもそも、あんなメッセージを残す事自体不可能に思えますが…、百歩譲っても、最も大切なモノをわざわざ危険にさらすという行為が、どうにも理解できません。それに、本当なら陰の守護者がいても良いはずなんですけど…。 (原作では、多少なりとも理由が書かれているらしいですが…)

 

 というわけで、文句たらたらですが、結局かなり楽しませてもらいましたし、DVDが出たら、何度も観たいと思う作品でもあります。宗教にあまり拘りのない日本人には意外と受けるかも知れませんね。

アンダーワールド〜エボリューション
5/1
(WMCSY)
☆☆☆☆★★★ 
(前作を観ることが必須です)

 これは前作「アンダーワールド」の完全なる続編で、前作を観ていなければ何が何やらさっぱりというくらい、観客を選ぶ作りになっています。前作では狼人間(ランカー)と吸血鬼(ヴァンパイヤ)の戦いとういう古典的な構図を現代(?)に持ってきたところが新鮮でしたが、今回はその抗争の起源とも言うべき「始祖」の謎が明らかになります。
 とにかく、始祖は最強らしいです。しかも、その後の子孫はみな始祖の「何か」を受け継いでいるらしい。でも、ハイブリット(混血種)はすべてを超越した存在のようだ。−−というわけで、始祖から受け継いでいる「何か」を断ち切り、ハイブリットが目覚め、「エボリューション」が起こるワケなんです。
 でも、まだ主人公セリーンの立場が今一つハッキリしません。もしかしたら、まだ謎があるのかも知れません。なんでも最初から3部作の構想だったそうですから、次回作でとんでもないことが起きるかも知れませんね。
 前回の話とリンクしている部分も多いので、「アンダーワールド」を観ていないと、今回の作品を楽しむのはなかなか難しいでしょう。でも、前作で世界観や主人公達の紹介が済んでいるので、今回はひたすらエンターテインメントに専念することが出来ました。おかげでアクションの方も、あの手この手といろいろな仕掛けも豊富で、飽きさせません。しかも、久しぶりに画面にボカシが入っていたりして、別の楽しみも増えました。
 ただ、狼人間と吸血鬼の戦いという構図にも、少々飽きが来たように思います。3部作の最後を飾る次回作では、さらに驚愕の何かを是非とも用意して欲しいものです。
 今回、劇場も少ないこともあって、かなりマニアックな観客が集まっていたようで、観客の反応もなかなか良かったように思います。「ウィリアムが可哀想!」という感想が多く聞かれました。う〜む、たしかにその通りだ!

Vフォー・ベンデッタ
5/1
(WMCSY)
☆☆☆☆★★★ 
(観客に媚びない作りなので、誰にでも奨められるわけではありません)

 アラン・ムーア作、デイビッド・ロイド画の有名なコミックを「マトリックス」シリーズの助監督だったジェイムズ・マクティーグが監督し、ワチャウスキー(この発音が正しいそうです)兄弟が製作した作品です。まだ原作を読んでいないのでよく判りませんが、原作とはかなり世界観がかなり違うようです。でも、「V」という仮面のテロリストの登場する、政治色の強い物語というところは同じようです。まあ、どちらにしても、原作とは別の独立した作品として観るべきでしょう。
 この作品、予告からして捕らえ処のない、微妙なニュアンスを漂わせていましたが、観てみたら、たしかに良い意味で期待を裏切られました。だいたい「マトリックス」ばりのアクション映画を期待してみたら、まず肩すかしを食ってしまいます。これはむしろ、反体制的な色合いの強い復讐劇であり、叶わぬ愛の物語でもあります。例えて言えば「巌窟王」であり、「オペラ座の怪人」であり、「1984」「華氏451」「時計仕掛けのオレンジ」「未来世紀ブラジル」…といった要素をふんだんに織り交ぜた、刺激的なエンターテインメントであります。何より、最近地下鉄爆破テロの起きたばかりのロンドンが舞台だということが、とにかく驚きます。こういう作品を堂々と作る製作者の気概を感じます。
 そんなわけで、この作品は間違ってもB級作品ではありませんから、その内容も奥が深いものがあります。出ている役者も一級揃いですから、その演技を観ているだけでも重厚な雰囲気が漂って、まるでシェークスピアの「マクベス」を観ているかのようです。演出のキレも鋭く、複雑な内容の割りに、最後まで緊張を持続させる手腕はなかなか見事です。
 この作品で特に素晴らしいのは、なんと言ってもV演じるヒューゴ・ウィービングの演説でしょう。淀みなく理路整然と、詩を朗読するかのように、程よい抑制を持って、しかし充分聞く者の心を高揚させる、実に素晴らしい演説です。字幕の訳も素晴らしい。(あの人じゃないので納得!)
 ところで、私はこの映画を観ていて、色々な疑問が浮かんでしまいました。(以下ネタバレにつき自主規制!)例えば、Vはどうやってあんなに巧妙な仕掛けが出来たのだろうか?とか、資金源はどうしたんだろう?とか、大量の物資をどうやって運んだのだろうか?とか、膨大な数の仮面や衣装はどこの工場で作ったのだろうか?とか…とにかくやることが大がかりなので、どう考えてもたったひとりでは不可能です。それに、最後のシーンでも、どうしたら示し合わせたように、みんな同時に整然と行動を起こせたのか?このあたり、とっても不思議でした。こんなことをするには絶対仲間が必要だと思うし、画面には全く登場しませんが、ちゃんとした地下組織があるんじゃないかとさえ思うのです。で、ふと思いつきました。Vは偶然超人的な能力を身につけましたが、もしかしたら、それは身体能力だけはなかったのかもしれません。昔「催眠」「千里眼」という映画がありましたが、あれと同じような能力を持っていたのではないでしょうか?Vはたしか、眼もないはずですから、その可能性は充分あると思うのです。そう、あの演説にはそういう意味合いもあったのですよ、きっと!

ファイヤーウォール
4/1
(WMCT)
☆☆☆★★
(シナリオは上手いし、演出も手堅いですが、それだけなのが難点です)

 ハリソン・フォード主演のサスペンスドラマです。フォード演じる主人公は、銀行のコンピュータ・セキュリティの責任者ですが、銀行強盗団に家族を人質にされて、銀行強盗に協力するように強要されます。銀行強盗と言っても、現金を盗むわけではなく、ネットを使って犯人の口座に顧客のお金を振り込ませるという、サイバーな手口を使います。
 
 ことは数字を動かすだけのことですから、実際の犯行は実に簡単に済んでしまいます。ここがこの映画の面白いところでもあり、最大の弱点でもあります。なにしろ、実体の見えない大金が、ボタン一つであっちへ行ったり、こっちへ消えたりするわけですから、どうにも実感が湧きません。役者は一級だし、シナリオも良くできているし、演出も上手いのですが、観終わった後にどうも今一つスカッとしません。やっぱり、現ナマの山を見せられないと面白くないですね。

「ファイヤーウォール」は良くできた作品です。シナリオは上手いし、演出も手堅いです。結構感心するシーンもあります。作品の評価としても及第点を取れています。でも……それだけです。

 この作品に出ている、ロバート・パトリックを主演か犯人役にしたら、はるかに面白かったと思います。でも、それでは観客を集められなかったでしょうね。そこが難しいところです。旬なネタなので、早めに観ておかないと、中に出てくる小道具が全く意味を成さなくなってしまう危険もあります。
 
 関係ないですが、この監督は結構な映画マニア、それもB級オタクと見ました。ハリソン・フォードなんかが出てこない、もっと軽いB級映画を撮れば良いのにと思ってしまいます。
 

ドゥーム
4/1
(WMCT)
☆☆☆★★
(ゲームの映画化ではなく、映画のゲーム化です)

 有名なシューティング・ゲームの映画化です。ゲームを映画化したものには、一つとしてまともな作品はありませんでしたが、この「ドゥーム」もまた然りです。しかし、今までのようにゲームを映画化するのではなく、映画をゲーム化しようという開き直りが、この映画を特異なものにしています。
 
 その一つが、映画史上初めてとも言える、主人公の視点で延々続けられる、シューティング・シーンです。これはゲームファンならずとも、結構燃えます。とにかく、もったいぶらずに単刀直入で本題のドンパチに入るという、スピーディーな話の展開も小気味良いです。もちろん、主人公達の装備している銃器は過激だし、理屈よりも見た目重視の潔い姿勢にも好感が持てます。まさにB級街道まっしぐらの、愛すべき作品と言えるでしょう。本当にバカ映画ですけど、劇場で観たら楽しいですよ。ゲームと割り切って観る必要がありますけれど。

 それにしても、主人公が双子である必然性は全くありません。この設定にはどんな意味があるのでしょうか?


サウンド・オブ・サンダー
4/1
(WMCT)
☆☆☆★★
(未来なのに古い!)
  レイ・ブラッドベリ原作のタイムトラベルものです。タイムトラベルの鉄則として、「過去に干渉してはいけない」というのがありますが、過去に行って恐竜狩りをするツアーというのがそもそも乱暴な話です。一応、あらかじめ死ぬ予定の恐竜を、何の痕跡も残さず殺すということで、何とか過去を変えないように繕うのですが、元々無理のある計画ですから、ほんの少しの手違いで、過去から1.3gの〈ある物〉を現代に持ち帰ってしまいます。
 
 過去では些細な変化も、膨大な時間をかけて因果応報をくり返すと、とんでもなく大きな変化を現代にもたらしてしまいます。その変化の波(タイム・ウェイブ)が、まさに津波のように現代へ繰り返し襲いかかって来るところが、この作品のユニークなところです。このあたり、タイムトラベルものとしても、なかなか面白いです。
 
 しかし、この映画の製作中に大きな問題が生じたため、あまりに製作時間が掛かってしまいました。おかげで、製作費の割りにはSFXがショボイですし、どうしてもCG技術の古さを感じてしまいます。それに、最初思わせぶりに出てきた人がいつの間にか消えたり、なんだかお話の構成もバタバタしています。何事も、製作時間が掛かるとロクなことはありません。未来の話なのに、古い映画を観ているような印象です。アイデアは面白いんですけど…古いなあ。
 
 ところで、よく考えてみると、恐竜狩りの後に火山が爆発して、すぐに火砕流が現場を焼き尽くしてしまいますから、たとえ1.3gの〈ある物〉を持ち帰ったとしても、全くと言っていい程影響は無いような気がします。
 

ナイト・オブ・ザ・スカイ
3/1
(WMCSY)
☆☆☆☆★★
(航空機ファンは必見!)

 湾岸戦争の頃フランスに行った時、搭乗機がヨーロッパ上空にさしかかると、どこからともなく戦闘機が近づいてきました。件の戦闘機はしばらく併走して飛んでいましたが、後で聞いたところによるとテロを警戒してNATO軍機が旅客機を護衛していたのだそうです。もちろん帰りも護衛機が付きましたが、結構近くを飛んでいたので、双眼鏡があればパイロットを確認できたかも知れません。この「ナイト・オブ・ザ・スカイ」を観て、まさにその時のことを思い出しました。もっとも、この作品では旅客機の真下に隠れるのですが…。
 
 「TAXI」のジェラール・ピレス監督が放つ「ナイト・オブ・ザ・スカイ」は、SFXを極力廃した、本物志向のスカイアクション映画です。主役はまさにミラージュ2000戦闘機。フランス空軍の全面協力の下、フランスの誇る新鋭機の魅力を余すところ無く伝えてくれます。これはある意味、戦闘機のプロモーション映画と言っても過言ではありません。

 とにかく臨場感が素晴らしく、今まで色々なSFXを観てきましたが、流石に本物には敵わないなと痛感します。戦闘機が雲を抜けるところでは、雲が水滴の集まりであることを再認識させられますし、飛行機雲が渦を巻きながら尾を引いていく様には、その美しさに見とれてしまいます。そして特に驚くのが、超音速で超低空飛行するシーンです。アニメやSFX映画でおなじみのシーンですが、実際の衝撃波がどれ程凄いモノかということを思い知らされて、身震いを禁じ得ません。恐らくこの映画以降、アニメやSFXでの同様のシーンに大きな影響を与えることは間違いないでしょう。
 
 更に驚くのが、キャストが実際に戦闘機に同乗して撮影したということです。もちろん特殊な訓練を受けたということですが、それにしても一般人が超音速機に同乗するなんて!一昔前なら考えられないことですが、それだけ乗りやすくなったということをアピールしたかったのでしょうか?
 
 そんなわけで、航空機ファンなら泣いて喜ぶ映像満載の本格航空機アクション映画ですが、
その本物志向が逆に限界を設けて、映像表現の自由を奪っていることも事実です。最後のクライマックスだって、本当ならパリ上空で壮絶な空中バトルを繰り広げて欲しかったし、セーヌ河やシャンゼリゼを超低空飛行して欲しかったと思います。まあ、SFXでも描写が難しいでしょうけど…。

プロミス/PROMISEー無極
3/1
(WMCSY)
☆☆☆☆★★★
(撮影隊がロケ地にゴミを置き去りにして、後で大問題になりました。ゴミは持ち帰ると約束していたのに…)

 「さらば、わが愛/覇王別姫」や「北京ヴァイオリン」など優れた作品を世に送り出したチェン・カイコーが脚本・監督し、真田広之、チャン・ドン・ゴン、セシリア・チャンら日本・韓国・中国の有名スターが共演したファンタジー巨編です。正子公也の描くデザイン画の段階から東洋美溢れる世界観に大きな期待を抱かせた注目作ですが、実際出来上がった作品を観ても、非常に美しく印象的なシーンの数々に驚かされます。
 
 しかし、作品全体としてみれば、個々のシーンの繋がりに今一つ関連性が薄く感じられ、綺麗なシーンを羅列しただけという印象が残ってしまいます。…というか、話が突飛すぎてわかりにくいというのが正直なところでしょう。が、その原因の多くは「プロミス/PROMISE」といタイトルにあります。このタイトルはハッキリ言って間違っていますし、観客に大きな誤解を与え、作品を余計にわからなくさせています。これは原題の通り「無極」とすべきだったと思います。
 
 原題の「無極」とは古代中国の哲学的概念で、何も無いと同時に無限を表します。あるいは道の元であり、すべての起因となる点とも解釈されます。池に石を投じると水面に波紋が広がるように、「無極」が動けば「陰」と「陽」に分かれ「太極」が生まれます。円の中に黒と白の巴を描いた「太極図」というものがありますが、「陰が過ぎれば陽となり、陽が過ぎれば陰となる」という陰陽の関係を二つの巴が表しています。また二つの巴の中にはそれぞれ白と黒の小さな円が描かれ、これは陰の中に陽が、陽の中に陰が内包されていることを示しています。
 
 というわけで、この「無極」という概念を踏まえて作品を観ると、様々なシーンで示唆に富んだ描写を見出すことが出来ます。まず、冒頭のシーンで満神が少女に問いかけることによって「無極」が動き、道が生じます。大将軍光明とその奴隷昆崙は名前からも陽と陰の関係にあり、太陽と月は二人を表し、光明の鎧を着た昆崙はまさに陽の中の陰を示します。そして、この二人の間にあって愛に揺れ動く傾城は、まさに太極図の中心にあって陰陽を踊らせる「無極」に他なりません。
 
 …という(北の)公爵でない講釈はさておき、純粋に映画の出来として見れば、その構成には少なからず問題があります。最初にスケールの大きな合戦シーンを持って来ておいて、最後のクライマックスがショボイというでは、どうも尻つぼみな印象を拭えません。最後に満神を登場させて、海を分ける位の大スペクタルを見せてくれても良かったのではないかと思ってしまいます。個人的には大変興味深い内容でしたが、それにしても…あまりに突飛な描写が一般客には受け入れられにくいのではないでしょうか。
☆☆☆☆★★★ 

 WOW頂天ホテル

2/1
(WMCSY)
☆☆★★★
(ところで、「フジテレビジョンとライブドアが初めて本格的にタッグを組み、舞台作品を主催する記念すべき共同事業」になるはずだった、ミュージカル「グランドホテル」はどうなっちゃったんでしょうか?)

 三谷幸喜監督によるグランドホテル形式の群像劇です。年越しカウントダウンの準備に追われる(一応)一流ホテルでの年越しまでの2時間のドラマを(「24」のように)リアルタイムで描きます。
 
 登場する様々な人々が複雑に絡み、各人がそれぞれの思いを新たに新年をむかえるという緻密なシナリオは、さすが三谷幸喜と感心させられます。画面の隅々で交差する人々といい、至る所に散りばめられた小ネタの数々といい、実に良く作り込まれた作品です。またキャスティングも見事で、わざと捻った使い方をして、各役者の潜在的な個性を上手く引き出しています。
 
 しかし、映画としては今一つ物足りなさを感じてしまいます。テレビドラマや舞台劇のような作りからは映像のダイナミズムが感じられません。多くの人物を登場させるのはいいのですが、彼らのエピソードを同等に割り振って、小ネタに終始しているため、全体として平板で散漫な印象を受けます。また、最後のカウントダウンに向けて各エピソードを収束させる構成においても、話をまとめ上げることに精一杯なせいか、躍動感と盛り上がりが感じられません。特に、一番盛り上がる折角のカウントダウンを上手く生かし切れていないというのが残念というかもったいないです。
 
 総じて、繊細で緻密なシナリオ作りと役者の使い方は実に見事ですが、演出に大胆さと映像的な面白さが欠けているため、メリハリのない平板な作りになっている様に思います。観ている分には楽しくて面白い作品ではありますが、観た後の印象は薄く、物足りなさを感じます。今後の邦画を支える優秀な作家の作品だけに、いつもよりやや厳しく採点しておきます。

フライトプラン
1/13
輸入DVD

☆☆★★
どうせトンデモ映画なら、ジョディ・フォスターには是非とも謎のエイリアンと戦って欲しいです
 
 夫が突然自殺し、あとに残された母子は夫の遺体と共にドイツからアメリカに移住することになります。世界最大の旅客機に乗り込みニューヨークへと飛び立ちますが、航行中に小さな娘の姿が忽然と消えてしまいます。必死になって娘を探す母親ですが、乗務員も乗客も最初から子供など乗っていないと言います。調べてみると、搭乗券も搭乗記録もありません。果たして子供はどこに消えたのか?それとも母親の幻想なのか?謎は深まるばかりです。
 
 実に興味深い導入部とジョディ・フォスターの迫真の演技も相まって、一気に物語の中に引き込まれていきます。子供が突然姿を消すというネタで言えば、ジュリアン・ムーアが主演した「フォーガットン」と同様です。どちらの主演女優もレクター教授のシリーズでクラリス役を演じていたし、公開時期も近いというのはどういうことでしょうか?もっとも、あちらがトンデモ映画だったのに対して、こちらは本格的なミステリー作品のようです。
 
 しかし、お話のアイデアは面白いのですが、タネが明かされるに連れて次第に言い訳がましくなっていくところが如何にも苦しい感じがします。まともな話だけに、理屈がちゃんと通らなければ納得できませんが、その点このお話にはかなり無理があります。それに、アメリカ映画特有の「家族を守るためには何をしても許される」という変な思想が全面に出て、どうにも釈然としません。ジョディ・フォスターの行動はまさに傍若無人で、観ていて「一番恐いのはお前だろ!」と叫びたくなります。昔「絶体X絶命」というトンデモ映画がありましたが、この作品はそれに近いものがあります。そういうワケですから、やっぱりこれもトンデモ映画でした。
 

スカイハイ
1/13
輸入DVD

☆☆★★ 
(ディズニーでなければカルトになったかも…)
 
 スーパーヒーローの両親を持つ息子がヒーローになるためにヒーロー養成学校「スカイ・ハイ」に入学し、そこで知り合った仲間達と共にヒーロー撲滅を図る悪者と戦います。まるで「Mr.インクレディブル」を実写版にしたような映画です。
 
 まず、両親のスーパーヒーローぶりがなかなか凄いです。CG技術の進歩のおかげでしょうが、巨大ロボットとの対決シーンが意外と良くできていて、こんなことなら彼らを主人公に映画を作っても良かったんじゃないかとさえ思います。でも、この映画の主人公はあくまでも息子とクラスメイト達です。結局健全な学園ドラマの範囲で収まってしまうあたりが、良くも悪くもディズニーという感じで、いかにも残念です。これだけ材料が揃っていればもっと面白くできるはずなのに、もったいないです。
 
 驚くべき事に、劇中リンダ・カーターが校長役で登場します。年齢を考えると、どう考えても「踊る狸御殿」の美空ひばりのようにCG合成か実写のはめ込みだと思いますが、生出演だとしたらそれこそ正真正銘のワンダー・ウーマンです!
  



2005年

カンフーハッスル
1/1
(品川プリンスシネマ)

☆☆☆☆★★★★
(お馬鹿なギャグを楽しめる人と、カンフー映画好きに)

 「少林サッカー」でお馴染みのチャウ・シンチー主演監督カンフー映画です。前作でも相当ハチャメチャでしたが、今回はトンデモ度が更にパワーアップして、もの凄いことになっています。最近の映画はワイヤーアクションとCG技術でどんなアクションも可能になりましたが、この映画はそんじょそこらのハリウッド映画とは一枚も二枚も上手です。
 
 なにしろ往年のカンフー映画のスターやマーシャルアーツの達人たちが本気でおバカなアクションを演じているんですから恐れ入ります。とにかく型の基本がしっかりしているので、全ての動きが見事です。「マトリックス」のパロディーをやっているのに、これと比べたら「マトリックス」の方が子供のお遊戯に見えてしまいます。そう、この映画の印象はまさに「本物より凄い偽物」です。(もっとも、「マトリックス」の方がカンフー映画のパロディーなので、そうも言い切れないのですが…)数々のカンフー映画やハリウッド映画のパロディーを織り交ぜながら、もの凄い力技で一本のカンフー映画を作り上げてしまったという感じです。
 
 全編殆ど漫画としか言いようのないキャラやエピソードで溢れていますが、庶民生活の描写は驚くほどリアルで、ちょっと黒沢映画の雰囲気さえ漂わせています。そこがこの映画をタダのおバカ映画で終わらせていない所かも知れません。とはいえ、今回は余りに沢山の要素を詰め込みすぎているので、一つ一つの印象が薄まっている気がします。
 
 お話としても、上手く簡潔にまとまってはいますが、「少林サッカー」のような爽快感が今一つ感じられません。それも多分、あまりに要素を詰め込みすぎてお話のタメの部分に余裕がないからでしょう。
 
 主人公が開眼するまでにもタメが欲しいですし、それ以前に主人公達が絶体絶命のピンチに追い込まれなければなりません。更に、今回は女性キャラの美麗なアクションが欠けていますので、例の少女も奥義書を読んで秘技に開眼していたことにして、最後に加勢に現れれば、もっと面白く爽快なエンディングを迎えられたに違いありません。
 
 それと、カンフー映画の特徴ではありますが、簡単に人が死ぬのは手放しで喜べません。おバカ映画らしく、大ケガ程度で止めた方が良かったと思います。
 

 とはいえ、このおバカ映画に真面目に取り組んだ達人たちには、ホントに頭が下がりますし、愛おしいほどに笑えます。カンフーファンなら是非とも、そうでない人も初笑いにお奨めしたい作品です。

ネバーランド
2/1
(WMCSY)

☆☆☆☆★★★★
(「ピーターパン」が好きな人にはお奨め度満点)

 ジェームズ・マシュー・バリが、公園である家族と出会ったことを切っ掛けに「ピーター・パン」が生まれたという事実に基づいた感動秘話です。この辺り、ルイス・キャロルがアリスという少女に出会って「不思議の国のアリス」が生まれたという経緯に似ています。
 
 創作には必ず何かの切っ掛けや動機が必要ですが、往々にして「一つの出会い」がその発端とか原動力となる場合が多いようです。そんなわけで、映画を観ながら何度もうなずくシーンが多々ありました。主人公のセリフと全く同じ事を考えていたりするので、観ていてちょっと気恥ずかしくなってしまいます。ですから、映画の趣旨とは別の感動を味わっていたかも知れません。
 
 その意味で、この作品がアカデミー賞各部門で候補に挙がったのも無理からぬ事だと思います。きっと観客とは別の意味で、アカデミー協会員たちの共感を呼んだはずです。う〜ん、こうなると今年の予想が益々混沌としてきたぞ…。
 
 アカデミー賞はさておき、この作品は非常に抑えたトーンで作られた名品と言えるでしょう。大げさな表現や極端な描写は控え、多分に観客の想像力に訴えるところがあります。大声で泣き叫ぶ映画が感動作だと勘違いしている人々にはピンと来ないかも知れませんが、感受性の豊かな人程感動出来ると思います。
 
 ちなみに映画の中で、バリの友人としてコナン・ドイルが登場します。考えてみれば彼の交友関係にはH・G・ウェルズやキップリング、トマス・ハーディなんかもいたんですね。凄い!

オペラ座の怪人
2/1
(WMCSY)

☆☆☆★★
(少女漫画好きに。エミー・ロッサムの歌声に星5つ!)

 さすが有名なミュージカルの映画化だけあって、セットも衣装も音楽も豪華絢爛です。それに、出演している俳優自ら歌も歌っていますが、みんな驚く程上手いんです。…と言いたいところですが、肝心要のファントムが今一つなんですね。
 
 いや、歌は上手いんですけれど、周りがみんな凄すぎるんです。そりゃそうですよ、オペラやミュージカルのベテランばかりじゃないですか!(と思ったら、カルロッタ役のミニー・ドライヴァーは元インテリア・デザイナーの役者だと!?…したら彼女は凄いですね!)クリスティーヌがファントムの歌声に惚れるのに、これじゃあ説得力が全く無いです。
 
 それにファントムはクリスティーヌと親子以上に年が離れているはずですが、ちょっと若すぎるんじゃないでしょうか?大体、仮面に隠した顔がそれ程おぞましくないというのも、ファントムの悲哀さを描くには弱い気がします。主役にネーム・バリューを持たせたかったのかも知れませんが、このキャスティングは如何なものでしょうか?
 
 とは言え、小悪魔クリスティーヌ役のエミー・ロッサムの歌はまさに天使の歌声です。ファントムの子守歌で閉じかかった眼も、彼女の歌声でパッと見開かれます。というわけで、今回の映画化で最大の収穫と言えば、まさに彼女の歌声ではないでしょうか。 

ボーン・スプレマシー
3/1
(WMCSY)

☆☆☆★★
(面白いけれど、やっぱり地味ですね)

「ボーン・アイデンティティー」で記憶喪失になっていたCIAの殺人兵器ジェイソン・ボーンが再び登場する、完全な続編です。ですから前作と同じ登場人物も出てきますし、それぞれのエピソードもちゃんと今回の話しに繋がってきます。とはいえ、今作だけでしっかり話がまとまっているので、前作を観ていなくとも充分楽しむことが出来るでしょう。
 
 このボーン・シリーズの魅力は生身のスパイアクションですから、派手な爆発や銃撃シーンなど極力少なめです。もちろん秘密兵器など殆ど出てきません。とにかくボーンは次々と立ち塞がる難局を、頭脳と技と体力だけで乗り切っていきます。これがなかなか小気味良くて、実に爽快です。
 
 また、今回の目玉はなんと言ってもモスクワ初のカーチェイス・シーンでしょう。実際はベルリン郊外のポツダムで撮影されたそうですが、ちゃんとモスクワの映像も上手く挿入されているので、全く違和感がありません。これこそ編集の妙と言うのでしょうか、有り得ないこととは知りながらも、これにはビックリしました。(もっとも、背景が映り込まないようにする為なのか、ややアップ気味の撮影が、ちょっと見づらくもありますが…)ロバート・ラドラムの原作は3部作なので、当然次回作も作られることでしょう。

セルラー
3/1
(WMCSY)

☆☆☆★★★
(小品ですが、佳作です)

タイトル通り携帯電話を巧妙に扱ったサスペンス映画です。いきなり誘拐されて、どこかの屋根裏部屋に監禁された主人公と犯人たちとの知力を尽くした攻防と、事件に巻き込まれたサーファー青年の駆け引きを中心に、物語は加速度的に爆走します。とにかく、冒頭の事件発生から最後まで、1秒たりとも目を離せません。このシナリオは実に見事なものです。
 
 ただよく考えると、所々に綻びが見え隠れしますし、もうちょっと見せ方に工夫が必要な気もします。でも、観客にそんな余裕も与えないくらいテンポ良く物語が進んでいくので、ドキドキしながら面白く観ることが出来ました。
 
 それでもちょっと食い足りない感じが残るのは、きっと花のあるスターが出ていないからでしょうか?(キム・ベイシンガーが出てますけれど…)
 

コンスタンティン
4/1
(WMCSY)


☆☆☆☆★★★
(宗教の予備知識が必要ですが、この世界観は面白い)

 これはある意味とんでもない作品です。ここまでふてぶてしくて投げ槍なキャラクターは今まで見たことがありません。なんてったって大天使や魔王を相手にため口を叩き、場合によっては死を賭して騙し、もしかしたら神さえも欺いてしまうんですから。これは凄いことですよ。
 
 大体相手があまりに強大すぎますから、生身の人間がこれらと対等に渡り合うなんてこと自体が土台無理というものです。主人公がいくら神器や魔具で身を固めてみたところで勝負になりません。ところが、この傍目に観ても絶対不利という状況で、主人公は悪魔も思いつかない無謀極まる手段を使い、ものの見事に出し抜いてしまうのです。いや、実に痛快じゃないですか!
 
 ただ、この作品はキリスト教的世界観に裏打ちされていますので、予備知識としてその背景を知らないと、分かりにくい点もあるかも知れません。その意味でパンフレットは必読の価値があります。登場人物の名前や言葉の端々に埋め込まれた意味を解読すれば、この映画を更に愉しむことが出来るはずです。
 
 あと、スタッフロールの後にもう一つ痛快なことが待っていますので、途中で席を立たないようにしましょう。続編が非常に楽しみです。

ロング・エンゲージメント
5/1
(WMCSY)


☆☆☆☆★★★
(素晴らしい作品ですが、ちょっと判りにくいかも?)

 「アメリ」のジャン=ピエール=ジュネとオドレイ=トトゥが再び手を組んだ期待の大作です。第一次大戦中、兵役を逃れるために軍紀違反を犯し、死刑を宣告された5人の兵士に関わるミステリーをジュネ特有の不思議な感覚ときらめく映像で一大絵巻に紡ぎあげています。
 
 この物語で面白いのは、ミステリーの謎を解く鍵が一兵士の婚約者の直感と信念であるということです。主人公のマチルドは幼い時から足が不自由ですが、その不自由さ故、自らを空想の世界に置いて物思いにふける習慣があります。そして両親の突然の死など度重なる不幸から、自らの運命を自分との賭けに委ねるようになりました。だから婚約者の兵士が処刑されたという知らせを受けた時も、自分との賭で、婚約者の生存を確信するのです。
 
 この直感が様々な人々との出会いを生み、赤い糸に引き寄せられるように、婚約者の所へとマチルドを運んでいきます。はじめは過酷で絶望的と思えた運命も、謎が解ける内に実は驚く程寛大で、いつでも希望の光を灯していてくれたことに気が付きます。
 
 どんな境遇にあろうとも、人生はそんなに捨てたもんじゃない。「信じていれば道は必ず開けるもんだよ」と、そんな気にさせてくれます。だからこの映画は実に素晴らしい作品だと思います。
 
 ただ登場人物も多く、それらが複雑に絡んでいるので、顔と名前を一致出来ないと、内容を把握しにくいかも知れません。また、言葉より絵で多くを表現するジュネ監督の映像への拘りもあって、細かい描写を見落とすと意味が分からなくなる所も多々あります。DVD化した時には、是非とも日本語吹き替え版でじっくり見直したいものです。
 

ナショナル・トレジャー
5/1
(WMCSY)

☆☆★
(お気楽に見れるアドベンチャー映画。見終わった後に疑問噴出)

 例によってジェリー・ブラッカイマー印の大味娯楽大作。頭を空にして適当に楽しめる作品に仕上がっています。アメリカの名所旧跡を散りばめて、有ること無いこと全部関連づけるお話作りには結構唸らされる物があります。

 ただ、この手の話はアメリカ人には面白いでしょうが、日本人にはどうもピンと来ません。正直なところ「独立宣言書」がどうなろうが他人事ですし、それに結局お宝は世界各地の略奪品だったりするわけですから、この宝がアメリカの物だと言われても手放しには喜べないのです。良くも悪くもアメリカ映画ということでしょうか。

レモニー・スニケットの
世にも不幸せな物語


☆☆☆☆★★★
(児童文学が理解出来る人と子供の感性が判る人に)

 有名な児童文学の世界を、驚く程真面目に映画化した素敵な作品です。日本では「子供騙し」と一笑に付されるような、こんな児童映画を真剣に実写化してしまうアメリカという国にはホトホト感心させられます。
 
 この独特な世界観を支える美術の素晴らしさは言うに及ばずですが、オープニングの人形アニメや特にエンディングの切り絵アニメなんかは実に見事で、まさに一見の価値有りです。それに、主人公の子役達がこれまた素晴らしく、未来の大器を予感させる演技を見せてくれます。特に子供達の目線が宜しい。
 
 この子役達に負けじと、ジム・キャリーやメリル・ストリープ等大人の役者達の演技にも熱が入っています。カメオ出演している大物スターがとってもナイスな場面に登場しますが、昔の映画を思い出してニヤリとするのは、古い映画ファンだけでしょうか?
 
 それにしても、次から次へと理不尽に降りかかる不幸をモノともせず、持ち前の機転と知識と勇気で切り抜けていく子供達が何とも頼もしく、周りでオロオロするだけの大人達の方がよっぽど不幸せに見えてしまいます。このあたりが如何にも児童映画という感じですが、これを受け入れることが出来るかどうかでこの映画に対する評価が分かれるところでしょう。

バタフライ・エフェクト

☆☆☆☆☆★★★★
(入念に練り込まれたシナリオと、先の読めない展開。しかし、ディレクターズ・カットの結末は承伏しかねます。やはり公開版がベストか?)

  北京で蝶が羽ばたくと、翌月ニューヨークで大嵐になるという「バタフライ・エフェクト」は、「ほんの少しの初期条件のずれが、予想も付かない程大きくかけ離れた結果を生む」というカオス理論の例えですが、映画「バタフライ・エフェクト」はまさに予想も付かない展開を見せる作品です。
 
 記憶が時々消失する奇妙な症状に悩まされる主人公は、ひょんなきっかけで過去に戻る方法を見つけます。失われた記憶の謎を解き、人生の軌道を修正するために早速トリップ。まんまと自分の暗い過去を変えることに成功するのですが…。
 
 実に巧妙なシナリオです。全く中だるみも無く、緊張感を持続したまま一気に観させてくれます。そして、予想だにしない感動のラストには、成る程そうだったのかと思わず納得させられてしまいます。
 
 しかし、よく考えてみると若干腑に落ちない点が残ります。巧妙なシナリオの割には、すっぽり抜け落ちた点があるのが妙に気になります。もしかしたら、監督は別のオチを考えていたのではないでしょうか?そうでないと、どうにも理解出来ないのです。
 
 とは言え、公開版のオチはかなり良くできているので、これで正解だったと思います。製作過程で様々な紆余曲折があり、当初監督が予想もしなかった結末に落ち着いたのでしょうが、これもまた「バタフライ・エフェクト」かも知れません。

ミリオンダラー・ベイビー
6/1
(WMCSY)


☆☆☆☆☆★★★★
(たまには人生を真剣に考えてみよう!いつもながら、ラストの余韻が素晴らしい)

  本年度アカデミー賞で作品・監督・主演女優・助演男優の主要4部門を獲得した話題の映画です。かなり重いテーマを扱っているそうなので、一応それなりの気構えで臨みました。おかげで観る前から気分が重いです〜。
  
 観てみましたが、さすがに重い(内容は伏せます)テーマです。これが日本の映画なら、これでもかこれでもかと泣かせてくれるのでしょう。でも、イーストウッド監督ですから、そんなことはしません。過剰な涙でテーマをぼかさない位の分別は持ち合わせていますから。
 
 イーストウッドのこれまでの映画にも言えることですが、ともすれば大仰な表現になりがちなテーマを、抑制の効いた演出で淡々と細やかに見せるスタイルは、ジャズにも似た大人の深い味わいがあります。ですから彼の映画では、ほんの一瞬の映像や一言に大きな意味が込められています。
 
 例えば最後のシーンの解釈は観た人それぞれによって違うと思いますが、主人公フランキー・ダンの一言や鞄に入れた小物などに気を停めていれば、モーガン・フリーマンのナレーションも相まって、実に切ない父娘愛を感じとることが出来るでしょう。それも決して断定的でない…。かすかな希望さえ抱かせる、まさに珠玉のラストシーンです。
 
 「ミリオンダラー・ベイビー」はボクシングで言えば、強烈なKOパンチというよりは、次第にダメージが効いてくるボディ・ブローのような作品です。心を許せる人と一緒に観て、後でじっくり語り合えば、人の尊厳と生き方においての重要なヒントが何か見つかるかも知れません。
 
 それにしても、この映画に登場する役者はみんな達者です。メインの3人はもちろんですが、脇役がこれまた凄い。特にマギーの母親役の人なんか、画面に登場するだけで嫌悪感を催してしまう程です。いつもながら、役者の層の厚さを痛感せざるを得ません。
 

ブレイド3
6/1
(WMCSY)


☆☆★
(主人公の魅力半減)

 それにしても、いつから吸血鬼がこんなに弱くなってしまったのでしょう?こんなに簡単に生身の人間に倒されては、ブレイドの強さも印象が薄くなってしまいます。それに、刀をもっと有効に使ってくれなければ、名前が廃るというものです。

 i-podを聞きながらの戦闘など、アップルとのタイアップが随所に見られ、スタイリッシュというより野暮ったさを感じてしまうのが残念です。

スター・ウォーズ 
エピソード3
/シスの復讐

6/18
(東京国際フォーラム)
ジャパン・プレミア

☆☆☆☆☆★★★★
(このシリーズと同じ時代に生きたことを感謝)

  いよいよスター・ウォーズもこのエピソード3で完結(のはず)です。「エピソード4/新たなる希望」に繋がる重要な話です。「アナキン・スカイウォーカーがどのような理由でダークサイドに堕ち、如何にしてダース・ベイダーに変貌したのか?」という謎も明らかになります。
 
 主人公が悪に染まり、悪の権化になってしまうという予定調和に向けて、創造主ルーカスがいかに話を組み立てるかが注目の的なのですが、その手並みはお世辞にも上手いとは言えません。肝心の動機が今一つピンと来ないので、どうしても主人公に感情移入出来ないのです。そもそも銀河全体に渡る壮大な物語であるだけに、伝えるべき情報があまりに多すぎて個々の印象が希薄になるのは致し方ありませんが、それにしても、もっと上手い方法があったんじゃないかと思います。
 
 …などと、観ている間、不満が沸々と湧き上がってきますが、それでも、さすがに最後のシーンには否が応でも感動せずにはいられません。なんだかんだ言っても、やっぱり「スター・ウォーズ」が好きなんだなあと再認識する瞬間です。恐らく会場にいる全ての観客が思いを同じくしたでしょう。そして同じ時代、同じ空間で、同じ体験を共有したことを感謝したでしょう。「スター・ウォーズ」というのは単なる映画というより、存在そのものが一つの文化であり、現象なのですね。
 
 ILMの創り出す映像は益々磨きが掛かり、今回は神懸かりとも言うべき凄まじい映像を見せてくれます。アカデミー協会も、来年くらいは賞をあげても良いのではないでしょうか。デザイン面でも「エピソード4」に繋がる関連性を見出すことが出来て、細部にまで拘った絵作りに感心させられます。メビウスやフォスといったSF画家達の夢を、ものの見事に実写化して見せるCG技術には、ただただ驚くばかりです。
 
 そして何より素晴らしいのがジョン・ウィリアムズの音楽です。とにかく今作程音楽の力の偉大さを痛感した事はないでしょう。各キャラクターのテーマがメロディーとして既に確立しているので、目を閉じていても音楽を聴くだけで画面が思い浮かびます。登場人物の細やかな心の動きについては、むしろ画面よりも雄弁に語っている部分さえあります。全編目を閉じて音楽だけ聴いたとしても、きっと感動出来るに違いありません。
 
 それにしても、戸田奈津子の訳には相変わらず困ったものです。「エピソード3」はスター・ウォーズシリーズの集大成という側面もあり、各エピソードのシーンに引っかけた面白いセリフがいくつも登場するのですが、その辺り全く分かっていないので、実に頓珍漢な訳になってしまっています。少なくとも事前に「エピソード4」〜「エピソード6」位は観ておいて欲しいものです。この点については、ファンの間でまた物議を醸すかも知れません。
 
 さて、上映後にプロデューサーのリック・マッカラム氏が壇上に現れ、SWシリーズの今後の展開について話してくれました。それによると、今のところ「エピソード7」は無いとのことですが、「3」と「4」を繋ぐ100時間のTVシリーズを製作するそうです。また、全シリーズの3D映像化も企画しているようで、こりゃまだまだSW熱は治まりそうもありませんね。

エピソード3の内緒話(ネタバレのため伏せ字)
1)「コード66」の「66」とは、「〇〇〇を掘る」という隠語だそうです。ですから、ジェダイの騎士達が背後から撃たれた時、アメリカの観客は思わず吹き出したことでしょう。
2)オビ=ワンがグリーバス将軍を倒した時、持っていた銃を「Uncivilized!」と言い放って投げ捨てるのですが、ここはもちろんエピソード4と同様に「野蛮な!」と訳すべきです。しかし、試写会版では「掃除が大変だ」みたいなとんでもない訳になっていました。
3)ご多分に漏れず、画面のどこかにミレニアム・ファルコン号が登場しているそうです。もしかしたら、シリーズのキャラクターを全てどこかに登場させている可能性も無いとは言えませんね。


バットマンビギンズ
6/18
バージンTOHOシネマズ
六本木ヒルズ


☆☆☆☆★★★★
(コミックの映画化としてはベストかも)

  「メメント」のクリストファー・ノーラン監督とあって、やや危惧されたところもありますが、監督曰くところの「リアルなバットマン」像が実に見事に表現されています。渡辺謙が演じるラーズ・アル・グールはほんの少ししか登場しませんが、もの凄く存在感のある重要なキャラなので、これだけで消えるとはとても信じられません。(渡辺謙の出番は恐ろしく少ないので、彼目当てに観に行った人はがっかりするかも知れません)恐らくホームズに対するモリアーティ教授のように、シリーズを通してバットマンに対峙し続けるのではないかと、私は勝手に想像してしまいます。
 
 この「バットマンビギンズ」は、ハッキリ言って、過去のバットマンシリーズとは一線を画す、全く新しいバットマン映画の誕生を意味します、シナリオといい、映像といい、演技といい、とにかく過去のバットマン映画における漫画的要素を払拭し、充分大人の鑑賞に堪えられる高品位の作品に仕上がっています。
 
 その意味で、子供向きでない分、逆にアメリカでの爆発的な興行収入は見込めないかも知れません。むしろ上質なカルト映画の趣さえあるこのバットマンを私は大変気に入っていますが、このままシリーズとして定着するかは、なかなか微妙なところでもあります。嘘でも良いですから、もう少しけれん味のあるオーバーなアクションも欲しかったと思います。折角クリスチャン・ベールが主役なのですから、「リベリオン」的なトンデモ・アクションがあっても良かったのではないでしょうか。
 
 とは言え、バットマン映画としては、未だかつてない最高の出来であることには間違いありません。(ティム・バートン版も捨てがたいですが…)願わくば、この続編が作られることを、そしてラーズ・アル・グールの復活を願って止みません。

 バットマンビギンズの内緒話(ネタバレ無しですが伏せ字)

1)新型バットモービルのコクピットを、ジョフ・ダロウ君がデザインしたと言っていましたが、車体のデザインは違うようです。とは言え、最近彼がシカゴに引っ越しした謎がようやく解けました。ゴッサム・シティのモデルは、なんとシカゴだったんですね。この分だと「シン・シティ」のモデルも、きっとシカゴに違いありません。

注)後で本人に聞いてみたところ、結局ジョフ君はデザインのコンセプトが気に入らなかったので、バットモービルのデザインはしなかったそうです。

2)米国では当初6月17日(金曜)公開の予定でしたが、「宇宙戦争」などの公開が控えているため、急遽6月15日(水曜)に公開日が繰り上げられました。そのため「15日(水)公開」と「17日(金)公開」の二種類のポスターが街角に貼られるという異常事態が発生してしまいました。加えて、通常米国内で行われるプレミアショーを日本で行ったため公開日の変更がマスコミにもあまり取り上げられず、おかげで初日の興行収入を大幅に鈍らせる結果を招きました。ですから、例えこの作品が興行的に上手くいかなかったとしても、それは偏にワーナー幹部の責任であり、作品の出来とは関係ありません。。

3)設定によれば、ラーズ・アル・グールは転生するんだそうですよ!ということは、渡辺謙の出番はもうないのでしょうか?そりゃ、悲しすぎます。

宇宙戦争
6/29
(WMCSY)


☆☆☆★★
(原作を知っていることが必須かも?トライポッドに星4つ!)

  「ターミナル」の体たらくで個人的にすっかり信用を失ったスピルバーグですが、今度こそやってくれるだろうと、かすかな希望をもって「宇宙戦争」を観に行きました。それにしても、この日は絶対に映画を観ないと決めていたレディース・デイに初日を持ってくるとは、なんと罪作りなことでしょう。おかげで、映画を観る前から敗北感に苛まれてしまいました。これで映画がつまらなかったら許さないぞ!
 
 私は昔から「宇宙戦争」というこのテーマ自体が大好きなので、巨大なトライポッドが出てくるだけで嬉しいのです。その点、ILMの作りだした映像は、まさに驚愕の一言です。そう、少年の日から思い描いていた絵そのままの映像が画面に展開されるのですから、これはたまりませんですよ。トライポッドの姿は、どこか竜巻にも似た恐ろしさと美しさがあり、巨大な怪物を見上げるという構図は、怪獣映画独特のドキドキ感があります。
 
 でも映画として面白いかと聞かれたら、ちょっと返答に困ってしまいます。リアルな戦争を描こうという趣旨なので、とにかく主人公は逃げるばかり。この点、映画的な盛り上がりや爽快感を期待する人には不満が残ると思います。また、終始主人公の目を通して描かれ、主人公が見聞きしたほんの少しの情報しか与えられないので、地球規模の戦争にしては世界的な広がりが殆ど感じられません。
 
 エイリアンの行動も矛盾だらけで、何のために侵略して、何をしたいのかよく分かりません。もっとも、彼らの思考回路は我々とは根本的に違っているでしょうから、我々の道理が当てはまるとも思えません。それに、理由が分からないからこそ怖いのですが。
 
 同じジャンルには入るものの、この映画は「インデペンデンスデイ」とか「地球防衛軍」とは両極にある作品です。あくまでも戦争に巻き込まれた一般市民の目を通して描くという作り方をしているので、人類を救うために立ち上がる科学者も大統領も将軍も一切登場しません。雰囲気的に何だか「太陽の帝国」に通じるものがあるように思います。
 
 それにしても、トレーラーの段階から気になっていたのですが、彼らは本当に異星人なのでしょうか?確たる証拠が提示されていない以上、タイトルに疑問符を付けたくなります。

 ちょっと気になること(未見の人のために伏せ字)
 トム・クルーズが自動車で逃げる時、走っている車の周りを1カットでカメラが一周するのですが、これってやっぱり合成なのでしょうか?どこからどこまで合成なのか、全く分かりません。他のシーンでもそうですが、もしかしたら、車に乗っている時の背景は殆ど合成なのではないでしょうか?

ダニー・ザ・ドッグ
7/1
(WMCSY)


☆☆☆☆★★
(ジェット・リーファンは必ず観よう!)

 小さい頃から犬のように首輪で繋がれて、戦闘マシーンとして育てられた男、ダニー。こんなトンデモ設定の役どころをリーが見事に演じています。(…というか、殆ど素じゃないかと思えますが…)
 
 「キス・ドラ」でもそうでしたけれど、ジェット・リーは虐げられた男がとてもよく似合っています。この憂いのある表情が実に宜しい。名優モーガン・フリーマンや曲者ボブ・ホスキンスに挟まれても、全く遜色ありません。今や、ジャッキー・チェンを抜いて、彼こそがハリウッドNO.1のアジアンスターである事を、しみじみと感ぜずにはいられません。
 
 歳をとったとは言え、元々童顔の彼ですから欧米人の中に入ると殆ど青年にしか見えません。少年の面影を残すあどけない笑顔は、純真無垢な性格を醸しだし、まさに劇中のダニーにピッタリです。いや、こんな役を演じられるのは、世界広しといえどもジェット・リーだけに違いありません。
 
 もちろん、アクションも素晴らしいです。ワイヤーを感じさせない身のこなしや動きの流麗さ。狭い場所での速射砲のような格闘シーンなど、見所も満載です。
 
 無茶な設定や突拍子もない展開など、かなり現実離れした話ではありますが、「レオン」や「ニキータ」に通じるロマンがあるので、現代のおとぎ話として観れば充分愉しむことが出来るはずです。そして健気なダニーの姿に、きっと涙を禁じ得ないでしょう。(ちょっと誉め過ぎかも?)
 
 というわけで、ジェット・リーのファンは絶対にこの映画を見逃してはいけません。観たらもっと彼が好きになりますから!間違いなく彼の代表作の一つとなることでしょう。

アイランド
8/1
(WMCSY)

☆☆☆★★
(とにかくアクションシーンだけは凄い。特に車輪が!)

 なかなか意味深長なタイトルですが、それ程目新しいお話ではありません。予告編を観て、何となく「シックス・デイ」と「2300年未来への旅=ローガンズラン」と「マトリックス」を足して3で割ったような印象を受けましたが…全くその通りでした。
 
 大体、大味豪腕アクションのマイケル・ベイ監督ですから、もう突っ込みどころ満載です。お話が破綻していようが、画面にカメラマンが映っていようが気にしてはいけません。ただただ頭を空にして、豪快なアクションを愉しめばいいのです。
 
 というわけで、やたら凄いアクションシーンを次々と見せられて、気が付いたら終わっていたというような作品でした。そもそもこの監督は人間の描写にあまり興味がないようなので、サスペンスは殆ど感じられませんが、その分お気楽に観れる娯楽作品になっています。でもかなり大味な作りなので、映画館から出た途端に殆ど中身を忘れてしまいそうです。

 この映画を理解する上でのひとつのヒントとして、DNAに記憶が蓄積されているという説があります。つまり…を…すると、…が伝承されるわけです。

ロボッツ
8/1
(WMCSY)

☆☆☆★
(出来はそれなりに良いが、こういう映像はもはや食傷気味)

 「アイスエイジ」のスタッフが作った3Dアニメです。ロボットを主人公にした、ロボットの国のお話です。無機質なロボットを無機質な3Dアニメで作れば簡単かなと思いがちですが、これがなかなか大変そうです。何しろデティールが実に細かい。錆びやキズなど細部にわたって描写されていますし、陰や光沢もいちいち的確です。スチールで見る限り、ブリキ人形を使った人形アニメにしか見えないでしょう。これはもの凄い表現力です。
 
 が、しかし、余りに細かい描写というのも困ったもので、写実過ぎてキャラクターの形が見づらく掴みにくいのです。ブリキのおもちゃマニアならいざ知らず、一般の観客には到底馴染めないのではないでしょうか。むしろ、もっとデフォルメしたキャラクターの方が良かったんじゃないかと思います。(もっとも、本物のブリキ人形で人形アニメを作ったなら、輪郭や細部がボケるので、かえって見やすく温かみのあるキャラクターになるでしょうね)
 
 無機質なキャラを主人公にする場合は、余程人間味溢れる演出やシナリオを心がけないと、観客はなかなかキャラクターに感情移入出来ません。その点、この演出やシナリオはどうも物足りなさを感じてしまいます。マニアックな作り込みは結構ですが、観客を引き込む魅力においては「トイ・ストーリー」や「モンスターズ・インク」には到底及ばないと言えます。
 
 ギャグも盛りだくさんで、なかなか笑えるネタもあるのですが、ロボットダンスを踊るロボットといった自虐的なネタで笑えるかどうか?そのあたり、日本ではやっぱり受けにくいような気がします。

 とは言え、ブリキおもちゃマニアの私としてはお気に入りのシーンも多々あって、結構楽しめたのであります。なんてったって、天馬博士もびっくり。映画史上初めて、ロボットの成長過程がちゃんと描写されているんですよ。どうやってロボットが成長するかは映画を観てのお楽しみですが、なんでこんな簡単なことが天馬博士には分からなかったのでしょうか?この方法を使えば、アトムがサーカスに売られることも無かったのにね!

妖怪大戦争
9/1
(WMCSY)

☆☆☆★★
(妖怪総出演は快挙だが…)

 もう、妖怪がわんさかわんさか登場する、妖怪見本市みたいな映画です。これだけ沢山の妖怪が出てくる映画なんて、今まで見たことありません。その点、妖怪マニアにはたまらないでしょう。でも一般の観客には妖怪の種類が多すぎて、何が何だか分からないかも知れません。…なんて危惧していたら、周りの子供達はみんな妖怪の知識が豊富のようで、妖怪が登場するたびに名前を連呼していました。いつの時代も、やっぱり子供は妖怪好きなんだなぁ。
 
 そんなわけで、妖怪が沢山出るのは良いのですが、それにしてもこの話はちょっとまとまりがないように思います。登場人物が多いせいもありますが、「それで彼はどうなったんだ?」とか「だから、あの言葉の意味は何なんだ?」という具合に、投げかけられた沢山の伏線が尻切れトンボのまま終わっています。(以下自主規制)
 
 そもそもタイトルの「大戦争」だって、実際は「けんか祭り」だし、結局主人公は何の役にも立っていなかったんじゃないだろうか?なんて疑問も沸いてきます。それに、敵の大将はハッキリしているのですが、味方のリーダーが今一つハッキリ描写されていないので、どうも日本妖怪勢の意思系統が曖昧で判りにくいです。(まあ、そこが妖怪らしいところですが…)一応「ぬらりひょん」が妖怪の総大将であるということぐらいは、ちゃんと説明しておいた方が良いと思いますよ。

 とはいえ、栗山千明と高橋真唯の際どい衣装には思わずドッキリさせられます。この二人はどんな妖怪達よりインパクトがあり、まさにこの作品の目玉といっても過言ではありません。これじゃあ、敵の大将加藤も影が薄い。この二人に対抗出来るのは、やはり島田久作以外に考えられないでしょう。
 
 ともかく、作品としては拙い所も多々ありますが、妖怪の「不気味さ」「滑稽さ」ばかりでなく「萌え」まであって、子供も大人も充分楽しめる映画であることには間違いないと思います。

マダガスカル
9/1
(WMCSY)

☆☆☆☆★★
(面白いんだけどなぁ。受けないかもなぁ)
 
 ドリームワークスの最新CGアニメです。ニューヨークの動物園で悠々自適の生活を送っていたカバとシマウマとキリンとライオンが、動物愛護団体によって無理矢理アフリカに強制送還されてしまうのですが、途中で船がハイジャックに逢ってマダガスカルに流れ着きます。さあ、いきなり大自然に放り出された彼らの運命や如何に?
 
 この作品はアニメにしては珍しく(というかアニメだからこそ出来た)、実にデリケートなテーマを扱っています。アニメによって人間の人格を与えられた動物たちが自然回帰を強制された時、如何にとまどい葛藤するかが面白く描かれています。しかしこの滑稽さの源泉は、実は不遜な人間の歪んだ思想にあるのです。
 
 自然環境に投げ出された時、肉食獣のライオンは草食獣の仲間達との友情を保つために、自己犠牲と気も狂わんばかりの苦しみを味わうことになります。これはまさに、ライオンにも菜食主義を強要する過激な平和主義者を皮肉っているかのようで、妙に乾いた笑いを誘います。
 
 このように、動物たちを主人公にしながらも「マダガスカル」は実にシニカルでハイブロウな笑いに溢れています。アフリカの傍にありながら、独自の種族と生態系を保っている不思議な島の名をタイトルに掲げている点も、なかなか味わい深いものがあります。
 
 ちなみに主人公達が初めて島に流れ着いた時、思わず「サンディエゴ動物園だ!」と叫んで小躍りしたのには笑えました。なにしろサンディエゴ動物園は動物を自然の環境で飼育していることで有名な、世界最大の動物園だからです。(現在は「ズーラシア」の方が大きいかも知れませんが…)動物園で育った彼らにとっては、自然に近い形ではあっても良く管理された動物園こそが理想の住処なのかも知れません。う〜ん、そうなのかな…?

チャーリーとチョコレート工場
9/17
(WMCSY)

☆☆☆☆☆★★★★
(ティム・バートン全開!)

 ロアルド・ダールの代表作をティム・バートンが映画化するというので、どんな作品になるのか気になっていましたが、さすがティム・バートン、見事にやってくれましたね!(以下ネタバレにつき、いきなり自主規制)
 
 原作に忠実な子供映画という皮は被っていても、映画の中身はティム・バートンがこれまでに影響を受けた数々の作品(映画、音楽…)に対するリスペクトと遊び心に溢れています。工場の入り口からして「イッツ・ア・スモールワールド」ですからね。工場の中は、ウォンカになり代わって好きなことをやりたい放題です。いや、ホント羨ましい。(関係ないですが、劇中紹介される世界の主要都市ロンドン・ニューヨーク・カイロ・東京というのも、私には「ロスト・ワールド」「キングコング」「ミイラ男」「ゴジラ」と聞こえてしまいます)
 
 今回の映画には、原作にないウィリー・ウォンカのお父さんが出てきますが、もしかしたら、バートンはあの人を出演させるためにわざわざこの役を作ったんじゃないかと思うくらい適役でした。なにしろ子供にとって歯医者は最も怖い存在ですから、ウィリー・ウォンカのお父さんにはあの人以外に考えられません。
 
 で、更に考えると、あの人はティム・バートンにとっても怖い父親の象徴なのではないでしょうか?なにしろホラー映画ファンのバートンのことですから、きっと子供の時に散々あの人に怖がらされたに違いません。それは同時に、映画の上での父親を意味します。ですからウィリー・ウォンカと父親の和解は、ティムとあの人の和解でもあるという二重の意味を持つ様な気がします。(結構マニアックな考え方ですが…)その意味で、「ビッグ・フィッシュ」でも成し得なかった父親との本当の和解が、この作品でようやく成就したのではないでしょうか?(ホントにマニアックな考え方ですが…)
 
 あの人はウォンカと比べると父親というよりお祖父さんに見えますが、ジョー爺さんが以前工場で働いていた時に会ったことがあるということからも、ウォンカは見かけよりも結構歳をとっているはずです。ともかく、いつも黒いマントに身を包んでいたあの人が白衣姿で登場するという趣向も嬉しいですが、なにより息子と和解して抱き合うなんて感動シーンは、あの人の映画で未だかつて見たこと無いです。このシーン、密かに「SWエピソード3」で期待していたんですけど、やっぱり無理でした。それを実現させたティム・バートンはやっぱりエライ!

 

 キャスティングといえば、この映画に登場する役者はどれもこれも皆素晴らしいです。主役のジョニー・デップやチャーリー役のフレディー・ハイモアはもちろんですが、よくも集めたものだという個性的な子役達には感心するばかりです。チャーリーの祖父さん祖母さん達も素晴らしい。他の脇役達も、リスたちも、みんな素晴らしい。そして何よりウンパ・ルンパが最高です!彼らのダンスと歌(やっぱり、これもスモールワールドですね!)ときたら、あまりにバカバカしくて、楽しくて、是非ともアカデミー賞歌曲賞候補に選んで欲しいものです。
 
 そんなわけで、「シザーハンズ」で始まり「トワイライトゾーン」で締めくくるという、どこまでもマニア泣かせのティム・バートンでした。


ファンタスティックCフォー
9/17
(WMCSY)

☆☆★★
(結局はた迷惑な4人でした)
 
 特殊な宇宙線を浴びた4人と1人がDNAに突然変異を起こし、超能力を発揮するようになるという元祖戦隊物の映画化です。彼らと同様の能力は既に「MR. インクレディブル」等で表現されてしまったのでそれ程目新しさはないのですが、それでも実写で見せられると結構なインパクトがあります。私なんか、素直に「良い時代になったものだ」と感慨にふけってしまいますが、アニメや戦隊物に親しんでいる若い人達はどうなんでしょうかね?「**みたい」なんて簡単に言って欲しくないですね。だって、こっちが元祖なんですから。
 
 とはいえ、このシナリオはどう考えても変じゃない?だって、そもそも事件の発端はこの4人と1人にあるんですから。言うなれば、超能力者同士の痴話喧嘩に街の人々が巻き込まれているだけなんです。だから、どうして市民が彼らに拍手を贈るのか、全く理解に苦しみます。もっと悪役が街で大暴れしていて、それを主人公達4人がやっつけるというのがスジでしょうが?おかしいですね。それこそファンタスティック・フォ〜?
  
 ところで、「ムッシュムラムラ、ガンロック!」って知ってる?

シン・シティ
10/1
(WMCSY)

☆☆☆☆★★
(画期的ですが、この手法はこの作品だけにしてもらいたいものです。無意味な殺しに怒らない人限定)

 
フランク・ミラー原作コミックの映画化ですが、原作者自ら共同監督を務めていることもあって、これ以上ない完璧な映画化に成功しています。ハイコントラストの白黒パートカラーで描く映像は、まさに原作コミックそのもの。しかもカット割りや構図までコミックとソックリ同じなんですから、もう天晴れと言うしかありません。これはもはや「コミックの映画化」と言うよりは、「映画のコミック化」ですね。この徹底した画作りが実にスタイリッシュで格好良く、「新世紀フィルム・ノワール」(フィルムじゃないけど…)と呼ぶべき画期的な作品になっています。
 
 しかも驚くことに、数多くの有名スターが出演していながら、殆どの男優は誰が誰だか判らない扱いをされています。主演クラスのミッキー・ロークもそうですが、ルトガー・ハウアーなんか全然気が付きませんでした。ベニ・チオ・デルトロも散々な扱いをされていますし、イライジャ・ウッドに至っては指輪の影響もあってか、とんでもないキャラに変貌しています。いや、このキャスティングは凄い!
 
 キャスティングも特異ですが、監督が3人というのも異例です。なんでもロバート・ロドリゲスは、フランク・ミラーと共同監督したいがために監督組合を脱退したそうです。監督組合の規定では、一つの映画に一人の監督名しか載せられないんですね。「007カジノロワイヤル」なんか監督が5人もいたのに、今はそんなこと出来ないんでしょうか?監督競作のオムニバス映画はどうするんだろう?
 
 とにかく、ロバート・ロドリゲスはこの作品を映画化することが長年の夢だったようで、その入れ込みようは相当なものです。何しろ製作・監督・脚本・撮影・編集それに音楽までやっているんですから(…と思ったら、いつもやっていたんだっけ)。ついでに言えば、ゲスト監督のクェンティン・タランティーノはもちろんのこと、フランク・ミラーも、やっぱりカメオ出演しています。例によって簡単に殺されていますけど。みんな仲良く楽しそうに映画を作っているようで、なんだか微笑ましいです。
 
 さて、実現不可能と言われた「シン・シティ」がこうして見事に映画化されたことによって、他のフランク・ミラー作品の映画化にも俄然拍車が掛かりました。「シン・シティ」の続編はもとより、壮大な「300」も映画化が決まり、ジョフ・ダロウ君との共作「ハードボイルド」の製作も再び動き始めることでしょう。私の希望としては、同じくダロウ君との共作である「ビッグ・ガイ」を是非とも映画化して欲しいのですが。なんてったって「ビッグ・ガイ」には私も登場しますからね。

ステルス
10/1
(WMCSY)

☆☆★★
(アメリカ的お馬鹿映画!空母は凄いなぁ)
 
 トレーラーを観た段階で内容が知れてしまい、「またあのネタかい」などと高を括っていたのですが、実際の内容は予想を上回るトンデモ映画でした。まあ色々な意味で、予想を裏切る展開にはかなり驚かされてしまいます。そう、この感じは「踊る…シリーズ」に通じるモノがあると思います。(色々な映画のパク…とか、脳天気とか…)
 
 湯水のように大金を使いながら、結局盛り沢山で散漫な内容になってしまうという事は、この業界によくあるパターンです。プロデューサーと映画会社の重役との間には、こんなやりとりが繰り広げられているんでしょうね、きっと。
 
 「いったいいつになったら完成するんだね?製作費がかさむ一方だぞ」
 「はい、デジタル処理に時間が掛かりまして。でも、仕上がりを観て頂ければ判りますが、スター・ウォーズも真っ青の素晴らしい出来になりますよ。まさに御社の技術力の高さを世界に知らしめる作品です」
 「そんなことは判っている。それより、既に予算が大幅に超過しているんだ。本当にこの莫大な製作費を回収出来る見込みはあるのかね?」
 「もちろんですとも。映像は凄いし、アカデミー賞受賞俳優は出ているし、アメリカ海軍も全面協力しているし、エキゾチックなシーンあり、サスペンスあり、アクションあり、ロマンスありで申し分無しです。市場調査による観客動員要素は全て入っていますから、これで当たらないワケがありません」
 「そう言ってコケた作品は、過去に数知れずあるがな」
 「そ、そう悲観的にならずとも…。それに、御社の製品やロゴを作品中に沢山盛り込んでいますから、多少の予算オーバーは宣伝費と考えれば安いものですよ。ほら、あの新型ステルスに搭載されているコンピュータの名前だって…」
 「また上手いこと言ってごまかす気だな。しかし、あれはまるっきり『HAL』にソックリじゃないか。かえって悪い印象を与えないか?」
 「いえいえ、それを言うなら『アイアン・ジャイアント』と言ってくださいよ。感動的な結末に観客は好印象を持つはずです」
 「なんだ?どこが感動的なんだ?一人で勝手に納得するな!だいたいSFというのが気に入らんのだ。SFはなかなか儲からんからな」
 「何をおっしゃいます?これは『トップ・ガン』のようなミリタリー青春映画ですよ」
 「おお、そうだな。アメリカ海軍も全面協力しているしな。空母のシーンやステルスの発着艦シーンは確かに凄い迫力だ。しかし、どちらかというと『エネミー・ライン』の方が近くないか?」
 「まあ、そうとも言えますが…」
 「それともう一つ気になることがある。こんなにあちこちの国に無断で侵入し、勝手に爆撃するのはどうかな?アメリカの横暴という風に捉えられないか?世界配給にマイナスにならないかが心配で仕方ないぞ」
 「いや、それがステルスの目的ですし、この作品のキモなんです。密かに他国に侵入し、都心のビルを爆撃する。これがステルス戦闘機の魅力なんです。テロリストだろうが悪の枢軸国だろうが、ステルスの攻撃からは逃れられないのです」
 「うむ、ステルスの凄さは判るが、興行成績もステルスになっては困るぞ」
 「はい、そんなことはステルス(知ってるす)」
 お粗末。
 

セブンソード
10/23

☆☆
(見づらい、分かりづらい、お尻が痛いの三重苦に耐えよ!)

 前評判が芳しくないので覚悟していましたが、それにしてもこれは疲れます。ツイ・ハークどうしちゃったんだろう?大丈夫かなぁ?と本気で心配になってしまいました。
 
 「HERO」等に代表される美しい映像の武侠物への反発でしょうか、とにかく映像作りは「武骨」そのもの。おかげで目につくのは「暗闇」と「砂埃」ばかりで、非常に地味な印象を受けます。ツイ・ハークの過去の作品もそうでしたが、とにかく画面が見づらくて、長時間観ているのはさすがに辛いです。
 
 それに、編集まで「武骨」ときているのですから、観客はたまったものではありません。興行的に上映時間を切り詰めなくちゃというんでしょうか、無理矢理編集したという感じで、お話の肝心なところがバッサリ抜け落ちてしまっています。一番大事な登場人物の紹介や動機付けもハッキリしないし(…というか無いし)、七剣についての説明も殆どありません。まるでパンフレットを読んで予習してから観ろとでも言わんばかりの荒っぽさです。ここまで武骨と言うか不親切だと、話の筋を追うことさえ空しくなってしまいます。
 
 ……と不満ばかりの作品ですが、剣劇シーンにはさすがに見るべき所があります。壁に挟まれた狭い場所での戦いなどは、なかなか斬新なアイデアで素晴らしい。ただ、ワイヤーアクションを控えめにしたためか、剣術の腕などに力の差が顕著に出てしまいました。上手い人はいいのですが、下手な人はとても強そうに見えません。もう少し撮り方など工夫すべきだと思いますが、撮り方も「武骨」なので、工夫など望むべくもありません。

 ちなみに、途中で唐突に挿入される、続編の伏線らしきシーンがありますが、本編を切りつめるくらいなら、無くても良かったような気がします。本国では大ヒットしたそうなので、やっぱり作られるのでしょうね、続編。

ティムバートンの
コープスブライド

11/1
(WMCSY)

☆☆☆☆★★★★
(大人のための素敵な人形アニメ)

 凄いですねぇ、ティムバートン。「チャーリーとチョコレート工場」の合間にこんなアニメを撮っていたなんて、驚いてしまいますよ。でも、主人公の声はジョニー・デップだから、昼に「チョコレート…」撮って夜アニメの吹き替えするなんて芸当も出来るわけで、これは実に効率が良いと言えます。

 もちろんこの作品にもリー伯爵が声で共演していますが、この配役がこれまた実にニクイ!教会に背を向けて、亡者の群衆に対峙するシーンなんて、まるで「二つの塔」のサルマンみたいだし、これまた指輪に絡む物語ということでなかなか意味深いものがあります。それにしても、ジョニー・デップはこれで3度(スリーピー・チャーリー・コープス)も彼に怒鳴られたことになります。この分だと、次回もこのコンビが見られるかと、妙な期待をしてしまいます。
 
 さて、肝心の人形アニメですが、これがまた素晴らしい出来で、ティム・バートンがデザインした、極端にデフォルメされた「どうやって動かすんだ?」という理不尽な形のキャラクターを、ものの見事に動かしています。もちろんCG合成が施されているのですが、少しの違和感もなくストップモーションの動きと融合しているところが本当に素晴らしいと思います。
 
 そして、なんと言ってもメインの花嫁二人が実に健気で可愛らしく、思わず感情移入せずにはいられません。コープス・ブライドなんて、半分白骨死体のオバケなのに、観ている内になんとも妖艶な美女に思えてくるから不思議です。もう一方のビクトリアだって、別に取り柄のない普通のキャラだったのが、なんともいじらしい可憐な乙女に見えてくるから、こちらも応援したくなってしまいます。この二人が一人の男をめぐって愛の綱引きをするのですが、どちらも心優しく、どちらの心情も痛い程分かるので、観ている方はどちらも応援したくて、ヤキモキするばかり。さあこの結末、どうするのよ?
 
 ということで、葛藤の末になんとも美しく感動的なラストが待っているのですが、うがった見方をすれば、やや予定調和的かもしれませんし、承伏しかねる点も無いわけではありません。でも終わり良ければ全て良しなので、総じて「大人のための素敵な人形アニメ」という印象を受けました。目下のところ問題なのは、これから売り出されるであろう沢山のフィギュアにどう対処すべきかという事です。どうするのよ?(携帯でのフィギュア先行予約分は既に売り切れてます!)

 舞台版ミュージカルでも観たいものです。

ハリー・ポッターと
炎のゴブレット
11/19
(WMCSY)

 ☆☆☆☆☆★★★★
(幼かった3人が立派に成長している姿を見ると、実に感慨深いものがあります。映画史上もっとも成功し、進化し続けるシリーズです)
 
 驚くべきことですが、このシリーズは回を重ねるごとに良くなっているような気がします。もちろん主役の3人を始め、出てくる子供達がみんな成長しているので、4作目ともなると、幼い頃の面影は薄くなり、大人へと着実に変貌してしまっています。その意味でシリーズ最大の魅力のひとつは確実に失われているわけですが、今度は青春学園ドラマとしての新しい魅力が生まれました。 なにしろ彼らの関係がより複雑に絡み合い、思春期の戸惑いや男の子と女の子の思惑の違いなど微妙なニュアンスまで繊細に表現されているところが実に面白いのです。ここにきて、私は初めて原作者が女性だということを強く認識しました。

 そして今回大きく変わったところは、初めてイギリス人の監督が演出したことでしょう。この違いは画面や構成に大きく反映され、暗くて寒々しく、冷酷な雰囲気を醸し出し、主人公達の生命の危うさを明確に表しています。ですから、ハリウッド映画のような楽天主義はなりを潜め、物語は最初から死の危険をはらんだ、実にスリリングで奇っ怪な展開を見せてくれます。ある意味ようやく正統派ファンタジーの様相を呈してきたという感じで、大変喜ばしく思います。

 美術と音楽は相変わらず素晴らしく、ドラゴンや空飛ぶ馬車などうっとりするような幻想シーンを随所に見せてくれます。特にエンディングの美しさは特筆物で、思わず胸がジーンと熱くなりました。(と言っても、私だけかも知れませんが…)

 とにかく2時間37分の間、ひとつもダレるところなく、全てのシーンが見せ場という、とても贅沢な作品です。盛り沢山の内容を3時間内に収めるということで、さすがに忙しい内容になりましたが、この構成力は大したものです。ただ、前の作品に出たキャラクターや新しく登場する人物が大変多いので、原作を読んでいる人以外はなかなか内容を把握しづらいかもしれません。いずれにせよ、個人的にはシリーズ最高の出来だと思います。
 (以下ネタバレに限りなく近いので自主規制)
 しかしよく考えてみると、闇の配下の連中は実にまわりくどい方法で目的の物を得ようとしています。もっと簡単な方法がいくらでもあるのにと思うのですが、わざわざこんな手の込んだことをするのは何故なのでしょう?そりゃ、もちろん読者や観客を驚かせたいだけなのですが、それを言っちゃあ身も蓋もない。そこはそれ、やはりポッターをいたぶるだけいたぶって、恐怖と憎悪と失望感を増幅させて楽しんでいるのですよ。…ということは、もしやポッターをダークサイドに取り込もうなんて考えているのかもしれませんね。ってことは、名前を呼んではいけないあの人も、実は…だったなんてことになったりして……。
 


キングコング
12/14
(WMCSY)

☆☆☆☆☆★★★★★
(素晴らしい!
旧作を越えたかも?)
 
 とにかくもの凄い映画です。冒頭の映像からして仰天してしまいます。だって、大恐慌時代のニューヨークを完璧に再現しているんですよ!ニューヨークの街並みも摩天楼も人々も交通機関も、すべてが当時のまんま再現されています。セットとミニチュアとCGの合成なんでしょうが、ここまで出来たら、このデータを使って当時の映画をいくらでもリメイク出来ちゃうでしょう。
 
 次に凄いのが船のシーン。「タイタニック」からCG技術は格段の進化を遂げているんですね。もう、ここだけで海洋アドベンチャー映画がいくらでも出来ちゃいますよ。細かいことを言えば合成の甘い点が無きにしもあらずですが、実に良い雰囲気が出ています。
 
 ここまでで充分凄いなあと思ったのですが、それはまだほんの序の口で、本当に凄いのはこれからなんですね。コングの棲む島に到着してからは、怒濤の驚愕シーン連べ打ちで息つくヒマもありません。恐竜や得体の知れない生き物もわんさか出てきて、これぞまさしく冒険ファンタジーの極み!コングと恐竜たちの死闘も凄まじいです。もう、ジュラシック・パークがママゴトに見えちゃうくらいです。
 
 そしてここから先、感動のラストまで、映画史に残るような名場面が続きます。いや凄い!素晴らしい!こんな映画が作られるなんて、まさに奇蹟のようです。ピーター・ジャクソンは子供の頃から旧作に憧れ、いつか自分がこんな映画を撮りたいと願っていたそうですが、その思いは画面の端々に漲り、旧作への尊敬とコングへの愛に溢れています。もしかしたら、「ロード・オブ・ザ・リング」は「キングコング」への布石で、すべてはこの作品を作るための通過点でしかなかったのではないかとさえ思える程です。
 
 俳優人はどれも達者で一分の隙もありません。特に主演のナオミ・ワッツはまさにはまり役です。そして、特筆すべきはアンディ・サーキスとウェタのアニメーターが作り上げたキングコングの演技です。アカデミー賞に仮想主演男優賞なんて部門があったら是非とも受賞させたいものです。
 
 細かいことを言えば突っ込みどころはたくさんありますが、なによりこの作品は愛と冒険のファンタジーなのです。そんな無粋なことをするべきではありません。とにかく観て、驚いて、ハラハラして、感動に涙すれば良いのです。
 
 ちなみに…(ネタバレなので自主規制)
 沼を筏で渡るシーンがスッポリ抜けていますので、DVD発売の時は、きっとスペシャル・エクステンデッド・エディションが出るかも知れません。劇中、旧作の曲や踊りがしっかり挿入され、言葉の端々に旧作に関するネタが織り込まれています。キングコングの演技を担当したアンディ・サーキス自身もちゃんと顔を出していますが、ミミズの化け物に頭から食われてしまいます。おまえは顔を出すなというギャグでしょうか?
 

 

2004年

ロード・オブ・ザ・リング
王の帰還

2/7
(WMCSY)

☆☆☆☆☆★★★★★
(この映画が観られただけでも、生きていて良かったと思う今日この頃です)

 ピーター・ジャクソンはついに偉業を成し遂げました。「ロード・オブ・ザ・リング」は、紛れもなく映画史に燦然と輝く偉大な映画です。涙有り、笑い有り。感動の人間ドラマ有り、壮大なスペクタル有り。どのシーン、どのセリフをとっても素晴らしく、とにかく細かいところまで愛情を持ってよく作り込まれています。スペクタクルシーンはもちろんもの凄いですが、何の変哲もないシーンにも胸を打つ素敵な描写が沢山盛り込まれていて、どこをとっても一級の仕上がりになっています。まさに一点の曇りもない、これぞ映画!これぞファンタジー!
 
 …と、何から何まで褒めちぎっているようですが、実は一つだけ不満が残ります。クリストファー・リー=サルマンは一体どうなったんだ?蛇の舌グリマは何処だ?エンディング・クレジットに彼らがいないなんて寂しいじゃないか!早くもスペシャル・エクステンデッド・エディションが待たれます。(やっぱり「二つの塔」のスペシャル・エクステンデッド・エディションは必須です。これを観ていれば、更に泣けます!)

デイ・アフター・トゥモロー
5/29
(WMCSY)

☆☆☆★★★
(大げさなパニック物ですが、娯楽としては充分楽しめます)

 大風呂敷監督ローランド・エメリッヒということで、大味な映画を予想していたけれど、全くその通りだった。お話の構成も「インデペンデンス・デイ」と殆ど同じ。でも特撮というかCGはホントに凄いもんだ。まあここまで凄いと、逆に安心して観れちゃうのが問題だけど…。

 共演のエミー・ロッサムという女の子が結構お気に入り。後でパンフレットを見てみたら、「オードリー・ヘップバーン物語」で若い頃のヘップバーン役を演じていた人だそうな。成る程!

ハリー・ポッターと
アズカバンの囚人

6/19
(WMCSY)

☆☆☆☆★★★
(今のところシリーズ最高の出来です)

 この邦題の「アズカバンの囚人」というのは、古い映画ファンとしてはどうも「アズカバンの虜」と呼びたくなる。そういう茶々も入れたくなる程贅沢な作りだ。ジョン・ウィリアムズの音楽も素晴らしいし、新しいキャラや小道具達も魅力的で面白い。特にディメンターとナイトバスとシビル・トレローニー先生は最高です。でも、話はかなり目まぐるしくて複雑だし、固有名詞がポンポン飛び出すので、原作を読んでいない人には飲み込むのが結構難しいかも知れない。それに、お子様にはちょっと怖いかも?多分怖いと思うな。きっと夢見るぞぉ〜。「千と千尋〜」の時と同様に、ロビーで大泣きしているお子様もいました。
 
 一つ気になったことは、頻繁に「殺す」という言葉が使われていることだ。最近の児童文学はこの位刺激的でないといけないのかも知れないけれど、それにしてもちょっと乱暴な気がする。大人が使う分には良しとしても、少年が使う言葉としてはどうも抵抗を感じてしまう。
 
 主人公達もすっかり大きくなり、容姿が大分変貌してしまっている。それに加えてラフな衣装にも微妙な違和感を感じないでもない。その辺り、デリカシーや夢が少しずつ失われていくようで、一抹の寂しさも覚えてしまう。果たしてこの変化を日本のファン達はどう感じるだろうか?

スパイダーマン2
7/3
(WMCSY)

☆☆☆☆★★★
(実に痛快です)

 まさに予想通り、ファンの期待を裏切らない出来になっていました。これならきっと、アメリカの観客は拍手喝采するに違い有りません。アメリカンコミック・ヒーローの王道通り、なにもそこまでと言いたくなるほど、主人公は度重なる悲劇に打ち拉がれて、運命にいたぶられ、自信とアイデンティティーを粉々に砕かれてしまいます。まるでWWE(旧WWF)みたいな展開に、誰もが主人公に同情を禁じ得ない次の瞬間、事態は急変し一発大逆転!実に爽快なラストに、早くも「3」に期待が高まります。
 
 しか〜し、いつもながらサム・ライミの女性の趣味には、どうしてもついて行けません。(…というか、女性の描写にあまり興味が無い様に思えます。)まあ、好みの問題ですから、致し方のないところですが。

キング・アーサー
7/17
(WMCSY)

☆☆☆★★
(鎧とキーラ・ナイトレイ好きの人に)

 。「キング・アーサー」と聞いたら「アーサー王伝説」を思い浮かべますが、これがなんとアーサー王の実像を描いた作品なんですね。(もっともアーサー王については諸説有りますので、これはその内の一つと捉えた方が良いかも知れませんが…)
 
 なにしろアーサーはローマ人とブリトン人のハーフで、ローマ帝国の司令官だったりするわけです。ですから、伝説の映画化を期待した人はかなりの肩すかしをくらいます。といっても、決してつまらないわけではありません。いやむしろ新しい観点のアーサー王物語として、非常に面白い映画だと思います。
 
 特筆すべきが、彼らと彼らの馬が身に着けている鎧です。これは本当に素晴らしい。この鎧姿は、ホントに惚れ惚れします。この衣装はアカデミー賞の候補になるかも?
 
 合戦シーンも見事ですし、お話もなかなか良くまとめてあります。有名なスターが出ていないので興行的には心配ですが、個人的には結構お気に入りの作品です。でも地味だなぁ、やっぱり。

サンダーバード
8/7
(WMCSY)

☆☆★★
(サンダー・バードとは認めたくないです)

 CM等でサンダーバードのテーマ曲が流れていない事が気になっていたが、まさか本編でも流れなかったらどうしよう。まわりの席を見ると、案の定観客の年齢層が結構高めだし、きっとTVシリーズのファンに違いない。あのテーマ曲が流れなかったら、絶対暴動騒ぎになるぞ。
 
 …などと心配していたが、ちゃんと曲が流れて一安心。しかし危惧された通り、TVシリーズを観ないで育った監督は「サンダーバード」の良さを全く分かっていない。出動シーンや救助に至る複雑なギミックが面白いのに、そこを割愛されたら面白さも激減してしまう。せっかくのCGも、これじゃあ人形劇と殆ど変わらないじゃないか!実写版なのだから、もっとリアルに表現して欲しかった。それと余談だが、1カットだけ本当に人形が出演している。

シュレック2
8/7
(WMCSY)

☆☆☆☆★★★
(ハリウッドへ行ってから観よう)

 これはさすがに面白かった。映画が始まってから10分間はずっと笑いっぱなしで、お腹が苦しい。映画のパロディーはもちろんだが、ハリウッドに行ったことのある人は、どこかで見た街並みが巧みに取り入れられていて、面白さが倍増するはずだ。

 テーマは良くも悪くもアメリカ的なので、日本の観客に受け入れられるかどうかは微妙な気がする。CGは前回と比べても数段進歩していて、特に半乾きの毛並みの表現が素晴らしかった。

 余計なことだが、最後にとんでもないオチがある。「シュレック3」は一体どうなってしまうのだろうか?考えるだけでも恐ろしい。

リディック
8/13
品川プリンスシネマ

☆☆★
(期待しなければ、楽しめるかも?)

 期待していなかったせいか、これが意外と面白く観れました。ただしこの作品は、製作者の意図するところが相当空回りしているので、観客の方がかなり作品にすり寄ってあげないと、とてもこの世界について行けないでしょう。なにしろ、宇宙を支配しようという狂信的最強軍団にしては小規模だし、そのボスにしても少しも強そうに見えません。それに、星々を渡る話なのに、宇宙の広がりというものが感じられません。ですから、これはSFというよりも、ヒロイック・ファンタジーと捉えた方が良いでしょう。観た印象としては、まさに「コナン・ザ・グレート」の世界がピッタリです。
 
 というわけで、科学考証を無視して観れば、ヒロイック・ファンタジーとして結構楽しめるかも知れません。もちろん、アクションが見づらいとか、主人公達に感情移入出来ないとか、世界観が分かりにくいとか、沢山の諸問題に対しても寛容にならなければなりませんが。
 
 それにしても、サングラスを掛けたリディックがサンプラザ中野に見えて仕方なかったのは私だけでしょうか?(きっとそうでしょうね)

LOVERS

8/28
(WMCSY)

☆☆☆★★★
(映像は極めて美しいが、話が中途半端)

 チャン・イーモウ監督の作品だし、チャン・ツィイー、金城武、アンディ・ラウのアジア3大スターの競演ということで、非常に興味深く観ることが出来た。
 
 相変わらず画面は美しく、特に冒頭におけるチャン・ツィイーの踊りは映画史に残るのではと思うほど素晴らしい。アクション・シーンも「HERO」のようなスケールや派手さはないけれど、素早く、堅実で、動きが実に見事だ。金城武の弓を射る姿勢もかなりきまっている。ワイヤー・アクションは地味だが、むしろかなり難易度が高まっていると思う。
 
 お話についてはネタばれになるので触れないけれど、実は少々破綻している。これはおそらく、重要な役で出演するはずだったアニタ・ムイの死で、シナリオを変更せざるを得なかったことが原因だろう。いずれにしても、切なく美しい作品なので、日本でもかなり受け入れられるに違いない。多分、難解な「HERO」よりもヒットするだろう。音楽も素敵なので、サントラは是非とも購入したいと思う。

ヴァン・ヘルシング
8/28
(WMCSY)

☆☆★★
(導入部だけは星5つ!)

 A級作品とB級作品の違いはなにかと言えば、それは恐らく、人間をちゃんと描いているかどうかの違いではないだろうか。その点で言えば、2億ドルもの製作費で作られた「ヴァン・ヘルシング」は間違いなくB級作品だ。もちろん、B級だからといって、悪いわけではない。要は娯楽作品として楽しめれば良い。ところが困ったことに、この作品はデコレーションが立派なだけハリボテという感じが強く、どうも楽しめない。
 
 ユニバーサルの3大モンスター(ドラキュラ・狼男・フランケンシュタインの怪物)に気兼ねしてか、登場する人間達の存在感が非常に希薄な感じがする。主人公のヴァン・ヘルシングでさえ、どうも魅力に欠けるし、感情移入もできない。だから、主人公達がどうなろうが少しもハラハラ出来ない。
 
 それで、肝心の3大モンスター達はどうかというと、こちらもやはり存在感が希薄で、折角のキャラが立っていない。CGの乱用で生身の実感が湧かないし、少しも恐くない。なによりモンスター達に対する愛がないから、全く魅力を感じない。これでは一体何のために作ったのかよく分からない。
 
 話としても、3大モンスターを上手く絡めているように見えるが、どうも生かし切れていないような気がする。むしろ、ヴァン・ヘルシングをモンスター・ハンターにせず、「リーグ・オブ・レジェンド」のアラン・クォーターメインの様な役どころにして、3大モンスターと共に別の強大な敵と戦うという話にした方がよっぽど3大モンスターのキャラを生かせるし、遙かに面白いと思う。やっぱり「リーグ…」に先を越されて、二番煎じの印象は避けたかったのかも?
 
 というわけで、採点が厳しいのはそれだけ期待度が高かったからだし、なにしろ3大モンスターが登場するのだから、期待するなと言う方が無理だ。「サンダーバード」といい、過去の遺産を汚すのはいい加減止めてもらいたいものだ。


バイオハザード2
9/4
(WMCSY)


(次第に何の映画か判らなくなってきました)

 ゲームのキャラがたくさん出てきますので、ファンの人にはそれなりに楽しめると思いますが、ゲームと1作目を知らない人にはかなり理解に苦しむ展開だと思います。意味ありげに登場したキャラも、必要なくなればアッサリと殺されたりゾンビになってしまいますし、だいたいなんでゾンビになったのか分からない人や、何でゾンビにならないのか分からない人がいます。

 とはいえ、伏線や盛り上げ無しに展開する話や、ご都合主義のために映画のルールを完全無視するという作り方は、ある意味画期的かも知れません。
 
 破綻しまくりのシナリオに、頭の中がすっかりゾンビ状態になって、個人的に結構ダメージを受けましたが、それより、劇場を出る間際、周りの女の子が「面白いね」と言ったのには大きなショックを受けました。ううん、そうか!?最近の若い子にはこういうのが良いのか!?私は考えが古いのかも知れないぞ!
 
 …と、かなり辛口の評にになりましたが、主演のミラ・ジョヴォヴィッチは今回更に脱ぎっぷりが良く、フィフス・エレメント並の超人技を発揮します。それ以上にジル・バレンタイン役のシェンナ・ギロリーが魅力的で、この人が今回最大の収穫でした。「3」ではジルが主役であることを望みます。

I,ROBOT
9/11
(WMCSY)

☆☆☆★★★
(なかなかナイスなSFです)

 アシモフのロボット三原則を基に、人間とロボットの根本的な在り方を問う、ミステリアスなSF活劇です。物語は、まるで散りばめられたジグソー・パズルを一つ一つはめ込むように、多分に知的ゲームの様相を呈しています。シナリオは非常に緻密に構成され、映画としても、かなり完成度の高い作品になっています。単純に推理や活劇を愉しむばかりでなく、その後に深く考えさせられる要素もあり、それがこの作品をただの娯楽作品に終わらせていません。久しぶりに登場した、知的好奇心を大いに刺激する良作といえるでしょう。
 
 未来を見据えると、この21世紀初頭にこの映画が作られた意義は、非常に大きいかも知れません。最新の科学知識が必要な点もあるので一般には少々難解な所もありますが、SFファンの方々には是非とも勧めたい映画です。私は文句なく楽しめました。
 
 余談ですが、登場する「サニー」という名のロボットは「SONNY」と書きます。しかし、SONYはこの映画に全く関係ないようです。

ヘルボーイ
10/1
(WMCSY)

☆☆☆★★
(独特な世界観なので、お奨めしにくいです)

 既に輸入盤DVDで観ていたのですが、今回の日本公開バージョンはディレクターズカットなんです!普通版の輸入DVDより10分長いんですよ!それに、観客の反応が知りたかったので劇場でもう一度観ました。

 原作者のマイク・ミニョーラ自身プロデュースに関わっているので、原作コミックの映画化としては、満点をあげたい位に良くできています。でも、主人公は悪魔だし、お姉ちゃんは危ない目つきだし、原作コミックを知らない日本人の観客には、やっぱり難しいかもなぁ。
 

ヴィレッジ
10/1
(WMCSY)

☆☆☆★★
(シャマランの作品では2番目に好きな作品です。たいした話ではないですが…)

 最近何度も肩すかしを食っているM・ナイト・シャマランですから、どうせまたやってくれるのだろうと、別に期待もしていませんでしたが、これがなかなかどうして。個人的に、こういう話は結構好きかも知れない。それに、アメリカではこういう世間と隔絶した村が実際いくつもあるし、案外現実的なファンタジーだと思います。
 
 CMなどで想起されるオカルト・ホラーや意外なオチを期待すると、やっぱり肩すかしを食うかもしれませんが、私は思いの外楽しめました。主演のブライス・ダラス・ハワードと村の雰囲気がなかなか良かったので、それだけでも好印象を得ました。
 
 ただ映画としての出来から言うと、なかなか微妙です。意外性を意識して観客をはぐらかす演出をしたために、作品の焦点もぼかしてしまったような気がします。本来なら、最初から主人公に焦点を当てて、その視点でハッキリと愛の物語を語るべきではないかと思います。もっとも、あえてそうしないのが意外性なのかもしれませんが…。
 
 「ランニング・アウト・オブ・タイム」の盗作疑惑も取りざたされているようですが、この手の設定は昔から何度も繰り返されたパターン(殆ど王道に近い!)なので、全く問題ないでしょう。あと、今回のシャマランの登場シーンは「サイン」のパロディーになっていて、ちょっと笑えました。

コラテラル
11/1
(WMCSY)

☆☆★★
(拳銃好きに)

 男気のマイケル・マン監督ですから、なかなか骨太の作品になっています。予告でちらりと見たトム・クルーズの銃さばきが非常に見事でしたが、プロの殺し屋という役どころを実に上手く演じています。相手の頭に1発、胸に2発、正確に撃ち込むというプロの美学もなかなか渋くて良いです。これは相手を確実にしとめるという点で理にかなっているし、名刺代わりにもなりますが、逆に弱点にもなるんですね。
 
 ドキュメンタリー・タッチを出すためでしょうか、少々見づらいカットもありますが、その分臨場感があって、かなりハラハラさせられます。場面を盛り上げる音楽は、パーカッションの使い方が素晴らしく、妙に日本的でもあります。もしかしたら、「ラストサムライ」の影響かも知れません。そう思って観ると、この殺し屋が「侍」に見えてきます。
 
 それにしても、劇中のセリフにある「日本刀を持っていたら、寿司職人」というのは、やっぱりソニー千葉のことでしょうね。
 

ハウルの動く城
11/20
(WMCSY)

☆☆☆☆
(星4つは美術に。話はどうも…)

 感想は、多くの映画評で書かれている、まさにその通りです。とにかくよく分からない!物語の前半で提起された多くの謎が何の説明もないまま、解決したのかどうかも分からないまま物語が終結するなんて、一体どうしたことでしょう!?
 
 ソフィーが場面ごとに歳をとったり若くなったりするのもワケが分かりませんが(「紅の豚」でもこの手法がありましたが…)、大体あの契約の秘密って何なんでしょうか?戦争しているわりには国民がみんなノンビリしているし、実際本当に戦争しているのかも怪しい感じがします。(大体、砲塔を付けた要塞みたいなハウルが動いていたら、真っ先に攻撃されるでしょうし、そもそもあの大砲は何のために付けているのでしょうか?)それに、そもそもハウルの城が動く必然性なんて少しもありません。なにしろ魔法の扉を開ければ一瞬で好きな場所に行けるんですから。
 
 主人公のソフィーと言えば「ソフィーの選択」を思い出します。もしかしたら一連の意味不明な描写には何か哲学的な意味が隠されているのかも知れませんが、作品の体裁からはそのような高尚な意図は見受けられません。単に物語として破綻しているとしか思えないのです。
 
 原作はまだ読んでいませんが、あらすじを読んだ限りでは、かなり原作とかけ離れているような気がします。思うに、原作はちゃんとしたお話になっていて、きっと面白いに違いありません。
 
 では、なぜこんな事になったのでしょう?考えるに、どうも別の事情が絡んでいるような気がしてなりません。例えばソフィーがカルシファーを取り出して城を壊し、また復活させるところは全く意味不明ですが、どう考えてもこの辺りに重要な説明が決定的に欠落しています。他にもいくつかシーンが欠落している所が多々見られることから察して、どうやら上映時間や完成期日などの都合で歯抜け状態のまま公開されたのではないかと思われるのです。
 
 多分それが真相ではないでしょうか?そうであると信じたいところです。そうでなければエライ事です。かなり危険信号です。美術もキャラも世界観も素晴らしい作品だけに、とても惜しい気がします。
 
 あっ、そうそう、劇中とってもポポロ的なシーンがいくつか観られます。その点、イメージ的にはポポロに近い物もあるような気がします。物語を除けば、とっても楽しめる作品だと思うのですが…
 
 とにかくシナリオと構成を除いて部分だけを見れば、本当に素晴らしい作品です。今年は「イノセント」や「アップルシード」のようにCGを駆使した凄い作品が目白押しでしたが、従来のセル感覚アニメでもこれだけ凄い描写が出来るんだという意気込みを感じます。まさに宮崎アニメの集大成と言っても差し支えないでしょう。その意味で、各パートのスタッフは本当に良い仕事をしたと思います。
 
 でも作品全体としてみれば、それはあたかも「ハウルの城」そのもののように、色々な面白い部品を寄せ集めてはいても、各パーツの間には何の脈絡もないという、実にとりとめのない存在になってしまっています。物語の終盤直前まであんなに丁寧に描写していたのに、最後でいきなり一切の説明を放棄するなんて、置き去りにされた観客は「あれはどうなったの?」「なんでそうなるの?」と路頭に迷ってしまいます。
 
 ファンタジーの世界は不思議であって当たり前ですから、説明の付かない存在や理由の分からない世界観をあえて明らかにする必要はありません。しかし、だからと言って物語自体まで意味不明なのは、作品として如何なものでしょうか?むしろファンタジーだからこそ、より骨子のハッキリした物語性が求められると思うのですが…。優しい絵柄と同様に、観客にも優しく接して欲しいものです。
 
 恐らく諸般の事情でやむなくこのような結果になったのではないかと思われるのですが、もしそうでないとしたら、それはあまりに悲しい事です。


Mr.インクレディブル
11/27
(WMCSY)

☆☆☆☆☆★★★★
(シナリオは完璧です!家族揃ってご覧下さい)

 なんとPIXARのジョン・ラセターが「アイアン・ジャイアント」のブラッド・バードと最強タッグを組んで作った、まさにINCREDIBLE(信じられない)アニメです。これが面白くないわけが無いでしょう。
 
 もちろん、いつものようにシナリオは完璧ですから、多くの人に自信を持ってお奨め出来る作品と言えるでしょう。それに、なにより全編を貫く「センス・オブ・ワンダー」の精神が嬉しい。そして、それらを「家族愛」で一つにまとめる手腕が心憎いです。
 
 スーパー・ヒーロー物ですが、面白いことに全体的なテイストは007を思わせる作りになっています。脇にもそれ風のキャラが出てきますし、秘密基地にはお約束のモノレールも走っています。侵入ゲートの番号もしっかり「07」で、おまけに音楽も007風(タイトルは忘れましたが「ボンド○○」とかいう曲に似ています)。さらに助手席が吹っ飛ぶわ、仲間は抹殺されるわ、謎の美女が誘惑するわ、敵の隊員が殺人マシンで追いかけて来るわ、火口からロケットが発射するわ、とにかく007へのオマージュとリスペクトが溢れていて泣かせます。
 
 恐らくブラッド・バード監督の好みでしょうが、「JQ」といい、私と同じような作品に影響を受けているようで、なんだか趣味が合いそうです。おかげで、完全に私のツボにはまりました。個人的にはPIXARの最高傑作。今年一番面白かった作品と言えるでしょう。あっ、指輪は例外ですけれど…。

スカイキャプテン
ワールド・オブ
・トゥモロー

11/27
(WMCSY)

☆☆☆★
(この世界観は大好きです。でも、話が…。
メジャーでなければカルトになったのに。ロボット付きスペシャルDVDBOXを是非出して欲しいぞ)

  白黒映画に人工着色したような画面のトーンからも分かるように、昔のSF冒険映画をそのまま現代の技術で再現するという趣向ですから、この意図を受け入れられるかによって大きく好みが分かれるところでしょう。街中を闊歩する巨大ロボットにプロペラ戦闘機で挑むなんて図は昭和中期のSF少年達の夢ですが、その辺を理解出来ないと、この映画の世界にはなかなか入り込めないかも知れません。
 
 この作品にも過去の名画に対するオマージュが沢山捧げられていて、フライシャーの「スーパーマン」は言うに及ばず、「バック・ロジャース」「フラッシュ・ゴードン」「キングコング」「メトロポリス」「来るべき世界」「オズの魔法使い」…と、枚挙にいとまがありません。そして、この作品でもやはり「007」を思わせるシーンがあって、再び驚かされました。やっぱり最後はこれで締めなくっちゃ!
 

 とにかく、よくぞこんな物を本当に作ってくれたものだと、拍手喝采を送りたい気持ちです。こういうバカげた事を本気でやってしまう、アメリカ映画の懐の広さには毎度の事ながら感心してしまいます。監督はこれが初の長編という新人ですが、なんでも自宅のPCでコツコツ作った短編がプロデューサーの目にとまり、この大作を監督することになったとか。これで映画が大当たりしたら正真正銘のアメリカン・ドリームですが、でも…やっぱり当たらないだろうなぁ。

マッハ!!!!!!!!!!!!!!!!
11/30
DVD

☆☆☆☆★★★★
(ひたすら痛そう!ひたすら偉い!)

 ここでは劇場で観た作品しか紹介しないつもりでしたが、この作品だけは特別に紹介します。とにかく凄いんです!

 あれは誰だ!?トニー・ジャー!ついに観てしまいました。この映画、ずっと観たかったんですが、ようやくDVDで観る事が出来ました。なんで劇場で観なかったかと言うと、ワーナー・マイカルでは日本語吹き替え版しか上映していなかったんです。どうしてもトニー・ジャーのかん高い声を聞きたかったんです。だからDVDが出るのをずっと待っていたのでした。
 
 とにかく、この映画は凄い!!!!「CG無し!」「ワイヤー無し!」「スタント無し!」「早回し無し!」の謳い文句通りのとんでもないアクション映画です。ホントにもう、蹴りがまともに顔面にヒットして、体が吹っ飛んじゃうんですから!自動車を飛び越え、人の頭の上を(ホントは肩の上だけど)本当に歩いちゃうんですから!下半身に火を付けて跳び蹴りしちゃうんですから!最後に撮影風景のおまけが付いているんですが、火が熱くて逃げまどうトニー・ジャーとそれを追いかけるスタッフが映っています。でもって、どうやって火を消すかと思えば、砂を掛けるだけでした!消火器使わないのね!!!!!ホントに命懸けなのね。
 
 トニー・ジャーが使う武術はムエタイですから、肘と膝でまともに攻撃します。これがもの凄く痛そうです。というか、まともに当たったら、普通の人は死んじゃいますよ!やられ役の人も充分命懸けです。そう、この映画に出てくる人達はみんな命懸けなんですね。ヒロインだって、巻き添え食って蹴られていますもの。みんながこの映画を作り上げるために命を張っているんです。この熱気は香港映画以上ですね。
 
 それにしても、生身の体だけでこんなに凄いエンターテイメントが出来るなんて、まったく驚いてしまいます。マトリックスの超人技を、特撮を使わずにやっているようなものですから、感動してしまいますね。人間て、こんなに凄いことが出来ちゃうんですから、ホントに素晴らしい!トニー・ジャー、君はもうジャッキーを越えたよ!

ポーラー・エクスプレス
12/1
(WMCSY)

☆☆☆★★
(原作絵本を知っていればもっと楽しめるかも)

 とってもリアルなCGアニメです。このタッチ、前に観たことがあるなと思ったら「ファイナルファンタジー」と一緒の技術ですね。陰が黒くなる、この独特のタッチにはどうも馴染めないのですが、観ている内に慣れてくるでしょう。きっとね。
 
 というわけで、かなり覚悟して観てみましたが、思ったほど違和感なく観ることが出来ました。というか、慣れました。でもやっぱり、実写で撮った方が良かったんじゃないの?というのが正直な感想です。とはいえ、夢とスリルのあるお話ですし、クリスマス映画としては最適じゃないかと思ったりもします。もともと3D映像で作られていますので、出来れば3D上映しているIMAXをお奨めします。流石ゼメキス監督なので、絵柄に余程拒絶反応が無ければ、しっかり面白く観られると思います。
 
 私は知りませんでしたが、サンタクロースって「北極の王」なんですね。映画には「北国の帝王」もしっかり登場しますが、この人って一体…?

80デイズ
12/1
(WMCSY)

☆★
(前作とは月とすっぽん)

 大物俳優がちょい役で出演する「カメオ」という言葉は、旧作の「80日間世界一周」から始まったのですが、本作でもシュワちゃんをはじめ沢山のスターが顔を出しています。中でも久しぶりのサモハン・キンポーとの共演は泣かせます。「シャンハイ・ナイト」で共演したオーエン・ウィルソンも出てきますが、何故かそのシーンにはジャッキーがいません。もったいないなぁ。昔みたいにもっと大物が出ていたら、もっと面白かったのに。例えばチベットかエジプトあたりでショーン・コネリーが出てくるとか…ね。
 
 世界一周する話だし、世界中でロケしているそうですが、あまり旅情は感じません。多分CGを使いすぎているからじゃないでしょうか。CGではやっぱりその土地の空気が出ません。なんだかせせこましい世界一周でしたが(スモール・ワールドの曲も流れるし)、結構笑えるシーンもあって、それなりに楽しめました。画面の隅々に小ネタがあるようなので、DVDで観たらもっと楽しめるかも知れません。

 先日「マッハ!!!!!!!!!!!!!!!!」を観ていたので、ジャッキーの動きがスローモーションに見えてしまったことが、ちょっと悲しかったです。

エイリアン VS
プレデター

12/18
(WMCSY)

☆☆☆★
(面白いネタだけれど、人には奨めにくいです)
 
 果たしてこの二つのキャラクターをどう絡ませるかということが興味の的でしたが、その意味ではかなり成功していると思います。
 
 あの人があんなこんなで今までのシリーズにちゃんと繋がっているとか、お約束のキャラは登場するし、欲しいバトルはしっかり出てくるし、マニアも納得の出来になっています。これなら「エイリアン5」としても「プレデター3」としても、十分通用しそうです。とにかく、たたみ掛けるアクションと胸躍るニクイ展開に、観ている分には充分楽しめる作品に仕上がっていると思います。
 
 しかし映画として見れば、さすが「バイオハザード」の監督らしく大雑把な作りなので、どうもおかしなところが随所に見られます。
大体遺跡発掘隊なのに、なんでマシンガンで武装しなければならないのかがよく分かりません。ホントなら、先発隊が音信不通になって救助に向かうとか、そんな布石があっても良いと思うんですけど…。
 
 それに、極寒の南極でコート無しで走り回ったら即凍死するじゃないかとか、そもそもプレデターは暖かい所限定でやって来るから寒いのが苦手なんじゃないかとか、100年周期ならこれまでどうしていたんだとか、なんでエイリアンが急に成長するんだとか、思わず首をかしげてしまうのですけれど、
まあ細かいことは気にしないようにしましょう。


2003年

ロード・オブ・ザ・リング
二つの塔

2/15
(WMCSY)


☆☆☆☆★★★★
(まだお話の途中なので、ちょっと奨めにくいかも)

 予想はしていたけれど、やっぱり凄い。3時間という上映時間もあっと言う間に過ぎてしまう。これなら5時間でもいいな。もっとこの世界に浸っていたい。そんな夢のような時間だった。今回はまるで「リア王」かと思えるくらいまでの風格まで備わってきた。何しろ名優揃いで、それがみなこの作品を愛して止まないのだから、作品の質を向上させるのは至極当然の成り行きだろう。
 
 更に驚くべきが特殊効果。アカデミー賞受賞は120%確実だろう。これはまさしく映画史に残る偉業だと思う。「王の帰還」が完成して、3部作が完結するまでは映画全体の評価は控えたい。けれどもこの分なら次は確実に感動作になるはずだから、3部作揃えば恐らく後世に長く語り継がれる映画史上ナンバー1の名作になることだろう。少なくとも私の中ではすでにナンバー1だけれど。
 
 この作品に関してはもっと語りたいけれど、今は多くを語らず、もうしばらく映画の余韻に浸りたいと思う。

ドリーム・キャッチャー
5/3
(WMCSY)


☆☆★
(モンスター映画ととらえれば、星3つ)
 
 期待していなかっただけに結構楽しめた。「サイン」でご不満の方にはお薦め出来るかも知れない。ただしスティーブン・キングお得意の下ネタ・オン・パレードなので、下品な話に耐えられない人にはまさに悪夢だろう。それはともかく、一風変わった図書館での攻防が新鮮だった。久々のホラー映画と思ったら実はモンスター映画だったりして、恐いというよりワクワクしてしまった。


トレジャー・プラネット
7/17
(機内ビデオ)


☆☆☆★★
(私はこういう話が好きですが…)

 まさに宇宙版「宝島」。巧くまとめられていて、最近のディズニーアニメの中では珍しく充分楽しめた。改めて古典文学の面白さを再認識し、忘れていた熱き思いが甦った。様々な異生物やメカが登場し、CGも多用されているものの、古典的な画面作りに好感が持てる。「21エモン」の様なキャラに少々難はあるが、私の好みにジャスト・ミート。大画面でもう一度観てみたいと思う。何でこれがディズニー興行収入歴代ワースト1なのだろうか?もう少し評価されても良いと思うけれど…。

ジョニー・イングリッシュ
7/19
(サンディエゴ)


☆☆☆★★
(劇場で大笑いしてしまいました)

 Mr.ビーンのローワン・アトキンソン主演の007パロディー映画。パロディーと言っても、そこはそれ「モンティー・パイソン」の英国映画だから「オースチン・パワーズ」とはギャグの質が大きく違う。お馬鹿なオチャラケではなく、本人はいたって真面目に大バカをかますから、ある意味タチが悪いし、非常に危険なキャラクターだ。それにしてもこのギャグ、私は好きだけど、アメリカ人には受けないかも知れないなぁ。日本でもどうだかなぁ。葬儀場のギャグなんて、思い出す度に今でも思わず笑ってしまうけれどなぁ。プードルみたいなマルコビッチの怪演も観れます。
 

Sinbad:Legend Of The Seven Seas
7/19
(サンディエゴ)


☆☆☆☆★
(面白いけど、キャラが…)
 
 「シンドバッド」と来ればハリーハウゼン。そんな雰囲気たっぷりの長編アニメ。が、ちょっと何か違うんだなぁ。面白いはずなのに、もっと感動出来るはずなのに、何か物足りないのは何故?きっと旅情感だったり、心の機微の細やかさだったりするのかも知れない。アメリカ製のアニメにそれを求めるのは無理な話だろうけれど…、題材が良いだけに惜しい。CGとセルアニメの融合も凄いけれど未消化な気がする。

デア・デビル
7/21
(機内ビデオ)
☆★

 アメコミ原作の盲目のヒーロー。音で察知するなら、音速を超える弾丸は避けられないはず。重傷を負ったはずなのに、元気に動き回れるのは何故?雨で顔の形を感知するというアイデアは面白い。

シカゴ

7/21
(機内ビデオ)

☆★
(正直嫌いです)

 人殺しを売り物に、ショウビズ界に鮮烈デビュー。正直者は馬鹿を見る、嘘と欲がまかり通る世界と良心のかけらもない主人公達はどうも好きになれない。ミュージカルと美術は確かに凄いけれど、アカデミー賞作品賞はどうかと思う。これがアメリカの本質なのだろうか?

マッチ・スティック・メン
10/24
(WMCSY)


☆☆☆★★★
(ちょっといい話)

  「マッチ・スティック・マン」とは「詐欺師」のこと。ネタに触れるので内容は言えないが、とにかく脚本が素晴らしく、その奥深い内容に、観終わった後「人生の詐欺師」ということについて考えさせられた。主演のニコラス・ケイジも潔癖症の詐欺師を見事に熱演しているし、その娘役のアリソン・ローマンがそれに輪をかけて素晴らしい。なにしろ後で彼女の本当の年齢を知って、「こいつはやられた!」と思った。この二人はおそらくアカデミー賞にノミネートされるに違いない。小品だけれど、愛すべき映画だ。

マトリックス・
レボリューションズ
10/30
(試写会)


☆☆☆★
(凄いけれど、意味不明)

 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!燃える!燃える!「スターシップ・トゥルーパーズ」の仇は撃(討)ったぜ!フィル・ティペット!こりゃまた、とんでもない映像を作ってくれたものだ。あまりの衝撃に毎晩夢にうなされそうだぞ。それにしてもミフネとキッドの関係は、まるで三船敏郎と加山雄三みたいだね。最後はどうやって収めるかと思ったら、ナウシカで来ましたか!あの赤い眼の形から、怪しいとは睨んでいたんだけど、やっぱりあれは王虫だったのか!?


ラストサムライ
11/22
(WMCSY)


☆☆☆☆★★★★
(ここまで煽てられると、日本人としてこそば痒い)

 欧米人が作った侍ムービーというのでTV映画の「将軍」を連想していたが、予想に反して、実に良く日本の姿を捉えた作品になっていた。写真に残っている当時の風俗をそのまま再現しているところなんか、さすがハリウッドと感心してしまう。特に横浜や東京のセットは驚愕の一語に尽きる。侍達の身のこなしや殺陣も、本家日本の時代劇が恥ずかしくなるくらい堂々としっかりしている。これまでこれほど日本や侍を真摯に見つめた欧米作品があっただろうか?画面に登場する侍達の、何と誇り高いことよ。
 
 日本人キャストも一人一人が実に魅力的で、堂々と演技している。日本一の斬られ役、福本清三は立っているだけで何か不気味な存在感があるし、口数の少ない真田広之は今までで一番格好良い。坊主頭の渡辺謙なんか、まるでユル・ブリンナーのような風格まで感じる。これは来年のアカデミー賞が楽しみだ。
 
 もちろんフィクションであるから、歴史的な事実とは反する。日本人の風習に関する誤解も多少あるし、風景もどこか日本離れしている。「乱」や「影武者」を思わせる合戦シーンもあるが、ニュージーランドでロケしたこともあって、何となく「ロード・オブ・ザ・リング」みたいだ。それでも、欧米の要求に屈せず自国の伝統と文化に誇りを持てと訴えるテーマに、何より侍スピリットを感じ共感を覚える。その意味で、日本人にこそ観て欲しい作品かも知れない。とにかく、立派な映画です。
《「ラストサムライ」の写真とトレーラー!》

ファインディング・ニモ
11/29
(WMCSY)


☆☆☆☆☆★★★★
(相変わらずピクサーの脚本は完璧です)

 さすがPIXAR!水の表現が凄いですね。魚のデフォルメも動きも素晴らしいです。シナリオも完璧で非の打ち所が有りません。声優人もサイコーです。全米興行収入本年度ナンバー1というのも頷けます。これで文句を言ったらバチが当たります。でも…何か物足りなさが…残ってしまうのです。何故なんでしょうか?
 
 それはきっと、この世界に「危うさ」が無いからでしょう。CGという完全に制御された世界には「不可抗力」という自然の危うさが欠けているからではないでしょうか?人間はこの不確定な揺らぎに心地よさを感じるものです。デッサンも多少崩れている方が親しみやすさを感じます。完璧を求める向上心はもちろん大事ですが、完璧な世界には人間らしさが欠如してしまいます。それが「物足りなさ」の原因かも知れません。

キル・ビル
12/4
(WMCSY)

☆☆☆★★★
(音楽の使い方が格好いいです。血と残酷描写が平気な人限定で…)

 いや、何というか、とってもヘンテコリンな映画です。ずっと昏睡状態にあったのに、突然目醒めていきなり「4年も昏睡していたか!」(確かこんなセリフ)と叫ぶザ・ブライド。銃を全く使わず、ひたすら日本刀で勝負する礼儀正しいヤクザ。刀差しのついた飛行機座席。寿司も握れば、刀鍛冶もする服部半蔵。季節を無視して突然広がる雪景色。
 
 もう、何が何だか、オリエンタルB級映画のかやくご飯みたいな映画です。くだらないと言えばくだらないですが、作り手の愛を感じ取れるので、ここは一つタランティーノに付き合って楽しんでやりましょう。
 
 クェンティン・タランティーノって、マカロニ・ウェスタンが好きなんだねぇ。やっぱり「続・夕陽のガンマン」が最高でしょ!ちなみに「ガンマン」て言葉は水野晴郎が考えたんですね。やっぱりあなたも東宝の特撮怪獣シリーズ観て育ったんですか。「サンダ対ガイラ」が好きとは、なかなかお目が高いですよ。やっぱりカンフー映画と言ったら黄色のトレーナーを着たブルース・リーでしょう!わざわざ明かりを消して座頭市のマネをするのも憎いねぇ。ゴーゴー夕張はどう見たってスケバン刑事なんだけど、その辺ハッキリさせて欲しいなぁ。
 
 もちろん白土三平の漫画みたいな凄惨なシーンも沢山ありますが、全体のトーンがカラッとしているのでそれ程残虐には感じません。もっともソフィ・ファタールだけは可哀想でしたね。是非「Vol.2」ではバイオニック・ジェミーになって借りを返して欲しいものです。
 
 それにしても、音楽の使い方がとっても面白いです。突然鳴り響く「鬼警部アイアンサイド」のテーマなんて、「ウィークエンダー」を思い浮かべて、まさに「奥さん事件ですよ!」と叫んでいるように聞こえます。片眼の看護婦が口笛を吹く「密室の恐怖実験」も渋くて格好良いですし、軽快な「グリーン・ホーネット」のテーマは仮面の軍団とブルース・リーの両方をイメージさせ小気味良いです。そして極めつけが梶芽衣子の「修羅の花」と「恨み節」!これには参った!あんたはエライ!ルーシー・リューの意味不明の日本語と相まって、もう頭がクラクラしちゃいます。サントラが是非欲しくなりました。
 
 そして後編の「Vol.2」は来年のゴールデンウィークに公開!今度は「ベスト・キッド」でしょうか?

スパイキッズ3−D
12/5
(WMCSY)


☆☆☆★
(お子様映画を本気で作っていることは素晴らしいと思いますが…)

 この映画は凄いねぇ。始まって15分もしたら、後はず〜〜〜っと3-D立体メガネを掛けっぱなしなんだからね。途中1回だけメガネを外すけれど、正味1時間以上も3-Dというのはギネス物じゃないの?「ジョーズ3-D」や「13日の金曜日3-D」、「空飛ぶ十字剣」、アンディー・ウォーホールの「悪魔のはらわた」、iMAXでやっていた「T−LEX」等々と3-D映画は数多くあったけれど、実質の3-D時間がこれほど長いのは無かったような気がする。(気になったので調べてみたら、アメリカでは沢山3-D映画が作られているようで、この作品より上映時間の長い作品も結構あるみたいです。ただ殆どが過去の作品を新たに3-D化したものなので、純粋な新作で長いのはやはりこの作品かも…?それにしてもアメリカ人ってホントに3-D映画が好きですね。)

 赤と青のフィルターを使った割には色がちゃんと出ているし、今までより一段と飛び出してクッキリ見える。ひょっとして、この映画は色々な意味で画期的なんじゃない?でも、出来れば偏光フィルター方式で、もう一度iMAXシアターで観てみたいなぁ。

 なにしろ「ゲームオーバー」というゲームソフトの仮想空間に入って悪の張本人トイメーカーと戦うというお話だから、至る所にゲームのネタが満載だ。裏技や隠れキャラも登場して、ゲーム好きな子供ならみんな大喜びするだろう。祖父と孫、親と子、家族の絆と友情をテーマに一致団結して、最終回だし全員集合!これで「スパイキッズ」シリーズも家族円満に大団円を迎えることが出来た。とってもハチャメチャだけど、子供映画としては非常に楽しい仕上がりになっている。
 
 それにしても子供に大人気の映画とあって、出演陣はみんな楽しそうに演技している。シルベスタ・スタローンなんか、今までこんなに楽しそうに演じている映画を観たこと無いぞ。それにも増して、吹き替えをやっているのが正道会館の角田信郎なんだからビックリ!体格で選んだのかは知らないけれど、声優としても立派にやっていけそうじゃないですか!